総理に怒られちゃった。
「坊主、惑星破壊兵器は国内持ち込み禁止だって話を学校では学ばなかったか?」
もうね。こんな感じで怒られてしまった。総理に直々に怒られたのでしばらくは大人しくしてようと誓いました。
で、でもよぉ、総理! ラグナロク様は別に怖くないんだ! 人類にも優しいし! 地球をプチっと破壊できるけど、それはそれとして凄く配慮してくれる方なんだぜ!?
「能力がある事が問題なんだぜ?」
はい。
という訳で政府から怒られました。マスターの中でも惑星破壊兵器を国に持ち込んだ人間として怒られるのは人類で初めてじゃないだろうか? これによって人生のトロフィーを解禁できたと思う。
報酬は民の畏怖……かな!
そんな事もあって帰還したのは9月末辺り、ギリギリ3ヶ月ぐらいで済ませられた。流石竜王を収める為の空間、30時間トータルで3ヶ月も吹っ飛ぶとか中々エグい時空の歪み方してる。
ゲーム時代にはあまり意識してない話だが、この世界には観測者の問題がある。
これはダンジョン内外の時差に纏わる話で、観測者が存在する限りはダンジョン内外ではリアルタイムでの通信が可能になるが、この観測の連続性が途切れた瞬間、時差による時間の加速が一瞬で襲いかかってくる。
じゃあ通信したまま中で過ごしてから出れば時差は踏み倒せるのか? という話をするとそうでもなく、ダンジョンから出た瞬間時差による加速が絶対に発生するとの事。
だから構造的に時差を無視することは絶対に出来ない。
今回はたった3ヶ月で済んだが、暗黒樹海を攻略するなら1年は吹っ飛ぶし、他の大型ダンジョンもそれ相応の時間を要求されるだろう。
唯一の例外があるとすればそれはノアぐらいだろう。
周辺の海はヒマラヤ同様にダンジョン化されているが、中心となっているノアは正確にはダンジョンではなく、実在する船舶都市だ。
ここに来てノア攻略の必要性が一気に上昇している。
ノトスの過去。
合体システムの強化。
造物エンジン。
複数の理由からノアは段々とだが、攻略が必要な重要課題になりつつあった。ここまで来るともはや運命に攻略するように背中を後押しされている様に感じられていた。
問題は……今の人類でノアの攻略はまだ難しいという事実だろう。
戦略が必要だった。
何せ、ノアの攻略は幾つかのフェーズに分かれており、攻略を進めることで次の段階に移行する事が出来る様になる。
第一が魔海突破フェーズで、ダンジョン化した海を突破する所。恐らく飛行用モンスターを使えば一瞬で終わる為、このフェーズが1番楽だと思われる。
だがここからが本題だ。
ノアが沈んでいるポイントまで移動すると、海に潜って深海を目指す必要がある。サンゴの迷路や洞窟を抜けて深海を目指し、ノアのあるポイントまで行くと海王との第一戦闘フェーズに入る。
ここである程度戦闘をして体力を削ると相手がスタンする為、その間にノアへと乗り込む。
ここからノア攻略までタイムリミットが生まれる。
世界の天候が豪雨と暴風で固定され、世界が嵐に襲われる。これはノア攻略まで続き、攻略せずに1ヶ月が経過した場合、星そのものが水底に沈んで終焉を迎える。
つまりノアの攻略開始は世界終末のカウントダウン開始の合図でもある。
しかもノアに近づく事で海王も目覚めてしまう為、海上に浮上して暴れだすこいつを何とか抑え込む準備も必要だ。ゲームでは放置で問題なかったが、リアルに考えるとこいつを放置してるとそのまま1ヶ月もせずに星を沈め始めるだろ。
なのでノア攻略チームと、海上で海王妨害チームで2チームに分かれる必要がある。
まあ、この時点で俺は海上チームに残れないので必然的に人類の方々に頑張って貰う必要があるって事なので……。海王を暴れられないように抑え込む戦力が必要なのもそうだが、ノア自体も暴走した防衛システムや正気を失ったモンスターが徘徊している。
当然、ボス戦もある。
その上で電子機器の修復やシステムの復旧、造物エンジンの再稼働等の専門的な仕事も求められる。
原作だと主人公がぴぴぴ! で終わらせてたけど無理!! ゲームじゃないから無理!! ノトスに話しても修理は専門の技師とかが担当してたから無理って言われた。
つまり戦闘メンバーに加えて、修理等が出来る前線エンジニアまで連れて行く必要があるのだ。
前線エンジニアってなんだよ!!
