最強以外ありえない   作:てんぞー

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原作再現されたクソゲー

「ただいまあー」

 

「お帰り。その顔を見るにリフレッシュ出来たみたいだね」

 

 駆間から戻って会議室で顔を見せると仮面マンからそんな言葉が返ってくる。それにダブルサムズアップで応えつつ仕事に戻ることにする。

 

 駆間での息抜きは幾つかの良いインスピレーションをくれた。という訳で早速採用する。

 

 卓上対戦。

 

 データだけなら頭の中にあるのだから、実際のモンスターは用意出来なくても良い。それを駒かカードにして、テーブルの上で実際の動きを再現すれば良いのだ。

 

 割れている中国代表のモンスター達のデータを纏め、それからそれを駒にしてテーブルの上で再現された日本代表のモンスターの駒を相手に原作に近いルールで対戦する。

 

 形式としてはボードゲームに近いが、アナログというだけでほぼ原作と同じシステムを採用する。俺の知識や判断力、対処能力はここで育てられたのだ。

 

 だったら日本代表もそうして伸ばせば良い。

 

 つまり、原作世界に原作を持ち込んでトレーニングするという発想だ。

 

 プロキシ回しなんて頭の良い事をやってた駆間の変態共のおかげで思いついたトレーニング方法だった。そういえば不思議とモンスターのデータを使った対戦ゲームとかこの世界にはなかったよな。

 

「まあ……下位ならともかく、上位のモンスターは国家戦力扱いでもあるからな。そう簡単に情報の開示は出来ないんだよ。だからそう云うゲームを作ろうとすればどうしても上の層が創作か薄くなる……何せ、リアルのが刺激的だからな」

 

 まあ、それはそう。

 

 シミュレーターとしては優秀だと思うけど、色々と理由があって表に出せないのかもしれない。なんにせよ、ここには全データ網羅した俺がいる。このまま遊んで行こう。

 

 図書館で暇してた従僕を借りて作った即席原作セット(ボドゲ風味)を展開する。駒、ルルブ、サイコロで乱数部分を再現。取り敢えずデータも関係ありそうな所しか作ってないがこれだけあればいいだろう。

 

 では。

 

「対戦よろしくお願いします」

 

「対戦よろしくお願いします……ふ、日本チャンピオンの実力を見せてあげよう!」

 

 自信満々の仮面マンを前にキャラを展開する。

 

 5分後。

 

 仮面マンが無言になってた。

 

「俺の勝ちー。国木田さん、弱すぎない?」

 

「国木田じゃない。マスター仮面だ。本名は止めなさい、本名は。いや、待て、待ってくれ。まだ1戦目だ。やり方は覚えた、2戦目に入ろう」

 

 醜くも足掻くか仮面マンよ……。スキル構成は弄ってるし、中国チームが出さなかったモンスターを採用してるとはいえ、原作の中国チームが出してきたモンスターやぞ? 勝ってもらわないと困るよー。

 

 という訳で太公望採用して《太極陣》も組み込む。原作の酷さを味わってもらおっか……。

 

 30分後。

 

「……」

 

「俺の勝ちー」

 

 ダイスを手の中でじゃらじゃらしながら転がし、片手で顎を擦りながら盤面を無言で眺めてる仮面マンを見る。5戦目からだいぶ言葉が少なくなり、10戦目からは長考が増えた。今あるデータからどうすべきか、それを直ぐに判断せず、考えながら手を打ってる。

 

 リアルではそれが出来ない。時間経過で回復やダメージが発生してしまう。だがこの原作セットなら再現したデータで長考しつつリアル対戦の数倍、十数倍の対戦数をコンパクトに重ねることが出来るのだ。

 

 本物の対戦のが面白く、優れてるのはそうだ。

 

 だがそれが出来ないなら代替物を用意すればいい。

 

 駆間は大事なひらめきをくれた。

 

「へいへいへーい、未発見モンスター採用してるとはいえ、そっちにも理想データ提供してるんだぜ、もうちょっと頑張ってくれよー」

 

「……」

 

 仮面マンは詰んだ盤面を眺めながら全てを脳に刻むように熱心に記録していた。軽く煽ってるが、それが聞こえないレベルで集中力が高まっている。さっきからあんこやきなこが頭の上や肩に乗ってるのさえ気づいていない。

 

 それを見かねた東吾が交代してくる。

 

「情けない国木田だな……どれ、俺が尊に土を付けるか」

 

「……」

 

「反応なし……マジか」

 

「お、次の敗北者のエントリーか……かもーん、好きにデータを組みなよ。こっちも調整するから」

 

「まあ、見てろ。プロの本当の実力というものを教えてやるからな」

 

 仮面マンが無言のまま席から外される。席から動かされてるのに未だにフリーズしたまま長考してる。その代わりに東吾が席についた。事前に見ながらデータを組んできたらしく、やる気満々の表情。

 

 じゃ、泣かすか。

 

 1時間後。

 

 東吾がテーブルの前でフリーズしてた。

 

