最強以外ありえない   作:てんぞー

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駆間は年末でも平常運転です

 年末が近づくと一面雪景色に染まって行く。

 

 牧場では雪かき……というより火炎放射による雪の除去が始まり、獣タイプのモンスターは雪の上ではしゃぎまわり始める。まあ、それも少しの間でしばらくすると見慣れて何時も通りのテンションに戻る。

 

 雪に染まるのは何も牧場の方だけじゃなくて、都市の方もそうだ。真っ白に染まる都市の姿は東京にいる頃は見られなかったが……ここ数年ではすっかりと見慣れた光景となってしまった。だいぶ冷え込んでくるから防寒具はしっかりしないとなぁ、という気持ちとサイズが合わなくなってきたから買い直さないとなぁ、という気持ちがある。

 

 ほんの数年なのに背丈はぐんぐん伸びるし、小6だった時と比べると凄い身長が伸びたものだ。中学2年生も終わりが見えてきて、中学3年生になれば立派なティーンズだ。少しずつ……少しずつ、成人に近づいて成長している。

 

 大人になる日は果たして来るのだろうか? そんな事を考えながら今日も久遠と一緒に通りを歩く。最近の駆間は結構ハッピークレイジーな感じで、歩いているだけでも色々と見れて楽しい。モンスター協会へと直接ミストで降りずに歩いて向かっているのはそういうものを楽しむ為だ。

 

「ミコト見ろ、またストリートファイトだ」

 

「アレ違法らしいけどまるで誰も気にしてないよね。あ、事故りそう。回避回避」

 

 駆間市では日常風景とも言える人vsモンスターやモンスターvsモンスターや人vs人の光景。そもそもモンスターが出歩いてる事さえ他の都市では異常風景なのだが、協会ではなくストリートでファイトする事までここでは目撃される。

 

 何度も言うがこんな事東京でやれば即座に警察が鎮圧部隊組んでやって来る。

 

 とか言っている間に案の定始まってしまった。

 

「俺は《暗黒樹海》を発動!! フィールドを暗黒の闇で覆いつくす!!」

 

 馬鹿が街中で《暗黒樹海》を発動させ、木々を大量に発生させた結果道路や近くの壁やビルを破壊し始める。その結果、闇に突っ込んだトラックがクラクション鳴らしながらマスターとモンスターを弾き飛ばして戦闘を終了させた。

 

 樹海の闇の中では運転手も何も見えないからね。仕方がないね。

 

 そのままキルストリーク稼ぐことに決めたのかトラックはドリフトしながらそのまま別のストリートファイトに突っ込み、2コンボ! 3コンボ! 4コンボ! と事故を起こして行く。コンボ数が増える度に歓声が上がり、最大記録行けー! という声が聞こえる。これそういうゲームでしたっけ。

 

「暴れ回ってるなぁ」

 

「年末だしな」

 

 年末になると暴れまわる駆間の生態、俺は未だに理解できない所がある。

 

 ともあれ、トラックから降りたドライバーが周りから称賛される中、俺達は新環境に突入して変わりつつある駆間の姿をお散歩デートしていた。

 

 最近は久遠も遠出が出来るようになり、色々と選択肢も増えて来たがなんだかんだで地元愛が強く、駆間で済ませてしまうところが多い。とはいえ、下手な観光地や遊園地よりも見所があるのが駆間だ。

 

 ほら、あそこを見てご覧。

 

「あ、心の折れた遠征者だ。可愛い」

 

「この時期は良く見かけるな。哀れな」

 

 反対側の通りを見ると泣きながら電柱にしがみつくマスターと必死にあやすモンスター、そしてそれを囲むようにカゴメカゴメをしている野生の煽リスト共がいた。

 

「なんだよここ……なんなんだよここぉ! まともじゃない!! お前らまともじゃねえよ!! 来るなぁ!! こっちに来るなぁーーー!!」

 

 泣きながら追い払おうとする遠征くんを野生の原始人がウホウホ笑いながら囲んで煽ってる。アレはたぶんひたすら馬鹿にされた後駆間の原液浴びせて心を折った奴だな。可愛いね。

 

「覚悟が無いものが来るとああなる……良い教訓になったな」

 

「来るのに覚悟が必要な土地もどうかと思うけどね」

 

 眺めていると野生の100レベモンスターがダンジョンから出てきて丁寧に駄目ですよ? 隣人には優しくしなくては……とか言いながらやんわりと煽ラーを叱った。

 

「ごめんなさい……」

 

「どうしても煽りたくて……」

 

「駆間を馬鹿にされるのはどうでもいいんだけど雑魚をイキらせたままにするのは絶対に嫌で……」

 

 すげぇな、ここまで発言がカスの言い訳も中々見ないぞ。しかも申し訳そうな顔をしながらも欠片も申し訳無さそうじゃない。なんも反省してない。

 

「しょうがないですね……喧嘩両成敗という事で皆等しく殺します。良いですね?」

 

 はーい! なんて言う訳ねぇだろうが!!

