「え、もう帰る所!? そんな……俺とのドキドキワクワク探索タイムは……!?」
「ないよ」
ないですよ……ウチにはそんなもん……。
「そんな……」
ブライアンが力尽きて転がったので裏でドラゴン達が作ってたララの墓の横にブライアンを安置する。既に葬式が始まってたし参列者にララの姿がある。生前葬だ! なんだ、何時もの事か。
「月かあ……そういや月は流石に考えた事なかったな……」
エンドコンテンツの竜王戦は最終的に地上で戦うと被害がデカすぎるから月の上で戦う事になるのだが、それ以外では月はスキル演出で破壊されたり、スキルで地上に落とされたりで散々な目に遭う被害者枠なんだよな……。
流石の鴉羽尊様も宇宙はちょっと守備範囲外です。当然のように大気圏突破してるこの生物がおかしいんです。
『うむ……我が子らに運ばせよう。多少時間はかかるだろうが……』
「ホント? 凄い助かる。これで神龍作成も目処が立つ。後は血統に組み込む情報を厳選するだけだな」
思えばちょっと不用意だったと思う。神龍という存在が竜王と並んでどれだけ信仰されていたのかを認知していなかった。竜王が協力する以上、神龍の復活は叶うとドラゴン達は見ていた。
即ち、合法的に推しの一部になるチャンス……!
「エントリー1番。賢竜。かつての時代ではヒトの姿をし、賢者として国に仕え、共に生活した事もあった……我なら一族最高の頭脳と魔力を継承させられるぞ」
「おい!!」
『ズルいぞ!!』
『抜け駆けか貴様!!』
『恥を知れ!!』
「はあ……はあ……待ってくれ……! 今、他の電子機器全部分解して食い合わせてカメラを修理してる! この……この映像を撮らないと、一生後悔する……!」
急にドラゴン達の合体素材オーディションが始まってしまった。適当な岩を椅子とテーブルに加工されるとあれよと言う間に座らされ、アイドルくんがマイクを片手に司会進行を担当する事となった。
て、適応してる……!
「カメラマン、これは使えないか?」
「GMこれは?」
「ヒマラヤ山脈に2ヶ月以上近く迷子になっている間に見つけた遺跡の良く解らんパーツだ」
「使ってみましょう!」
使うんだ。
カメラマンは手慣れた手付きで良くわからんパーツを組み合わせてカメラを作り直す。しばらくするとカメラっぽいものが出来上がった。
「セイメイ……コンゼツコンゼツコンゼツ」
「おい、このカメラ生命根絶とか言ってるぞ」
「やはり良くわからん破壊兵器のパーツは駄目だったか」
「おい」
なんてものを持ち込んでるんだよ!! カメラマンも数秒程カメラと話し合って和解するな!! クソ! ボケ濃度が濃すぎる!! 俺1人だと全然ツッコミが追いつかねえぞ!!
「さあ! それでは神龍素材オーディションを開始します! 司会と進行はお馴染みーーー」
アイドルくん、勝手に司会進行始めちゃった。なんかもうオーディション止められない感じ? 進める? 進めちゃう? 進めるしかないのか……。
まあ……いいか……。
「審査員ナンバーワン! 我らが鴉羽尊さんです! 当然将来のマスターだから選ぶ権利を持ってますね」
観衆ドラゴンズに中指を向ける。
「厳選に関しては厳しくするんで」
『凄まじい覇気よ』
『これは中々ハードルが高そうだ』
『どうにか気に入られなければ』
「続いて審査員ナンバーツー! 竜王様!」
ででん、と壁のように反り立つ竜王の一部へとマイクを向けた。
『うむ……当然神龍の一部となるのだ……品性、道徳、知性、武勇、全てにおいて厳しく審査するつもりだ……生半可な覚悟のものは追放する』
竜王って滅茶苦茶神龍に関しては強火だよね。
「本日はこの2人? 人か? 人かなぁ……竜王様のが人格的に人に近い気もする……この2体に審査してもらいます!!」
今、俺人間扱いされなかったよな? アイドルくんちょっとお話があります。
首を傾げてアイドルくんをジト目で見ている間に既にオーディションは開始してしまった。最初に俺たちの前に出てくるのは全長100メートルを超える巨体だった。
『我が名はタイラント! 暴虐竜! かつて強者を求め放浪し、5つの国を滅ぼした!』
『追放』
『そんなぁ』
外野からブレスが500発ぐらい飛んできてタイラントドラゴンは一瞬でライフストック諸共消し飛んで原子の塵になってしまった。初手からこれかぁ。
「強さアピールで人に迷惑かける奴は駄目だね」
「なるほど! ヤンキー的なアピールはマイナス、と」
今の反応にガヤガヤしだす。
「ついでに言うと方向性としては鈍足・高耐久のアタッカー枠なので」
俺の発表を聞いて一部のドラゴンが泣き崩れる。ブライアンがどしたん? 話聞こうか? バトルしとく? とか言ってる。自由人かよあの大人。マジで現れてからずっと好き勝手やってるよあの人。
一部ドラゴンが合体条件を満たせなくて涙を流す中、次のドラゴンがオーディションステージに上がって来た。少し目を離して現実逃避している間に何時の間にかちゃんとしたオーディションステージが出来上がっていた。お前達のその気合はなんなんだよ。プライド高いって設定はどこに消えたんだよおい。
「ウィズダムドラゴン、かつて6代通して王国に仕えた経験を持ちます」
どこか賢そうな顔をした小柄なドラゴンだった。
おお、と声が上がる。
「代々王家に仕えながら魔術の講師を務め、国をより良い方向へと導いた実績を持ちます。ちなみに魔法耐性90%持ちです」
「おお」
これには流石の俺もおお、の一言。この人選には竜王様もにっこり、顔は見えないけど。
「じゃあ人生のやらかしを1つお願いします」
「王家6代全員の性癖がちょっと捻じ曲がってしまいました」
「あぁ……」
周りからはあるあるとか声が飛んできてる。
『人化の術を使う時はなるべく気合を入れるからな』
『あぁ、生半可なビジュアルは許せんからな……』
『造形美には自信があるぞ』
『その結果ヒトの性癖が捻じれるのはままある事だ。仕方がない、美しすぎる我らの罪だ』
見た目の問題というより君らが人類を溺愛した結果それにとろんとろんになってしまっているのが原因だと思うんですけど。いや、でも、まあ、俺も牧場にいるばぶゴンズを滅茶苦茶甘やかしてるからちょっとこれは何も言えないなあ……うん?
