邪神、未だに全貌見えず―――。
張り巡らされた糸、邪気、そしてその存在感は東京の時の比ではない。自分を殺せる相手が存在する時代だからこそ慢心は消え失せ、技も冴える。東京の時のパペッターは天敵を失った事で鈍っていた。だが今、それがここにはない。
ゲームで本来、発揮されるべきスペックが全て発揮される。
《マリオネットワールド》! 張り巡らされた糸が相手を《掌握》する!
リ・ロウが瓦礫を蹴り飛ばす!
疑似キャンセラー! 瓦礫で糸を相殺した!
リ・ロウの追撃!
Over Critical! 小ダメージ!
英雄人形が聖剣を構えた!「俺を殺……せ……!」
魔王人形が魔剣を構えた!「スま……ナ……い……」
《聖剣技》! 全体にダメージ!
《魔剣技》! 全体にダメージ!
シェイナは死亡した!
《リザレクション》! シェイナは蘇生した!
インスタンスヒールによる回復効果が処理される!
ラファエラより再行動が付与された! あんこは《分裂》した!
《月神の舞》でHPコストは踏み倒された!
ありなんだそれ……みたいな声が一斉に過去の外側から響いてきたのが聞こえる……。最大HPの低下は処理上コスト扱いなのでコスト無視の効果があるとHP消費せずに発動させられるからデメリット踏み倒せるんですよ。
問題はそこまでやる必要は別にないって事かな……。
ぶっちゃけ火力のインフレの都合上、ここまでHPコスト踏み倒さなくても死ぬ時はHP10倍ぐらいのダメージで消し飛ぶからな。半減するかしないかなんて誤差だよ、誤差。最終的にカット貫通か耐性貫通詰んでばかすかぶち込むゲームになるんだから。
もしくは持続ダメージ起爆で10割蒸発。どっちにしろ半減してるしてないとかあんま関係ないよ、対人環境だと。PvE環境? 結構大事です。
「かもーん、パペッターくぅーん。お前の暴力を見せてくれよー。じゃないと倒しちゃーうぞー」
《バトンタッチ》! 女帝が行動をシェイナに譲った!
《絶・乱撃》! 1~8回のランダム連続攻撃が放たれる!
《守護命令》! 魔王人形に庇わせる!
Hit! 女帝が追撃する! Over Critical!
Hit! 女帝が追撃する! Over Critical!
Hit! 女帝が追撃する! Over Critical!
Hit! 女帝が追撃する! Over Critical!
魔王人形は壊れた!「油断……する……Na」
《守護命令》! 英雄人形に庇わせる!
Hit! 女帝が追撃する! Over Critical!
Hit! 女帝が追撃する! Over Critical!
Hit! 女帝が追撃する! Over Critical!
Hit! 女帝が追撃する! Over Critical! Full Combo!
英雄人形は壊れた!「まだ……だ……警戒……を……」
《修復》! 魔王人形が蘇った!
《修復》! 英雄人形は蘇った!
《速攻指令》! 魔王人形と英雄人形が動く!
《聖剣技》と《魔剣技》が放たれる!
全体にダメージ! シェイナは倒れた!
パペッターは《ブレードワイヤー》を設置した!
「探られておるぞ坊」
「あぁ、思ってたより慎重だなこいつ……煽るのはあんま意味なさそうだな」
もっとスペック押し出した強気の動きをしてくると思ったが、パペッターの動きが此方を探るような部分がデカい。何ができるのか、何が出来ないのか、それを探りつつある。
嫌な動き方だ。ゲームのAIにはなかった動きだ。時代が違うから根本的な行動ルーチンが違うのを感じる。たぶん此方を敵として認知し始めてる。
舐めを感じない。冷静に対応幅を探ってる。手札に関してはストックされてる人形次第でどうとでもなるから、此方の対応を超える手段を探って対応しようと考えてるのかこれ?
東京の時の《掌握》一本とは全く違うなぁ。
これが終末メンタルか。
が。
「生温い」
《ブレードワイヤー》は攻撃反応の設置スキルだ。面倒だといえば面倒だが……対応できるかどうか見てるなら……その間に落とすだけだ。
「ターン処理を開始する」
バンシーちゃんバフ盛りスーパーライブ継続中!
最新映像は協会公式ストアまで!
リ・ロウは呼吸の合間を縫って先手を取った!
《陣地崩し》! 展開されている全てを破壊した!
《マリオネットワールド》が破壊された!
《ブレードワイヤー》が破壊された!
周辺家屋が破壊された!
被害総額が増えた!
あんこAは《分裂》した! えっほえっほ。増えなきゃ。
あんこBの《ユニゾンアタック:ミョルニル》!
神雷を纏いながら破滅の槌が振り下ろされる……!
Over Critical! 英雄人形は破壊された!
Over Critical! 魔王人形は破壊された!
