「貴方がMr.鴉羽か……最年少のBランクマスターとは聞いていたけど、若すぎる」
学園のアリーナに案内され待っていたのは無数の学生たちの姿だった。学園在籍のBランカーは全部で6人程度らしい。数百人の中の6人だけだと考えるやはり狭き門なのかなぁ、と思っていたが理事長の話だと既に数人、卒業に向けて学園を出て社会で色々とやっているらしい。
アンナもそうだが上流階級の人間は必ずしもずっと学園に居られる訳ではない。立場や仕事があって定期的に学園を出るし、特にこの時期は忙しい。だから残ってる奴はそう多くはない。もっと早い時期に来ればもう少し多くの学生を血祭りにあげる事が出来たかもしれないと考えると少し残念だ。
「ルール違反をしてまでの勝利―――」
「実力が伴ってるかどうかを知りたいなら戦って感じ取りな」
シンクロなんかしなくても心は読める。コイツ、心の中では俺を舐めてやがる。そして駆間人は舐めた奴を殺すと決めている。お前は俺を舐めた。中指を突き立てて挑発し、そのまま首を掻っ切るジェスチャーを入れる。品性が欠片も感じられないやり方だが、アメリカ人には大体これで通じる。
《ノイズキャンセリング》覚えてる? 覚えてない? 《スペルアブソーバー》は? ない? そっかぁ……最近の駆間と違って死神持ってないのか……。
じゃあエデエスミレの並びで殺すね……。
マスターは言葉じゃなくてバトルで相手を黙らせる。
何を言って、どう見られようとも実力が全てだ。歌唱も詠唱も止められないならそれで終わりだ。最速4ターンパンチで決めてデスペリアで殲滅する。雑魚が、もう二度と逆らうんじゃねぇぞ。4ターンパンチ決めて気持ち良くなったのでついでに次の奴にも4ターンパンチ決めて抹殺する。
3人目、ノイキャンを持ってないので4ターンパンチを決める。気持ちが良いねぇ、対策取ってない奴を虐殺するのは。でも対策取ってないゲームはワンサイドになりやすいので結構飽きる。ここで4人抜きしたのは良いがちょっと面白くなくなってきた。
アメリカのスタイルはぶっちゃけ、アグロ寄せになっていて妨害札をあまり握らない。国民性からコントロールやパーミッションの様な戦い方を忌避し、その枠に火力を増強させるスキル等を入れる。ブライアンが行動回数を増やして火力で殲滅するタイプだからそれに信仰を抱いているのが悪いとも言える。
まあ、エデエストの並びとは絶望的に相性が悪い。エストは無敵と戦場コントロールが出来るキャラクターなので、数ターンだったらエデの支援だけで回復なしでも耐えられる。なのでエデエストに対するメタがない限りはミレーヌの4ターンパンチが決まる。
駆間ではもう既にメタを把握して最低限歌唱か詠唱に対するメタが回ってるからフェイント入れるかなんかの対策しないと4ターンは無理になってしまったのだが、3人ふっ飛ばしたというのにまだ対策する気配がなかった。
あまりにも悲しい。最高の教育機関だと聞いていたのにもしかしてこの程度なのか?
と思っていると5人目がついに《パーフェクトキャンセラー》を2枚用意してきた。止める先はエデの歌唱。歌の始動を止めれば後続も停止するという考えなのだろうが、歌を止められた所でエストが耐えれば良いのでそのままエストで2ターン稼いでからのエデ始動で結局6ターン目には顔面パンチで終わらせる。
脳死デスペリアぶっぱはBランクにおいて最強……。
ラスト6人目、アグロ環境に逆らう打ち消し満載のコントロール軸だったので点数を高く評価しておく。悲しい事に性能はウェルギリウスのが上なので妨害合戦になるとこっちのがやや上を取れる。最終的にデスペリアが全てを解決した。デスペリアを信じろ。でも1色環境の中1人だけ逆張りしてる奴いると学園系の主人公枠に見えて来るよね。君は今日から主人公くんって呼んであげよう。
「ふぅ、皆殺しタイム終了。良い汗掻いたな」
額の汗を拭いながら全滅した学園のBランクマスター共を眺める。全員、信じられないものを見る目で此方を見ている。寧ろ信じられないのは此方の方だ。
「あのゲーム遊んでてこれしか出来ないのは問題だろ。もしかしてゲームに詰まってる? それともランクマやってない? 適当にランクマやってれば攻撃一辺倒の構築は直ぐに詰むって事が良く解かる筈なんだけど」
俺の些細な疑問に敗北者たちは顔を見合わせると俺に向き直った。
「いや、ゲームはゲームだし……」
「確かにシミュレーションツールとしては優秀ですが、ゲームとリアルは違いますから」
「そうそう、全部鵜呑みにするのは無理ですよ。それにアグロ構築は実績がありますし、今でも強いですよ」
「下手に違う構築に切り替えて勝率落ちるのは許容できませんしね」
「他の構築に切り替える難易度高いんすよ、旦那。旦那は修羅の国出身だから比較的にそういう切り替え出来るとは思いますけど、ふつーの人はそうぽんぽん違う方向性に舵を切る事は出来ないんっすよ」
「成程なぁ。やっぱ生死の境を彷徨ってない奴はダメだな……」
「今、なんて?」
み、見てられねぇ! 高校でBランクまで上がって来れる才能があるのに! まだまだ成長の余地を残してるのに! クッソくだらない事を理由に強くなろうとしないカスみたいな保守思想を抱いている事実がまるで許せねぇ!
