作業終了!
集まったモンスターデータの整理が終わった。かなり大変だったけど汎用枠をセットで提示するだけでだいぶ強くなるので後は個人の好みだ。それと合成屋には死んでもらう。
勿論過労死だ。
出張所を見ると5人分身しながら合成してるけど明らかに間に合ってないんだよね。かわいそう。ま、人類の未来の為に頑張ってくれ。
俺もそれなりに覚悟を決めないとならない案件だし。
進めてた作業を終えてちょっと体を伸ばす。確実に突入メンバーに選出されるから俺は早めに休んでおけって言われてるし、ここらで一旦休憩入れるかな、と思っているとスマホに連絡が入った。
総理からだった。会議室に向かって欲しいとのこと。
「ん、じゃあ行ってくるね」
「おう、お疲れ大将ちゃん。おぢさんはもうちょっとここらで昔の事を思い出して心の整理してるよ」
人間、覚悟や、整理をした……とは言うが実際に覚悟を決め切れた試しがない。人は自分が思っている以上に結構意志薄弱だし、覚悟という言葉は重い。
ノトスが本当の意味で踏ん切りをつけて前を向けるかどうかはこの後次第かな、と思いつつ図書館へと向かう。
今、対策チームが図書館に集まっている。頭脳労働担当と各国の偉い人が集まってあーだこーだと話をしている。図書館はどこへとも繋がるから場を用意してるのだが……まともに話は進んでるのかな?
図書館に設置された臨時会議室に到着すると、そこには総理の姿も政治家達の姿もなかった。その代わりに見覚えのある顔や知らんマスター達がいた。
「来たな」
「へい東吾」
ぱーん、と入室してハイタッチを決める。やっぱ見知った顔がいると安心するね。それから室内を見渡す。東吾、国木田仮面、アーサー、ブライアン、マルコ……交流戦で見知った顔が全員そろっている。本当に世界最強オールスターって感じの集まりだ。すげぇ。マジで揃えて来たな。
よく見たら部屋の角に埋まる様に酒クズがいる。アイツもいるんだ。
「なんの集まり? 飲み会?」
「全部終わったあとならそれでもいいけどな」
「突入チームの選出だ。ちなみに政治家達には出て言ってもらった。話にならないからな」
まあ、それはしょうが無いね。しかし選出に苦労って……。
「候補者がいないの?」
「逆だ。皆行きたがってる」
ずこー、と崩れ落ちる。
まあ、でも、言われてみれば確かに行きたいよな、DLCダンジョンは。海王戦よりも絶対に楽しいに決まってるだろうし。
「1枠は尊で決まってるんだが……残りはどうするか、という話でな。尊は何か案があるか?」
東吾の言葉に周りの視線が俺に集中する。うーん、俺が主導権握ってるから凄い視線を感じる。しかし一緒に探索する相手かあ。
「エンジニアの件は?」
「それはもう確認して手配済み。ノア内部まで3人のチームが付いてくることになってる。3人とも合体装置の整備なんかも行ったことがある超エリートだ」
「期待できそう」
正解は解るんだけど、やり方は解らないからね。ギミックが技術的問題で解除できない可能性は十分にありえる。その事を考慮するとやはり、こういう専門のプロフェッショナルは欲しい。
となると後は一緒に探索してくれる人……か。
「正直一定ラインの実力を超えてるなら誰でもいい感じではあるんだよね。今回に限っては俺もルール守って戦おうという気持ちは欠片もないし。最初から最後まで本気でやるつもりだし」
ディザストロ戦は相手を認めさせるためにルールを守ったが、今回はそんな余裕もない。マスタースキルの使用制限も、アイテムの使用も解禁する。当然、事前準備からのワンパン殺しの準備にも入る。諸々全部アリでの殺し合いに関しては負けるつもりはない。最悪、俺一人で攻略する事を考えたパターンもあったのだ。
使える奴が一緒ならそれだけで何も問題ない。
「しいて言うなら……戦闘力そのものよりも探索技能を求めるかな」
「探索技能?」
東吾にうん、と頷く。
「ノアにはモンスターや防衛兵器が配置されているのはそうなんだけど……隠れている敵の類だって十分存在している可能性があるからね。ダンジョン製の罠じゃなくて、人為的な罠の類に対応できる人材が良いかなぁ。それとも経験的に未開拓、未探索エリアを探るのが得意な人とか」
俺の言葉に東吾がマスター仮面を見て、マスター仮面が部屋の隅を見た。
全員の視線が部屋の隅、角に埋まる感じで酒瓶を手に酒を飲んでる酒クズの姿を見た。
見なかったフリをした。
「東吾?」
「俺は明日死と始原がレイド向けスキルだから強制的に海上行きでな……」
「アーサー??」
「弱点耐性が割れる度に炎弱点を付与する仕事があるので……」
「仮面マン???」
「私はGMとして指揮と統率の仕事があって海上行きでな……」
「ブライアン????」
「俺も、ノアに、行きたかった……!」
あの永世GM血涙流してるよ。えぇ……知り合いマジで全滅してるじゃん。普段の連中全滅してるとなるとマジで新規開拓しなくちゃならないじゃん。それとも酒クズ選ぶ? アイツ地味に次元城の入り口に行くぐらいはやれるんだよな……?
