冬限定の不審者を始末したところで次の現場へと向かう。
再び氷原に出たらそこから遺跡エリアへと移動する。ここにはそこそこアイテムや宝箱、ギミックの類が存在する。だがこの鴉羽尊、そこら辺は全部記憶している。
「ここが入り口に見えるけど実はこっちに遺跡をクリアした時に利用する裏口が隠れてるから、こっから入ります」
「無法」
オープンワールド系でまあまあ見るけど入れないんだよね。まあ、ここはリアルワールド系なので無理矢理中に入れるのですが。という訳でギミックガン無視で裏口侵入、そのまま出口付近の宝箱を回収。
中身は宝石と合体用アイテム。
「力の宝玉、素材として活用すると血統内の保存されたトレーニング値を力全振りに更新するアイテムだね。極論、これの数を揃えればトレーニングなしで即座に合体させて良いってこと」
「最強アイテムじゃないですか」
「せやで。プロ程欲しいアイテムだろうね。まあ、俺は使う予定がないし、これも視聴者プレゼントにしちゃおうか」
「わあ、番組アカウントのフォロワー数が凄い事になってる……!」
せやろな。今、普通の手段では手に入らないアイテムで全世界の人間釣ってるからな。良いよ、低評価とかバッシングしても。
このレアアイテムが君達に届かなくなるだけだから。そうならない為にも何をすべきなのか……解るね諸君?
という訳で、遺跡をハシゴする。お次の遺跡も裏口から侵入して最下層へと到着する。ここに飾ってあるのはボロボロの剣が一本。それを手に入れてシャキーン、と掲げる。
「お、武器っぽいですね! でもこういうのって大体合体素材になりがちですよね?」
「お、鋭いね。これも合体素材だよ」
ひゅんひゅん回してから仕舞う。
「元々はとある竜狩りの得物だったんだ。村をドラゴンに滅ぼされた恨みから凄まじい技巧と力を付けたその男は竜殺しの魔剣を片手に殺せるドラゴンを片っ端から殺して回った……段々と己もまた同じ存在になって行く事を気づかずに」
なお、最終的にドラゴンになったが、それでも気にすることなくドラゴン狩りにいそしんでたらある日プチっと上位存在に潰されて死んでしまったというオチが付く。どれだけ人間が強くなっても上位存在には勝てないのだ。
上位存在というか上位竜の事なのだが。
「合体の素材に使えば竜特効能力を持った竜魔人を作成できるよ。これも俺は使用する予定はないので視聴者プレゼントにしちゃおう」
「SNSがアンチとプレゼントが欲しい擁護派の殺し合いの現場になってる……」
それは知らん……勝手に殺し合っててくれ……視聴者プレゼントは継続するから……。
竜殺しの魔剣を回収したのでダンジョンから脱出。ルートを変えると巨大な氷魂が見えて来るのでそこまで移動する。この氷塊の根元を調べると掘れる場所があるので掘ると、地下空間を見つけられる。ここに雪だるま王国を名乗る雪だるまのモンスターが住み着いている。
小さい雪だるまとかでっかい雪だるまとかいて、結構ファンシーな感じで可愛い空間。ここでしか食べられない雪だるまアイスはちょっと幸せの味がするらしい。
仲良くするとなんか色々とイベントが発生するのだが、かなり長い上に面倒なので皆殺しにする。雪だるまを殺すと雪だるまキングが出現するので《全能者の采配》を10回かけて魔力限界突破した上で事前にUフォーム化したミレーナで薙ぎ払う。
雪だるま王国、寿命30分。イベント最後までやった所で手に入るのは家具だしね。ゲームならともかくリアルだと付き合ってる暇はないので皆殺しで良いと思う。というかこいつら殺さないと解禁しないんだよな、固有種。真面目にやるとイベント消化して仲良くなった後解禁の為に皆殺しにしなくちゃならないからな。
ストレートに皆殺しでOKです。
「これでキング雪だるまとクイーン雪だるま解禁だね」
「血も涙もないの?」
「あったらたぶんボクの事使ってないっすよ」
雪だるま王国を滅ぼし終わったので次のモンスターを探す。氷原をうろうろしていると一定確率で現れるマンモスがいるのだが、コイツはそこそこ運が必要になるモンスターだ。出来たら会いたいなぁ、と思っているが鴉羽さん家の尊くんはこの手のラックが壊滅してるのでランダム系のイベントは基本引けない。
マンモス狩りは見送りとなった。
次はエリアを移動して不凍湖へ移動する。極寒の世界でありながら一切凍る事のない湖にはそこに適応したモンスター達が存在している。湖の中央には凍り付いたドラゴンの骨があるので、これを炎系の魔法で溶かしてあげる。
