最強以外ありえない   作:てんぞー

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このゴミと俺が?

 チビが小さくなった事に滅茶苦茶はしゃぎまわってる。コイツ、また布団の中に潜り込んでくる気満々だな……。まあ、年単位で家の中に入れなかった反動もあるし、そこは仕方がない。甘えさせてやるか。

 

 そんな事を許してるからコイツの子犬みたいな態度は永遠に治らないんだぞ、という視線が横の久遠から向けられる。おっしゃる通りです。でもチビはモンスターではなく家族として一緒に育って過ごしてきたからどうしても甘やかしちゃうんだよ……!

 

 ほーら、今も前足で胸を踏み踏みしてくるよ。後ろ脚で立って甘えて来る。凄く可愛くない? たぶん未だに自分が世界の命運を握るモンスターだって一切理解してないよ。将来的に神殺しになるんだぞお前? 本当に大丈夫か?

 

「わん!」

 

 中身がただの子犬ですね……。

 

 チビを軽くわしゃわしゃと久遠と撫でてチビを満足させたら床に転がして次の合体に入る。コイツの甘えっぷりに構ってたらマジで1日が終わるから程ほどに切り上げないと一生構い続ける事になってしまうのだ。

 

 という訳で。

 

「お次は此方、エデ」

 

 異形の音楽家姿のモンスター。言葉を喋る事が出来ず、感情表現やコミュニケーションを全て音楽を通して行う異形だった。ここまで鳥、マーメイドと中々面白い種族遍歴をしているが、今回も大きく種族を変更する事になる。

 

 なにせ歌唱や舞踏系統のスキルは色んな種族で取っ散らかっているのだ。異なる種族を巡り、その文化や様式を理解し、歌や舞を集める事をコンセプトにしている……と、誰かがインターネットの片隅に残した。

 

 作者そんな深い事考えてないと思うよ。開発に脳味噌あるなら必中属性と必中効果でシステム分ける事なんて絶対にしなかったし。

 

 少しでもまともな脳味噌あるなら攻撃魔法も付与魔法も必中属性ですが攻撃と付与回復では仕様が違いまーす! とか絶対にやらかさないだろ。なんで攻撃と付与では必中属性の区分が違うんだよ。そもそもなんで属性と効果で分けてるんだよ。分ける必要ないだろ。統一しろよ。でも統一したら絶対回避が刺さり過ぎて受け側の答えになっちゃうんだよね……。

 

 さて、そんな種族が大きく変わるエデだが、今回も大きく種族を変更する事になる。その為にサブ血統の種族を調整したり、隠し味を用意しなきゃいけないが今更それに苦労する環境ではない。

 

 喋る事の出来ない演奏家はバイオリンの演奏を以て別れを告げる。大丈夫、直ぐに会えるから。それがお互い理解しているので、ここはあまり悲しみはない。問題があるとすれば種族の変更がデカい所を何度も経験してるので、新しい体に慣れるかどうか、という所だろう。

 

 エデともう1体のモンスターにばいばい、と手を振って別れを告げてからチビと同じように隠し味を投入、設定を確認して何も漏れがないのをチェック。Bランクからは戦術の要にもなるのでちゃんと抜けがないのをチェックして……良し!

 

 3重のチェックを行って何も問題がないのでゴーサインを出して合体を開始する。モンスター達が2つのシリンダーの中で分解され、概念体となってから融合し、中央シリンダーにそれまで積み重ねられた血統という名のデータに合わせてモンスターが生み出される。

 

 2つのモンスターを重ね合わせた新しい姿が中央のシリンダーから現れる。

 

 最も特徴的なのは下半身の蛇の様な体だろう。美しい煌めきを持った紫色の鱗は宝石の様で、その種としての名を冠するに相応しいだけの輝きを持っている。上半身は女の姿をしている。このような特徴をしているモンスターは1種類しか存在しない。そう、ラミア族のモンスターだ。

 

 モンスターというかモンスター娘だな。

 

 薄紫色の髪に紫色の鱗を持ったラミア種のモンスター、アメジストラミアだ。此方、ラミア種にしては中々珍しく上半身をすっぽりと覆うちゃんとした服装をしている種だ。

 

「おぉ、アメジストラミアか。中々珍しいモンスターを作ったな。近頃は全く作成されないモンスターの1つだな」

 

「種族専用の舞踏スキル以外はあんまりパッとしないからね。基礎ステータスもそんな高くないし。殴り合いするなら他の貴種の方が良いからね」

 

「貴種?」

 

 久遠がどういう事、と首を傾げる。

 

