最強以外ありえない   作:てんぞー

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Bランク認定戦

 ―――6月。

 

 スペック足りないなら新しいハード作るぞ! 作ったわ! 販路がねぇぇぇんだよばぁぁぁぁか!!! 大人しく最適化して要求スペック落とせ!! というパンイチマンついにキレる事件を通して俺達開発チームは更に友情を深めたりしたが、6月までは比較的に平和な時間を過ごせた。

 

 それはつまり、予定通り準備と調整を終わらせたという事で。

 

 誰もが6月の認定シーズンに熱意を燃やす。この昇格如何によってこの先の将来が決まって来る人間がいる。だがそんなドラマを抱えているのは1人だけじゃない。夢の為に挑むやつがいれば、金が目的の奴もいるし―――世界を救う1歩だって言う奴もいる。

 

 結局のところ、理由の高尚さなんてものはそんな大事ではない。大事なのは強さ。

 

 そう、意志を押し通す強さ。強さの伴わない意志など価値がない。意志と力、その両方が揃って初めて価値が生まれる。認定戦とはそういうものだ。より強き力を押し通すもの。単純な試練から淘汰へとレベルアップする儀式の様なものだ。

 

 本質的にはマスターとしての格付けの儀式でもあるのだが……今重要なのは今日、ここではライバル達が揃っていて、その全てを薙ぎ倒す事でしか頂点に立てないという事実。

 

 ―――なのだが。

 

「おっはー」

 

「おはよー」

 

「鴉羽ァ! 朝飯ちゃんと食ってきたかァ……?」

 

「何と今朝はパンケーキ……3枚! 重なってる奴食べた!」

 

「いーなー!」

 

「良いモン食ってんじゃねェか……!」

 

 いえーい、と七海とハイタッチしてから花火師と拳をぶつけ合う。他にも揃っている何時メンと手を叩きあったりして挨拶をする。もうここ数年、すっかりと見慣れたメンバーばかりなのである。

 

 今から本気出すぜ!

 

 って話をしても普段から本気で殺し合ってるしな……となる。

 

 無論、気合入ってるし決戦用の専用戦術を用意してる所だってある。だがそれはそれとして、バチバチしてる理由が俺達には特になかった。だからBランク認定戦だあ、となっても平常運転の奴が多い。そもそも負けても基本的に恨みとか残さない戦闘民族だ。

 

 何時も通りの空気が流れていた。今日はB認定戦のみ故にCランクマスターしか集まっていないが、そこそこの数が集まっている。

 

 本気で上を目指すなら駆間を出て認定戦を受けるだろう。そうじゃないんだから殺し合う為に駆間で受けてるのだ。そう、認定戦でしか見られない本気の本気で殺しに来る奴との勝負。それを求めているのだ。

 

 まあ、気持ちは良く解る。俺も効率重視ならどっかのコネを活用して別の所で認定戦を受ければ良いんだし。そっちのが目的を考えれば間違いなく正しいんだが……ライバルたち、特に負けている花火師相手にはこの大舞台で勝利しておかないと上に行くのに心残りが残ってしまう。

 

 そういう訳で俺達は仲良く殺し合う為に協会の地下に集まっていた。観客席は注目もあってそこそこの人込みが出来ており、メディアの姿も結構見える。此方に向けられたカメラを見ていると俺も有名になったもんだとしみじみと思える。

 

 今日のステージの主役は俺と花火師かな? そう思いながらスマホに目を向けようとすると。

 

「―――鴉羽尊ぉ!」

 

「お」

 

 名を呼ばれ振り返ると、久々に見る雅人の姿があった。前回の様にメイドを連れているが……前見た時よりもずっとたくましい顔つきになっている。着ているスーツも前よりも少しぼろくなって馴染んでいる様に思える。

 

 うん……成長している。その姿だけで期待の出来るプレイヤーに成長したのが解る。

 

「久しぶりだな!」

 

「雅人くんだあ」

 

「おぉ、久しぶりに見る顔じゃねェか」

 

「どこに行ってたんだよー」

 

 近づいて来る雅人に一斉に群がって皆でダルがらみすると一瞬でキレて来る辺り、何も変わってない様で安心した。絡んでくる連中を引き剥がしながら近くまでやってくるとふんっ、と息を吐いて腕を組んだ。

 

「活躍は聞いてたぞ。柊の名に恥じぬ活躍をしてたみたいだな。天国のジジイも誇らしく思ってる筈だ」

 

「そうだな、お前そういうキャラだったな。すっかり忘れてた」

 

 一瞬交流戦での動きを評価してるのかなぁ、と思ったけど違うわ。コイツバリバリの伝説崇拝派とかいう超異端所属だったな。評価してるの俺の環境破壊っぷりじゃねぇかこれ? なんで王様も雅人もそっち評価してるんだよ。明らかに評価対象おかしいだろ。

 

「というかお前は今までどこに居たんだよ」

 

