あ、早速東吾たちからメッセ来てる。
『Q.嘘つき人形は《根の国》で即死出来る?』
「だいぶ真面目な質問来たな」
「教えて、じゃなくて質問で正解を出そうとする辺り大人の矜持を守りつつ必死に答えを探そうとする感じがするな」
久遠結構きつい事言うじゃん。
「えーと……A.《根の国》による死はルール型の即死なので耐性貫通します……っと」
「耐性を貫通するのか」
「うん。というかフィールド型のスキルって全部ルール追加型だから優先度は普通のスキルよりも上位にあるよ。だから嘘つき人形の反転ライフを貫通して即死させられるんだよね」
でもこの話、前どっかでした覚えがあるな。どうせアーサーの事だしこれぐらいの事は調べているだろうとは思う。構築を運用する上でリーサルを取られる手段を把握しておくのは当然の事だ。《根の国》そのものは俺が駆間で良く玩具にしてたし把握されているだろう。
『Q.反転を反転化できるか?』
「あ、次の質問だ。実はこれ出来ないんだよね。あの人形は反転耐性があってアポは付与出来ないんだよね。その代わりに呪い状態による回復不能だったら付与できるんだよね」
「それ、付与する意味……あぁ、自己付与ね……」
「そそ」
自分にバステ:呪いを付与する事で回復無効状態になって、回復効果を躱す事が出来るようになる。嘘つき人形をタンク運用する時はこれが基本運用になる。ただ手段は非常に限られているので読みやすいという問題がある。
まあ、嘘つき人形を運用する時はクソゲーする時なので読みやすいもクソもないんだが。
次々と飛んでくる質問にそろそろ面と向かって質疑応答したほうが良いな、と判断して答えるのを切り上げる。イギリスの試合も終わった所だし、これ以上ここに残っている理由もない。とりあえず場所を関係者席からホテルへと戻す。
日本チームは全員同じホテルだったので一緒に移動する。
それから関係者だけになるので柊コンビとはお別れ。また遊ぼうね。
部屋でちょっとゴロゴロしながら久遠と今日も楽しかったねー、という話をしていると仮面マンがお部屋にやって来た。
「MTGの時間だッッッ!!!」
一応カードゲームの方かもしれないのでデッキを持参する。
当然カードゲームの方じゃないのでデッキが腐った。
仮面マンに連れられて会議室に入るとなんかもう地獄って感じになっていた。ホワイトボード、プロジェクター、パソコン、全貌総動員して必死に色んな戦術パターンを書き出してはその対応策と必要スキルの計算を行っていた。
Wアリスパターンとシングルアリスパターンでは要求される空中戦の積み込みの数が変わって来るし、それに合わせて相手もスキルの強弱を変えて来る。シングルアリスパターンだとアリスは添えものでミッドレンジかランプを軸にしているし、Wアリスならコントロールかパーミッション寄せだろう。
この僅かな違いが封殺されるか否かに繋がる。だから相手がどういうパターンで来るのかを想定しながらそれに対応して構築を用意しなきゃいけない。
当然東吾たちも控えのモンスターを用意している。それと入れ替えながら戦う事を考えなきゃいけない。だがそれを組み合わせると想定されるパターンが増えてしょうがない。そしてそのパターンを計算し、現実的な案を出すのがサポート班の仕事でもある。
「ウケる。自分たちがやったことをされ返して死ぬほど苦しんでる」
「勝つためにお前も知恵を出すんだよ……!」
絶叫が響く会議室のデスマーチに俺も勿論参加した。
結局、対イギリスの主軸はアーサー達がどこまでアリスに頼るのか……を読み切る点にある。
図書館攻略からまだ半年しか経過していない。この短期間でアリスをゼロから作る事はほぼ不可能だ。まず時間が圧倒的に足りない。だからイギリスが用意したアリスと嘘つき人形は間違いなく図書館から直接スカウトしてきた個体だ。
となるとステータスそのものは低い。プレイヤーが育てたモンスターと、野生のモンスターは明確にステータスが違う。だからアリスも嘘つき人形もステータスは対戦に耐えうるレベルにはないというのが解る。
だが対策抜きだとステータスは全く関係ない。スキルの性能だけでハメが成立する。対策抜きだとロック盤面が成立するのでそこはもうしょうがない。
逆に言えば対策込みだとアリスと嘘つき人形を入れた童話ロックはステータス及び専用スキル不足でパワーが不足するという話だ。
