【書籍化】最強以外ありえない   作:てんぞー

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海王ォ!! お前を殺す……殺してやるぞ!!!

『まずは責任の所在を』

 

『交渉してみませんか? これほど格の高い存在であれば高い知性を持っている筈です』

 

『日本! お前は事前に知っていたんだろう!? どうして問題を起こさないようにしなかった??』

 

『おいおい、責任を擦り付けようするのは止めてくれよ。ちゃんと国連を通して他の国にも通達した筈だぜ? それよりももっと建設的な話をしようぜ』

 

『この状況で誰がリーダーシップを執るのか』

 

『どう攻略するんだこんなもん……もう駄目だぁ、おしまいだぁ……地球外に逃げるしかないんだ……! 月に土地を買っておいて良かった……』

 

『アリスだ……アリスと嘘つき人形でハメるんだ!!』

 

 最後の奴中々センスあるな。ここで迷わずハメという手段を選ぶ辺りこのゲーム……じゃなくてこの世界の事を良く理解してらっしゃる。だが大半の人の意見はバラバラだ。いや、大きく分けて二つのグループに分かれている。

 

 そもそも俺の発言を真面目に受け取っておらず、半信半疑で疑っているからまずは状況に対処する為にリーダーを決めようとするグループ。責任とかリーダーとか言ってる連中だね。まずは状況に対処する為の責任者を決める事でこの終末に対処しようとしている。

 

 次にアイデアロールを本能的に成功させて俺の語っている事が真実だと直感的に理解出来てしまう連中。強く、そして世界のトップに立ったからこそ何が真実でそうではないのかを本能的に察する能力が身についているから俺の語る内容が真実で、対処する為に軽い発狂状態にある連中だ。

 

 ポイントはこの画面に集まっている人の大半はこの状況をどうにかする事で団結しているという事だ。ただ見ている方向性が違うだけだ。そのせいで会議が進まなくなってしまった。流石に投げ出そうとするのは少数派らしい。

 

 問題はこれをどうまとめるかだ。リーダーが必要なのは当然として、鴉羽尊はそういうのに向いていない。絶望的に向いていない。これをトップに据えたらどんな組織でも破滅するわよ! とはアンナが言ってたっけ。俺もアンナの言う事には同意する。俺をトップに置いちゃ駄目だよ。

 

 俺は兵士とか戦士とか部下とか、そういうポジションで置いてる方が良く働くタイプだから音頭を取らせちゃ駄目だ。自分の事だから良く解かっている。だけどさて。

 

 この状況はどうしよう? これじゃあ話が進まない。

 

 ―――そう思っていると。

 

『Fuck!!』

 

 大統領の喝が響き渡った。会議の音声を最大まで引き上げたFuckの一言は全員の画面を越えて耳に叩き込まれた。思わぬ衝撃に俺も耳を押さえてキーンとする感覚を抑え込む。最近体をケアして貰ったばかりなんだから止めてくれよー。

 

『お前達揃いも揃って狼狽えてなんて本当にfuckな連中ばかりだ。それで代表だと? 人類のトップだと? 実に滑稽でfuckな姿を見せるのは止めろ』

 

「だ、大統領がfuck以外を喋れている……!」

 

 ちょっと感動した。人語解せるんだ。

 

『この件に関してはアメリカがリーダーを執る。何時だって私達がトップだった。私達が世界を引っ張って来た。故に責任も全て請け負う。Mr.カラスバ』

 

「あ、はい」

 

 画面の向こう側で葉巻を口に咥えたアメリカ大統領が此方に視線を向けて来る。

 

『こうやって話を切り出す以上、君が今この世界で一番状況を把握しているのだろう。必要な情報を言いなさい。その情報を元に作戦や準備を組み立てよう。君のことはブライアンからよく聞いている』

 

 すぅ―――すぱぁ―――。

 

『彼が君に全幅の信頼を置いている。我が国の英雄がそうしているのであれば、私の疑う理由は存在しない。自由に話せ。聞こう』

 

