【書籍化】最強以外ありえない   作:てんぞー

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アイスワーム レベル90が現れた! 

 アイスワーム レベル90が現れた! 

 Mission! 5分以内に倒せ!

 Mission2! 足場を守りきれ! 

 アイスワームは足場に狙いを定めた……!

 

 風が吹き抜けて行く。風雪が舞う中、アイスワームの敵意(ヘイト)は俺達が乗っている足場へと向けられている。ゲームでもあった展開だ。足場を破壊されるとゲームオーバーでセーブからやり直しだ。

 

 ついでに言えば規定時間内に倒せないと着地に失敗して足場も俺達もバラバラになってしまう。ちまちま削るような戦い方をしてはならないという制限だ。

 

 レベル90はこれまで見た120ボスと比べれば雑魚に見えるだろう……だが此方は70レベのモンスターで来ている。レベル差は20もあるし、ボス補正もある。

 

「ステータス差を忘れずに冷静に、だけど素早く処理しようか」

 

 戦闘フォーマットは前4後2の対エンドコンテンツボスフォーマットだ。これも今後を考えて練習しなくちゃならないと思ってたし、丁度良い。

 

 良し、思考整理終わり。

 

「それじゃあ……始めようか」

 《グランドステージ》開催!

 《大氷原》はライブの熱気に溶かされた!

 《魔法少女登場っ!》詠唱が蓄積した!

 《輪廻転生》! エストとウェルは来世が約束された!

 アイスワームは氷の鎧を纏っている!

 炎無効(10回)、クリティカル耐性を得た!

 アイドルくんは《スーパースター》だ!

 エデの歌唱でテンションが蓄積する!

 ―――セットアップ処理終了。

 エデの氷原ライブが開催される!

 《ワルプルギス・ナハト》! 魔女の宴が始まる!

 《貴方を守る為に》気持ちが皆に伝わる!

 《舞踏姫》! 《脱鱗の舞》! 《月追いの舞》!

 《グランドステージ》に歌が反響した!

 全員にテンションが蓄積された!

 アイドルくんは《ワルプルギス・ナハト》を完コピした!

 戦場に歌唱が再び響いた!

 即時発動。ミレーナの力が限界に達した!

 《アルティメットフォーム》解禁!

 魔力の限界突破と詠唱が更に貯まるようになった!

 《暴走詠唱》! 詠唱が蓄積された!

 アイスワームは足場に向かって巨体を振るった!

 エストが庇った! バリアが破壊された!

 《怨讐》! 《堕天の誘い》!

 足場は大きく揺れている……!

 

「お、わ、と、と、と……!」

 

 エストが庇っても衝撃は殺しきれない。アイスワームの巨体から繰り出される突進を受け止めただけで足場が不安定になる。ダメージそのものはエストが受けているからまだマシだが、今の衝撃で降りる速度が加速してしまった。

 

 これはゲームになかった部分だな、想像出来た事だ。反省。

 

「おぢさん!」

 

「舵取りだな? 任せなさい、と」

 

 ノトスがロープと銛を取り出すとそれで足場の改造と調節を開始する。直ぐに足場のスピードコントロールも可能になるだろう。

 

 アイスワームを見上げると、上手く行かなかった事に腹を立てているのか観察する様子を止めて、再び攻撃に戻ってくる。

 

 アイスワームは《3回行動》だ!

  《ダイヤモンドプレッシャー》! 

 巨体で押しつぶしにかかる! 

 《ワイドガード》! エストは味方を庇った!

  大ダメージ! エストの防御が下がった!

 《怨讐》! 《堕天の誘い》!

  《不凍破壊》! 不凍存在を溶かす溶解液を吐き出した! 

 エストにダメージ! 氷耐性が弱点になった!

 《怨讐》! 《堕天の誘い》!

 ウェルギリウスの《ディスペル》!

  アイスワームの氷の鎧が剥がされた! 

 《可能性の否定》!  アイスワームは強化無効状態となった!

  後衛のチビのHPMPが回復した!

  ディレクターは口汚く罵った。

  「お前の顔はテレビに映せないぐらいアレだな……」

  アイスワームの心が傷ついた! 消費MPが増えた!

  ADは燃焼手榴弾を投げた!  アイスワームに小ダメージ! 火傷にした! 

 カメラマンは完璧な映像を届け続けてる!

 

 振り返る。クルー達は全員で肩を組んでサムズアップしてた。なんだ……何? 何、この、人類の可能性を感じさせる輝きは? これだから人間って奴は素晴らしいんだ……! って言いたいとこだったが、約一名人間としてちょっと超えちゃいけないライン超えてねぇか?

