さて、チビチームの出番である。
「準備はいいか?」
「ワン!」
「うーん、見事に犬」
「よろしくねぇ」
『そこはかとない不安』
手をひらひらしてるノトス、尻尾ぶんぶんのチビ。その様子を見てウェルギリウスが電子看板掲げたコメントを残す。まあ……言いたい事は解る。
でもチビもノトスもトレーニングを完了させて最前線で戦える様に育てた。2人共未完成のモンスターだが、悪くはない筈だ。ちなみにウェルギリウスはエデミレーナ並みにイカレた性能をしてる。
そう、チビとノトスは未完成のモンスターだ。
チビは次世代に移る時にカウンター血統と合流して回避から攻撃を繋げる事が出来る様になり、Sになる時に白紙血統と合流してクリティカルと弱点付与を習得する。
これにより理論最高値をマークする化け物アタッカーが完成する。
だが当然、それはつまりそこまでは未完成のまま進まないとならないということだ。
Bからはよりインフレが進むのは覚えられるスキルが増え、合成と圧縮によりスキル性能が大幅に進み、完成されたスキルが見られるようになるからだ。
この環境では正直、回避力のみのチビは辛い部分がある。
ノトスもミレーナと比べればちょっと火力不足が目立つ。とはいえ、スペックを見れば今の世界では上位帯に入るだけはあるだろう。
それにウェルギリウスがいる。
こいつは明確に環境メタに立つモンスターだ。能力を特化させた影響もある。ポジションではエデと互換するという意味を相手には理解してもらおう。
ヤバいぞ、今期からのウェルギリウスは。
と、いう訳でして。
「対戦よろしくお願いします」
「対戦よろしくお願いします……楽しみにしてるぜ!! お前の新環境構築!」
「酷い試合になるぜ!」
試合、開始!
Bランカーが勝負を仕掛けてきた!
リッチが現れた!
ウィングレオが現れた!
クリスタルゴーレムが現れた!
《スポットライト》! チビに注目が集まる!
ウェルギリウスは《根の国》を展開した!
《輪廻転生》……また来世で!
ウェルギリウスは皆との再会を約束した。
チビは来世でもまた会えるってさ!
ノトスの《悪夢の敗残者》!
基礎クリティカル率が50になった!
《運命共同体》でバフがチビに共有された!
リッチは《幻想図書館》を展開した!
ウィングレオは《ロケットスタート》を切った!
ウィングレオの速度が1段階上がった!
クリスタルゴーレムは《守護神》を起動した!
クリスタルゴーレムは守護の精神で《クリティカルガード》を発動した!
クリスタルゴーレムはクリティカル耐性を得た!
お、やるなぁ……。
セットアップでクリ耐性にフィールドを持っていかれた。速度を遅めにすることであとだし展開を目的にしてる。ウィングレオは速度バフ乗せて後から先抜きする調整か。
クリゴの耐性が一番厄介かもな。自分の一番弱い所を把握してカバーしてきてる。受け側の意識がちゃんと出来てるパターンの構築だ。
これだけ見てCランクとは戦闘力が全然違うって解るよなぁ。やっぱ凄いインフレするな、Bからは。
とはいえ。
今回は特化した死神の恐怖を味わってもらおう。
「セットアップ終了。行くぞ」
チビは《カオスタイム》に突入した!
混沌とした時間を纏った!
《クォンタム》! 《カオスタイム》が再発動!
纏う混沌は更に深まった……。
ウィングレオの《バウンスクロー》!
乱反射する爪撃が襲いかかる!
《スポットライト》!
チビに攻撃が吸い込まれる!
チビは絶対回避だ! 攻撃を回避した!
《自信過剰》なチビだ! 回避に成功しMPがちょっと回復した!
《刹那の見切り》が連動した!
《クイックレイド》が使用可能になった!
チビの《クイックレイド》! 残り0!
ウィングレオに小ダメージ!
「グルぅ!?」
「ワン!」
自分よりも巨大な翼を生やしたライオンに臆する事なく素早い攻撃が叩き込まれた。回避したのに殴られた。そんな困惑した表情をしている。
《クイックレイド》は少々特殊なスキルで、手番を消費せずに使える攻撃スキルだ。その代わりに発動には《刹那の見切り》という専用スキルを発動させる必要があり、これは回避に成功した時に発動する。
つまり回避すればする程に攻撃スキルをスタック出来るのだ。取り敢えず機能するのは見れた。ここからは数発スタックさせてバーストさせることを狙いたい所だが……なんかレオ硬くない? 《クイックレイド》は攻撃力80%だから防御による減衰がデカくてダメージ通りづらいにしても結構硬くない? シンクロ通したチビの爪で引き裂いた感触結構硬かったぞ?