「ありがとうございます、大統領」

 

 いやあ、世界のリーダーマジ強いわ。一瞬で纏まりのなかった会議が纏まった。これならやれるかもしれない。

 

「じゃあこの状況、海王攻略に関して話をします。大前提として海王の排除は人類の総力を挙げた所で不可能です。人類の力では海王をまともに倒す事は出来ません。耐性取得によるハメ抜け性能が高い上に連撃耐性もあるから数を揃えた所でダメージの大半が0にされます」

 

『じゃあどうやって倒すんだ?』

 

 疑問に答える。

 

「ノアを使います」

 

『ノアとは隠されたダンジョンの1つだと図書館で読んだ事がありますね』

 

 誰かの言葉に頷いて答える。

 

「そうです。ノアは巨大な箱舟都市です。かつて異世界に存在した最初の都市であり、生命を守る為に生み出された箱舟。ニューヨークとかの大都市が船に乗っているとでも考えてください」

 

 全員が天井を見上げる仕草を取る。

 

『わーお』

 

『船酔いが大変そうだな』

 

『オーシャンビューは約束されてるぞ』

 

『夏場は快適そうだな』

 

『潮風で体がべとべとしそう』

 

「ノアは創造神が最初に生み出した人々―――脆弱すぎて守護が必要な新種族を守る為に生み出した都市です。海王も創造された人類を守る為のシステムの一部と言っても良い……なのでノアには過剰レベルの戦闘機能が搭載されている。これを使って海王と戦います」

 

 創造神のボケカスはね。世界を最初生み出した時バランスという概念が手探り状態だったからね? とりあえず星の守護者として作るか……で竜王とか海王を作っちゃったんだよね。で、この2人をバランスの中心に据えちゃったからノアも過剰戦力レベルの戦闘力を備えているんだよね。

 

 まあ……この後失敗作が大量に出て人類を創造するバランス調整が段々と整ったんだが。

 

 だがノアはその時の原初のバランス崩壊の産物だ。

 

「中心に据えている炉心は造物エンジン―――創造主の創造の権能そのものを切り離してノアに埋め込んだ物。創造の権能そのものでノアに無限のエネルギーを供給する特級呪物です。コイツがあるのでノアは永久稼働するし、無限のエネルギーだけじゃなくて架空兵器を権能を駆使して生みだす事さえできる、地上最強の居住可能決戦兵器です」

 

『居住可能決戦兵器』

 

「つまり世界最強の家です」

 

『最強の家』

 

 だって過剰戦闘力の家として作られたしあそこ……。

 

「だから海王の討伐はノアを操縦してやります。ですがここで問題を一つまみ」

 

『一つまみどころではない気がするけど……どうぞ』

 

 足元を指差した。

 

「ノアそのものは海王が守ってます。その足元、深海の底で動力も落ちた状態で沈んでいます。海王の特攻能力は星の脅威及びノアへの脅威という形になるので、ノアを狙えば必然的に海王に狙われ、特攻対象になります」

 

『……つまり私達はあの怪物を回避しつつノアに到達しなければならない、という事かな?』

 

「正確にはノアを攻略するチームと海王を足止めするチームで編成分けする必要があります。戦力の大半を海上に残して文明崩壊させる《こうずい》と《アクエリアスエイジ》をキャンセルする事に集中しつつ、ノア再起動まで時間を稼いで貰う必要があります」

 

 当然、それだけじゃない。

 

「ノア内部にもモンスターが出現するし、所々壊れている個所を修復しなくちゃいけないから、戦闘要員に専門技術を持ったエンジニアも必要です。幸い、深海に沈んでいるノアはダンジョンではなく実物だから地上との時差は存在しない……それでも攻略には数時間以上の時間を要する筈です」

 

 場合によっては10時間超えるかもしれない。ノアはダンジョン扱いではなく異世界で沈んだ箱舟そのものだ。でもサイズは都市規模で、動力が落ちている影響で浸水してたり隔壁が落ちてたりして真っすぐ進む事が出来ない。