Over Critical! パペッターに大ダメージ!
《リザレクション》! シェイナは立ち上がった!
回復処理により全体が回復した!
再行動があんこに付与される! いってらっしゃい!
あんこがドリルとなって突貫する! いってきます!
Over Critical! 絶大なダメージ!
操り糸が破壊された!
操り板が破壊された!
王国の一部が掌握から解放された!
天を貫くドリルとなったあんこの攻撃が空に浮かび上がる十字板を破壊した。ばらばらと崩れた木片が雨の様に降り注ぎ。あんこがぽよんぽよんと着地する。
両手に握るものを失ったパペッターの手が浮かんでいる。
「純粋に驚いたぞ……貴様らにここまでの力がある事に。異なる法則……もっとシステマチックに統率された力……まるで異世界を見ているような気分だ」
「……」
形態を1つ突破したというのに未だに焦る様子を見せない。まだ余裕も余力もある。まだまだ力を見せていないというのが解る。
「本気で来ますよ」
「来るなぁ」
空を見上げた。
見上げる災厄は空を割る。空間を両手が引き裂く。虚空からマネキンの様な能面が現れる。とうに心を失った体は鋼鉄で、胸元はポッカリと開いている。
「良いだろう」
上半身が異空より顕になり、新たに増える。4つの手が糸を紡ぐーーー地獄のような悪夢の物語を。
「汝を敵として認めよう」
パペッターはフェーズ3に移行した!
完全回復した!
耐性更新!
最大HPが大幅に増強された!
《ゼロリセット》! ゼロの波動が全てをリセットする!
《スーパースター》はそれを許さない!
《自己改造・序》!
物理耐性を獲得した!
ダメージカット50%(永続)を獲得した!
魔法戦カスタマイズ……完了。
魔力が1.5倍になった!
パペッターはコレクションから精鋭を繰り出した!
勇者人形が現れた!
聖女人形が現れた!
「僕達は生前の技量を残す為に意識や生体部品が多い」
「ですので私達は他よりも麻痺や毒が通ります」
「慈悲はいらない……躊躇するな!」
《人形工房》が展開される!
魔王人形は修復された!
英雄人形は修復された!
城下を覆い尽くす人形工房が展開された。パペッターのフェーズ3は大量の雑魚敵投入とネームド雑魚の追加で、物量がひたすらきつくなるフェーズだ。
ゲーム内では100体の汎用人形が1キャラのグループ扱いだったが……。
「ヤバいなこれ……」
展開された工房から雪崩の様に大量の人形が流れ込んできた。その凄まじい数と勢いは100や200では到底収まらない。改めて黄泉に引き込んで殺すというのはこいつの手札を封殺する最善手だったんだと思い知らされる。
人形の津波。
邪神の手駒のそれが襲いかかってくる瞬間、閃光が人形の波を消し飛ばした。100を超える人形が一瞬で消し飛び、空間に空白が生まれる。
生み出された間の中、屋上に剣を担いだ壮年の男が現れた。
「冒険者ギルド一同、緊急事態につき迎撃及び撃滅行動に入る! 私達は波を押し止める! 邪神の相手は任せた! 恐らく……私達では奴の相手にはならない!」
敬礼を送ると無限に供給される人形への戦闘へと飛び去った。
「名もなき勇者達に武運を祈る」
冒険者の登場に合わせてこの城下のあちらこちらで戦闘音が響き始める。正気に戻った、或いは解放された人達が抗い始めた。それにより人形共が此方に来れなくなる。
これで戦場に残されたのは魔王人形、英雄人形、勇者人形、聖女人形、そしてパペッターの5体。これで数でイーブンに並ばれた。
「おおおおおおおーーー!」
パペッターが空へと糸を伸ばした。成層圏を突き抜け、宇宙へと辿り着いたそれは惑星の周囲に漂うデブリに……かつて、竜王や神龍が戦ったことで砕け生まれた星の残骸を掴んだ。
引きずり降ろした。
凄まじい熱量を纏いながら破滅の凶星が落ちてくる。それは着弾すればこの城下だけてはなく、国そのものを土地から消し飛ばすだけの破壊力を備えている巨大な星だった。
「ダメージカットあるし、バリアも十分ある……俺達だけなら耐えられるけどそういう問題じゃないな」
「はい。お願いします……アレを……アレに! この国を壊させないでください!!」
シェイナの切実な叫びにパーティー全員が応える。空から落ちて来る星が地上に達する前に破壊しつつ、ボスのHPを削る。タスクは増えてしまったが、やる事は結局は変わらない。
パペッターを討滅し、物語を完結させる事。
落ちて来る星、パペッター、そして特別な人形たちを纏めてフレームに捉える様に、両手で長方形を作る。
「行くぞ……リーサルを取りに」
第3フェーズを開始する。