最強以外ありえない   作:てんぞー

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それでは交流戦の成功を祝い……Fuck!!!

 多くのTCGやモンスター対戦ゲームで言える事だが、強いプレイヤーは相手に択を強制させる。

 

 対処させられる側に回った時、状況は追い込まれているのだ。つまり相手に対応を強いる事こそがPvPにおいて有利を取る手段である。マスター仮面とGMブライアンの戦いはそういうものであり、初見故に対応しきれなかったGMブライアンが敗北するのは必然だったのかもしれない。

 

 最終盤面、物理魔法両面に反応するカウンター+食いしばりの流れが完成された時、ゲームの仕様で物事を語るならアレは詰みの盤面だった。

 

 ゲームの仕様ではカウンターはダメージの条件が満たされる度に発動した。つまり回避か、ダメージの判定が発生した瞬間に発生するものだった。だからあの状況、物理でも魔法でも、GMブライアンがどちらを選んでもマスター仮面は勝てる流れだった。

 

 ―――無論、これがリアル対戦化されると話は変わって来る。

 

 たとえばサンダーバードの雷光化は3回行動と表現されているが、その実情は超高速化による行動の増加だ。単純に早いから人よりも多く動ける。それはつまり反応速度を超えて動けるという事でもある。カウンターは反応できなければ意味がない。

 

 あの状況、もしサンダーバードがもう少しだけ早ければ……そのままあんこ達は反応すら出来ずに負けてたかもしれない。

 

 或いは、あんことマスター仮面の反応速度が届かなかったら、カウンターは不成立だった。

 

 状況を語るならあの場面はGMブライアンは攻撃せずに回避か時間稼ぎを優先するべきだったのだが、それが解るのは戦闘が終わってからだ。あの状況、あんこだけを残して攻撃しなければならない……そうGMブライアンに思わせた時点でマスター仮面の勝ちだったのだ。

 

 マスタースキルが馬鹿性能だったせいで受けが機能しきれず半壊しながらハイスピードゲーム化してしまったが、勝ちは勝ちだ。マスター仮面は世界最強を破った。それにより日本の優勝が確定した。そうやって全ての試合が終われば待っているものは―――。

 

「―――それでは交流戦の成功を祝い……Fuck!!!」

 

「Fuck!!」

 

 祝賀会というか打ち上げというか交流パーティーである。

 

 主催である大統領のfuck宣言で始まった。当然参加者も訓練されたfuck共なので全員fuckで返答する。開幕から頭おかしくなるわこんなん。これが世界の警察の姿か? 大統領がこれで本当に良いのか? 良いらしい。だってこれで既に2期目だもんね。国民が選んだ指導者の姿か? これが?

 

 怖ぁ。

 

 そんな俺もスーツ姿に着替えて会場の端っこに久遠と一緒に避難している。会場内には交流戦に参加した様々なマスターや関係者が集まっており、そこらで交流が行われている。こういう時、上品に会話が出来るのを見ていると上流階級出身なんだなぁ、と思えてしまう。

 

 なお酒クズは到着早々、プールの方へと向かっていった。

 

 最後に聞こえたのはプールをウィスキーで満たす指示と、その中へと飛び込んで行く彼女の姿だった。それ以来彼女を目撃していない。まあ、これは別に良いのだ。あの酒クズの事はどうでも。いや、流石に死んでたら気分が悪いけど死んでるイメージが欠片も湧いてこないし。

 

 問題なのはこの交流会、こっちにちらちらと視線を向けて来る連中と様子を伺う様な気配が死ぬほどある事だ。これ、欠席出来ないかと思ったが、なんかアメリカさんの凄いラブコールが原因で欠席出来ないみたいなんだよね。

 

 そういう訳で精一杯着飾った上で視線から逃げるように会場の壁のシミになる事を目指していた。

 

 壁に寄りかかってなるべく気配を殺していると、久遠が手を握って来る。それが唯一の心の支えだった。

 

「しかし露骨に貴様へと向けられる視線や気配が多いな」

 

「まあ、今回結構派手に暴れ回ったからね。注目は集めてる自信あるよ。それでも直ぐに飛びついてこないのは……口実探しと、印象を悪くしたくないから、かな。明らかに俺が嫌そうな顔をしてるのも近づいてこない理由かも」

 

「機を読んでいる、という事か。大変だな貴様も」

 

 そう言いながら付き合ってくれる久遠は本日はパーティー向けのドレス姿だった。珍しく髪もアップに纏めた淑女スタイルは、普段はあまり見せない気品溢れる姿で実に眼福であった。もうこの交流会はずっとこの姿を見ていたいなぁ……とか思っていると見覚えのある姿がやって来た。

 

「ミコト、お疲れ様です」

 

「アーサー」

 

 あ、身内だ。

 

 同じようにパーティー用の服装に身を包んだアーサーが近づいて来たので、迷わずハイタッチを決める。他の有象無象はともかく、アーサーisマイフレンド。一緒にボケカス女神と相対した戦友に遠慮なんて物はない。ついでにここで俺を隠す遮蔽物になっててほしい。