ゲームだと湖に入って近づかないといけなく、結構危なかったのだがゲームではなくリアルなのでミレーナが遠くから溶かしてくれた。とても偉い。
これで溶かすと凍り付く事で囚われていた魂も無事に成仏する事が出来る。これによって新しいドラゴンの固有種が解禁される。これでグレイシャルハート解禁。
「グレイシャルハートは固有種のドラゴンで氷系なのに炎に耐性を持つとかいうインチキ耐性してるのでふつーにガチモンです。第6世代のモンスターなのでAランカーは使っても良いかもね。レシピは図書館のどっかにある」
不凍湖の中にも色々とアイテムは沈んでるのだが、流石に回収するのはちょっとキツイ……というか死にたくない……。ララを投げ込んだら秒で凍り付いたのでちょっと探索は専用のモンスター用意してないとキツイかな。
ララを回収したら不凍湖は終わり。
時間も段々と良い感じになって来たので、ドラゴンズバレーへと向かうルートからちょっと離れた所を進めばこの氷原に湯気が立ち上るのが見えて来る。何らかの異常現象? いいえ、違います。そう、この氷原にはあるのだ。
「温泉にご到着」
温泉が。
氷原の中にぽつん、と存在するそこそこの広さはある温泉はゲーム内ではイベントが用意されている回復スポットだった。早速確かめる様にアイドルくんが近づくとそー……っと手を温泉に手を突っ込む。
「あったか……温かい!! これ滅茶苦茶良い感じの湯ですよ! 牧場長! これ、入りましょうよ! これ!」
アイドルくんがテンション高めにしながらもその裏ではそろそろ休憩時間にしませんか? という関係者にのみ伝わるサインを出している。俺もそれに同意するようにこっそりサインを返す。
「そろそろ生放送に齧りついている人も疲れて来る頃だし、一回休憩入れようか。1、2時間ぐらい休憩入れよう、この温泉周りは非戦地帯だし」
「その自信がどこから来るんだろうなぁ、っていうのは結構気になるんですけど多分知らない方が自分の為になるんだろうなあ……あ、テント! テント立てますよ!! 得意ですから! ダンジョンでテント立てるの! ロケで何度もやってるから……!」
それ、アイドルの身に付ける技能か?
疑問は残るが、休憩するには丁度良いタイミングだ。歩きながら軽食を取っているが、疲れはどうしても体に出る。既にヒマラヤ山頂からここまで5時間か6時間は経過している。俺はともかく、カメラマンはキツイんじゃねぇか? と思ったけどなんかぴんぴんしてるな……お前のフィジカルどうなってんだ……? アイスワーム戦中も一切ブレる事なく放送続けてたよな?
考えるの止めよ。
ADとアイドルくんがテントセットを取り出して組み立て始める。簡易ダンジョン技術による空間拡張でテントの中は見た目よりも広くなっているらしい。キャンプの準備をしている間に周りの調査にモンスターを向かわせ、ここら辺の環境を過ごしやすいように調整させる。
よく見ると温泉の中には既にモンスター達の姿が幾つかある。此方に視線は向けて来るものの、やっぱりゲーム同様に非戦地帯に設定されている様で、敵意等を見せて来る様子はない。ここなら安全に休めそうだ。
「湯の温度も良さそうな感じだし……休憩中にひとっ風呂浴びるのも悪くないか」
イベントトリガーだった筈だし。だけどこれが終わったらそろそろ真面目にドラゴンズバレーに向かうかな。めんどくさいからこの氷原には二度と来たくないから解放出来るもんは今回のうちになるべくやっておきたいんだよね。
ただ全部必要か? って話をするとまあ別に……って話もある。使わんモンスターは出て来るしな。それでもバトル人口が多い分、使えるモンスターを増やしておくのは選択として何も悪くはないだろう。だからとりあえず解放出来るもんは解放しておく。
そんな感じだ。
「あ、そっちのペグ取ってくださ……ペグどこ行った……?」
「雪の中に消えませんでした?」
「……大丈夫かなぁ、アレ」
まあ、テント自体は結構上手に立てれてるみたいだしいっか。それよりも問題はドラゴンズバレーに入ってからだ。ここに来る前、ずっと視線を感じているのは誤魔化せない。たぶんドラゴン連中はずっとこっちに興味を持っている。
問題はどういう意味で、となるが。
館長は過去にドラゴンズバレーにコンタクトを取るも、竜王とはまともに会話する事が出来なかったらしいし……竜王は今、どういう状態なのやら。
何にせよ、史上最強の生命との邂逅はもう直ぐそこだ。アイテム回収したら休憩入れるか。