最強以外ありえない   作:てんぞー

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異常者この指とまれー

 地獄のイギリス戦は日本の勝利で終わった。

 

 対アーサー戦が地獄だったが、結果を見れば東吾が一番美味しい思いをしたかもしれない。

 

 なにせ、新環境における敗北の経験は千金に値するからだ。

 

 圧倒的なパワーを持ったキャラクターとスキルを手に勝負して勝利するのは当然の事だと言えるだろう。例えば仮面マンの試合を見てこいつが負けるとは思えないだろう。だがここで負けた場合、何が悪かったのか、何がいけなかったのかが解って来る。

 

 東吾の敗北はそういう意味で次回に繋がる部分が大きかった。少なくとも次回からは相手の構築の意味を理解し、それに対応する動きが出来るだろう。まあ、ここら辺はモンスターの姿と名前をひたすら頭に叩き込んで役割を覚えるという作業になるのだが。

 

 というかアーサー戦に限っては俺もぱっと見で見抜けなかったからありゃあアーサーが凄い。

 

 そういう訳で日本はイギリスを制し、次の試合へと進む。

 

 次の試合は中国対フランスで、ここは順当に中国が勝ち上がった。別にフランスが弱いって訳じゃないんだが、わけわからん殺しが出来る環境は提供側が圧倒的に強いという話だ。特に中国の使用する陣系統のスキルはフィールドの上書きでは破壊できず、同じ系統のスキルかフィールド破壊スキルを要求される。

 

 太公望の使う《太極陣》が強いのもここに理由がある。インタラに失敗した場合は1手使って破壊しなければならないのだが、《崑崙山》はここら辺の陣の展開、再展開をサポートするフィールド効果だ。陣の維持をサポートしてくれるから初動を潰せない場合、大変な事になる。

 

 まあ、そこら辺の対処法は原作プレイヤーとして日本に叩き込んである。後半ブロックの試合が先に回って来るのもあり、日本の次の試合まで少し時間がある。

 

 ちょっくらズルしてホドロ経由で陣スキルを幾つか作成し、それを使って中国戦想定の動きを日本チームにしつつ次の試合まで何をするのか。

 

 ―――俺はちょっと駆間に戻ってた。

 

「最新環境持って来たからバトルしようぜバトル!! 対戦の時間じゃああああああ!!!」

 

「っしゃああ!!」

 

「お前を待ってた!!」

 

「待ちきれなかったんだよ!!! 早く闘ろうぜェ!!」

 

「この血が戦いを求めてるぅ!!」

 

「お前がどうやってアメリカから瞬間移動してきたのかは興味がねぇ!! 殺し合おう!!」

 

 モンスター協会の地下アリーナは何時も通りの殺伐とした空気が流れていた。ウェルカム! 殺し合おう! の空気が流れているとあぁ、故郷に帰って来たんだなぁ……って気持ちが凄く強い。ちなみに俺は東京生まれなのでここは断じて故郷ではない。

 

 折角俺が発掘してきた《暗黒樹海》なのに。

 

 これで遊んでるの日本代表ばかりじゃん!

 

 ズルい! 俺も遊びたい! コンボ決めたい! パフェキャン通りませんって煽りたい!!

 

 バトルを見てるのは楽しいんだけど、結局見てるよりも自分でやる方が楽しいんだよなぁ……というフラストレーションがちょいちょい溜まっているのが見抜かれたのか、仮面マンにちょっと遊んできて良いよという許可を得て今、ここに来た。

 

「という訳で軽く樹海コンボ組んできたから遊ぼうぜー。初見殺しされても良いよって異常者この指とまれー」

 

 30人ぐらい一気に集まって押しつぶしに来た。

 

 解った。解ったから。対戦する前に俺が死ぬから。お前達の情熱は伝わったから。俺の上で人間タワー作ろうとしてるんじゃねぇよ。そろそろ骨が折れそうだから降りてくれない? うん、ありがとう。さりげなくライバルを物理的に締め落として排除しようとするの止めようね。

 

 人間タワーを崩して背筋を伸ばす。

 

「あぁ、俺がツッコミに回ると駆間に戻って来たって感じがするな」

 

「楽しそうで何よりだ」

 

 ちゃっかり少し距離を作って安全を確保してる久遠、流石ここで生まれ育っただけはあるよな。そう言う訳でここ最近、自分の好きなようにバトルが出来なかったフラストレーション解消の為に駆間のモンスター協会でバトルする事にした。

 

 ラスベガスにもフリーでバトルの出来る施設はあるが、安全だかなんだかで結局自由にはやれないんだよね。

 

 でも駆間なら安心!

 

 追跡の類は大抵野良のモンスターかダンジョンか通りすがりの異常者によって勝手に消えるから。見慣れない土地を歩く時は気をつけよう! スリに命を取られるかも?

