選出が終わりインターバルも終わり、対戦用のステージへと向かう。その間に、対花火師戦術を思い返す。なにせ、花火師の研究はずっと前から進めてる。というか負けた直後からリベンジに備えている。
その上で断言する。
花火師の自爆構築は2パターンに絞られる。
デバッファー構築とタンク構築の2種類だ。理由はとてもシンプルで、サポーターを置いた加速火力増強型も、W爆弾の超爆発構築も、ほぼ意味がないからだ。
根本的にサポーターやサブアタッカーの存在は足りない火力を補うために存在している。確殺出来ない敵を確殺する……そういう状況の為にサポーターは求められる。だが自爆構築はモンスター単体で火力が完結している。
その為、サポーターを入れる枠がない。一番重要なのは爆弾を射出する事であって、それを守り切る事だ。つまり《パーフェクトキャンセラー》を搭載した妨害型の構築か。或いは《カバーリング》等を使った味方を守る為の守護構築か。
この2種類しか幅がない。同時編成はC帯の構築制限上、不可能だ。タンクとデバッファーの役割を混ぜようとすると耐久力不足で絶対に中途半端になって崩壊する。これは断言できる。だから花火師はタンクかデバッファーか、そのどちらかしか採用出来ない。
だから花火師との勝負において一番重要なのはどっちか読む事に尽きる。
ここで考慮するのは《暗黒樹海》の存在だ。単体対象指定不可という効果はモンスターを守る上でかなり強い効果になる。これを使う事で強力な単体攻撃を躱す事が可能になる。そして既に花火師は対フラメアにデバフで火力を下げる事で攻略する事に成功している。
そう、全体攻撃は単体と比べると威力が低い。その為、デバフを受けて火力が下がった場合、相手に受けきられる可能性が高くなる。というかこれで1回攻略されている。だから《暗黒樹海》+範囲デバフで火力低下ルートによる全体攻撃封殺はかなりあり得るラインだ。
だからフラメアは採用できない。
単体封印で《ディストーション》が使用不可に。
デバフで《ブリザード》が使えなくなる。1ターンのみの戦闘だと《復唱》の発動も期待出来ない。
つまりこの戦場においては、フラメアは不適切なモンスターになってしまう。フラメア対策自体かなり進んでいて色んな奴がいろんな方法で乗り越えて来るのを狙っている。今回の七海と雅人もその根幹にあるのはフラメアへのメタだ。
当然、花火師もそれを意識しているだろう。
だからフラメアを採用しない。
チビをアタッカーで採用するしかない。チビなら先手を取って殴る事が出来る。問題は《暗黒樹海》を展開された場合、チビの高火力スキルを自爆役に叩き込む事が出来なくなるという事実だ。だがこれをすり抜ける方法が1つだけ存在する。
―――そう、ランタゲ攻撃だ。
《暗黒樹海》を通したうえで単体対象の《カバーリング》や《デコイ》を殺す。その上でランタゲ攻撃を爆弾に叩き込んで殺す。
これだ。
これしかない。
これ以外に選択肢がないのだぁ―――!!
パフェキャンで動きを止めて攻撃を通す方向性で行ってくれたら寧ろロジジャマで止められるからアドなまである。だけど考えれば考える程タンクで樹海割れに対応するように備えつつ樹海で単体、《ワイドガード》で全体に備えて守るのが一番無駄がない。
この備えで止められないのは唯一、ランダムターゲット攻撃だけだ。
そう、これはチビでランタゲ攻撃を行って運よく殺せるだけのダメージを成立させられるかどうかをお祈りするゲーミングである!