「はい、詰み。童話仙獣のロック性能はどうだったかな? 出てくることは無いだろうけどいい経験になったでしょ」

 

「……!」

 

 盤面を睨んで、どう足搔いても詰みなのを理解し、東吾が崩れ落ちた。仮面マンと続いてトッププロが2人、完封されたのを何時のまにか集まってたフルチームが囲むように見てた。

 

 そこに最後の1人、酒クズがやってきた。

 

「所詮は凡人2人……予知能力のある私からすれば長考込みは必ず勝てる勝負よ!! さあ、私が雑魚2人の仇を取るわ!」

 

「そのビッグマウス、後悔するなよ」

 

 ちょっと恨みあるし本気で潰すか……。

 

 席に座ってた東吾が外され、代わりに酒クズが着席した。慣れた手付きでデータを纒め始める。ははーん、もう未来のピーピングを始めてるな? だったらこっちもそれに対応した構築を用意しよう。

 

 一瞬で酒クズが固まった。

 

「ふふーん、ふんふんふふーん……」

 

「え、なにこれ? ちょ、タンマっ」

 

 酒クズの視線が辺りを巡る。たぶんだけど死ぬほど可能性が出現している為、どれが勝率の高い未来なのか見極められなくなっているのだろう。構築のデータを完成させて、書いた紙を裏返す。

 

「さ、やっつけてくれるんだろう? 早くやろうぜ。役に立てばいいな、その予知」

 

 無数の可能性を前に酒クズは視線をこちらへ、引きつった笑みと共に向けてきた。

 

「……私、初めてアンタが恐ろしいって感じたわ」

 

 あっはっはっは。

 

 30分後。

 

 完敗して酒の抜けた酒クズが床に転がってた。酒を飲もうとして……その手の動きを止めて、思案するように表情を変えると今度は頭を抱え、それからまた酒に手を出そうとしてまた止める。

 

 勝敗分析に脳味噌使いたいけどアルコールも摂取したいという気持ちで戦い続けているらしい。

 

「いえーい、うぃーん、みこーとー。ぱーふぇっく」

 

 日本代表が全滅したところでガッツポーズを取る。周りから見てた大人たちがパチパチと拍手を送ってくれる。あ、情けない大人たちの写真取ってくれたの? ありがとー!

 

「酒クズは形式的にタイムラインから可能性の高いものをピックアップして見る方式だと解ってたから、キルルートを絞らずにマルチルートでリーサルに持ち込める構築を用意すれば絶対に読みきれずにパンクすると思ったんだよね」

 

「コイツ的確にメタってくるぅ!!!」

 

 床に転がりながら喚くカスを見てると気分が良いなぁ。

 

「そもそも今の環境がリーサルパターン少なすぎてメタりやすいんだよね。最低で2か3ルートはないと簡単に止められるからもうちょいルート開拓した方がいいよ」

 

 しないからこうなる。

 

「今のメタゲームは起点となるスキルを潰せるか否かで結論が出るから正直そこまで面白くないんだよね。コアスキル1個潰せばそれで止まるんじゃあね」

 

 そういう意味ではまだまだなんだよね、日本も。唯一その形から外れてきてるのが仮面マンぐらいか。根本的なパワーが違うからそこはしょうがないんだけど。

 

 特に東吾とかやりたい事が見え見えだから改善しないと将来追いついた時にカモっちゃうぞー?

 

「ま、実際対戦するときはこうもいかないだろうけど……経験、思考速度、息の合わせ、反応、相性、絆……このゲームにはたくさん抜けてるものがある」

 

 それら全てを考慮したゲームを作るのは流石にデジタルにしないと難しい。個人制作ではこれが限界だ。

 

 だが。

 

「その全てを排除して残った純粋なデータと読みの殴り合い。これはバトルの根幹となる部分だ。この殴り合い……ここだけの殴り合いなら……」

 

 大人共をテーブルの反対側から眺める。

 

「俺が最強だ」

 

「悔しいが、ここまでコテンパンにされると文句も言えないな……」

 

 いえーい、と両手を上げて喜びを露わにしてからさて、とゲームボードをたんたんと指で叩く。

 

「もう既に何度も叩きのめしたから大体警戒すべき所は解って来たよね? 使って来るかどうか怪しいモンスターまで組み込んだけど、経験しておいて損はない。こっそり用意しておいた……なんてパターンはあり得るし、俺みたいな奴が裏にいないとも限らない」

 

 だから。

 

「徹底的に、回数を回して。頭に叩き込む」

 

 動かし方を、警戒する場所を、コンボの流れを。把握すればするだけそれに自然と対処できるようになる。

 

「それに知識を技術に変えて実践する方はそっちのが俺よりも得意だろ? なぁに、直ぐ慣れるよ」

 

 原作再現されたクソゲーに。

 

 勿論、そんなもん中国が出してくる訳がないと理解しながら俺は無言で《ドラゴンズバレー》入り仙獣を組み始めた―――。

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