最強以外ありえない   作:てんぞー

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邪神パペッターLV150 が あらわれた!

 まあ、これだけだと伝わらない部分もあるので、改めて説明する。

 

 白紙の物語、邪神、ラスボス。どうしてこんなめんどくさいイベントをする必要があるのか、他人で代替する事が出来ないのか、とか。それを改めて説明してから白紙の物語を一旦手渡して、直ぐに俺の手の中にワープして戻ってくるのを実演する。

 

「実の所、話には聞いていた」

 

 全ての話を聞き終えた所でブライアンが答えた。

 

「イギリス政府と日本政府が連名で訴えた危機だ。だがこれをSランクの最大級のボスモンスターによる脅威だとアメリカは見なした……つまりそこまでまともに受け入れられなかったという事だ。理由は色々とあるが、根本的にイギリスと日本が舐められている所に原因がある」

 

「交流戦以前は日本そのものはそこまで突き抜けて強い訳じゃなかったからね」

 

「ま、それも仕方がない事か」

 

「今、Mr.カラスバの話を聞いていてこれが真実だというのは伝わって来る……その本は、俺達の理解を超える力が働いてるという事がな」

 

 ブライアンの視線が白紙の物語へと向けられる。実の所、館長もコイツの来歴は良く解かっていないらしい。となるとやはり、時間の歪みか未来が生み出した産物なんだろう。そこら辺の詳しい考察はまた今度、今はドリームチーム結成の方が重要だ。

 

「という訳でモンスターお借りします」

 

「良いぞ」

 

「構わない」

 

「歌唱構築の話をしてくれ」

 

 もうBot化してねぇかこのGM? 語り合える相手がいないから飢えてるのは解らなくもないけど。とりあえずマスター側から許可を貰えたから3人に関してはオッケーという事で。女帝? さっきからやる気満々で滅茶苦茶Aura Farmingしてる。

 

 Aura Farmingだ。

 

 海外でカッコいいオーラ出してるキャラの事をAura Farmingと言うらしい。女帝はなんかずっとAura Farmingしてる。ちょっと話しかけるの怖いなぁ、ってレベルなのにこっちの視線に気づくと凄いニコニコしてる。

 

 怖いよぉ。

 

 解るけどさぁ。

 

 じゃあ許可はもらえたという所で手元に羽ペンが出現し、目の前で浮かぶ白紙の物語が開かれる。空欄が4か所、そしてシェイナの名前。

 

 そこを埋める。

 

 あんこ。

 

 ラファエラ。

 

 リ・ロウ。

 

 クイーンバンシー。

 

「お、文字が動いた」

 

「勝手にページが変わったな。数字?」

 

「数値化されたステータスとこれは習得しているスキルか? 書き込んだだけで情報を読んでいるのか……一体どういう構造しているんだこの本は?」

 

「おっさん達暑苦しいんだけど!!!!」

 

 白紙の物語に書き込む姿を後ろからおじさんSが覗き込んでくる。鬱陶しいと思いながらあんこから手を付ける。元のあんこってゼリィ統一用に調整されているから種族混合型のパーティーに混ぜると機能しなくなるんだよねぇ。

 

「さて、未来のグランドマスターがそれを解らないとは言わせないぞ? 君がどういう風にウチの可愛い子を使うのか見せて貰おうか」

 

 保護者が後ろから興味津々に覗き込んでくる。ちょっとやり辛いなぁ、と思いつつあんこの調整は簡単なので一部スキルを入れ替えて終了する。流石トップ、あんこのステータス配分ってほぼ完成されてて調整する必要がないんだよねぇ。

 

 はい、お次はラファエラ。ここはスキルだけ変えて飛ばす。

 

「解ってたけど寂しいな……」

 

「私は調整済みの状態ですからね……」

 

 最適化された状態で維持されてるお前とエグゼリアが今一番のチートだよ。大半の人間が専用スキル持ってない状態で全部揃ってる状態なんだから単純なパワーが違うんだから。

 

 そんで次は女帝様かぁ。

 

「良い、妾が許す。妾の身をその才覚を持って磨き上げよ」

 

 自身満々の女帝リ・ロウ―――スキル構築を眺めてみると幅が広く統一感がないように思えるが、ステータスの方がカリッカリにチューンされている。速度の数字とかを見ると何を意識しているのか割と見えて来るだけにこれはアメリカ想定で調整されてたんだなぁ……ってのが見えちゃう。

 

「スキルが取っ散らかって見えるのはある程度生身で再現できるから搭載する必要がないのか。やば」

 

「マルコ氏とリ・ロウのタッグは日常部分では相性最悪だが戦闘においては恐ろしいぐらい息を合わせるからな」

 