 

 あんま細かいツッコミはしたくないけどよぉ……流石に人間って呼ぶにはちょっとおかしい事してないか? それともアイドルだったらこれぐらい出来て当然って話なの? やっぱアイドルってぶっ壊れジョブだったんだなー、憧れちゃうなー、尊敬しちゃうなー。

 

 いや、余計な事を考えている場合じゃないな。エストへのダメージが結構デカい。このままフロントに出してるのは危険か。ターン末処理を進行しつつ2ターン目に入る。既にエストで3回受けてデバフは入っている。火力も削いでいる。元は公式戦に近い形でやろうと思ってMSも制限してたが、後ろの連中が支援してくるしもう公式戦の形式に拘るのは止めておくかなあ。

 

 エデの氷原ライブ継続中!

 歌唱舞踏フルセットが発動し、《グランドステージ》に反響した!

 アイドルくんも熱唱中だ! 追加で詠唱が蓄積した!

 エストとチビが交代した!

 チビは《カオスタイム》を纏って前に出て来た!

 《クォンタム》によりバフが重複された!

 《スポットライト》! アイスワームの殺意はチビに釘付けだ!

 チビはドヤ顔を浮かべた。可愛いだろ?

 ミレーナは詠唱を解き放った! 《イフリートキャリバー》!

 溶剣がアイスワームに叩き込まれる!

 Weak! アイスワームに大ダメージ!

 《復唱・極》により上位魔法が再発動する!

 Weak! アイスワームに大ダメージ!

 2つの《イフリートキャリバー》が融合し最上位魔法へと変化する!

 世界を焼き滅ぼす炎の枝が敵を焼き滅ぼす!

 《レーギャルン》! 災いの枝が振り下ろされた!

 Weak! アイスワームに極大ダメージ!

 アイスワームのHPが尽きた!

 《ライフストック》を消費して復活する!

 

 限界突破した極大魔力を駆使して2本の炎の剣を連続で振るい、それを合体させて放った極大炎剣の一撃。それは周辺の雪氷を蒸発させ、炎を弱点に持つアイスワームの装甲を容易く切り裂いて溶かした。激痛に身を捩らせるアイスワームが後方に吹き飛び、遠ざかって行く。

 

 浮かび上がったミレーナは掴んでいた巨大な炎剣を消し去りながら足場の上に戻ってきて着地するが、その視線はしっかりと後方を……敵を捉えている。

 

 雪の中に消えたアイスワームは数秒間の沈黙を保ち……それから山の斜面が爆発した。

 

 雪崩が追いかけてくるように発生し、その中からアイスワームが飛び出してくる。怒りに身を震わせる姿は体を赤く染め上げ、凶悪な氷と雪の鎧を纏っている。雪崩と共に突っ込んでくる姿は追いつかれれば防御するしない関わらず此方を一瞬で全滅させるだけの範囲と破壊力を備えている。

 

 雪崩の前に現れたアイスワームは一瞬だけ挨拶をする高潔な精神を見せると直ぐに雪崩の中に潜り込んでしまった。誰だって布団の不思議な魔力には抗えない。きっとアイスワームにとって雪崩は布団やこたつに勝る不思議な魅力を持ったスポットなのかもしれない。

 

 直後、砲丸の様な氷塊が雪崩の中から吐き出された。本体は雪崩の中、俺達はそれに追われ、アイスワームは安置からの射撃攻撃に入った。

 

 戦闘はフェイズ2に突入した。

 

「おぢさん!!」

 

「ヨーソロー!」

 

 何時の間にか簡易的な改造を施された足場をロープで引っ張れば、大きく横に足場が動く。それに合わせて飛んできた氷塊を回避する。チビが首を傾げて足場で回避してるなら自分の回避カウントになるのでは? とか主張してきた。アリなんじゃね? チビのクイックレイドが蓄積してた。

 

「む、大将、前方に空間の歪みがあるぞ!」

 

「ちょくちょくあるから突っ込んでも大丈夫!」

 

「あいよ、っと」

 

 ぶわん、と空間が捻じれ、歪み、違う斜面に飛ばされる。だが雪崩が追いかけて来る事実には変わらないし、アイスワームの姿はやはり雪崩の中に隠れて見えず、その中から攻撃する事に集中している。このまま放置していると雪崩に追いつかれてしまう。

 

 つまり雪崩を吹き飛ばし、アイスワームを露出させ、それからアイスワームを仕留める必要がある。ボス戦におけるギミックフェイズだ。雪崩を剥がしても氷の鎧があるし、素早く仕留められないとそのまま雪崩の中に逃げ込まれる。露出させたら素早く仕留める、これはそういうフェイズだ。

 

 だがミレーナの魔法攻撃力は既に限界を超えて高まっている。今のミレーナの魔法攻撃力はS帯でも通用するだけの火力が出る様になっている。強化上限解除から魔バフを多重に詰め込むのは無法。これは古来より言われている事である。

 

 通常のRPGではちゃんとバフ上限が設けられている。

 

 だがこのゲームにはそれを突破する方法がある。どうしてだと思う?

