Tier1。それは強さの保証。
誰が握ろうと圧倒的な成果を残す事が出来るというレベルの証明。
マスター仮面はその領域に踏み込んだ。
フィールドに威風堂々と立つ姿は漸く出番が出来たと安堵するものであり、自分の力を証明する事への高揚と期待が見えた。だが理解しているのだろうか、あのあんぽんたんは。これから酷い光景が繰り広げられる事を。
「いよいよ日本対イギリス、第3試合が始まります! はたして最強と豪語する鴉羽さんの言葉が真実かどうか……それをいよいよ確かめる時間がやってまいりました!」
「そろそろ解説に飽きてきたからもうやらないからねー」
「牧場長、あっちでフリップ掲げたスポンサーの姿が」
「牧場長って言うな……アレ、アンナじゃん」
凄い好評だから次回もやれ? 今視聴率が凄い事になってる? いや、でも俺久遠と一緒に観戦に回りたいんだけど……値段とかそういう問題じゃないんだよ。ギャラの桁を増やすな! 寧ろギャラ増やされると怖くて受けられないって!
え? 久遠が仕事してる姿を見たいって言ってた? 仕事が完璧にこなせる男はカッコいい?
じゃあ頑張るか。
「ぐだぐだしてる間にもうそろそろ試合が始まりそうだな。ゼリィ統一対ロイヤルナイツ、屈指の弱小種族値統一対化け物種族値の集まりで対照的なマッチになったな」
「急に解説にやる気が満ちたなこの人……」
うるせぇ!
「英国王女率いるロイヤルナイツは高い耐久力に魔法と物理攻撃を同時に使う事が出来るモンスターです。しかし新しいモンスターが採用されているようには見えませんが……」
「アーサーの入れ知恵かなぁ。1回戦で様子を見てダメそうなら新軸は切って更新されたスキルで戦う感じかな。たぶんだけど新しいモンスターの運用とかの知識で此方に勝てるとは思わないからなるべく勝ち筋が理解できてる軸で行こうって考えかな」
「成程……」
「納得ですね」
「君らなんで俺を見てるの?」
ロイヤルナイツは騎士を模したモンスターのシリーズで、竜の鎧の騎士、黄金の騎士、魔獣の鎧の騎士……等のバリエーション豊かな姿の騎士型モンスターの集まりだ。
特徴的なのは《マルチアクション》による物理と魔法同時行動が可能な事であり、魔法と物理、どちらかに耐性があってもそれを抜いて戦うことが出来ることだ。
《マルチアクション》は発動に詠唱を要求する為ランプ型に分類される構築だったが、図書館の存在によって詠唱が貯まりやすくなった今、一気に実用性と加速力を得た構築だろう。
何よりもデザインが格好良くて、性格も善良。トレーニングに真面目でサボらないし、大成功とか出しやすい。
かなり育てやすいモンスターだ。
まあ、今から蹂躙されるんですが……。
「カウントダウンが開始しました……まもなく試合開始です。新しくなったとされるマスター仮面の戦術に期待が高まります」
「たぶん直ぐに終わるよ」
マジで。
ゲーム内でよく見た光景が始まるぜ!
懐かしさに浸っているといよいよカウントがゼロになり、試合が開始される。開幕、さくらもちがオーロラみたいな光を放って味方を包んだ。
「はい、無敵とベール1回付与」
「今インチキみたいな事言いませんでした?」
無敵とベールを開幕配ったって言ったんだが?
ついでに《下剋上》発動。連動して全ステータス1段階上昇。バフコピー発動。あんこの全+1がコピーされる。それが全体に共有される。
あんこが全+2になる。いやぁ、無法だなぁ……。
「いつ見ても酷え動きだ……これであんこは全+2に他は全+1だね」
「今何がおきました????」
俺の采配抜きで開幕この動きできるの酷くない? 英国王女様もなんか顔が少し引きつってるけど、これはまだスターターだぜ!
当然フィールド展開が始まり、それの上書きによる対抗が来る。速度はゼリィ達のが早いので先に展開され、後から崩れる。だけどそれで良い。
ゼリィ達は専用フィールド持ちだが、まだそれを手に入れてない。作成にはレアモンスターの素材が必要で、それは流石に手に入らなかった。
だからフィールド展開はブラフで、相手の手札が消費出来ればいいが……まあ、流石に打ち消しは来なかった。
でもなぁ、《下剋上》止めなかったからなぁ。終わりかも。
「かんてんが無詠暴走して、インタラ止めは見えてた、と。そのまま強化解除耐性を付与。きなこがクリガでクリ耐性付与。備えは万全だね」
「さり気なく今の環境破壊する内容を流すの止めません?」
強化解除耐性はディスペル効果受けると他のバフの身代わりとなって解除される形になる。優先消費バフだと考えればいい。こうなるとバフの消去には2度ディスペル効果を使う必要がある。
そしてあんこのターン。
《分裂》した。
「……分裂しました?」
「したねぇ。これで次から常に2倍動くよ」
「アレって《ディスペル》で消えるバフ扱いですよね?」
「消えないねぇ。加えて言うならスキルコストは現在のHP上限半分だよ」
はい、さくらもちで再行動付与。《ロジックジャマー》も展開。パフェキャン躱しつつあんこが再び分裂しましたね。これで脅威の3回行動ですよ。
「ちなみに言うと分身もその段階のあんこのバフを保有してるので全+2の解除耐性持ちでーす!!」
「???????」
「???????」
実況とアイドルくんと配信サイトのコメント欄が一瞬で困惑と戦慄に包まれた。かつてないレベルで展開される頭のおかしいバフと戦力。それはもはや現環境においてメタとどうとか関係のない領域に突入してた。
そう思うじゃん?