「アレは救いようがない程愚かだが、その指揮能力だけは認めている。可能なら別居したいがな。可能なら別居したいがな」

 

「そこまで」

 

「2回も言うんだ」

 

 まあ……元GMマルコの名誉の為に本人の話はこれ以上止めておこう。えーと、女帝の継承と合体ルートってこんな感じだったから専用スキルはこうやって作成して……そうそう、これを入れ替えて、ここをこっちに揃えて、シナジー重視にして……良し、調整はこんなもんかな。

 

「ほう、そんなスキルがあるのか。面白い」

 

「そういう調整するのか……いや、待て、あっちとコンボを決める為か」

 

「成程なぁ、やっぱこういう組み合わせや考え方は抜きんでてるな尊は」

 

 死ぬほどやり辛いんだけどこの環境? ナニコレ? 授業参観日か何か? スマホで撮影するなするな。

 

 クイーンバンシーの調整始めようとすると滅茶苦茶ウキウキのグランドマスターがいた。

 

「Mr.カラスバ!」

 

「俺、ここまで凄い笑顔のグランドマスターを見た事がないぞ」

 

「奇遇だな。私もだ」

 

 外野を無視してクイーンバンシーの調整に入る。とりあえずまずは《銀河の歌姫》から……アレ? 消えた? 許可されない? なんで? 《コズミック☆アイドル》は? これも駄目? は? なんで? 必須パーツじゃん! どっちか取らせろよ!!

 

「は? 合体経験経由の取得だから無理? 無理じゃねぇだろ!! 誕生の経緯が地球到着後だから無理? 白紙さんのちょっと凄い所見て見たいな! 見てみたいな! 見せろ! 通させろ! 無茶無理じゃない! 行ける行ける! クイーンバンシーの過去の経歴自体改変しちまえ」

 

「勝手に人の経歴改変しないでくれますか……?」

 

 無理って白紙の書にNG貰っちゃった。そんなぁ。悲しい。グランドマスターもとても悲しそう。仕方がない、《スーパースター》で妥協するか。《終律》も入れて《フィナーレっ!》は対人向けだから今回は抜くか。メインタンク抜きだから対ボス想定で耐久系盛って……こんなもんか。

 

 ちょこーっと経歴の解釈の余地ありなんじゃない? と交渉すると悩んだ末に可能と出たのでそれで継承ルートを捏造してスキルの習得が出来たのは助かる。歌唱系列のスキルは種族で覚えられるものがはっきりと決まってるからな……。

 

 様々な種族を転々として習得させたうえで複数の歌唱スキルを統合、合体させる事で歌を完成させて行くから一番レシピがキメラしててめんどくさいんだよ。経由出来ない種族が増えれば増えるだけ弱くなるし。まあ、最終的にはWIKIのレシピコピーするだけで良いんだけどね。

 

 たぶん誰も最初は有翼種→マーメイドが鉄板だとは思わないだろうな。種族の変化が違いすぎるもん。

 

 クイーンバンシーの調整が終わったら最後にシェイナのスキル調整を行っておしまい! これで戦闘準備は完了した。絡みついて来るおっさん共を押しのけて距離を作り、シェイナを手招きする。未だにフラメアとイーリュに抱き着かれているシェイナは滅茶苦茶動き辛そうにしているが、2人を引きずりながらやってくる。

 

「マスター……その、本当に可能なのですか? 過去を変える事など」

 

「どうだろうね。元々小さな変化ぐらいなら成せる本だったけど……なんかパワーアップしてるみたいだし、可能なんじゃないか? どちらにしろ、挑戦しない限り何も変わらないと思うけど」

 

「……」

 

 シェイナは少し悩む様な表情を浮かべてから、それから覚悟を決めた。

 

「いえ、あの日を覆す事が出来るなら……なんだってします。いずれ世界が滅ぶ定めにあろうとも、それが悲劇を許容する理由にはなりません」

 

 心の強いお姫様だ。尊厳を守る為に自国の民を殺して回る精神性も。悩みはしたが、最終的に向き合う覚悟を作る事が出来る……凡人には決して出来る選択ではないだろう。そして本来であればこのような覚悟、人には不要だ。

 

 こういう事を強制する邪神どもが全部悪い。

 

 アイツらマジで死ぬべき。

 

 さて、皆の準備は良いか? あんこ、ラファエラ、女帝、クイーンバンシー、全員準備オッケーとのサインが出て来る。誰もが邪神を殺せるというのなら何だってやるという殺意で満ちている。グッド殺意。邪神コロスンジャーズの出陣だ。

 

「さあ、後悔を乗り越える戦いを始めようか」

 