……物理半減耐性? でもコイツ物理耐性は普通じゃなかったっけ? いや、変種か何らかの知らない技術の影響だろう。半減されると考えて行動するか。クリティカルで抜けるのは防御力までだ。耐性を何とかしない限り物理での有効打は通らない。
無論、この悩みは既に解決手段があるので論じるほどでもない。
先に面倒な相手から潰して行こう。相手はタンク持ちだ、こっちが削り切られる前に相手を削り切ろう。
ウェルギリウスの《ディスペル》!
クリスタルゴーレムのクリティカル耐性を解除した!
打ち消した事により《可能性の否定》が連動した!
《シフトターゲット》で対象を変更した!
ウェルギリウスはリッチに《可能性の否定》を行った!
リッチは強化無効状態・1回になった!
《削れる運命》! リッチの体力が1割減った!
リッチは《暴走詠唱》を行った!
Fail! 強化無効により詠唱が溜まらない!
クリスタルゴーレムの《カバーリング》は反応しない!
「うん? うんん???」
反対側でメッチャ首を傾げているのが見える。防御手段である《カバーリング》がこのターン、まるで反応していない。これが《ディスペル》の様な主動作なら庇う対象になるのだが、《可能性の否定》と《削れる運命》は追加効果みたいな枠に入っている。つまりこれは庇えないスキルなのだ。
《シフトターゲット》で対象を差し替える事で有効な相手に連動スキルの効果を与える。打ち消し、デバフを起点に連動して追加で相手に強化無効を付与する。
これでバフやトークン蓄積型のユニットは封殺できる。
これでリッチは事実上の機能停止した。後は図書館での自動スタックを警戒するだけだ。
おぢさんちょっと運動は苦手なんだけどなぁ……。
《船解体斬り》をリッチに放った!
クリスタルゴーレムは庇った! 防御している!
ノトスはクリスタルゴーレムの構造を見抜いた!
クリスタルゴーレムに物理弱点を見出した!
《慧眼》! クリティカルダメージが強化される!
《追い打ち》! 弱点に対するクリティカル力が上がる!
Critical! Weak! クリスタルゴーレムにダメージ!
《食い込む結晶》! ノトスに小ダメージ!
《無残》に《船解体斬り》が放たれる!
Critical! Weak! クリスタルゴーレムにダメージ!
《食い込む結晶》! ノトスにダメージ!
クリスタルゴーレムは防御している。
クリスタルゴーレムの体力が回復した……。
ターン末処理、特になし。相手の構築が見えて来た。
遊撃担当のウィングレオは耐久度が高くて持久戦も行ける。クリスタルゴーレムは接触ダメージ持ちで高耐久、自己回復力持ち。リッチはミッドレンジからランプ想定かな? 《無詠唱》を使わないって事はゆっくりやるつもりなんだろうし。
クリスタルゴーレム君がまあガチ目の強さしててちょっと笑う。種族特性で物理耐久高く、魔法耐性も20%から30%ぐらい備えてた筈だ。その上に接触ダメージで物理受け能力を高めてて、魔法に対しても自然回復を備えてる。ガッチガッチの要塞ビルドやぞこれ。
詠唱は図書館で東吾たちもやってたが、強化無効化を使う事で詠唱のスタックそのものを停止させる事が出来る。マリアゲルダ攻略はこれを使った詠唱スタックの停止でなんとか勝てたという形だった。この戦法、忘れがちだが普通にPvPでも使える。
というか使わないとアルティティシア辺りが無法すぎる。《理の超越》発動に必要な詠唱は50だっけ? アレが溜まらないようにまずは全力で詠唱スタックを阻止しないと発動した瞬間にゲームセットだからな。
うし、深く考える事は特にないな。試合を進めて行こう。最速で動けるチビに再び《カオスタイム》を指示する。《スポットライト》による集敵効果は3ターン持続する。その間は絶対回避を維持しつつ敵のヘイトを集め続ける。ここ、やる事マジで代わり映えないんだよね……。
チビが2ターン目の動きを作った事で試合が動く。
ウィングレオの《インフェルノブレス》!
《ワイドガード》! チビは皆を庇った!
チビは庇いつつ絶対回避で回避した! アレ? 避けて良いの?
《刹那の見切り》! 《自信過剰》!
ブレスの追加効果でチビは火傷を負った!
チビは火傷のダメージを受けた!
ウェルギリウスの《ディスペル》!
ウィングレオのバフが解除された!
《シフトターゲット》! 《可能性の否定》! 《削れる運命》!
リッチは詠唱が出来ず膝を抱えて丸まった。
えー、もう出番? 《船解体斬り》!
Critical! Weak! 接触ダメージ!
《無残》から再び行動が繰り返される!
Critical! Weak! 接触ダメージ!
クリスタルゴーレムは防御しつつ回復している!
