最強以外ありえない   作:てんぞー

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ぎゃあああーーー!!!

「ここが世界最高の養成校ね!」

 

「久しぶりに来たが相変わらず馬鹿広いな」

 

 ほへー、と声を零しながら空から見下ろすその学園の敷地はとにかく広かった。広く、とても広く、馬鹿広い。見える範囲全てが学園の土地だと言われるともう驚きだ。金のあるところにはあるのね。

 

 飛行型クジラはやはりRPGのロマンだよね! という事でウチでも1頭移動用についに確保した。まあ、サイズは普通のクジラサイズなのだが。

 

 ただ広い背中の上はマットが敷けたりして結構快適だ。ドラゴンよりは乗りやすいかも! とか言ってるのをミストに見られるとショックを受けた顔をして引き籠もられる。

 

 アイツ、何時の間にか俺と久遠の姉ちゃんみたいな顔をするようになってたからな……いや、何時も世話になってるしポジション的にそう大違いでもないと思うけど。

 

 そんなこんなが脳内を駆け巡りつつ、東吾と共にアメリカはテキサス州、バカ広くて何もない土地と言われるこの州にやってきていた。

 

 流石モンスターバトル文化に世界一力を入れてくる国、規模や気合の入れ方が違う。都市サイズの学園をマスターの育成の為に用意するなんて相当気合の入ったイカレ具合だ。

 

 ちなみに駆間や逆田は生存競争から始まって未だに安定した生活の中で生存競争を繰り広げるための都市だ。なんなんだお前。

 

「良し、降りるぞ」

 

「オッケー。モビー、あのゲート前に降りて」

 

 ぬおーんと響く声で返答したモビーちゃんことグラビティホエールが返答してくれた。ゲームじゃ使わなかったけど、リアルになると使い道あるねー。

 

 次世代は白鯨にして、最終でトワイライトかなあ。空港のデカい奴、俺も欲しくて作り始めちゃった。ちなみに食費はかなりえぐいらしいです。まあ、ウチはBランクに上がった結果合体出来るようになった新しいモンスターからの収入が増えてるし多少余裕はある。

 

 後は俺が大会で勝ち始めれば安泰かなー。

 

「しかし想像の数倍デカかったな」

 

「学園規模でモンスターを収容するんだぞ? 都市規模の学園でもなければ何百人のモンスターを収容して生活しつつマスターとしての修練は出来ない……まあ、駆間の様なダンジョン活性域にある都市がモデルになってるのは事実だ」

 

「成程、どうりでちょくちょく爆発してるのか」

 

 地上に降りつつどごーん、という音と共に校舎が爆発するのが見えた。どうしよう、思ってたよりも実家の味に近い。遠出して新しいラーメン食いに行ったら実家と同じ味だったパターンだよこれ。こういうオチは求めてなかったなぁ。

 

 学園全体がぐるりと巨大な壁に囲まれている。入口となるゲートの前には武装した軍人とモンスターが立っている……六世代目だからAランカーかな。軍人でAランカーとは凄いな。

 

「ここもダンジョン活性域なの?」

 

「いや、違う」

 

「ID please」

 

 2人一緒に協会から貰った通行許可証を提示すると照会される。

 

「ここはそうじゃないが、ここから10キロ離れた所にある」

 

「結構近いな」

 

「そうだな、簡単に飛べる距離だ。学園の生徒はそっちに飛んでダンジョン探索等を行っているんだが、アメリカでは活性域の管理を軍が行っている」

 

「日本とは違うんだな」

 

「日本は何というか……元々あった活性域に人が住み着いて、勝手にそこでサバイバルしながら発展したパターンなんだよな……。普通はそういう地域から離れるだろ? だけど駆間の先住達は意地でも土地から離れず徹底抗戦した結果が現代だ。アメリカは日本と違って土地が広いから徹底抗戦せずに土地を離れるケースが多かった。その結果後から軍が管理するようになった」

 

「文化と歴史の違いを感じるなぁ」

 

 通行許可証を返してもらいつつ開いたゲートを抜けて中に入ろうとすると。軍人の1人が待て、と声をかけて来る。

 

「Autograph please」

 

「サインが欲しいって何か書類とか―――」

 

 言葉を途中で終わらせて、軍人が持って来たものを見た。その手の中にあるのは何と原作(仮)のパッケ版ではないか。軍人の兄さんは良い笑顔でサムズアップを浮かべるとサインペンを手渡してくる。サインを求められるのはちょっと恥ずかしいなぁ……と想いながらサインすると滅茶苦茶感謝された。

 

 ゲートを抜けた先に広がっているのは広大な敷地を持つ都市デザインの学園。住居や店舗の姿が見えるが……車や電車が走っているのは見えない。ここもモンスターでの移動手段が発達しているらしい。

 

 ゲートの向こう側で図書館へのダンジョンゲートが開き、モビーがそれを抜けてアメリカを去って行く。ご苦労さん、と手を振って送り返しながらこの学園の敷地を東吾と歩いて進む。

 

「ここ、グランストンマスターズスクール、通称GMSでは数百を超える学生が同時に生活している……勿論それを支える教員やスタッフと共にな。ま、モンスターと一緒に暮らしている分色々とトラブルもあったりするが―――」

 

 歩きながら横を見るとバイクに乗った学生っぽいのがそのまま前を走っていたオルトロスのケツに先端を突き刺し、涙を流しながら吠えたオルトロスの口からブレスが飛び出し、それが更に広範囲を破壊して行く。死のピタゴラススイッチが開催されていた。

 

 ちょっと道を外れて図書館経由でララを回収してくる。数歩先を歩かせる。

 

