最強以外ありえない   作:てんぞー

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お前達がモンスターよりも怖い

「GG」

 

「GG」

 

 試合が終わって握手を交わす。長い試合だっただけに汗が浮かんでいる。が、バトルの後の疲労は心地の良いものだ。はぁ、と息を吐きながら握手に力を込める。

 

「全く、ガンガンメタ張りやがって」

 

「突破してきた奴が何を言う」

 

「9割ぐらい開始時は詰んでたんだよ……!」

 

 マジで、死ぬほどよく分析されてたよ。ステージから降りて休憩エリアへと移動しながら話を続ける。ちょっと雅人側の話を聞きたかった。

 

「たぶん戦う前からチビとフラメア、どう封殺するか死ぬほど研究してたでしょ」

 

「あぁ、最終的にAOE使えば回避も軽減も出来ないから魔狼を牽制しつつ確かなダメージソースに出来るって結論にしたんだけど……虫系は正直相性が良くないから……って事で仙獣の噂を聞いてそれを確保しに行ったんだよ、去年」

 

「そっから研究してたのか……いや、ほんと良くやったよ。詠唱メタ、回避メタ、防御無視、全部大当たりだよ。俺が一番苦手な所にぶっ刺さってた。俺も最終的には《復唱》にお祈りする以外に選択肢がなかったからな」

 

 というか俺の構築で唯一まともなアタッカーがフラメアだけなのだ。チビがアタッカーとして完成されるのはシェイナ側と血統が合流してからなので、それまでは火力そんな高くなくて回避ベースの生存力特化なんだよね。ちなみにカウンター系統との合流はAなのでまだ先の話。

 

 逆にシェイナは今殴る能力を固有と絡めて上げてる最中なのでシナジーが作り辛い。唯一《ウィークメイカー》と固有サポート系統が動きやすいという形か。どちらにしろ、メインアタッカーとして運用するには不安がある。そうなると結局、フラメアに頼るしかなくなる訳で。

 

 Cランクはずっとフラメアをエース運用してきたなぁ。

 

 Dはほぼチビエデばっかりだったのにね。フラメアが性能としてどれだけ突き抜けてるのかが良く解かる。賢者の石由来の《復唱》は継承の為消す事の出来ない半ば呪いのスキルと化してるが、こういう時輝くから文句言えないんだよな……。

 

「しかし覆されたかぁ……悔しいなぁ……」

 

「《復唱》は詠唱参照で活用はしてないから制限に引っかからないんだよね」

 

「あそこは何が正解だったんだ? 出来ることは詰め込んだつもりだったんだが」

 

「純構築は扱いやすいけど火力計算しやすいからなぁ。結局の所1ターン毎に3割から4割が継続火力でバーストも伸びないから、相方を別のモンスターにして瞬間火力を上げる方が良かったかも」

 

 《復唱》抜きだと100%詰んでました。

 

「チビ出してたらクリ耐性付けてたでしょ?」

 

「あぁ、うん。《クリティカルガード》を用意してたからな。そっち採用しつつ攻速下げて火力間引いて詰ませる予定だった」

 

 あっぶね!!!

 

 チビ採用したらマジで詰んでた。

 

 ここらへんの突破力の問題の諸々は次のランクからはエデで纏めて解決する予定だからC帯はひたすらキツイんだよね……。

 

 雅人と感想戦に入っていると、既に自販機エリアに七海と花火師の姿があった。まあ、当然だけど花火師で数ターンも戦闘が続くわけがないので。

 

 こうやってもう戦闘が終わってるのを見ると勝敗は予想通りついたらしい。

 

「いよ、お疲れ」

 

「デカパイ負けた?」

 

「負けたぁー。2ターンかけて攻撃下限まで下げたのにぃ」

 

「寧ろ2ターン目が回ってきた事に驚きだよ」

 

「来るんだな……2ターン目」

 

 ロジジャマ持ちで自爆をしてくるのに2ターン目に入るのは中々凄い事だよ。問題はその程度では花火を止めることは出来ないという事なのだが。

 

 だけどこれで2勝してる俺と花火師、0勝の七海と雅人で綺麗に分かれた。これで認定戦勝ち抜けは俺か花火師のどちらかに限られた。次の勝負で勝ったほうが上に……マイナーからプロの世界へと踏み込む。

 

 次は俺と花火師の事実上の決勝戦になる……のだが、今更気負ったり変に睨んだりする関係でもないので、ベンチに座ってスポドリを飲み、チョコバーをむしゃむしゃする。

 

「尊くんって糖分補給チョコバー派だよね」

 

「ラムネ飽きた」

 

「すんげェ解りやすい答え出たな」

 

「ブドウ糖の補給には良いんだけど、アレ喉渇くし食った回数多いしなんか食ってる感薄くてあんま好きじゃない」

 

「ボロクソ言うなコイツ……でも同じものばかり食べてると飽きるのは解るな」

 

「ラムネとかの補給は食事とは別じゃない? 飽きたとかそういう感じはしないけどなー。花火師はー?」

 

「俺かァ?」

 