 

「楽しい時間でしたね」

 

「自分でバトルできない事だけがずっと不満だったよ。早く日本に帰って協会の連中相手にバチバチやりたいよ」

 

「はは、やっぱりそうなりますか。と、そうでした。本当はもっと早く紹介するつもりだったんですけど……ほら、ヴィ」

 

「あぁ、もう、兄貴……」

 

 アーサーに引っ張られて金髪の少女が姿を見せた。年齢は……俺や久遠よりも少し上、というぐらいだろうか? 顔立ちがどことなくアーサーに似ている事から兄妹なのが解る。ただ真面目なアーサーと比べて、こっちの方はそこまで真面目ではないらしい。

 

 パーティー会場だというのにドレス姿ではなく普段着らしいストリートファッションだし、帽子なんか被って自分らしさを追求している。そのロックな精神は大いにアリだと思う。

 

 アーサーに引っ張り出されると溜息を吐いて、此方へと向き合い、それから此方の手を素早く握って放した。

 

「ギネヴィア……兄貴の妹だよ。あぁ、言いたい事は解る。父さんと母さんが熱狂的なアーサー王伝説のファンなの。だからギネヴィア。妹にだよ? 頭おかしいんだよあの2人」

 

「ちなみに家で飼ってるインコの名前がランスロットです」

 

「個性的な……ネーミングセンスだね?」

 

「非常識だって言って良いよ。だからヴィ、って呼んで。ギネヴィアって呼ばれるのあんま好きじゃないから。隣、失礼するよ」

 

 はあ、と溜息を吐くとずんずん久遠の横に進み、くるっと回って背中を壁に預けた。これで壁シミ同盟が3人になった。

 

 3人で壁に並んでいるとなんか心強く思えて来る。不思議と3人そろって表情が自信ありげになって来る。アーサーが馴染みましたね……とか感慨深げに呟くとこっちを見た。

 

「それでは私は挨拶周りに戻ります。ヴィ、2人に迷惑をかけちゃ駄目ですよ」

 

「かけないっつーの。ほら、行った行った」

 

 しっしっとアーサーが追い払われ、去って行く。その姿を見てヴィが全くもう、とは言ってるがどことなくその眼には信頼が見える。それなりに仲の良い兄妹の様だ。どう話しかけたもんかなぁ、と思っていると薄い布を纏った褐色の女が此方にやって来た。

 

「見つけたぞ、坊」

 

「女帝様じゃん」

 

 イタリア代表のとこの女帝様だった。露出が多いわ、纏ってる布が薄いわで目のやり場に困る姿をしているが、それを一切恥じる事無く堂々としている姿には君臨者としての覇気とも、威厳とも呼べるものが感じられる。

 

「坊、良くやった。あの不快な人形使いを滅ぼしたという話であったな? 妾が手ずから褒めてやろう。良くやったぞ」

 

 滅茶苦茶機嫌が良さそうに近づいて来た女帝が俺の頭をぽんぽんと撫でて来る。そういえば貴女、国をパペッターに滅ぼされてましたね。

 

「何でもあの人形使い、ロクな反撃すら出来ずに一方的に嬲り殺されたという話ではないか! うむ、うむ、素晴らしい事実だ。実に大義である。坊には何か褒美をくれてやらんとならないな……」

 

 女帝は考え込む様に腕を組むと、そうだ、と声を零した。

 

「今宵、妾の閨に来ると良い。極上の快楽を味わわせてやろう」

 

「その必要はない。ミコトには私がいるからな」

 

 ぎゅ、と横から久遠が腕を絡めて俺の身を引くと女帝は機嫌が良さそうに頷いた。

 

「うむうむ、可愛らしい番もいたのなら良し―――纏めて閨に来ると良い、抱いてやろう」

 

「エグ、Go」

 

 ヴィの指示を受けて一瞬で女帝の背後に出現したエグゼリアが手刀で女帝の心臓を貫くと、そのまま死体を担いで去って行く。心なしか、エグゼリアの行動に一切容赦がないように感じられた。死体になった女帝が引き取られて行くのを眺めていると、ヴィが補足してくる。

 

「エグ、昔は死ぬほどあの褐色おばさんと敵対してたんだって。テレビで見る度に眉間にしわを寄せてるんだよね」

 

「まあ……見ていて死ぬほど相性が悪そうなのは解る」

 

「うむ……アレはなんであれ、世界が自分中心に回っていると思っている人物だ。死しても一切治る事がない程の自己中心的な価値観。あの騎士殿とは相性が悪いだろうな」

 

 終末のさなか世界征服に乗り出したヤバイ女だからな。そりゃそうだ。

 

 女帝が此方に突撃してきたのを見て、頃合いなのかと判断して数人、此方へと向かってくるのが見える。このまま壁のシミになっていたかったが、どうやらそうはならないらしい。

 

 交流戦が終わって始まったアフタータイム。

 

 どうやら平和に終わってくれそうにはなかった。

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