 

 取り敢えずまずは3戦、ランクマを回す。

 

 1戦目は王道のフラメア・イーリュ軸で。図書館の代わりに樹海を展開し防御力を高めた型になる。

 

 この都合上スキル構成をそこそこ入れ替える必要があり、《無詠唱》が抜ける。ついでに《暴走詠唱》も抜けて一気に減速する。《高速詠唱》一本になるとやはりスローペースになる。

 

 とはいえ、タンクと樹海で防御面は完備されている。これをCランクで抜くのは至難の技だ。数ターン相手の攻防を受け続けてからの魔法コンボで勝利。単体が通らないってやっぱ強い。

 

 2戦目、ウェルギリウス・エデ耐久抜き軸。樹海が事実上の耐久札なのでチビかイーリュ抜きでも行けるんじゃね? という判断で出した。

 

 が、負けた! ランクマで負けるの久々! 別に勝率キープを目標にしているわけじゃないけど、連勝が途切れるのは悔しさはある。

 

 原因ははっきりしてて、ウェルギリウスとエデの耐久抜きは食らうと一瞬で蒸発する濡れティッシュ構築なので樹海が大事なのだが、迷わずフィールド破壊スキルが飛ばされてきた上に、それを囮にランタゲ攻撃を使ってきたので普通に負けた。

 

 樹海を破壊されたら樹海再展開しないと簡単に殴られて死ぬから再展開は必須なのだが、エデは歌唱スキルで動けない。ならウェルギリウスの主動作を消費して再発動させる必要があるのだが、それを読まれて普通にランタゲを打たれて死んだ。

 

 シンクロ封印中なので指示力が落ちてるのもあるが、普通に樹海の研究が進んでいるのもあった。

 

 対処札を事前に用意してやがるこいつら……!

 

 なので3戦目、チビ・エデ樹海軸にする。

 

 恐らく樹海軸においては最も強い組み合わせになる。何せ、樹海を展開している場合、チビを止める手段は必中スキルか超命中特化にしない限りダメージを出せなくなる。

 

 エデでバフし、打ち消しやディスペ、デバフを樹海で躱す。後はチビでランタゲ攻撃し続けるだけ。樹海が破壊されてもオーケー、チビは樹海が消えても別に困らないのだ。

 

 という訳で3戦目勝利。本日は2勝1敗という結果になった。

 

 ランクマが終わったのでそのままフリーマッチに入る。

 

 お次はフィールドの上書き合戦を仕掛けてきた。C帯だとモンスターが少ないのもあって再展開や上書きに消費する手間がでかい。Sだとモンスターが多いから楽だったが、このレベルだと最遅展開が有利になる。

 

 樹海は破られたものの、キャラパワー差で勝つ。戦術での勝利じゃないのでちょっと悔しい。

 

 お次はフィールドを展開しつつ普通に殴ってきた。特別なことはせずに最遅発動させて上書きされる前提で動いてきた。異様になんか慣れてねぇか? という疑問を抱きつつなんとか攻勢を捌き切って勝利。

 

 少し疲れたので休憩する。

 

「なんかお前ら慣れてない??」

 

「お前がいない間、樹海ごっこで遊んでたからな」

 

「別のフィールドスキルを樹海扱いして対戦してたからな」

 

「ないならあるってことにすれば良いじゃない!」

 

 なんか普通にプロキシをデッキに突っ込んで回すみたいなことしててビックリ。確かにお互いに了承を得られればそれで全然通るが、滅茶苦茶賢いやり方で戦闘経験を積んでた。

 

 やっぱ、戦闘に関する嗅覚が異様にずば抜けてるよここの連中。

 

 じゃ、休んだし10連戦ぐらいすっか!

 

 とか思ってると見慣れた顔がpopする。

 

「尊くーん! 観察したからめーたーらーせーて!」

 

「出たな陰険デカパイ女」

 

「なんか尊くんてこの手の冗談に一切性欲を感じさせないから逆にちゃんと健全な感覚があるのか不安を覚えてくるよね」

 

「急にお母さん目線になるの止めない?」

 

「待て」

 

 久遠が会話に混ざってきた。

 

「尊は私にさえその手の視線を向けてきたことがないぴゅあぴゅあ純情ぼーいだ。私が押し倒さなければ告白さえ出来なかっただろう。たしかに不安を覚えるな……」

 

「久遠さん??? ちょっと???」

 

 自慢してやったぞ! と言わんばかりの久遠がドヤ顔でアピールしてる。成程、独占欲強くて自己主張して行くタイプですか。魍魎の巣でやるのは止めてほしかったな。

 

 バトルどころじゃねえと真っ先に男子マスターが皆殺しにされた。エルボーで俺も轢き殺された。他の男子と一緒に床に転がされ、場を女子マスターたちが支配する。そこにランク差なんてものはない。久遠を中心に急遽女子会が始まり、床に転がされた俺達男子は床を這いながらずりずりと集まる。

 

「ば、ばとるぅ……」

 

「諦めろよ、もうそんな空気じゃないだろ。というかお前こっちにいて良いのか?」

 

「今日1日は息抜きにオフ貰ったぁ」

 

「そっかぁ」

 

 ずりずりとナメクジの如く床を這いながらきゃぴきゃぴしている女性勢から離れた所で、男子で集まる。

 

「まあ、なんだ、おめでとう」

 

「ありがとう……ありがとうで良いのかこれ? 元々婚約者だったんだけど」

 

「決められた関係と自分から踏み出した関係には天と地ほどの差があるんだよ。お前は今、人間として更生の一歩目を踏み出したんだ」

 

「時々お前らが俺をどういう目線で見てるのか気になるよ」

 

 バトルする気満々だったが、こうなってくると流石にバトルという気はしなくなる。仕方がないので端の方で集まったら《暗黒樹海》を使ったコンボとかの研究や話を進める事にした。

 

 久々に帰ってきた駆間だったが、全く血の気で溢れた空気は変わらない。そこに安心感を覚える一方、駆間とラスベガス……同じモンスターが徘徊できる都市なのに一体どこで差がついたのだろうか……なんて疑問も湧いてくる。

 

 何にせよ、やはり故郷は良い場所だ。

 

 普段通りの日常を過ごして、次の中国戦の解説に備える事にした。

 

 皆、当然のようにアメリカから帰って来たら入手手段あるんだよな? みたいな顔をしてたなー。

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