 白紙の物語を掲げると本から何枚ものページが溢れだし、空間が光に飲まれて行く。世界の時が逆行し、過去の潮流が全てを飲み込んで行く。

 

 ざざぁん、ざざぁんと淀みに落ちた時が波の様に舞い戻って来る。

 

 かつて忘れ去られた悲劇が、再び再演される。

 

 その時、シェイナはかつて、姫として存在していた恰好で王都の大通りを歩いていた。

 

「おはようございます、今日もお散歩ですか? あまり王を心配させてはなりませんよ」

 

 口うるさい騎士がシェイナに忠告する。

 

「今日はオーク肉が安いよ!」

 

 肉屋が新鮮な肉を並べ、客を呼び込む。それは悲劇の前日の出来事。時計の針は1日だけ、悲劇の前まで時を巻き戻した。まるで舞台に上がった演者になったようにシェイナの体が自動的に動き、そして大通りに立つ2人の姿を見つけた。

 

「おぉ、ではここが次なる舞台ですか」

 

「あぁ、ここなら他所からの干渉もされ辛く、救援も来ない。実験場にするには最適だ。より多くの怨を集める必要がある。それが素材を良くしてくれる」

 

「成程、お任せあれ! 確かに隔離されたこの地域であれば見事な舞台を描けるでしょう! 1時間ほど時間をくだされ、吾輩が脚本を書きあげて見せましょう」

 

 大通り、まるで誰もその2人を認知できなかった。ローブで全身を覆った姿の見えない不審者、そして着飾った中年の劇作家。どこまでも不吉な気配を隠しもしない存在はまさしく濃密な死を想起させる破綻者たちであった。

 

 本来ならば誰もその存在には気づけない。気づく事なく糸は張り巡らせ、絶望と破滅のみが土地を枯らす。

 

 だがシェイナは見た。

 

 目視した。

 

 その瞬間、過去と未来が重なった。

 

 シェイナの動きが定められた運命から外れる。自由に動けるようになったシェイナは真っ先に隣にいた騎士から剣を抜き取り、それを振りかぶった。

 

「ッッ!」

 

 投擲―――。

 

「なんと」

 

「ほう」

 

 誰からも認知、察知されない筈の邪神へと迷わずシェイナが剣を投擲した。剣は風を切り裂きながら一瞬で黒ローブに到達し、しかし虚空で弾かれた。意味のない攻撃で消費された剣が道路に転がる。王女の凶行に驚きの表情を浮かべる民達は一瞬驚きの表情を浮かべ、その直後に動きを凍らせる。

 

 その誰もが一瞬で糸によって絡めとられ、掌握された。

 

「驚きましたなぁ! この方、吾輩を認知していますぞ!」

 

「この程度の有象無象が我々の次元の存在を認知出来ない筈だが……いや、何らかの干渉が起きているな? より上位の存在によるサポートを受けている……? お前は一体何の寵愛を受けている? この時代で加護を与える様な神々はもう存在しない筈だが……?」

 

 突然のシェイナの動きに邪神たちが面白い者を見つけたと興味の視線をシェイナへと向ける。2人に浮かぶ余裕は当然、シェイナごときでは己の優位が覆る事はないという絶対的な自信と事実から来ている。歴史通りに物事が運べば、シェイナごときではたった数人逃がすだけで限界だっただろう。

 

 そう。

 

 本来の流れはそうだった。

 

 僅かに与えられた猶予。その中でシェイナは僅か数名、未来へと希望をつなぐ事の出来る人たちを逃がす事になる。それでこの物語は結末を迎える。その筈だった。邪神相手に立ち向かう事は不可能だ。これは生命という部類から大きく逸脱している。

 

 概念存在に近い。邪神という在り方、概念に存在そのものが支配されている。

 

 存在そのものが邪悪であり、概念として神を冠している限り、絶対的な上位者としてあり続ける。

 

「ですが、貴方は無敵ではありません。その証明は既に遥か遠くの未来で為されています」

 

 静かに語ったシェイナの決意に、漸くスポットライトが此方に回って来る。

 

 シェイナの背後、悲劇の舞台に白紙の物語を片手に、もう片手に羽ペンを携えながら登場する。邪神たちの視線が此方へと向けられる。

 

「おやおやおや、これは実に奇妙な! 貴方、存在する時間軸が違いますね! まさかのタイムトラベラー! おぉ、素晴らしい! そしてヤバイ! 此度の舞台、私はどうやらお呼びではないようですね!」

 

 此方を目視した瞬間劇作家ゴーストライターの存在が消え去る。自分の存在を崩壊させる事実を知る人間を感知したからだ。語らずとも、自分の致命傷を握る相手を察知する事が出来るのはゴーストライターの特性の1つだ。

 