 

 それを考慮するとマップを頭の中に叩き込んでいる俺やノトスが先導した所で直ぐにノアの再起動が出来る訳じゃない。

 

「少数精鋭のノア攻略隊と、地上で海王を足止めする決戦部隊を編成、ノアの再起動までの時間を稼いでからノアが戦闘に合流、そこから最終フェーズ……というのが俺……私と館長が前々から練っていたプランになります」

 

 元々将来的にノアは攻略目標だったから館長と幾つかプランを練っていたりする。だがそれを活用するのはまだまだ先の未来の話だった筈だ。だからプランには穴があるし、抜けも多い。それでも現状、これが最良のプランだというのが判断だ。

 

『あれの足止めか……』

 

『映像を見る限り下手な都市よりもデカいぞコイツ?』

 

『コイツをすり抜けて潜るのか? 深海まで?』

 

『戦力はどうするんだ』

 

『こんなデケェ奴と殺し合えるなんてワクワクしてきたぞ!!』

 

『へへ、レイド組からレイド用戦術教えて貰ったんだぁ。ついに試す機会が来たな』

 

『レ』

 

『1分1秒戦うだけで世界を救えるならやらない理由はないな』

 

『まだ春に入ったばかりなのに忙しいな』

 

 再び会議がざわめきで満ちる。うーん、ちょっとやる気なさそうなのがいるなぁ。あぁ、そっか、世界救うだけじゃ報酬が足りないしモチベーションに響くよね? ノア攻略の報酬をまだ教えてなかったわな。

 

「ちなみにノアを攻略完了すれば造物エンジンを使った新しい合体システムが使えるので、モンスターを変更せずに再合体させる事が可能ですぜ。これで最初作った時は把握してないけど今は作り方の解かる固有スキルとか再合体させて取得できますぜ」

 

 一瞬で画面の向こう側から歓声が爆発した。

 

『海王ォ!! お前を殺す……殺してやるぞ!!!』

 

『生まれて来たことを後悔するんだなァ!!』

 

『思い知れ! 人類の恐怖を!!』

 

『海王狩り! タノシイ! タノシイ! ウケケケェ―――!!』

 

「こわれちゃった」

 

『そりゃあ壊れるだろ』

 

『全世界待望のシステムだからな……』

 

 再合体の為にユニークモンスターを変更させると、その間に別のマスターによって元相棒の種族を取られるケースが存在するらしい。だから相棒を合体させて別種族経由で再び同じ種族に……というのは実は結構リスクのある行いだったりする。

 

 だけどノアのシステムを使えばそのまま合体させる事が出来る為、他のマスターに相棒を取られる心配もないし、これまでは取得不可能だった固有スキルや合体によるトレーニング値の引継ぎ調整も出来るようになる。

 

 まあ、そりゃあ狂喜乱舞するよね。コレ解禁するだけで腐ってたモンスターがだいぶ実用範囲まで伸びるもん。育成期間の短縮はロストエデンの報酬なのでまだどうにもならないが、それでも1年の休養を経て実用範囲に使い慣れた相棒モンスターが届くのは大きな強化だ。

 

 泣く泣くインフレに乗り遅れて実用範囲から漏れたモンスターもいるだろう。

 

 それが実用可能になる喜びは計り知れない。

 

 人類が一瞬で人類悪に転じるのを眺めつつ、俺は最後の提案を行う。

 

「―――とりあえず今回の作戦、参加者のマスターは全員ウチに来ませんか? 今のままだと弱すぎるので海王を見据えて全員強化します」

 

 根の国、図書館、暗黒樹海、ドラゴンズバレー。

 

 今の世界トップ層にこれを提供して海王に備えて緊急で強化を入れる。これだけやった所で本当にどうにかなるのか怪しいのが辛い所だ。

 

 それでも世界を守る為……いや、違うな。愛しい人達の明日を守る為に。

 

 やれることは何でもやらなくちゃならないんだ。

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