「僕はカナリアじゃないっすよ???」

 

 歩き出すララ。踏んだマンホールは上へと向かって射出され、マンホールと共に一瞬で視界から消えてしまった。開始3秒で用意したデコイが消えちゃった……。やっぱここはダンジョン判定なのかもしれないな。

 

 ララが消えてしまったが俺達の見学は終わらないので、駆間で鍛えられた危機回避テクニックで見事に一番の乱痴気騒ぎを回避しながら奥へ、校舎へと向かう。道中で見かけるのはやはり学生とモンスターの姿ばかりだ。

 

 最初、ここを眺めながら思ったのは駆間に似ていると思った事だ。

 

 だが観察しているとここは少し違うように感じられる。

 

 駆間の混沌は結局の所、本質にあるのは生存競争による適応だ。戦わないと生き残れないから図太くなってゆくという現象だ。

 

 ここにあるのはもっと無作為で純粋というか……そう、遊びが多いとでも表現するか。事故や派手な爆発はあっても真面目じゃない感じがする。

 

「と、ここが本校舎だ。まずは見学の登録だな」

 

「あいよ」

 

 東吾が道をよく知ってるみたいなので素直について行く。校舎前まで来ると流石に注目をあびるのかヒソヒソ声が聞こえてくる。視線は東吾にも俺にも向けられている。

 

 ……ちょっと頭が痛くなってきた。

 

 見える範囲にノイズが多すぎる。王兄様(おにいさま)に買って頂いたサングラスを装着して中央が見えないようにする。これで余計な視覚情報が入ってこないから多少マシか。

 

 駆間は長く住んでるのもあって慣れてるからいいけど、流石にこうも人が多い新しい場所はキツイな。前よりも限界を迎えるのが早くなった気がする。

 

「実は俺を含めたトッププロは偶に講演や実技のために呼ばれることがある……知ってるか? ブライアンもここ出身だぞ」

 

「へー、アイツもそうなんだ」

 

「ここじゃキッチリ社会常識も叩き込むからな、今は破天荒だけど卒業する頃には比較的大人しくなる。ま、ほとんど良い家の出が多いからモラトリアム終了と共に弁えた……とでもいう態度に変わるのさ」

 

「それは……ちょっと寂しいな」

 

「寂しいか」

 

 俺の毒されきった表現に東吾は笑い声を零すと頷いて同意した。

 

「そうだな、ちょっと寂しいけどそれが大人になるって……いや、止めよう。この言い方だとまるで駆間の大人が大人になれきれてないみたいだ」

 

「何も間違ってないが……?」

 

 何も間違ってないぞ!!!

 

 という事で校舎に入って受け付けで見学の申請……は事前に終わらせてたので来訪者パスを貰うと初老の女性がやってきた。サングラスの隙間から盗み見る姿にはノイズが走らない。

 

「ようこそ、当校へ。理事長を務めるサリーン・グレイウッドです。訪問を歓迎しますMr.叶、Mr.鴉羽」

 

 流暢な日本語で話しかけてくるもんでちょいと驚いてしまったが、直ぐに握手で対応する。

 

「初めまして、鴉羽尊です。綺麗な日本語ですね」

 

「ふふ、ありがとうございます。我々の世代は剛三様と話したりするのに日本語は必修科目でしたからね。彼は日本語以外を話すのを嫌がりますし、通訳は完璧じゃないから嫌だとか良く言われたもので……」

 

 おばあちゃんの目が淀んじゃった……。

 

 俺も東吾もウチの国の恥がすみませんね……としか心の中で謝れない。

 

「と、すみません。本日は私自身がゲストの案内を務めさせて貰います」

 

「よろしくお願いしますグレイウッドさん」

 

「よろしくお願いします」

 

 老人は敬え、ただしクソジジイ以外。みこっちゃんは人間ができてないけど常識はあるのでちゃんと擬態出来る。サリーンにペコリと頭を下げてから一緒に校舎内を歩き出す。

 

 ベルが鳴り、ホームルームが始まる。学生達が急いで教室の中に入り込んで行く。

 

「当校では小中高一体型の学園で、幼少からモンスターマスターとしての最高レベルの教育を、そして社会常識や教養も教えています」

 

 教室を外側から覗き込む。

 

「モンスターは解りやすい力です。暴力です。しかも銃よりも簡単に手に入る力です。ライセンスさえあれば子供さえ手に入る力……これは正しい使い方を倫理と共に教えなければなりません」

 

 そこら辺の教育がしっかりしてるから外の混沌があっても卒業する頃には奇行も収まるのか。元々育ちの良い家庭出身というのもあるから自然と収まるのかもしれない。

 

 それが出来ないワルガキが俺等なんだが……。

 

「そして当校は常に最新で、最も効率的な学習法を採用しています。ご覧ください」

 

 教室の1つの前で足を止め、中を見せる。その中ではパソコンを前に皆座っているのが見える。おや? なんか画面が見覚えあるな……? いや、見覚えがあるってレベルじゃねぇ!!!

 

 アレウチのゲームじゃねぇか!!!!

 

「素早く対戦とデータの参照、シミュレーションが出来るという事で教材として採用されました」

 

 ぎゃあああーーー!!!




 ラスベガス 危険度・無 人口・大 モンスター人口・小~中
 防衛力・国軍 年間死傷者なし

 マスターズスクール 危険度・低 人口・中~大 モンスター人口・中
 防衛力・国軍 年間1~2人死者

 駆間 危険度・極大 人口・中 モンスター人口・大 野生モンスター・大
 防衛力・自衛 年間死者数多数
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