 視線を向けられた花火師は懐からなにかのスティックを取り出すとそれを剝いて見せた。その中に詰まってるのは火薬だった。それを嗅ぎ始めた。

 

「これだぜ」

 

「絵面が犯罪だろ」

 

「そもそも火薬持ち歩いてるのがアウトだろ」

 

「いや、火薬は持ち歩かないと危ないだろ」

 

「咄嗟に瓦礫とかに埋もれたときとか、爆発が必要なときに使うからね」

 

「俺達、日本での生活の話をしてるんだよな?」

 

「俺達、日本語で話してるけどここを日本だとは思ってないから」

 

 ここを日本だとは思うなよ。別の国とか異世界とかそういう風に考えておけ。国や市民団体様だって死人が出ても見ないふりしてるしな。

 

「ちょくちょく自衛隊で管理したほうが良くない? 国の管理に戻すべきじゃない? みたいな意見やニュース討論は見るよね」

 

「まァな。結論を話すともうそういうラインは越えてンだよな」

 

 駆間を国で管理するとしてその金はどこから来るんだ? このドデカイ土地を、派遣した人を養う金は? 日常的に行われる戦いへの補填は? 危険手当? 修復? 人員確保は?

 

 まあ、色々と地獄を見るし、駆間を解散するということはここに住んでるブラックバスが全て放流されるという事なので。

 

「国とかプロ市民様も嫌でしょ。ショットガンとライフル持ち歩きながら朝の散歩する老人がいる町内会が全国展開するの」

 

「私の隣のお婆ちゃんはワイヤーガンでターザンしながら移動するよ」

 

「全てを理解した」

 

 そう、駆間は魔境になりすぎた。受験や進学で自分から駆間を離れる者はまだしも……大半の駆間民は一般的な社会性を持ってない。

 

 持って……無いんだ……!

 

「感覚だいぶ麻痺してるけど普通になんで銃持ち歩いてるんだ? 俺もなんか握ってるの違和感抱かなくなってるけどさ」

 

「俺も葉月から駆間にいる間は携帯してくださいね……って言われてサイレンサー付きの銃を渡されてるぞ」

 

「え、そんな豆鉄砲で大丈夫……? ショットガンとかライフルじゃないと火力足りないよー?」

 

 七海が胸の谷間からアンチマテリアルライフルを取り出し、俺は四次元化してるポーチから図書館製マジカルショットガンを取り出し、花火師は服の下から大量の爆発物を見せてきた。

 

「お前達がモンスターよりも怖い」

 

 怖いと言いつつしっかりと銃握ってるし、扱い方に慣れがあるので普通に使い込んでるなこいつ……解るぞ、俺もプロ駆間民だから。お前もダンジョン活性域を回るうちに硝煙と死の臭いが染み付いてる、立派な修羅だ。

 

 雅人……マイ……フレンド……!

 

「お前、一度でも市役所に行ったか? 市役所は何時もの市のPR動画流してるんだけどアレヤバいぞ」

 

「あ、空から燃えて隕石落ちてる所にずっと優しい感じのほんわかした音楽流してるやつでしょ! 知ってるー!」

 

「アレ、元々はちゃんとした映像撮ろうとしたらしィぞ。でも数日粘って撮れないからアレで妥協したらしいな」

 

 アレで妥協だったらもう何もかも終わりだろ。アレを見て駆間はいい場所だと思える人はとりあえず精神科のお世話になったほうが良い。PR動画じゃなくて魔除けかなんかだよ。

 

 犯罪者だって逃げ込もうとしねぇよこんなとこ。

 

 むしゃむしゃごくごくして栄養補給おしまい。だいぶカロリー使ったなぁ。バトルはカロリー消費激しいから直ぐにお腹が空く。

 

 いや、ほんと良く食べるようになったな? 成長期を加味しても昔の数倍飯が入るようになったぞ。

 

「あー……これが終わったらさ、負けた奴らの支払いで肉食わない?」

 

「お、いいなァ、それ」

 

「あ、全勝してる余裕の二人だ」

 

「それ、どちらにしろ俺達は支払う側だよな???」

 

 七海と雅人は負けが確定しているからね。まあ、雅人はいいやろ、金あるし。敗者に奢らせて食う焼肉って絶対に美味しいと思うんだよね。

 

 のろのろ雑談しているともう15分が過ぎてインターバルが終わる。インターバルが終わる、ということは再びバトルの時間が来るという事で……いよいよ俺達の決勝戦が始まる。

 

 花火師に視線を向けるとあちらも視線を返し、無言で拳を作ってこつんと叩き合う。

 

 持てる全てを注ぎ込んだ試合をしよう。対花火師に関しては迷いはない。こいつ対策は完璧に仕上げてきてる。想定出来る上限まで思考をトレースして構築してきた。

 

 選出するモンスターは事前に決めてる。

 

 だから迷うことなく選んだモンスターをスマホに入力して決定し、ステージに呼び出す。

 

 さあ。

 

 俺達のCランク、その締めくくりに相応しい試合をしよう。

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