男の娘パを倒したのでさあ、2戦目だ。
2戦目の対戦相手は樹海コントロール。
《暗黒樹海》をバリア代わりに単体攻撃や打ち消しを躱しつつ持続ダメージを付与して、割合ダメージで相手を倒すオーソドックスなスタイルだ。《暗黒樹海》の強い点は単体指定スキルを封じる点だが、これは敵じゃなくて味方への指定も封じる事が出来る。
自己指定は可能だが、味方単体指定は出来ない。
つまり単体回復を入れる事が出来ない。これが馬鹿厄介で忘却や絶望が入った場合、ケアの為に《クリア》を使いたいのだが、あいにくと《クリア》は味方単体指定魔法なので、《暗黒樹海》使用中は回復する事が出来なくなってしまう。この組み合わせを知った人は思うだろう。
これ強くね? うん、強いよ。
忘却でメイン行動を封じたらフィールドの張り替えや回復が封じられる。
絶望を付与されたらサブ行動を封じられるのでこの状況から抜け出す為の《シェイクオフ》か何かが使えなくなる。
回復を封じるという点と低ランク帯のスキルプールを参照すると《暗黒樹海》を絡めたロック性能はかなり高い。無論、これは成立すれば強いよね、という話である。弱点があるとすれば単体指定が使えないのは相手も一緒だ。《カバーリング》や《デコイ》が使えないという弱点が存在する。
つまり上を取って全体攻撃をしてくるパターンに弱い。そうだね。フラメアで薙ぎ払うね。薙ぎ払えっ!
続いて3戦目。此方は根の国ロングレンジ。死ぬほど辛かった。
ガチガチに防御を固めて回復を入れて根の国でリーサルライン下げつつ持続ダメージ付与でリソース枯渇を狙いながら相手のプレミを誘う地獄の遅延戦術。とてもじゃないがCで見る様な戦術じゃない。こんなのをなんでCランクでしかも認定戦で出してくるんだよ頭アーサーなのか?
いきなり3戦目で10分近い地獄を経験するとは思わなかったクソボケ。防御バフ積んで、リジェネを積んで、ダメージカットを積んでひたすら持続ダメージを付与して削りに来る。回復手段がなければ延長戦に入って削り殺される。こういう玄人向けの戦い方は人気がないが、対策があまり意識されないから刺さる時がある。
東吾、話聞いてるか?
まあ……ここは穏便に防御固めてる間に詠唱スタックさせて《ディストーション》を2連発、合体魔法化させた最上位合体魔法で全てを吹き飛ばして解決する。まさかの遅延戦術に《高速詠唱》を積んで来なかったので図書館でちまちまスタックさせる必要があって時間がかかってしまった。二度とそのカスみたいな戦術を出すんじゃねぇぞ。
《ディストーション》! やはり《ディストーション》! 追加効果ディスペル単体上位魔法最強! 最強! 最強!! 合体魔法にしても馬鹿の威力でやはり最強! 環境から永遠に消えない過労死魔法筆頭。
ゲームがインフレすればするほどディスペル効果の価値が上がる都合上、追加効果でディスペル出来るタイプのスキルはバリューが高くなりやすい。RPGって基本バフゲーですよ。
4戦目。暗黒爆速自爆戦術。絶対に誰かやると思ってた花火師コピー構築。心臓に悪いからカスみたいな構築を見せないでくれ、という意見が口から出るのは本日2度目だった。
爆速自爆構築はぶっちゃけた話、Cランク最強戦術である。対応手段が少なく、自爆で死亡した場合は勝利判定。だから最速で射出して全てを消し飛ばして勝利するのは滅茶苦茶合理的な判断ではある。
ダメージがデカく、《暗黒樹海》でパフェキャンも回避できる。防御なんて意味がないし、無敵はこのランクにはほぼほぼない。上のランクなら人数増える関係上躱す手段も増えて来るが、Cだと防ぐ手段が少ない為、非常に止め辛く、一方的に相手を殲滅しやすい構築になる。
当然、対花火師で死ぬほど対策と研究してるので殴り殺して終わらせる。最遅展開で樹海を潰したらパフェキャンが通るのでそれで自爆を止めればどうとでもなってしまう。自爆戦術は強いが、それを通せるかどうかはかなり練度が関わって来る。
研究をどれぐらい進めているか、という点において花火師の後追いは中々厳しい所にある。でも突然現れると心臓に悪いからもう2度とやらないでね。
とか言ってたら5戦目も自爆構築だった。纏めて死んでくれ。
この光景、前世のレギュレーションCと呼ばれるC帯のモンスター専用の大会で見た事がある。C帯にエンドコンテンツで獲得したスキルや調整を施すモンスターだけがCの状態で戦うレギュレーションがあったのだ。
皆、自爆構築で来た。
コイントスして先手取った奴が勝つゲームだった。
クソゲー。もう2度と見たくない。あの悪夢を繰り返してはならない。
6戦目も自爆だった。カスが。
いや、解るよ。基本的に環境デッキ握って戦うのが大正義だよ。好きなモンスター、戦術、スキルって言ってもパワーバランスの前には無意味だ。
ゲームは楽しむことが目的だが、勝利が必要な時は勝てる力を握ることになる。そうやってトップメタが誕生する。
そしてメタゲームはメタに対抗する力があって成立するのだが、C帯は対戦バランスがあまり公式から考慮されてないのだ。だってシナリオ的な通過点だしここ。
だから自爆が環境的にトップでCレギュで対戦する時、皆自爆キメロォーーー! となっても特にテコ入れはない。それで何も問題ないからだ。
結果、この環境に修正はなく、自爆が大正義になった。それでも問題にならないのはCレギュでの対戦はスペシャルレギュレーションでの対戦とメインシナリオ攻略ぐらいの経験で……こんな風に引っ張ることはなかったからだ。
じゃあこの環境への対策はないんすか?