もしかしてこれ?
俺がばぶ時代からずっと甘やかしてるから赤ちゃんのままなのかアレ!? 下位種の甘々ご奉仕ライフみたいなジャンルを全力で味わってるのかアレもしかして!?
考えるの、止めておくか。背景でウズゥさん相手に戦い始めたGMも見るのは止めておくか。結果は見えてるし。
とりあえず、ウィズダムさんは耐性が優秀なのでキープで。この耐性が継承できるかどうかは未知数なので改めて細かい話を館長、そしてモンスター博士と詰める必要があるだろう。だが俺の予感が正しければ、この合体が出来るであろう施設は……ノアにあるものぐらいだろう。
合体システムは造物エンジンの劣化再現したものを使っている。本物の創造主の力である造物エンジンであればまず間違いなくボスモンスターであろうと何であろうと合体材料に出来るだろう。その後どうなるかに関してはみこっちゃんはちょっと解かんないかなー。
「退け雄共! 貴様らの欲望に染まった考えを持ち出すではない! 先ほどからなんだ話を聞いていれば逆鱗になりたいとか尻尾の先が良いとか恥を知らぬのか主らは!? 貴様らの様な頭の中まで欲望に染まり切った雄共より妾の様な雌の方が神龍様の一部になるに相応しい……!」
「竜王様、なんか雄雌で対立始まってるけど」
『ここでは偶にある。平和な証だ』
暴れ出すとそれだけで周辺諸国の経済が吹っ飛びそうなんですけど? 俺とはあんまり関わりのない国だし別に良いか。
「竜王様」
『どうした』
「女神と戦う時、助けてくれる?」
『……』
目の前に広がるのはふざけている……というよりは普段見ない珍客にテンションが上がっているドラゴン達の様子だ。ふざけてはいるが、それでもその強さは上位種を名乗るに相応しいだけの力を備えている。この戦力だけで地球を支配する事も、今をより良くする為の知恵も出せるだろう。
だが彼らからすればその行いに意味はない。
自分よりも下位に属する存在を蹂躙して喜びを覚えるほど、彼らは低俗ではないのだ。
そんな高潔で、ちょっと面白くて、だけどとても頼りになる強い種族が丸ごと味方になってくれればそれがとても素晴らしい事に違いないだろう。だけどこの事に関してはちょっとした予感があった。
『神龍の事に関しては……手を貸そう』
「だけど?」
『我らを便利に扱う事、許さぬ』
それは種としての誇りの問題。故に、竜王は久々の宴の様子を眺めながら続けて伝えて来る。
『我らを……いや、我を、再び戦場へと率いるというのであれば……鴉羽尊、貴様がそれに相応しい者である事を証明しなくてはならぬ』
それはつまり。
「勝て、と」
『然り』
肯定。
『―――人類の頂点に立て。そして人類を率いよ。その時、汝は我と相対する権利を得よう』
「成程」
ラスボス前にエンドコンテンツを攻略しろ、という事か。中々無茶苦茶おっしゃってくれる。だが目の前の戦力を逃す手はなかった。神龍の件に関してはどうにかなりそう……なったら良いなぁ、という感じだけど。
こっち、竜王の対女神戦線への参戦はちょっと条件が厳しそうだ。
ここら辺の問題はSランクになった未来の俺に丸投げするとして、あちらでナルシスト風になる鬣をふぁさー……としている奴を見る。
「ふっ、アピールタイムだな? 良いだろう、良く聞け……新たに誕生した神龍様がふとした時に落とす表情に我の面影があったら―――最高では!? 間違いなく究極の美だ……な!?」
「死ね」
「失せろ」
『滅ぼせコイツを』
『お前は存在してはならぬ』
『追放だ追放!』
「一族の恥め!」
もう完全に好き勝手アピールタイムに入って滅茶苦茶になってしまったこのオーディションをどうすりゃあいいんだ?
久遠、俺そろそろ家に帰りたいよ。