……と、ここまでは正直花火師側も読めると思っている。恐らく……何らかの手段でランタゲ攻撃に対して対策するだろう。お祈りゲーを確定勝利へと変える一手を用意してくるだろう。
だから最後の手を用意する。
ド本命の一手だ。それをサブプランに据えて、メインプランをランタゲにする。もしランタゲが通ればその時点で勝ち、そうじゃなきゃサブプランでリーサルを取る。
これが今回のプラン。重要なのは前半、メインプランにリソースを吐き出し、本気にさせる事。そうしなければサブプランには到達できない。
はてさて俺の読みが通るか否か、それはこれから解ることだ。
と、脳内を整理している間にモンスター共々ステージに到着してしまった。
此方側にはチビとシェイナが。
花火師側にはプリンセスメロンとカボチャナイトが。
やっぱりそれで来るかぁ、という気持ちが強い。とはいえ、これは読めてた範囲なので後は事前プラン通りに動くだけだ。
「さて、終わらせるか」
「おう。決着付けようとしようぜェ」
ぱん! と手を叩いた。それ以上の言葉は不要。指揮位置に移動する。チビとシェイナにも構いたかったが、今はちょっと集中力をキープしたいので黙って移動する。
そして戦闘位置に付いたところで戦闘前の全ての準備が終わった。頬を1回叩いてから息を入れ替え、軽くホップ。
「良しーーやるか!」
認定戦、最後の戦いを始めよう!
ライバルの花火師が現れた!
カボチャナイトが現れた!
「姫をお守りします!」
プリンセスメロンが現れた!
「どうせ死ぬのに???」
あ、やさぐれてる! 来世代でも活躍をお祈りしてます!
変えられない運命などない!
全ての物語はハッピーエンドを待っている!
シェイナは《運命踏破者》だ!
基礎クリティカル率が100になった!
《ファストアクション》!
シェイナは神速を得た!
《ファストアクション》!
チビは神速を得た!
《ロケットスタート》!
チビの速度が1段階上がった!
チビの《ブルータルスピード》!
速度が上がったので攻撃も上がった!
まずはセットアップで詰め込めるだけ詰めこむ……! 相手の手番が……動きが入る前にバフデバフを詰め込む! 《ディスペル》は警戒しなくて良い、そんな余裕はない! どうせ《グローリー》警戒で耐性剥がす所から入るからな!
シェイナの《天眼》がメロン姫を暴いた!
《ウィークメイカー》が発動した!
プリンセスメロンは物理弱点だ!
「弱点付与!? んなもんがあるのかよ!?」
「こっちで見せるのは初めてだったな。というか良く見て解ったな……」
こっちと違って事前知識ないだろ。モンスターの微細な変化で何が起きたのか把握した? やるやん……。
まあ……まだバフ積むんですが……。
シェイナは《運命共有》した!
チビはシェイナと運命を共有した!
チビの基礎クリティカル率が100になった!
カボチャナイトの《オートガード》!
プリンセスメロンを守護する!
カボチャナイトは《暗黒樹海》を呼べた!
「アイツラ足が早すぎです。どんだけ動くんですか」
《守護領域》が展開された!
このターンあらゆるダメージが軽減される!
プリンセスメロンの導火線に火が付いた!
「勝っても死ぬ。負けても死ぬ。死こそ命の答え」
プリンセスメロン自爆フルセットが発動待機!
起爆したらみんな死ぬぞ!
細かいスキルは見るだけ意味なし!
セットアップ終了!
実働前の事前準備がレシート級の長さになったが、これでセットアップは終わった。ここからは実際にリーサルに向けて動き出す。既に《暗黒樹海》が入って単体攻撃が通らなくなった。
速度調整して樹海展開前に単体防御スキルを差し込むのも流石だ。アレで防御を固めた。ダメージが多少通りづらくなった。クリダメ叩き込んで殺すしかない。
「さて」
「そんじャ」
「リーサルに向けて」
「殺るか」
お互い、一気にリーサルに向けて動く。
《戦姫》! 先導こそ王族の務め!
シェイナの速度がチビ+1に調整された!
シェイナは《薙ぎ払い》を放った!
カボチャナイトの《ワイドガード》!
「初戦にして終戦……参ります!」
ハルバードを握ったシェイナの手に力が籠もる。カボチャナイトが迷わず前に出て攻撃を一人で受け止めに入る。公式戦デビュー戦にして、最終戦。
その活躍を永遠のものにする為にもシェイナがハルバードを振り抜いた。
Critical! カボチャナイトにダメージ!
カボチャナイトが弾かれ、吹っ飛んだ。その間にチビが力を溜めた。必殺、リーサル級の火力が用意された。花火師と俺、ここまでは想定内だろう。
視線が交差する。
「ここが……勝負所だ……!」
《シャドーダイブ》!
チビは影に潜り強襲する!
カバーリングの影響を受けない!
《一の太刀》! 初撃のみクリ+100%!