「ラミアの中でも宝石の名を冠する種はラミアの貴族や王族を示す言葉になるんだって。その頂点に立つのがクイーンラミアで6世代……つまりAランクで作れるモンスターになるね」

 

「ちなみにラミア族は種としての血統を遡って行くと蛇神に辿り着くけど、その起源は竜種にあるから竜から分岐した生物なんだよね。だから貴種や王種に限ってはそこそこ竜の血が流れてたりするんだよ」

 

 館長の補足説明にへぇ、って声が零れるがそう言えばウロボロスとか筆頭に最上位の蛇系モンスターってサブカテゴリ―竜混ざってましたね。お蔭で最終世代で蛇神と神龍並べると俺とお前が同じ最終世代? このゴミと俺が? みたいな比較始まっちゃうんだよね。可哀そう。少しはマジレス止めてあげなよ。

 

 止めない。だって対戦ガチ勢は性能とメタしか見てないから。雑魚使ってる奴が悪い。今俺の推しの事雑魚って呼んだ? ID晒すぞカス。

 

 俺達は煽り耐性がゼロ……ゼロだから戦いを求める……とりあえず違法ムーヴで気持ち良くリーサルしたい。あぁ、余計な記憶ばかり蘇って来る。思い出さなくても良い記憶ばかりなんでこうも鮮烈に焼き付いてるんだ、チョイスがおかしいだろ。

 

 合体が完了したエデは自分の新しい姿を右へ左へと確認すると、ちょっと戸惑う様に移動する。これまでの足で使っていた移動とは違う、蛇の様な下半身での移動は未経験の体だ。だがそれも短い困惑で、直ぐにマーメイドだった記憶を使って器用に装置から降りて来る。

 

 そしてここまでやってくると自分の胸元を抑え、それから首を軽く押さえ、ぎこちない笑みを浮かべた。

 

「ま、す、たぁ、いつ、も。いつ、も、きに、かけて、くれ、て。あり、が、とう」

 

「此方こそCの間はあんまり活躍させられなくてごめんな。これからは主戦場を任せる事になるから頼んだぞ」

 

「う、ん」

 

 これまで、人間らしい会話の出来ない種族ばかり経由していた弊害か、上手く喋る事が出来ないらしい。あまり無理して喋る必要はないと告げて喉を休ませる。

 

 合体が終わったチビと合流するとチビがエデを見て驚いた表情をする。

 

 エデの周りをぐるぐる回る。

 

 匂いを嗅ぐ。

 

 あ、エデだ! という満面の笑みを浮かべた。原種の獰猛さどこに消えた? ウチの牧場サイカワ枠なのは伊達じゃないぞ。そこらのメスやもんむすよりも遥かに可愛いからな。久々に風呂に入れてやるかコイツ……。

 

 さて、これでエデもBランク環境に適応した最強サポーターとしての地位を確立した。《舞踏姫》によって1ターンに2度舞踏系スキルを使用出来て、《詩吟》によって歌唱効果を任意の相手を指定するに変更する事が出来る。

 

 《詩吟》は次世代で《スーパースター》へと更新し、そこから《銀河の歌姫》か《コズミックアイドル》へと派生させる。《詩吟》時点で実は割と強い。《終律》、《フィナーレっ!》は状況と相手に合わせて選択式で。そこはカード使って柔軟に切り替える形になるだろう。

 

 メインとなる歌唱を3~4種類用意して、相手に合わせて運用を変更、舞踏はデバフとHPMP関連を1個ずつ揃えておけばとりあえず外れはない。バースト、アグロ、ミッドレンジ、ランプ……全ての状況でスキル付け替えるだけで活躍し続けられる最強バッファーはこれでほぼ完成だ。

 

 残りはもうスキルアップグレードだけに近い。対戦運用する時が楽しみだ。

 

「うっし、館長の小話に完全に吸い寄せられた使えないカス職員3人は無視するとして、次の合体だ、次の合体。ウェル―――ってもう装置に入ってる」

 

 中央シリンダーの前に何時も使ってる電子看板を置いて合体後に直ぐに使える様にしつつ、自分も合体相手も既にシリンダーの中に突っ込んで合体準備完了のサムズアップを見せて来る。良く見ればパラメーターの設定とか隠し味とかも全部ちゃんと終わらせてある。

 

 いや、確かに俺の半身だからやろうと思えばやれるんだろうけど、それはそれとしてちょっと寂しいなこれ……。

 

「まあ、ええか。じゃあ合体実行しちゃってください」

 

「はい、お任せください」

 

