【書籍化】最強以外ありえない   作:てんぞー

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よっしゃ、キルゾーンの生成だ!

 実は強い人材ってのはそこそこいる。

 

 例えば日本の根の国攻略チームとか。

 

 今、根の国の深層で深淵の大母を攻略しているチームはフェイズ3に入って最終フェイズ入る所まで深淵の大母の攻略が進んでいるらしい。今年中には根の国の完全攻略が達成されるのでは? と俺達の間ではかなり話題になっているのだがこの人たちもウルトラエリートの名にふさわしい実力者だ。ノアに連れて行くだけの価値がある。

 

 問題は今、根の国の深部に居るから全力ダッシュで地上に戻っても出て来られるのは1か月後だ。時差の関係で絶対に間に合わない。他にも中国の崑崙攻略チーム、イギリスの禁書庫攻略チームもあるのだが……今、人類で次元城まで辿り着けたのは酒クズとジジイだけなのだ。

 

 次元城の前を務めるドリームランドは暗黒樹海級の難易度を誇るエリアで。当然次元城はその上を行く。あそこに辿り着いたというだけで実力を証明してしまうのだ。

 

 こういう所であの酒クズの凄さが解ってしまうのはなんかちょっと嫌だなぁ。

 

 何だろう、この苦手意識。どこから来てるんだろう? 正直もっと滅茶苦茶で酷い人間は他にもいる筈だ。モンスター博士とか合体茶化してカオスの権化みたいなくせにそこまで嫌いになれないのが不思議だし。他にも異常者のワンダーランドと言われる駆間には変な奴がいっぱいいる。

 

 昼間から全裸で徘徊しながらモンスターと生身で戦う奴とか。

 

 通りすがりの殺人鬼とか。

 

 生まれた瞬間から神だった事を主張するカルト宗教家とか。

 

 駆間で有名な犯罪者になれば犯罪王(物理)になれると主張してやってきた犯罪者とか。

 

 転生して前世の知識で無双している知識チート系ニヒリスト少年とか。

 

 邪悪な聖杯によってこの世のカオスが全て引き寄せられているんじゃないか? と言わんばかりのこの土地で他にもっと嫌いになれそうな奴は多いんだけどどうしても酒クズは苦手意識が強いんだよね。やっぱあのだらしない所が嫌なのかなぁ……? 全体的にダメ人間な所も苦手かもしれない。

 

 とはいえ、実力だけは本物だ。

 

 次元城の入り口にまであの姿で辿り着いたのは本当に偉業だ。しかもスクナなんて無印時代の前時代的なモンスター……インフレ時期前のモンスターで辿り着いたのだ。そこは本当に尊敬しても良い。それ以外が何も尊敬出来ないだけで。

 

 だけど仕事はきっちりやってくれそうなんだよなぁ。

 

 ……はあ。

 

「しゃーない、他に選択肢はないか」

 

 メールで酒クズで妥協すると連絡をしておく。これで彼方も準備を整えてくれるだろう。世界の危機を前に好き嫌いを主張する程人類に余裕はない。正直今回、かなり戦力的にギリギリな部分がある。勿論ギリギリアウトという意味でギリギリだ。

 

 海王戦フェイズ1は海王の頭を叩いて怯ませる事が目的だ。この時はHPを削るのではなく専用のスタン値ゲージを削る事が目的で、これを削り切ると海王がスタンし、その間に海中に突撃出来るようになる。

 

 海王の下にはサンゴの迷路と洞窟が存在し、これを抜ける事で海底へと到達できる。このサンゴの迷路を抜けている間に追撃してくる海王を躱し、進み続けるのが第2フェイズの内容だ。

 

 第3はノアへと到達し、その内部を攻略する事。防衛装置やノアを徘徊する亡霊達、そして中に残された小口を撃破しつつ卵のJr.を確保、サブ電源を起動させてからメイン動力を起動、Jr.を孵化させたらその権限でノアを再起動して海上に浮上させる。

 

 そして最終フェイズ、ノアを使って海王との海上決戦へと移行。これはノアを使ってイベント戦なので、手順さえ間違えなければ負ける事はないだろう。寧ろここまでの流れが本番と言えるだろう。

 

 問題はゲーム的な仕様を廃すると海王の追撃を振り切れる人類が存在しない事と、海王の足止めが恐らくほぼ不可能な事実だ。どれだけ戦力を盛った所で惑星規模の破壊能力を持つ生物を足止めするには、人類は弱すぎる。

 

 だからブライアンを始めとした人類最高戦力は当然、海王の足止めに回さなくてはならない。人類2軍の中でもトップクラスレベルがギリギリノアを攻略する……という感じになってしまう。強さと探索能力のバランスが非常に取れてるから酒クズはそこら辺本当に今回は適性が高い。まいったね。

 

 俺も容赦しない分ランクを1段階2段階ぐらい誤魔化すつもりでいるんだが……まあ、今回の件はほんと怖い。

 

 ―――未だに誰が海王を起こしたのか判明してないのが怖い。

 