《ケルベロスクロウ》!
無作為に3連の爪撃が放たれる!
迫る連続斬撃、花火師は待っていた、と笑った。
花火師の《全能者の憂鬱》!
チビの全ステータスが2段階下がった!
《全能者の采配》! 元のステータスに戻した!
カボチャナイトの《エクストラオーダー》!
花火師は2度目のマスタースキル権を獲得した!
再び《全能者の憂鬱》が放たれた!
「!?」
「最近の100レベランダムダンジョンから発掘されたレアスキルだ。直前まで決め手に悩んだが……コイツで完成だ」
樹海以外にも入手ルートがあった!? いや、というか100レベダンジョン潜ったの!? あ、そこら辺にあるもんね。いや、ツッコミは後だ。
今の一瞬で、チビのステータスが一気に削られた。《ケルベロスクロウ》の火力が……落ちた!
《ケルベロスクロウ》!
Over Critical! カボチャナイトに当たった!
Over Critical! プリンセスメロンに当たった!
Over Critical! プリンセスメロンに当たった!
プリンセスは食いしばった!!
火力が削がれてリーサルに届かない。憂鬱抜きならワンパンで食いしばりラインまで行けた筈だ。だが僅かに……食いしばりラインに到達しなかった。だから2発目で殺せなかった。
「俺のォ……勝ちだァーーー!!!!」
プリンセスメロンが輝く。唯一、攻撃スキルを除いて全てが攻撃補助で構成されている。他のものは搭載されていない。その余裕がないからだ。
自爆は外せば終わり、その瞬間負けだ。だから一撃死で殺し切る火力を搭載しないとならない。ステータスを技量に振る分、スキルを他に回す余裕なんてない。
だからこそ、ここに唯一無二の勝機がある。
「シェイナ」
「はい。姿形が変われども……永遠に支える事を誓います」
シェイナの《エクストラオーダー》!
尊に追加マスタースキル権が与えられた!
尊は《全能者の采配》を振るった!
チビの全ステータスが2段階上昇した!
チビの《シュレディンガー》!
回避率が2倍になった!
「俺と同じ……いや、それは回避バフか!?」
「そうだ。一番怖いのは必中バフを持って来られるところだった」
マスタースキルを残されて当たれ! されるのが怖かった。だけどしないだろうと思った。その為に技量特化にしてるはずだ。必中を積む余裕はない。
そして《暗黒樹海》もある。
単体対象が出来ないということは、味方へのバフも出来ないという事だ。例外は自己バフとマスタースキルとマスター対象スキルだ。
《粘着糸》や《イーグルアイ》のお手軽回避メタが使えなくなるという事だ。
樹海構築の明確なデメリットだ。そして技量特化の高命中で来ているから回避で勝負されないという油断。
それは技量特化であって、命中特化じゃない。チビの回避リソースを増せば、回避の目は見える。無論、それは花火師がリソースの出し合いに渋らず乗っかってくる前提での話になる。
だが全部吐き出させた。
「リーサルは見えた」
プリンセスメロンの《アトミックプロージョン》!
「死こそ救済だって解……
え? 回避される? じゃあ死に損ーーー」
全てを飲み込んで消し飛ばす!
プリンセスメロンは消し飛んだ!
カボチャナイトは消し飛んだ!
シェイナは消し飛んだ!
チビはーーー。
爆発が一瞬で3体のモンスターを飲み込んだ。瞬間、爆風がうねり、魔物のように、腕を伸ばすようにチビへと食らいつこうとする。
一瞬で表情をキリッ、とさせたチビは爆炎と爆風に背を向けて加速する。伸ばされる破滅の魔手を滑り、飛び、潜って回避し、全方位から飲み込む破壊に姿が消えた。
ステージの全てを爆発が飲み込んだ。視界を煙が覆う。払うように手を振るうと、やがてその中から唯一立つ姿が見えてくる。
「ワン!」
ーーー回避した!
敵に戦えるモンスターがもういない!
ライバルとの勝負に勝った!
「クックック……負けたぜ、ほんと、見事に負けたぜ。てめェがナンバーワンだ」
清々しそうな表情を浮かべた花火師を見て、勝利の感慨に拳を突き上げる。
Bランク認定戦、決着!