こっちの宇宙にはマグロがねぇんだよ!!
足りない! 圧倒的にコネと人材が!
本来、何年もかけて登るこの世界。スポンサーや営業を通して培うコネクションの類が俺には何もなかった。これで人を集めようとしても
良くない。とても良くない。
友人は助け合うものだが、ずっとおんぶに抱っこされるもんじゃない。俺自身が自分の力でどうにかして他人との繋がりを作らないと、彼らの付属物としか見られなくなる。
困ったなぁ、大変だなぁ。アンナを使うにしても限度がある。何より最近のアンナは一回胃をやって入院している。国内に持ち込んだ辺りで限界を迎えたらしい。しばらくはそっとしておきたい。
そういう事情を抱えつつ季節は夏を飛ばして10月、秋になる。
夏を丸々ダンジョンでふっ飛ばしてしまったのでちょっとだけ学業で困ったことはあるものの、ダンジョン探索で休学した場合、相応の成果があればそれを単位の代わりとする事が出来る。
この制度のお陰で夏休みを超えて授業に出れなかった分は無事免除となった。この世界はバトルやダンジョンでちょくちょく時空の間に時間が消し飛ぶことがあるので、それに対応した制度になる。
……無論、悪用している人間もいるし、それが原因でチェックは割と厳しい。
今回は生放送で映像が残っているのもあって、軽々とパス出来た。
昔はこの手の探索を俺は隠してきた。低ランクの間にこういう隠しダンジョンやDLCダンジョンを発掘すると他のマスターからの嫉妬ややっかみが酷く、行動に何らかの支障をきたしかねないからだ。
だがBとなった今、俺は立派なプロになった。社会的に立場を持ち、身を守るだけのコネも手に入れた。これまでは隠れる必要があった部分も、もう不要だ。
何よりも今回の生放送はかなり反響が良かった。
元々鴉羽尊はプロに対してそこそこ名声のあるキャラクターだとか、20時間耐久がSNSでも大バズリした為、交流戦の時の様なSランカーの添え物ではなく、鴉羽尊単体としての知名度に大きく貢献した。
お陰でアンナ経由で仕事は増えるし、何より嬉しい所で大会インビテーションが増えた。
爆増ってレベルで。
企業が数ヶ月先まで視野に入れて計画を立てている事は知っていたが、10月に入った直後には3月や4月の大会インビテーションまで贈られてくるものだからまあ、驚いた。
話題になったマスターを活用したいという意図は見えるものの、俺としても渡りに船なのは確かだった。
ダンジョン発見そのものはレートや認定戦には貢献しないが、それを通して入ってくる名声を企業は評価する。今年は大会はあまり参加できなかったが、ドラゴンズバレーのお陰で来年はそこそこ参加する大会が増やせそうだった。
ドラゴンズバレーの話からになるが、ディザストロは案の定ウチにやってきた。
慢心せずに挑んで盛大に負けたのだから竜の誇りに誓い従い、共に戦うのは当然の事でしかないという主張だった。
実家のドラゴンさん達が死ぬ程羨ましそうにしてるらしい。定期的に駆間山に移動したドラゴンズバレーの方から勝負せんか? とかいうラブコールが飛んでくるがまあまあウチの周りは不審者が多いので通りすがりの不審者が勝負を挑みに登山してる。
当然行方不明者も多い。もう面倒見れねぇよこんなの! 勝手に戦え!