実はこの数日、慣らし運転の為に日本チーム内で連戦してたけどマスカン把握してれば死神で止められるんですわ。
実際、東吾と酒クズからモンスター借りて対戦した時は1回勝てたし。まだ不慣れな時の指導戦だったから勝てたんだけど、マスカン把握した後は1回も勝てなくなってしまった。自分のモンスター使ってるわけじゃないから仕方がないんだけどまあ、流石プロって感じだよね。
「全体攻撃で無敵剥がして……あ、デモリを打ったね」
「これはバフを剥がそうという判断ですか?」
「だねぇ、次のターンまでにこの馬鹿バフを処理できないなら負けるって完全に理解してるね。その考えは正しいです」
だけどね、初動で止めないと手遅れなんですよ。
《デモリッション》を付与されたモンスターにパフェキャンが飛ぶ。行動封じをインタラで躱しつつ、攻撃が飛んで解除耐性と無敵が剥がれる。
次の攻撃をきなこで受ける。連撃がきなこに入り、死亡するが即座にさくらもちが起こす。
そして再びきなこで庇う。
「可愛らしいきなこ餅を突破できない……!」
「単純な話、どんなモンスターもリソースを集中させれば短期間を凌ぐことはそう難しくないんだ。だからバースト型は対人戦では推奨されないんだよね」
1回無敵で超火力が回避出来てしまう問題があるからね。
この場合、きなこが損耗なしで開始したターンだから攻撃を受けきれてしまう。きなこのバフが切れるが、裏のあんこを守れてるのでこれで良い。
ここらで絶望の2ターン目に入る。あんこ達が飛び上がって合体する。
「これはユニゾンアタック……しかし、この形態は見たことがないぞ!?」
「雷神トールの素材から作れるスキル、《ユニゾン:ミョルニル》だねぇ。対単体でバフ破壊効果があるよ」
ちなみに基礎威力倍率は1000%。一体何と戦う予定なんですか? と言われる火力も最終環境だと不思議と受けきれてしまうので……。
楽園ちゃん? 将来的に過労死枠ですよ。というかタンクが一番過酷なのはどのゲームでもそう。
特に俺の最終構築は被ダメ減らしてヒーラー排除するタイプの構築なので、楽園が永遠にDVされ続ける事になる。
まあ、まだ遠い将来の話だ。それよりも今はレイプ目になりつつある英国王女の姿を記憶に残そう。
「はい、1ミョル目。バフ剥がれてタンクが可愛いことになったね」
「僕達の間で可愛いという言葉の意味が違う気がしますね」
「2あんこ目は《ユニゾン:アルマーズ》、でっかい斧だね」
「追加効果は?」
「全体ダメージカット無視……はい、全体庇う入ったね。クリも乗ってるからダメージ倍ドン! 食いしばり入りまーす!」
「ついに3回目入りましたね……」
「最後は《ユニゾン:タナトス》だね。攻撃後HP一定以下なら即死でーす」
「わぁ……」
バフを剥がして、全体庇わせて、減ったら刈り取りまーす。無敵? 食いしばり? 即死なんで即死耐性でよろしくお願いしますね。そんなもん読める訳ないだろボケが。3回行動で着実に殺しに来てるのを防ぐ手段はありますか?
分裂し始める前に止めるか殺すかですかねぇ……。
まあ、元の種族値が貧弱なのでバフを積む前に殺すか、バフを積めないように強化無効化状態を付与して戦うのが一番良い攻略方法だ。
この手でメタるなら中国の仙獣、その中でも最強と言われる太公望の《太極陣》とかがお勧めになる。これを展開している間、相手のフィールドで発生するあらゆる強化効果が無効化されるのでランプ型や仮面マンとかへの絶大なメタになるのだ。
まあ……作成条件が凄い複雑なので今中国が作成してるか? という疑問に対して間違いなく作成出来てないだろうね、ってのが俺の見解になる。
「ロイヤルナイツもなぁ、専用スキルをちゃんと習得してれば勝機はあったかもね。無敵貫通攻撃とか、継続使用可能な全体ディスペル攻撃とか、スキル消去攻撃とか色々あるんだよ」
「その情報って英国に把握されている奴ですか?」
アイドルくんの疑問に腕を組んで数秒間、悩む様に考えてから天井を見上げ、それから首を傾げる。
「うーん……図書館の本に書いてあった!」
「そうですか、図書館凄いですね」
「ねー」
そういう事にした。
3回行動と全+8という領域に達した分裂あんこちゃんズに即席対抗する手段は存在しない。悲しい事に英国王女の敗北は仮面マンの出番が確定した時点で決まっていた。
という訳で、特にドラマもなく3戦目は仮面マンが蹂躙して終了した。
相手に抗う隙さえ見せない。相性ゲー以外での勝機を見出させない。
それこそ、Tier1の貫禄というものだ。
前話にて実況が未来予知していた部分を修正しました。
今も後も人間の予知能力者は酒クズのみになります。