ビシッと6人を指差す。
「貴様らに必要なのはぬるま湯を抜け出して熱湯の中で必死に泳ぐ事を覚える事だ……俺がお前らを強くしてやるよぉ……」
良いよね? と振り返って許可を取ろうとすると理事長が両手でサムズアップを浮かべている。東吾はまだゲームを遊んでた。アイツ、保護者として同伴してるけど余計な口出しをする気がないな。危険な時だけ口出しするつもりか。じゃあ問題ないな。
俺の言動に嫌な予感を感じ取ったのか、ちょっとだけ6人が後ずさりする。主人公くんが忍び足で逃げ出そうとする。
「おっと、俺はちょっと保健室でサボる用事が」
す、と図書館の栞を取り出してゲートを開いたら飛び蹴りで主人公くんをゲートの向こう側に叩き込む。ついでに残りの5人も図書館の中へと叩き込む。追いかけて図書館の中に飛び込んだらウチの庭経由で6人を全員根の国へと直行させる。
道中、虫取り網と虫かごを回収し、現地で体を震わせながら抱き合っている6人に配布する。
「今から君達には虫取りをして貰います。強くなるにはまず死神の確保からだ。さあ、行くぞ! 強くなるための手段を選ぶな! 人間性なんて邪魔だ! 捨てちまえ! 強さこそ全て! 媚びろ! 強キャラに! 人間性をコストに強キャラガチャを回せ!」
才能はあるのにそれを腐らせてる連中は許せねぇ……! あんなデカい学園に居て駆間に近い環境にあるのに、舐めた考えをしてる奴は根本的な改革が必要だ。そう、こいつらには安心感がある。
「待ってくれ、俺達はバトルでそこまで上に行くつもりはない! バトルは嗜みなんだ!」
「君の様にSまで行く必要はないんだ! BかA、そこまで行ければ箔としては十分なの!」
中指を突き立てて答えてると、おやおや、と声を零しながらキュウビが数体現れた。ぐる、っと新しい犠牲者たちを囲みつつ眺め、それからこちらを見た。
「おや、鴉羽のお坊、此方は新しい挑戦者……には見えませんね。どうされたのです?」
「根性足りないから気合入れに来た。ついでに虫取り」
「んもー、また滅茶苦茶言ってますわねこの子ったら」
「ただでさえ最近は忙しいのに、また案件増やさらないでくれます?」
ずどん、と彼岸の世に衝撃が響く。その衝撃はどうやら根の国の深層から響いているようだった。方角からすると根の国の最大のボスが存在する方向だ……どうやら、誰かが深淵の大母まで辿り着いているらしい。
「最近はちょくちょくお母さままで辿り着く人達も増えましたからねぇ」
「何故か地図を片手にやってきますからね。全員ぼろ負けして地上に送り返されてますけど」
じとー、と視線を向けられるので胸を張ってえっへん、する。お蔭で最近賑やかだろう? え? マガちゃん最近メタられ気味? やっぱ予習されてるなアイツ……。じゃあ今度スキルの更新を行って予習してきた連中皆殺しにするか……。
「あ、忙しいみたいだから俺達地上に帰るんで。それじゃあ―――」
こっそりと抜け出そうとする主人公くんの前に回り込み、にこりと笑う。にこり、と笑みを返されるので首根っこ掴んで根の国の奥の方を指差す。
「お前らに足りないのは飢えだ! 才能と環境だけでここまでは戦えた……だが根本的にあの学園という恵まれた環境で甘えが見える! 設備とデータと強スキルを揃えれば確かにCは余裕で突破出来るだろう! だがそれ以降の世界ではそんなカスみたいな甘えたスタイルは通じない!」
後悔させてやるよ……俺相手に舐めた戦いを見せてくれた事をよぉ……!
いざ! 黄泉路ツアーVer2.0!
泣きながら家に帰りたがる学生たちを引き連れて根の国を探索だ!