奇襲戦法としてはかなり強い部類に入るし、完成形は《暗黒樹海》を差し込んで《ドレスコード》を防げないようにカバーしたりもする。だがそのレベルの高さに入らない。そこまで用意している時間も、そこまでの資産もないからだ。
じゃあ対策してれば怖くないのか? って話をするとそうでもない。
例えばアリスピン刺しで《ドレスコード》だけオンにするとカウンターの為に絶対に《パーフェクトキャンセラー》辺りを消費させられる。俺なら間違いなく最初に《冥神の誘い》を指定して強制消費を誘発させる。
これで打ち消しを消費させれば……たとえばアーサーであれば《無限覚醒》からの《ソルグラント》のコンボに対抗する打ち消しが無くて、そのままリーサルに持ち込まれるという流れが十分にあり得る。
童話ロックは間違いなく封殺できる見せ札ではあるのだが、一番恐ろしいのは童話ロックではなく、それをパーツとしてパーティーに組み込んだ形にして構築の完成度を上げて来るパターンだ。そして俺が想像できるなら、他人にだってこれぐらいは想像できるだろう。
つまり、イギリスはこの方向性で対日本に動くだろう。というか来てくれ。明後日の方向に飛び出されても困る。現状ピン刺しでアリスを運用する方法は本当に悪くないのだ。対応する身のストレスがヤバイという事実さえ無視すれば。ざけんじゃねぇぞ。こんな事に打ち消し消費させてるんじゃねぇぞボケが。
ナーフされても対象全体って意味が未だに解らない。どうしてそこはナーフされなかったんだ? 対象単体で良かっただろこれ? というかなんでセットアップ効果なんだ? 明らかにメイン行動消費で良かったじゃん。セットアップで全体対象とか性能おかしいだろ。
まあ、全国のオタクのお兄さんはアリスという名前が大好きだからしょうがないか。
という訳で緊急イギリス対策会議は進みつつ翌日。
中国対ロシア、そしてフランス対カナダが始まる。
まず前半戦は中国の勝利。
仙獣という新しいモンスターを中国はいきなり出してきて各国の度肝を抜いた。どうやら前々から準備してたのを満を持して繰り出してきたようだ。
仙獣は中国の仙人を擬獣化させたものをモチーフにしたシリーズで、フィールドとは別に陣を展開し、敵陣や味方のみに影響を与える設置型スキルを使うモンスターだ。
実はこれ、DLC:ワールドツアーで実装されたモンスターで《崑崙山》と共に中国が繰り出してくる構築であり、DLC環境でも全然戦える構築なのだ。
そう、DLC環境に突入したのは日本とイギリスだけではない。こっそり中国も突入していたのだ。いや、なんなら一番最初に入ってたのは中国かもしれない。良くもまあ、ここまで隠し通したものだ。
これにより、強力なフィールド効果を軸に戦略を展開する国家が3国家となった。
日本、イギリス、中国。
インフレ特急の乗車に成功してしまったのだ。
続いてフランス対カナダはフランスの勝利となった。
強力なモンスター、ジャンヌを使ったアグロを捌いてから反撃するスタイルで環境に有利を取って勝ち残った。ターン無敵とバリアの展開が出来るジャンヌは非常に優秀なタンクモンスターで、調整次第ではアタッカーにもなれる。
それを代表が全員揃えてるんだからまあ強い。アグロに対処する方法で最も確実なのは序盤の猛攻をしのいで相手のリソースを枯らせる事だ。MPには限度があるし、回復する手段は意図的に少なく調整されている。無限のMPなんてものは……まあ、約1名を除いて存在しない。
お前の話をしてるんだぞアルティティシア。
ジャンヌはまあ、確かに悪くはないんだがフランスは新環境を握っている国ではないので、全体的にパワー不足が否めない。次の戦いで中国に勝つのは難しいだろう。
そういう事で本来であれば中国が単体で新環境を引っ提げて荒らすはずだった交流戦だったが、第3陣営として新環境を引っ提げて来るダークホースとなってしまった。
これにより《根の国》《暗黒樹海》《図書館》とマルチフィールドで戦う最新鋭のフィールド型戦略を駆使する日本。
《図書館》をベースにランプとコントロールにパーミッションと相手を戦闘内外でプレッシャーを与え続けるイギリス。
《崑崙山》に仙獣を使ったマルチフィールド型スタイルで状況と環境にコントロールに特化した新軸を見せる中国。
後に地獄の新環境デスマッチと呼ばれる交流戦前半ブロックが出来上がりつつあった。