9月、ついに俺らのゲームがゲームショウにて公開される。
尊、お前をブースから追放する。炎上してる奴を出すのはリスクがデカいからな!
まあ、それはそう。顔出し禁止になったのでゲームショウは見に行く事が出来ずに済ませてしまったが、パンイチマンや宣伝担当従僕からブースは概ね好評だったらしい。無事、年内発売を目指して宣伝も打ち出すようになり、期待は上々……らしい。
さて、炎上に関してだが段々とだが面白い話題になって来た。
最初は鴉羽尊という奴ルール違反してるのに昇格した! という所から燃えだしたのだが、これがどうしてルール違反したのか? という所にタッチすると采配と憂鬱という2大バグマスタースキルの存在が出て来る。
俺みたいに歌唱や専業サポーターで多重バフデバフを展開出来るなら必要のないマスタースキルだが、世間一般からすれば奥義クラスのマスタースキルになる。希少性は勿論、性能もとんでもなく、是非とも学びたいと言い出す人が後を絶たないレベルのマスタースキルだ。
性能が飛びぬけてるのは良い、それを見つけた本人が運用するのだってまあ、そりゃあそうだろ。だけど何故制限する? マスタースキルは禁止とかしない方向性だったのでは? いや、アレは強すぎてCランクというバランスを崩壊するだろう。
Cランク崩壊の話をするならそもそも死神とか許可してる事自体がおかしいのでは? 固有種とかいう他人が入手できないモンスターを使っているマスター全体が規制対象になるんじゃないか? どうしてこのスキルだけ制限行きになったんだ?
これは個人に対する攻撃にならねぇか? それよりもコイツの動物虐待コンテンツの方が問題だろ。どんだけ殺すんだよこの兎。なんで観光で死人が出るんだよおかしいだろこの牧場。おっしゃる通りです。返す言葉もありません。
采配憂鬱がバランスブレイカーなら永世GMの専用マスタースキルは彼一人しか使えないんだから制限すべきでは? CとSでは環境が違う! 話が変わって来る! 強すぎるから制限するという意味では何も変わらないだろ。
特別なものを排除して制限する事が公平なのか?
同条件で戦う事が公平な戦いだとしたら、才能や努力で得られた成果は否定されるのか?
最初は小さな火種だったが、案の定鴉羽尊という人間は燃やす事に関しては物凄い才能を発揮する。前回とは違い、今度は勝手に大炎上してあっちこっち燃やしまくる事態となってしまった。無論、制御は不能。人類は本質的に本能寺が大好きなので燃やし始めると燃やせるもんが全部燃え始める。
久しぶりにバトル界隈の炎上が再スタートした。この世界の人間、闘争本能有り余ってるな。
ここまで来るとなんかもう、とりあえず燃やそう! みたいな精神が目立ってくる。最初に燃え始めた原因がなんなのかはもう誰も気にしなくなってくる。
協会は特別なダンジョンを隠してる! はい。
協会は特権を独占している! はい。
協会は社会を裏から牛耳っている! はい。
まあ、陰謀論なのだが概ね文句は言えない感じの陰謀論だった。裏話聞いちゃったからね。
10月、中学最後の学園祭を堪能し終わる頃にはこの炎上騒動はちょっとした収束を見せ始める。というかそれどころではなくなった。
大阪市レベル100事件である。
つまり大阪市のど真ん中にレベル100のモンスターが出現するダンジョンが誕生してしまい、都市機能が麻痺、緊急避難にまで至った事件が起きた。
DLCダンジョンの発見により全体的にインフレ傾向にあるランダムダンジョンはついに100レベのモンスターが出現するようになっていた。
だがそれが影響するのはダンジョン活性域、つまり駆間の様な都市付近だけの筈だった。館長に話を聞いても特に都市部に出現するようには設定してないし、するはずもない。
そもそも久遠の様な体質……誘因体質はこういうダンジョンが都市部に出現しないように活性域に住まわせることでそっちにダンジョンを引き寄せるための隔離措置を取ってる。
木を隠すなら森の中、ダンジョンを隠すならダンジョンだらけの魔境で。駆間にも俺が知らないだけで他にも数人、誘因体質の人がいるらしい。
だから都市部でダンジョンが出現するのは本来ありえない事、とは久遠パパの言葉だった。
つまり、大阪レベル100事件は狙って起こされた事件だった。
果たしてこれが教団の取った手なのか、それとも協会が仕組んだ話題そらしなのか。その真実にたどり着くことはないだろうが、都市部で発生したダンジョンは数名のSランクマスターが急行したことで1時間以内に犠牲者もなく終息した。
だがこの事件を通して人々の危機意識は一気に上がった。炎上してた話題は次の議題へとシフトする。
即ち、どうすれば身を守れるのか?
やはりモンスターを飼うしかないんじゃない? じゃあやはり、レギュレーションで個人が突出した才能を運用することを否定するのは間違いなんじゃないか? こんな事があるならモンスターを飼えば良かった。
そもそも上のランクは席が少なすぎない?