 

 開発者がアホだからだ。終わり。

 

 ウェルギリウスの《エスコート》!

 自分の手番をミレーナに譲った!

 ミレーナの《高速詠唱》! 詠唱をスタックさせた!

 ディレクターはアイスワームを挑発した!

 「お前にはスター性を感じない、番組を降りろ」

 アイスワームはキレて顔を出した!

 ADはスタングレネードを使った!

 アイスワームの行動回数が減った!

 カメラマンは一切ブレずに生放送を継続している……!

 後衛エストのHPMPが回復した!

 

 ターンが回る。

 

 雪崩が更に迫った! 雪崩の中から氷塊が迫って来る!

 エデのライブ継続中! 歌唱舞踏フルセット発動!

 アイドルくんも熱唱中! ちょっと待って、この歌アレンジできない?

 1回家に持ち帰って研究させてください!!

 雪崩から飛んで来る氷塊がチビに向かって行く!

 チビは氷塊1を回避した!

 チビは氷塊2を回避した!

 チビは氷塊3を回避した!

 レイドが3回分蓄積した! MPが回復した!

 チビは《カオスタイム》を纏った!

 ミレーナは《デスペリアハザード》を放った!

 極限まで高まった魔力が破壊の風となって全てを薙ぎ払う!

 雪崩が吹き飛ばされた!

 隠されたアイスワームの姿が露わになった!

 《復唱・極》! 魔法奥義が再び放たれる!

 《デスペリアハザード》! アイスワームに魔法奥義が叩き込まれる!

 アイスワームに極限のダメージ!

 《デスペリアハザード》は合体対応していない! 残念!

 ウェルギリウスはノトスと交代した!

 ノトスは登場しながらアイスワームの古傷を見抜いた!

 アイスワームは物理弱点となった!

 《悪夢の敗残者》! 《運命共同体》!

 運命が共有されチビのクリティカル率が上がった!

 「顔を見せたらリーサルだぞ」

 マスタースキル《クリティカルコンバット》を発令した!

 チビのクリティカル率が上昇した!

 《クイックレイド》!

 Weak! Over Critical! アイスワームに大ダメージ!

 《クイックレイド》!

 Weak! Over Critical! アイスワームに大ダメージ!

 《クイックレイド》!

 Weak! Over Critical! アイスワームに大ダメージ!

 《クイックレイド》!

 Weak! Over Critical! アイスワームに大ダメージ!

 アイスワームの命脈は絶たれた!

 

 雪崩の中からアイスワームがその姿を見せた瞬間、一瞬でその命を刈り取る最大火力を集中させる。限界を超えたミレーナの攻撃に4連OC弱点レイド……最初はエストでデバフさせつつチビに切り替えたのはこの為だったりする。

 

 集中砲火を受けたアイスワームは流石に沈まざるを得ない。レベル90、Aランク相当のモンスターは流石に裏ボスやDLCボスに匹敵するほどの戦闘力はない。戦闘ギミックはめんどくさいものの、ここのボスは黄泉比良坂相当の戦闘力しかない。

 

 インチキ火力とインチキ性能を前に、沈む以外の選択がアイスワームには残されていない。

 

 その巨体は悲鳴を上げる様に体を捩ると、体を天へと向けて伸ばし、それから横に折れるように倒れ、巨大な壁を作るように雪崩を遮った。その巨体が襲い掛かる雪崩を遮っている間に足場は更に距離を開けて進み、時空の歪みに突入する。

 

 ごぅん、と空間の歪みを抜けると足場が跳ねて浮かびあがる。

 

 雪崩のない場所へと飛び出した足場は僅かな間重力から解放されて自由を味わい、その代償に着地と共にその役割を果たし終えた。砕けた足場の上で転びそうになるのをモンスター達が素早く俺達を回収し、減速しながら着地する。

 

 残された残骸が吹き飛んで正面の景色を汚しながら俺達はついに下山を果たし、広大な雪原に辿り着いた。全員無事なのを確認し、カメラマンが生放送継続中なのを丸サインで伝えてきて、何も問題ないのを確認する。

 

 ぱっぱと雪を払って振り返り、雪崩がこっちには来ないのを見て、息を吐く。

 

「良し、第1の関門突破だな」

 

 東吾や国木田無しでもやれるじゃん……俺!

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