 悲劇の舞台から劇作家が排除された。残されたローブ姿はその下から枯れ木の様な腕を伸ばした―――否、本当に枯れ木で作られた腕だ。当然本体ではない。この存在がそう簡単に姿を晒すことはない。何をするにしても人形を振るう以外ない。これはそういう奴だ。

 

「貴様、なんだ?」

 

「過去と未来では言葉遣いすら違うか。現代の文化に影響されたキャラチェンしたって訳か」

 

「マスター、相手は邪神です。気を付けてください」

 

「大丈夫、大丈夫。リーサルは見えてる」

 

 答えない。邪神の言葉に応えず羽ペンを振るう。光の柱が天から降りそそぎ、時空に干渉が施され可能性が拡大される。この場にいたかもしれない。或いは駆けつける可能性があった。その可能性が拡大され、戦場にモンスター達が呼び出される。

 

「……!」

 

 ぴょんぴょんと跳ねるあんこは悪を許さない。現代の生活を通してマスター仮面と暮らして来たあんこは現代の生活を気に入っている。偶にあるファンフェスで子供たちにもみくちゃにされるのも結構気に入っている。だからこそ悲劇を生み出す者を絶対に許せない。人々の営みは尊く、守られるべきものだと解っている。

 

「貴方の存在は許されていません。それは過去であろうと未来であろうと変わりません……ここで貴方を滅ぼします」

 

 天の住人だからこそラファエラは誰よりも邪神の被害を知っている。多くの命を癒してきたからこそ邪神の齎す破滅がどれだけの悲劇を強要しているのかが解る。純粋に悲しみしか生み出さない存在が世界に祝福される事はない。

 

「漸く逢えたな。妾はこの時をずっと待っていた。東京で貴様が死んだ時は少し不満であったが……それもこれまでだ。今度は妾が貴様に引導をくれてやろう」

 

 多くの悲劇を生み出してきたという点において女帝リ・ロウは邪神と変わらない。彼女は侵略者として、覇者として君臨する事で蹂躙、制圧を繰り返してきた。だがそこには常に征服者としての誇りがあった。終末であり乱世でもあったが……最後まで、その責任の中で戦い死んだ。彼女にとって人形師との戦いは彼女の国を看取るものでもある。

 

「実の所、私は他の人程貴方に因縁がある訳じゃないけど……世界に住まう一般人の代表として、貴方の存在を許容できないわ。私達の生活に入ってこないで」

 

 最も多く存在する犠牲者。蹂躙する事だけが役割として与えられた者達。劇や映画、物語からすれば彼女達の存在は数字でしか語られない。1万人死んだとして、その中にいる1人1人の名前は語られる事もないだろうし、記憶される事もないだろう。だからこそ誰よりも、悲劇を憎む。

 

「どうやってこの時空に干渉した? 何故干渉してくる? 本当に未来を変えられると思っているのか? 時と空間を超えようとも、可能性は分岐するばかりだ。貴様が過去を変えた所でそれが必ず同じ未来に繋がるとは限らない」

 

「だがやらないよりは気持ち良く眠れるだろ」

 

「貴様の顔面を殴れるならそれだけでやる価値はある」

 

「お前は生きていてはならない生き物だ」

 

「黙りなさい邪神」

 

「……! ……!」

 

「邪神と名乗る生き物は出会った瞬間必ず殺すと決めているのだ」

 

 殺意高いなぁ、とかいう外野の声がしてくる。舞台に上がれていない観客たちのヤジが聞こえてくる。どうやら外からこの戦いはちゃんと見えているらしい。良かった。これで連中にちゃんと最終環境での戦い方というものを見せてあげられる。

 

「ま、そういう事だパペッター。時間とかパラレルとかそういう細かい理屈はさ、正直どうでも良いんだ。考えるのは暇なときにでもやるし。でもさ、悲劇の元凶がいて、そいつを殴り飛ばせたらすっきりするだろ? お前を今からぶっ飛ばすのに必要な理由ってそれぐらいじゃダメか?」

 

「……愚かな事だ。勝てると思い上がったのか? その寄せ集め……それも劣化した概念体で勝とうとはな」

 

 空気が震える。

 

 張り巡らされた糸に力が乗る。過去という時間の檻が逃げ場を封じる。決着をつけるまで邪神にも、俺達にも逃げ場等存在しない。出来る事は抗う事のみ。決着はどちらかの死によってのみ得られる。大いなる邪の力を解き放ち、運命を愚弄する糸使いが構えた。

 

「良いだろう。貴様らも面白い素体になりそうだ……時を超える勇者たちの遺骸、新しい人形の構想になりそうだ……!」

 

 邪神パペッターLV150 が あらわれた!

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