ないよ。頑張って自爆にメタ張って狩ろうね。
7戦目。ミッドレンジ図書館。
自爆以外の構築だ! わぁーい! と喜んだのも束の間、敵味方を数ターン動けなくする《ストーンワールド》という非常に珍しいスキルを搭載した構築だった。
これは敵味方を石化させる事で行動不能にするというスキルで、石化中はあらゆる状態異常によるダメージが発生しないというちょっと使い辛いスキルになる。
だがその真価はターン経過で蓄積するフィールド効果やバフの時間切れを狙うことにあり、これを活用する事で本来なら時間が必要となる詠唱のフィールド活用蓄積を相手を動かさず、安全に蓄積させる事が出来る。
実は上位互換のスキルがあってこっちは持続ダメージのターン起爆を誘発できるが、このランク帯では習得できない。
なので選択肢としては中々悪くないスキルだ。問題は自分の火力が整うからといって、リーサルが取れるかどうかは別という話だ。
スタックされた詠唱は相手にも言えること。フラメアを選出する事で大体の問題は解決する。した。
これで7戦7勝。予選ブロック全勝で決勝ブロックへの進出が確定した。途中で自爆以上にロングゲームの遅延プレイを相手して脳みそを使わされたが、それ以外は順調に攻略できた。
予選通過である。
一先ず一抜けが確定したのでアリーナから離れ、休憩エリアへと移動する。一ブロック8人という大人数の総当たり戦という形式で対戦回数が異様に多いが、駆間人としては割と満足な内容になってる。
というか環境デッキを察知して構築する能力が高い。ちょくちょくマスタースキル持ちも出てきてる。通りすがりのモンスター仙人とかいう不審者がマスタースキルを教えて回ってるらしい。
何もんだよ。
自販機からスポドリを購入して喉を潤していると花火師がやってきた。
「当然抜けて来た見てェだなァ」
「まあ、相性不利が無い様に構築してるからね。何が来ても対応出来るようにしてるよ」
「器用なこった」
花火師も抜けて来たみたいなのでお互いの勝利を祝う様に拳をぶつけ合う。
「デカパイは……スタイル的に長引いてる感じか」
「坊っちゃんもロングレンジ型が多数のブロックっぽいなぁ」
「あっちは時間がかかりそうだな」
スマホのアプリで現在の戦績を確認できるのだが、七海も雅人も現在6戦目、全勝で進めている様だ。ここから大敗して決勝進出落とすとは思えないし、この後で戦う4人は誰なのかはほぼほぼ出た。
「結局こうなったか」
「まァ、そうだろうな」
なんて事の無い様に花火師が応え、スポドリを飲む。ここらへんの流れも割と普段通りなのであんまり認定戦してる感が薄い。普段より殺意高めなことを抜きにすればかなり何時も通りだ。
「しかし今回は自爆構築にやたら当たるなぁ、トップメタを握った気分はどうよこのこのー」
肘で花火師を突っつくとおいおい、と返される。
「そりゃァ違ェだろ、今の環境、トップメタはテメェだろ? それに勝てそうなのが自爆構築だから多めに積んでる奴が多いんだよ」
「……あぁ、なるほど。そう言われればそうか……」
なんだかんだで運の下ぶれが無ければ基本ランクマでは負けないから勝率は常に9割以上をキープしてる。そうなると勝てた花火師が目立つし、コピー構築が出てくるのか。
うわぁ、皆マジで殺りに来てるじゃん。
「ま、そういうこった。覚悟しろよ、俺も勝つ気でいるからなァ?」
「油断なんてするわけ無いだろ」
7試合目が終わって進出が確定した雅人がこっちにやってくるのに対して、七海はまだ6戦目だった。ロングレンジのスローゲームを展開してて全員発狂に追い込んでる。カスみたいな戦術選んだなあいつ……。
しかしこれで予想通りというかなんというか、Cランクで突出した実力を持つメンバーで決まった。元々想定していたメンバーに雅人というイレギュラーが混じっているのが少々怖い所だが、世界の未来の為にも負けている暇なんてない。
全員、実力で轢き殺すだけだ。