……という事もあり、ディザストロ兄貴は無事にウチの牧場に住み着いた。
言動がチンピラ兄貴なディザストロだが、流石の人の何万倍も生きているドラゴン、環境に一瞬で適応するし、牧場の仕事は完璧に手伝えるし、知恵も豊富で滅茶苦茶助かってる。
何よりもばぶゴンの事だ。
ミストはばぶゴンの相手はしてくれるが方針的に何も教えてくれなかったが、ディザストロ兄貴はしっかりと教えてくれた。
ウチのばぶゴン、重度の変態かと思われたが実は固有種とかでよく見る記憶や経験を引き継いだ個体ではなく、完全新規の個体だった。
つまりコイツラは記憶も経験もまっさらの新しいこの世界で生まれたドラゴン達だったのだ。普通はそれでも最低限の知識や経験が備わっているものだが、特殊ケースなのかウチのばぶ共はそれすらなく、本当に赤ちゃんからスタートした個体だった。
これ本当に将来戦えるのか? という不安はあるものの、ドラゴンはどうやら種族全体で育児を行うコミュニティらしく、ミストだけではなくディザストロも育児が可能だった。
お陰でばぶゴンズの情操教育とかは任せられそうだ……今回1番の収穫かもしれない。
ララの持ち帰った話やノアの攻略はどうするかなー、とか頭を悩ませる問題は多い。
だが10月最大の狂気は駆間市内にいた。
「えー、今年の学園祭ですが……皆さん、色々と面白いアイデアを提供してくれて先生は嬉しいです」
黒板には皆で出し合った正気を疑う出し物候補が書かれていた。
演劇:ロミオとジュリエット〜怒りのアフガン〜
肝練り屋。
一方通行ドラゴンズバレーツアー。
GMブライアンを捕獲して握手会を開かせる。
国木田仮面剥ぎゲーム。
闇討ち代行。
「皆さんが頭のおかしいアイデアを出してくれて大変嬉しいです。こんな個性豊かな皆さんは社会に出てもきっとその個性を失わず周りの人間をドン引きさせる事間違いなしです。ですがここに足りないものがあります。何か解りますか?」
クラスメイトの1人が手を上げた。
「はい、ジュデッカ後藤くん」
「はい! ズバリ! 狂気……ですね!?」
「もう十分満ちてるだろ。良く見ろよ。満ちてるどころか満ちすぎてミチミチ言ってるだろ。もう胸元のボタンが飛んでいきそうな勢いだよ」
ばんばんばん! 黒板を先生が叩いた。
「見て解らないのか!? ここに足りないのはそう……」
先生がクワッと目を見開いた。
「癖だッッッ!!」
「癖」
先生は黒板に書いてあるものを消すと、そこに自分のアイデアを上書きした。
性転換喫茶。
「という訳で今年の出し物は皆に性転換薬を飲んで運営してもらう性転換喫茶で決定です。理由は思春期の君たちが異なる性別に変化した結果悶々とする所が見たいからです。ちゃんと性別に合った服を着てね? ハイ、決定!!」
あまりにも教師が気持ち悪いのでクラスメイト全会一致でリンチに処す。さすが教師だけあって12人ほど道連れにされたが、最終的に無事に沈んだ。
全裸に剥いで校門から吊るす事で禊としたが、教師の狂気が女子の1人にアイデアを与えてしまった。
「私前々から気になってたのよね……純正女子とTS女子、どっちのがウケが良いんだろう……って」
トチ狂った発言だったが中々気になる内容だし、恐らくは人類で一度も検証されたことのない内容だった。
理由はもちろん馬鹿馬鹿しいからだ。
「クラスの男子を全員TSさせて、午前は女子、午後はTSさせた男子共でそれぞれ出し物をさせてどっちのがウケが良いか勝負しない??? 勿論勝つのは私達純正女子だけど……」
「やってやろうじゃねぇの!!!」
馬鹿が挑発にノータイムに乗ったことで今年の学園祭の出し物が決まった。
駆間学園祭シーズン。
別名無法シーズン。
今年もやってきました。ちなみに普段から無法だぞ、というのは禁止ワードです。