自衛力が求められる時代なのに1度の認定戦でランクアップできる人は1会場につき1人だけ……これはあまりにも少なすぎる。
事件で鎮火してた協会バッシングは再び再燃しようとしてた。俺もSNSでこれを燃やそうとしたから。この結果アンナにアカウントを凍結されてしまったが……協会の再炎上に成功する。やっぱ俺、采配と憂鬱が禁止にされてたの納得行かねぇからファンネル使って燃やすわ。
が、流石の協会も段々と燃やされることに慣れたのだろう。ここで驚くべき対応に出た。
年間昇格数の引き上げに出たのだ。
具体的に言うと人数が細くなるB,A,そして毎年各国から1人しか選出されないSランカーを増やすという方針を見せた。
これまで協会はかなり厳しくこの数を増やす事を否定してきた。モンスターマスターを増やさないと興行は成立しないが、増やしすぎると世が乱れる。
館長曰く、モンスターバトルの認定戦は儀式になっている。マスターとしての格を示すことで上位のモンスターに自身の存在を認めさせ、合体によって呼び出せるようにする儀式になっているらしい。
だから認定戦という形を崩す事はできない。その為、年間辺りの認定戦の数を調整する事になった。
B認定は年4に変化し1月、4月、8月、12月開催に。
A認定は年3で4月、8月、12月に。
S認定は年2で6月と12月開催となった。
一番大きな影響は間違いなくSランクだろう。これまで一枠しかなかったランカーの枠が年2になったのだから。流石協会、燃やすと良く燃えるし反応も素晴らしい。
こうしてこの炎上騒動は結局、協会を燃やす俺の努力によって完全に終息した。
しかし燃やすたびに環境が改善されるので、俺はこの玩具、また燃やしたいなぁ……と思いつつあった。来年もまた燃やそう。
そう思いながら迎えた12月。
モンスター達の育成もだいぶ進み、ゲームの体験版も配布が完了した。ゲームの序盤を遊び込める体験版も好評、これなら発売しても悪いことにはならないだろうという感触を獲得していた。
少し前に認定戦を受けてBになったと思ってたのになぁ、とか言っている間にもう雪が降り積もって1年の終わりがやってきた。
環境破壊したのがもう1年も前の出来事だと思うとちょっと複雑な気分にもなる。時の流れは早く、思ってた数倍中学卒業の日が近づいてくる。
中学卒業しても結局は駆間の高校に通うんだけどな……。
等と思っている時、そいつはやって来た。
「やあ、尊くん」
「アレ、仮面マンじゃん」
冬になって冬眠しかかってるおぢさんをヒーター全開の屋内から引っ張り出してトレーニングに送り出そうとしていると、仮面マンが珍しくウチの牧場にやって来た。
ぴょんぴょこ跳ねるゼリィ達はいつ見ても可愛らしく、癒やされる。
「あぁ、そうだ。言い忘れてた。GMおめでとう。あと2回勝てば永世入りだね」
「ありがとう。まだまだ入り口に立っただけだよ。それにブライアンに勝てなきゃ最強は名乗れないしね。彼に勝ってから漸く胸を張ってグランドマスターは名乗れるのさ」
10月のチャンピオンシップ、今年のグランドマスター決定戦は永世になったブライアン抜きになった結果、見事仮面マンが優勝してグランドマスターの称号を日本に持ち帰った。
剛三以来の快挙らしいが……まあ、話題の時期が悪かったね。炎上騒動と丸かぶりしててちょっと話がとっ散らかっちゃった。ちょっと申し訳ない。
「今日はどうしたん? 樹海チャレンジ?」
「いやぁ、やりたいけど中々スケジュールがね……場合によっては数年表舞台から消えるのは……」
「せやな」
暗黒樹海、広すぎて入ったら年単位で外の世界から消えるからね。攻略するなら年単位で表社会から消える覚悟が必要だ。勿論、それは中々難しい。
これに関してだが、時折無許可の侵入者とかがウチの牧場に来る。AとかSの犯罪者マスターだ。こっそり警備を突破して樹海に密猟しに行くつもりなのだろう。
まあ……誰も生きて帰らないのが答えだ。
ラトゥーリア達、アレでゴリゴリに創造主の祝福を受けたアルティメット生物だし……。寵愛レベルで加護を貰ってるから死ぬほど強いんだよね。
樹海の監視と守護が主な業務なのでそれを超える力が必要だから当然といえば当然だ。インフレしてない人類ではちょっと無理じゃないかな。
そうでなくても樹海内のワンダリングボスは全部無傷で徘徊中だ。今の人類トップ達を集結して戦う強さしてるからまだ無理だろ。
「尊くん、君もBランクマスターだ。Bからはプロフェッショナルの世界だ。参加マスターは1人の社会人として見られる。それに相応しい振る舞いをして欲しいなぁ……と言いたいけどもう無理だよね……」
「途中から言葉弱くなってる」
ごめんね、昇格と同時に燃えて。
「こほん」
仮面マンが咳払いする。
「今日来たのは他でもない、東吾の代わりなんだが……」
そう言って仮面マンは封筒を取り出した。
「Bランクからは協会から色々と受けられる仕事の中でも、下のランクでは受けられなかったものが増えてくる。こういう細かい仕事をしてくれる人を協会は評価し、覚えてくれる。企業の方も仕事をしてくれる人の事は覚えてくれるしね」
その、なんだ、と続ける。
「印象を良く出来そうな仕事をピックアップしてきたんだ……やってみないか? 損にはならないと思うから。心証も良くなるし……!」
そう言う仮面マンと企画してくれた東吾の優しさでちょっと申し訳無く、泣きそうだった。