「????? 避けても火傷するんだ……」
「避けてるのに火傷するんだ……」
なんかレアな現象を見た気がする。絶対回避でブレスを回避したのにブレスの追加効果だけは受けてる。アレって判定別なのか? 回避したら普通追加効果も回避しねぇか? いや。なんかおかしくねぇか? 追加効果だけなんで発動してるんだ?
もしかしてこれ何らかのバグか? いや、リアル化した世界でバグなんてある訳ないんだけど……なんか、こう、意味不明な現象を見ると流石にちょっと目を疑うな……。
ちょっと俺も対戦相手も腕を組んだまま首を傾げて無言でチビを眺めてしまった。謎過ぎる現象の発生に一瞬だけ戦闘が完全停止し、疑惑の火傷判定に全員が頭の上にはてなを浮かべた。ウィングレオくんもえ、なんで? って困惑してる。
皆が困惑してるの流石に面白すぎる。これ前世でも見た事がない現象だぞオイ!!
この手のブレス、S帯では使わないから絶対回避と組み合わせるとどういう挙動するのか全く知らなかったな……。
「……まあ……戦闘……続行……しますか?」
「……続行……しますか……」
凄い気になる現象だけど検証はまた後で。えーと、何してたんだっけ? そうだ、戦闘をループ処理に追い込んでアドバンテージ稼ごうとしてたんだ。
という訳で3ターン目。
チビで《カオスタイム》、運良く《クォンタム》が発動して回数が増える。解除するバフが無くなったのでデバフ付与で起動して庇うすり抜けて強化無効化を付与、ついでに体力を割り合いで削る。チビで攻撃を回避処理してクイック溜める。ノトスでクリスタルゴーレムを殴って削る。
ゴーレムの耐久が高いので中々削れない。ここまで3ターン、ずっと殴って大体体力5割削れた。ノトスは接触ダメージでHP残り6割ぐらい。結構削れてるね。これで3ターン目も終了。これがミレーナ編成だったら既にリーサル取ってると思う。
4ターン目、チビの集敵効果が切れる。まだ絶対回避バフは2個残ってるのでこれを活用する。
チビ→挑発
レオ→攻撃→回避成功
リッチ→中級単体魔法→チビ
ウェル→デバフ→強化無効
ノトス→攻撃
クリゴ→防御&回復
これで4ターン目が終了する。ここら辺でちょっとチビのHPがキツくなる。ついでにクリスタルゴーレムの死が見えて来るのとノトスが接触ダメージで危なくなる。
なので5ターン目。
チビの《クイックレイド》!
Critical! Weak! クリスタルゴーレムにダメージ!
《食い込む結晶》! ダメージ!
チビの《クイックレイド》!
Weak! クリスタルゴーレムにダメージ!
《食い込む結晶》! ダメージ!
チビの《クイックレイド》!
Critical! Weak! クリスタルゴーレムにダメージ!
《食い込む結晶》! ダメージ!
チビの《クイックレイド》!
Weak! クリスタルゴーレムにダメージ!
《食い込む結晶》! ダメージ!
チビは死亡した!
《輪廻転生》……約束された来世がやって来た。
チビは生き返った!
チビの《カオスタイム》!
「!?」
ひゅんひゅんひゅんひゅんして一瞬でクリスタルゴーレムの周囲を瞬間移動の如くチビが攻撃しながら動き回ると、そのまま接触ダメージを受けてひゅんひゅんしながら死亡し、死亡した勢いのままリレイズ効果で死体が滑りながらこの世に戻って来る奇怪な姿を皆に見せつけた。
死んだ事でバフデバフは全部剥がれる。謎の火傷はこれで消えた。いや、ほんと謎の火傷だったなアレ……。
相手の《ワープスター》! 行動に割り込む!
尊の《ワープスター》! 最速を抑える!
ワープ合戦で頭を抑えて飛び越すのを止める―――相手が先手を取れたらクリスタルゴーレムの回復でターンを耐えきるつもりだったのだろう。でもそれは当然通さない。
リッチによる初級魔法、そしてウィングレオによる攻撃をチビで受けて《クイックレイド》を装填しつつHPを削られる。蘇生直後なのでワンパンぐらいなら耐えられる。
そのまま、ノトスでクリスタルゴーレムを落とす。
5ターン目でクリスタルゴーレムが陥落する。終わり際に《クイックレイド》をリッチに叩き込んで始末する。
6ターン目、ウィングレオ対此方3体の構図が出来上がる。ここまで盤面が完成するともはや相手に覆す方法は存在しない。
「負けました……いやあ、やっぱ強えーなー」
「対戦ありがとうございました。グッドゲーム」
火力が足りないから少々長引いたが、性能をフルに発揮すればウェルギリウスで大体試合のコントロールは出来る。地味だが相手にしたい事を一切させない、それこそが死神の役割。
マイナス方向でパーティーをサポートする人権デバッファーの動きだ。