 教団連中か? 連中の元の目的は女神への娯楽提供の破滅主義者の集まりだった。だけど現状、見える範囲では連中の活動は大きくはないし、その趣旨も大きく変化している。女神が下界エンジョイ勢になっているのと俺という攻略する気満々のゴッドスレイヤーがいる関係で、教義が時間稼ぎしつつ女神を殺す俺を手伝うという形に変化している……のだと思う。

 

 まあ、少なくとも数年前に見た神父はそんな感じのスタンスを見せてた。最近は活動してないのか全く情報が入ってこなくて困る。アイツら潜伏性能高いんだよなあ。

 

 こんな事する必要あるのか? という疑問はまあ……俺はちょっと共感できる。

 

 人類は弱すぎるし、団結する必要がある。リスクはかなり高いが、この事変を通して人類が更なる力を求める事と危機意識を改める事が出来るなら……まあ……大陸の1つぐらい沈む価値はあるんじゃないか? と自分の冷静な部分は思えてしまう。

 

 大陸1つと星の運命を引き換えにするならまあまあ有用なトレードだと思う。それぐらい海王はぶっちぎりでヤバイ。だけどこいつを起こしたのは本当に教団の連中か? 今の連中にそんな事をしそうな感じは……どうだろう、ちょっと解らない。

 

 じゃあ他に候補があるのか? って話をすると邪神連中か、ジジイ辺りなんだよね。ロストエデンはなんだかんだで本質的には人類側の存在なので海王をけしかけるような一か八かの試練はやってこないと思うんだよね。

 

 ワンチャン女神が尊のカッコいい所見たいな! とかいう動機でけしかけて来るのはあり得る。

 

「考察出来る要素は少ないから結局憶測になるし、そんな事を考えている暇はないか」

 

 ベッドでごろりとしているとチビがベッドの下にヘスティアを押し込むのに飽きたのか、ベッドの上に上がって来る。そのまま俺の上に乗っかり、そこで寛ぎ始める。お前飼い主を下敷きにしやがったな? いや、子狼の時何時もこうやって乗せてたなそういや……。

 

 あの頃のままかあ、中身……。まあ、そうだよな。ずっと甘やかして育ててるからそんな感じだよなお前。可愛い奴め。

 

 たぶんこの扱いはずっと改められないと思う。

 

 撫でり撫でり。

 

 ぽんぽん。

 

 ちょっとした癒しタイム。これから激戦とストレスたくさんの環境お潜り抜ける前に心の平穏を作る。一度準備が終われば戦いが終わるまではノンストップで続けなきゃいけない。戦力は限られ、相手の強さは人類の対処できる範囲を超えている。それでも勝たなくちゃならない。

 

 大好きな人たちが明日を生きる権利を手にする為に。

 

「先はまだ長い、か」

 

「わう」

 

 ご満悦という様子のチビが人の上でマウントを取ってるとクローゼットが開いて中からミレーナが登場した。いや、死体だった。ウェルギリウスが死体を窓の外に投げ捨ててる。何時の間にお前らそんな攻防を繰り広げていたの?

 

「はあ……はあ……ベッドの下に何もなかった……埃1つなかった……本当に年頃の少年かい君!?」

 

「人のベッドの下から出て来て言う事がそれ?」

 

 ヘスティアがベッドの下からつまんなーいと言いながら這い出てくるとそのまま窓から外に飛んで行く。他の人で遊ぶ様だ。所で君ら、その窓は出入口ではないのだからあんまりゲート代わりに利用しないでね? ドラゴン達が真似して首を突っ込み始めるから。

 

 んもー。休めないなぁ。

 

 ひと眠りしようかと思ってたけどこうも人が多かったり構われると全然休めない。仕方がないからチビを上をから下ろして起き上がる。仮眠は後で取るとして、牧場の仕事でもしてちょっと気を紛らわせるか。

 

 何時も通りに過ごしていれば自然とリラックスするし集中力も戻るだろう。そう思って作業着に着替えようとした所で再びスマホに連絡が入る。

 

「作戦会議かあ」

 

 作戦メンバーが決まったのなら早速作戦会議に入るから参加してくれとのお言葉。やっぱり休む暇なんてないんだなぁ、と思わせられる。別に良いんだけど。

 

 しょうがないと自分に言い聞かせながらまた家の外に出る。

 

「君、凄く綺麗だね? 夜月プロの娘さん? 俺、作戦に参加するマスターなんだけどちょっとあっちで話ししない?」

 

「失せろ」

 

 久遠がナンパされてた。秒で中指突きつけて拒否しているが、流石に女慣れしているのか距離を詰めようとしてくる。おぉっと、ここが鴉羽ファームだと知っての狼藉かな? ミスト姐さんが静かに霧を噴射して囲い始めたぞ。よっしゃ、キルゾーンの生成だ!

 

 俺も静かにウェルギリウスから鎌を受け取りつつ構える。

 

 どうやら今日は命が惜しくない奴が多いようだな……?

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