 

 野生の100レベが殺意をチラ見せした瞬間周りで見物してた人間が一斉にマスタースキルによるデバフと銃撃を開始、数秒後には屋根の上から駆間警察の方々がモンスターを引き連れて到着、10秒とかからずに制圧、殲滅する。

 

 それをずっと見ていた遠征くんは体を震わせながらモンスターと抱きしめあってた。お前は適性がなかったか……。

 

「皆さんご協力ありがとうございました」

 

 警察の皆さんはワイヤーガンを使うとクモ男みたいにスイングによる高速移動で次の現場へと去って行った。本当に毎日お疲れさまです。

 

 いや、待て。見覚えのある姿がなんか現場にいるじゃん。

 

「おーい、何やってんだお前ら」

 

 手を振りながら声を張ると向こうに気づかれる。こっちを見るのはキュウビやアマテラス、後はスサノオまでいる。

 

「現世散歩ですよ」

 

「あっちで誰かが《根の国》使いっぱにしたままだぞ」

 

「お陰で現世に繋がっちゃいましたよ」

 

「どんだけ放置されてたんだよ」

 

 フィールド展開されてから放置してたらそんなこと……いや、図書館展開すると裏でなんかサイリウム振ってる従僕の姿が見えるし、繋がってるのかも。

 

「まあ、安心せよ童ら。こんびにすいーつを堪能したら我らは帰る故」

 

「見よ、この万札を」

 

「告死蝶を我らで合体させるさぁびすを始めたら手数料で稼げるようになったな」

 

「まあ、私は黄泉系チューバーとして稼がせて貰ってますが☆」

 

「最近は黄泉にも自由な風が吹くのだなミコト」

 

「そうだね。フリーダムと適応力で話題の我らが神話だからね」

 

 まあ……後始末するというならそれでいっか。見なかったことにして再び歩きだす。駆間は少しお散歩するだけでイベントたくさん。下手なアトラクションよりも見ていて楽しいぜ。

 

 ばいばい、と手を振って黄泉チームと別れる。別れ際に黄泉の大ボスに連絡を入れてしっかり連中を売っておく。これで帰ったら説教か死だな。

 

 我々の目的地は特にないので、2人で出る時はいつもそうする様に、まだぶらぶらする。

 

 年末も近く、その前にやってくるクリスマスに備えてクリスマス商戦に切り替えている商店会の姿は結構華やかな感じになっている。

 

 特にダンジョンから持ってきた全長100メートルの超巨大クリスマスツリーの存在は圧巻だ。頂上では血祭りにあげられた星型宇宙生物が突き刺さるように飾られ、赤くツリーを濡らしている。

 

 そうだね。クリスマスカラーだね。マジモンの宇宙生物なのか、宇宙生物型のモンスターなのかは詮索してはいけない。たぶん誰も答えを知らないから。

 

 ツリーに飾られている装飾品は大体その年の皆の欲望が優先されており、これが増えたら良いなぁ、とか欲しいなぁ、充実してくれねぇかなぁ、と思うもんが飾られている。

 

「今年は吊られているマスター多めだな」

 

「駆間は最新環境だからな、最新のカードの為に遠征してくるやつも増えたし、その関係で犠牲者も増えたかな」

 

 吊られているのは遠征してきたマスターばかりだ。勿論死なない様に管理して吊るしてる。駆間において敗北者に尊厳なんてものはないのだ。負けたら晒し者。それが遠征に来た多くの者の末路。

 

 ただしツリーに飾られているのを見ると皆、もっと挑まれて勝負したいみたい。

 

「俺さ」

 

「うむ」

 

「これを見ても全く動じなくなったよ……」

 

「馴染んだな! これで貴様も立派な駆間男子だ」

 

 馴染んじゃいけない気がするんだけどなぁ。クリスマス犠牲者ツリーにばいばいして更に歩く。一部は手を振り返してくるから案外元気なのかも。

 

 今日も駆間のモラルは死んでいる。治安は最底辺。なんで社会維持してるんだワンダーランド。ギリギリで人間性が暴力を上回ってる感じが凄いぜ。

 

「あ、協会だ」

 

「少し見ていくか」

 

 見慣れた支部の近くまで来たのでちょっと中を覗く。ロビーからも対戦を見る為のモニターがあるのだが……本日は殺戮者が少ない。皆殺し合いに飽きた……という訳では無い。

 

 皆リビルドに忙しいのだ。

 

「うーん、解ってたけど環境に大規模なテコ入れ入った結果再育成しなきゃいけなくなるから、その間はやっぱ寂しくなるな」

 

「マスターとはそういう生き物であろう」

 

 イツメンも皆育成と最適化で忙しいらしく、誰もいない。寂しいなぁ、と思いながら支部を出ると凄い勢いで職員や利用者達が支部から逃げて行く。直感的にこれやばいやつや。そう思って久遠の手を握ってダッシュする。上からお散歩を見守ってたミストが急降下してガードに入った途端、支部の地下から凄まじい衝撃と轟音が響いてくる。

 

 大地が隆起する気配に、迷わずミストに乗り込んで空に逃げる。

 

 ……やがて協会の地下を突き破り、凄まじい巨体を持つモンスターの姿が露わになった。

 

「どうやら博士の施設では収容しきれないサイズのモンスターが誕生したみたいだな」

 

「初めて見たけど潔く施設破壊する方向性で誕生させるんだ……」

 

 勉強になったなぁ。

 

 そう思いながらきょとん、とした表情を浮かべる巨大モンスターを見た。

 

 駆間は年末でも平常運転です。

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