俺がコイツとまともに探索出来るイメージが湧かないからちょっと保留で。
「ごめん、俺あまり他人と交流してない……というか新規開拓が死ぬほど苦手だからあんまり普段交流しているメンツ以外とは何が出来る、どういう人かってのを把握出来てないんだよね。出来たらこう……資料とか纏めて貰えると助かる」
「もう用意してある」
「という訳でこれだ」
「ここに居ても息が詰まるだろう。こっちはこっちで人員整理とか色々とやる事があるから、別の部屋で読んでおくと良い」
ぽんぽんと話が進み、資料の入ったタブレットを渡されると直ぐに会議室を追い出されてしまった。ちょっとだけ寂しいなぁ、と思っていると一瞬で魔本の従僕達に囲まれてしまった。
「仕方ありませんよ尊様! 皆さん割と心に余裕のない感じですし!」
「そうそう、今地球が滅ぶ瀬戸際ですから! というか敗北率七割超えてますよ! 詳細な数字? ……忘れちゃった!」
「ちなみに敗北した場合はダンジョンをシェルター化させてもダンジョン内が水没するらしいです。水の惑星に逆戻り! 終わりですね!」
「テンション高いね、君ら」
「過去最大の来館数ですからね、ちょっとハイが入ってますよぉ―――!」
従僕達はハイタッチを決めるとそのまま忙しそうに去って行く。俺も連中を邪魔しないように自分の仕事に集中するか。受け取った資料を確認しつつ図書館を出て、牧場へと戻って来る。ついに10人分身を習得した合成屋は吠えながら肉体の限界を超えて作業を進めていた。かわいそう。
「どーしたもんかなー」
何時ものメンツは使用禁止、マガツキュウビ、ディザストロ、図書館でこっそり育てたあの子もノア突入前に海王に当てて耐性やスキルを割るのに使い捨てる前提なのでノアに持ち込む事は出来ない。マリア=ゲルダは図書館で館長の護衛があるから動かせない。
場合によっては大量の死人が出るから根の国は動けない。
暗黒樹海、ラトゥーリア達は海王足止めサイドで参戦予定。
ドラゴンズバレーからディザストロと主張を同じとする一派が参戦予定だが、そっちも海王の足止めに参加予定。
ノアが俺サイドによって攻略されている間、海上では暴れる海王を抑え込み、全てが終了するまで地球の破壊を阻止する為の戦力が必要になるのだ。必然的に、最大戦力はどうしても海上で海王の足止めに回す必要が出て来る。
だからこっちに割ける戦力は多くない……その中で最強のカードを選ばなくてはならない。この状況、環境で動かせる最強のカードはなんだ? 一番環境に適応したカードはなんだ? ミスは許されない。これまでとは話が違う。
これまではミスっても被害を受けるのは俺一人だった。
だが今回は……地球が……家族が……灯が……久遠が、終わる。それだけは絶対に許されない。
「ふぅー……流石にプレッシャーを感じるな」
牧場に戻ってくるとやはり大量のマスターの姿が目に入る。誰もが忙しそうにしている……少しふざけている姿もあるが、基本的に真面目に目的の為に動いている。まあ、余り遊んでいる余裕は誰にもないか。
俺も好き嫌いとか言わずに真面目に誰を連れて行くか考える必要がある。戦闘力は……まあ、選ばれている時点で不問としよう。俺と面識がある方が好ましく、特殊技能があればなお良し。
駄目だ、酒クズが浮かび上がって来る。アイツ、本当にこの手の探索は優秀らしいのが困る。マジで選択に入ってくるけど本当にアレで良いのか?
……いや、他の候補もある、確認してから考えよう。
「ちょっと休憩入れるか」
総理からのモーニングコール以来ぶっ通しで作業しっぱなしで脳味噌も茹っている。ちょっと頭を冷やす為に家へと向かおうとして。
玄関の前でそれを目撃した。
「君に一目ぼれしました、結婚してください!!」
「困ります……」
妹が告白されてた。