 元ノア勤務の従僕さんが使い物にならない3人組を無視して合体作業に入る。少しは働けよ給料泥棒とも思ったが、今回に関しては館長連れて来た俺が10割悪いので黙っておく事にした。館長が1回は合体現場見たいとか言ったらまあ、逆らえる人間いないよね。

 

「それでは合体を開始します」

 

「ゴーゴー」

 

 合体マシンが音を立てて稼働し、2つの姿が分解されて中央のシリンダーへと向かって融合される。欠けていた情報が補完、結合、昇華されて概念に含まれる情報量が増える。それに伴いモンスターという存在そのものがアップデートされ、新たな姿へと変化する。

 

 中央シリンダーから出現するのは……床に落ちたローブのみ。

 

 そう思えたのも束の間、ローブの下から影が形をとるように姿が形成される。ローブを羽織るのは漆黒の姿だ。明確に質量が存在し、生物としての形を持っている。だがメラニズムという言葉でさえ表現しきれない程の漆黒色の肌をした存在だった。

 

 頭の先からつま先まで、全てが夜の闇よりも濃い漆黒の色。ただ1つ、その片目から生える根の国に咲く花と同じ花が生えたそこだけ、黒以外の色が存在した。それがローブを纏い、シリンダーから降りて来た。

 

 彼岸の先導者……という名の死神族のモンスターだ。まあ、種族名なんて滅多に出て来ないし、引き続きウェルギリウスって覚えれば何も問題ないんだが。

 

「相変わらず口はないんだなぁ」

 

『死に語る口なし』

 

 それはそう。

 

 これでウェルギリウスも第5世代に更新完了、Bランク環境への換装完了だ。ウェルギリウスにはこれまでデバッファーとしての役割を課していたが、これからはその部分を除去する。というのも最終構築では行動制限系デバフには頼らない予定だからだ。

 

 これまでデバフ+割合ダメやデバフ+バステみたいな動きをさせてコントロール軸を展開させていたが、デバフを撒く事に関してはエデという完全上位互換が登場した為、ウェルギリウスのデバフ能力とついでに《全能者の采配》と《全能者の憂鬱》がお亡くなりになった。

 

 それに伴いウェルギリウスには純粋なパーミッション能力の強化を……つまり打ち消し方面への能力の強化と、サクリレイズ系統の蘇生コントロール能力の強化を行う。これまでは結構幅広い活躍をさせていたが、これからはもっと特化させた活躍へと動きが変化する。

 

 その根幹にあるのはエデの様な範囲が広く、多重にバフデバフを撒く事の出来るキャラクターが増えて来る事にあって、ここら辺からそれらに対するメタを意識しないといけない所にある。ウェルギリウスはそういうキャラクターに対するメタ能力を鍛える必要があるので、これまで積んでいたデバフ系能力は外す必要がある。

 

 3:3環境は1回の戦闘に登場するキャラクターが増える分、特化させたキャラクターを編成させる事が出来るようになる。Cまでの2:2環境だと特化して性能はメタられやすいからどうしても複数の役割を持たせた運用がメインになってしまうが、ここからはその縛りが薄れる。

 

 Bからはまた違った活躍の仕方を見せてくれるだろう。DLC参戦枠だから強いのは既に確定しているのだ。

 

「おぉ、見ろミコト。今度のウェルは姿が自由自在なのだな」

 

 俺と久遠の前でローブを纏った黒い姿が俺そっくりのシルエットに変化し、それから久遠そっくりのシルエットに変化する。まっくろくろすけなので顔がなく、顔の代わりに目のあるべき場所から花を生やしているだけなのだが、本人そっくりだと解るぐらいには形を真似ていた。

 

 へぇ、こういう事が出来るんだ。

 

 さっきから研修くんの声がしねぇなぁ、と思って部屋の一角を見て見たらちょっと視線向けた事を後悔する光景が広がってたので見なかったフリをしてウェルギリウスのデータチェック。欲しいもんも揃えてあるし、これで良し!

 

 良し!

 

 これでチビ、エデ、ウェルギリウスの合体が終わった。ここまでは人格継承組なので比較的にすんなり合体が進んだ組だ。このほかにも今日はチビドラの合体を通してBでも活用できるドラゴン軍団の作成とか、牧場用の生産モンスター作成もある。

 

 だが次はあの3人。

 

 フラメア、イーリュ、シェイナ達3人の順番だ。この3人はこれまでの3体とは違って、明確に人格が継承されないモンスターだ、

 

 いよいよ、彼女達の出番がやって来た。

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