「駆間に居たんじゃずっとお前の影を追う事になるからな。逆田とか他の国の活性域を回って武者修行してたんだよ」

 

「良いなぁ!!」

 

「え、何そのフルコース!」

 

「普通に羨ましい修行してる! え、ズルい! 俺も行きたい!」

 

「何だお前たち馴れ馴れしいぞ! おい! 絡みつくな! この! なんだよぉ!!!」

 

 亡者のように絡みつく連中を必死に引き剥がしている間にメイドさんがやってきてお久しぶりです、此方は土産ですと配られるものをどうも、と受け取る。出来るメイドさんだよね……。

 

 バトルの亡者を引き剥がした雅人が此方をビシッと指差す。

 

「と、とにかく! いいな! 俺は、俺がライバルだからな! 途中で負けたりするなよ! この日の為に死ぬほど修行してきたんだからな……それを刻み込むまで負けるんじゃないぞ」

 

 雅人の言葉にふ、と笑みを零す。こいつも立派な名もなき修羅になっちまいやがって……実に心強く、楽しませてくれるものだ。

 

「おいおい、今の環境トップは俺だぜェ? 無視するのは止めて欲しいよなァ?」

 

「うーん、バチバチだねー」

 

「皆やる気満々というという事で」

 

 そこでスマホに通知が配られる。どうやら対戦表が発表されたらしい。確認すると今回は参加者が多い為、予選の後に本戦をやるらしい。

 

 これが一般相手ならそんな話聞いてねぇぞ! と炎上するところだがまあ、我々はプロの戦闘民族なのでもっと戦えるぞわぁい! ぐらいの感想しか出力されない。

 

 丁度全員バラバラのブロックに配置されている事にはちょっと作為を感じなくもないが、それも良いスパイスになるだろう。

 

「じゃ、決勝で」

 

「おう、またな」

 

「また後でねー」

 

「負けるんじゃないぞ!」

 

 手をヒラヒラと振って別れを告げて、それから担当のブロックへと移動する。

 

 対戦形式は総当たり戦。

 

 まずは担当ブロック全員と戦い、勝利数が最も多かった1人のみが決勝へと進む形式となっている。トーナメント式のが圧縮率高くて優秀なのだがそういう問題じゃないから仕方がないね。

 

 担当するブロックのあるステージ近くに移動すると、待機済みのマスター達が俺が近づくのを見てクソ、と毒づいた。

 

「鴉羽ちゃんじゃなーい! あら、こっちのブロックだったのねぇ」

 

「なんでお前こっちのブロックなんだよ! あっちだ、あっちいけ!」

 

「ようこそ、お帰りはアチラだよ」

 

「歓迎ありがとー、皆殺しにするね」

 

「クソぉ、決勝まで温存する余裕が一気に無くなったじゃねぇか……!」

 

 俺が近づいて、ブロックでぶつかっても零れ出る悲哀は負けるからではなく、決勝まで温存したかった切り札の類を切らない限り勝ち目が見えないという悲哀だ。

 

 コイツラは俺の強さや滅茶苦茶さをちゃんと理解してもなお、真正面から倒してやるぞという気概に満ちている。こういう連中を見ていると俺もやる気が出てくる。

 

 しかし、油断はできない。

 

 ここにいる連中は基本的に毎日協会地下のアリーナに籠もってランクマとフリマを繰り返して毎日最低限で10戦以上繰り返しているバトル中毒の猛者達だ。

 

 そしてそれはつまり、普段から俺とも対戦を繰り返しているという事でもある。

 

 恐らく今環境上で最も図書館、根の国、暗黒樹海込みの構築を研究している連中であり、俺との対戦数や研究期間も長い。

 

 言い換えれば俺のやり方を理解し、尚且つ環境での強い動きを把握している集団だと言える。

 

 俺が大半のモンスターを見てどういう動きが出来るのかを理解するように、コイツラもずっと俺のモンスターを見てきたからどういう動きが出来るのかを把握している。

 

 俺とコイツラはその点においては互角だ。だから本質的には全員がライバルだ。コイツラだって何も負けるつもりで参加しているわけじゃない。

 

 勝つ為に研究し、対策し、予測を積立てて挑んできている。

 

 前まで……Cランク認定戦の頃の俺はまだ無名に近い状態だった。だが今、様々なことで名前と顔が売れた俺は……追われる側の人間になった。

 

 多くのプロがそうであるように。

 

 名が売れれば対策され、研究され、そしてメタを握られる。

 

 それを自覚した上で勝つ事が出来る者こそが上に行く。それが勝負の世界。皆、日常のバトルだけじゃなく映像だって死ぬほど見て来た筈だ。

 

 だから楽しみだ。

 

 どうやって、俺を追い詰め、勝とうとするのか。

 

 彼らはモブかもしれないーーーだがそれが主役を食わない理由にはならない。

 

 最初の対戦が決まり、アプリに構築を書き込んで対戦の準備のためにモンスターを呼び出す。

 

 さあ、久方ぶりの……俺達の祭典の時間だ。

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