【書籍化】最強以外ありえない   作:てんぞー

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AVに出演する犬ってたぶん《クイックレイド》習得してますよ

『此方ノア中枢電脳です』

 

『長らくお待たせしました』

 

『これより反攻作戦を開始します』

 

『ノア内部の残敵掃討が完了しました』

 

『システムの再構築が完了しました』

 

『スーパーロボット魂の実装に成功しました』

 

「スーパーロボット魂?」

 

『スーパーロボット魂?』

 

『疑問:スーパーロボット魂?』

 

 なんか聞き覚えのない単語が出てきましたね? ノアってこんなキャラしてましたっけ? って海王を眺めると、海王は頭を横にふるふると振った。チクタクマンを見るとそんなもんインストールしてませんって顔をしてる。女神はうんうん頷いてる。全能で何が起きてるのか解ってるのかアイツ。ずるいなぁ、死んでくれねぇかなぁ。

 

『これより生命の未来を保証する為の戦いを開始します。繰り返します。これより生命の未来を保証する為の戦いを開始します―――』

 

『此方船団長ノトスだ。待たせたなぁ、お前ら。これより決戦を挑む―――やるぞ、お前ら!』

 

 ノア中から歓声と咆哮が響いて来る。それまで蹂躙される側だった運命から脱却した者達が立ち上がった。最下層のシェルターに逃げ込んでいた者達も、最後の瞬間まで戦う決意をノトスの声と共に固めた。今、この場に居る者達は全て戦士となった。

 

 対邪神、対女神の最前線に立つ英雄になった。これで此方が出す事の出来る戦力は全て出し切った。後はここからどうやって戦力を扱うか、という事になる。黄龍の背の上、自分に配られたカードを全て確認し、腕を組んで戦場を俯瞰する。

 

 そんな俺の様子を女神が楽しそうに眺める。

 

「解るわ。今、貴方の脳内では明確に私たちを退ける為のプランが構築されているわね? 私達の弱点、能力、戦術……その全てを把握してどう対処すれば良いのか、その具体的な方向性と形が出来上がりつつある」

 

『恐怖:実に恐ろしい事です。貴方は手段さえ存在するのであれば全能の神でさえも殺せるのですから。ですが……さて、今、全能神を殺すだけの手札が揃っているのでしょうか?』

 

「試してみるか?」

 

 ノア戦士団の再編成が完了する。戦場に更に戦士団が増えた。ノアの上に武装が展開される。後ライブ用のステージも用意されて、エデがそっちの方へと呼ばれる。ごめん、なんでステージ用意した? 今それ必要だった? 貴重なリソース割くほどなの?

 

『申し訳ありません、変形機構を作るだけの時間とリソースがありません。数千年後に託しましょう』

 

「ごめん、ちょっとタイムで」

 

『はい』

 

「待つわ」

 

 両手でデカいTの字を作ってから振り返り、メガホンを取り出してノアに向かって声を張る。

 

「は―――い! これをやらかしたであろう馬鹿3人―――! この非常事態にノアに一体何をやったのか後でちゃんと先生とお話ししましょうね―――!」

 

 返答はないけどなんとなーく今、馬鹿3人の間で責任の押し付け合いが発生していると思う。良し、茶番タイムは終了だ。茶番の間にも戦士達が到着し、ノア全体が決戦に挑む覚悟を決めた。ノトスも指揮に就く準備を終えて、ノア表層に酒クズが出てくるのが見えた。

 

 お待たせ! 海王も準備は良い? シンクロで指示した必殺技開発した? したかぁ。流石星の王、こっちの無茶な要求にも応えてくれる。じゃあそれをリーサル火力にするので、なるべく見せないように温存するとして。

 

 いい加減この戦いを終わらせようか。現代に戻らないとならないし。

 

「セットアップ」

 

 ノトスが船団指揮に入った!

 船長としてノアの指揮系統を掌握した! 《必中連携指揮》!

 全てのキャラクターに必中が付与された!

 全てのキャラクターに連携が付与された!

 未来へと航路が定められた! 未来を阻む者特攻が付与された!

 ノア特別野外ステージにエデが登板! ノアにFCが開設された!

 エデのコラボコンサートが始まった! ノアPより新曲が提供された!

 《ただ未来の為に》を熱唱開始!

 歌唱が決戦に響き渡る!

 連撃ダメージ増加を付与した!

 物理追撃が付与された!

 弱点ダメージ増加を付与した!

 全員にテンションが付与された!

 FCに1000人加入した!

 大量のファンを得た事で《詩吟》は《アイドル》に変化した!

 「俺の合体プランがああ―――!!」

 チクタクマンは《時の残影》を引き起こした!

 チクタクマンの姿が時を超えてブレ始める。

 チクタクマンの攻撃に追撃が発生する!

 チクタクマンの攻撃に連携が付与された!

 耐性がランダムに変動した!

 ワールドイーターは《代謝活性》を行った!

 毎ターンHPが最大値まで回復する!

 1度受けたデバフを二度と受けなくなった!

 打ち消しを受け付けなくなった!

 弱点変化を受け付けなくなった!

 《異常食欲》により捕食に成功した時、追加行動を得る!

 ワールドイーターは稀人を味わいたい!

 女神はただ微笑んで見守っている!

 

 なんだか合間にトンチキな流れが挟まっている気もしたが、敵も味方も最高ランクのバフを重ねて一気にリーサル火力を高めて来た。《詩吟》が変化した事に関してはマジで物申したいのだが今はその余裕がない。ノアにノトスが付いた事で支援性能が爆上がりしているし、オマケで何かエデまでブーストされている。勝手に俺抜きでアイドル始めるの止めてくれません?

 

 よし……やるか!

 

「詰めるぞ……!」

 

 エストの《アローン・イン・ヘブン》!

 チクタクマンの《加速する世界》!

 《アローン・イン・ヘブン》は終わりを告げた!

 《再動する時》によりターン終了時、チクタクマンのスキル回数が回復する!

 《クイックレイド》!

 チクタクマンは攻撃を無効化した!

 ノア戦団が連携する!

 戦団による総攻撃が降り注ぐ!

 チクタクマンの《タイムブリンク》!

 ノア中枢電脳は時間の流れを解析して妨害した!

 ノア中枢電脳はチクタクマンの耐性を解析した!

 チクタクマンの弱点に味方の攻撃属性を変更した!

 チクタクマンに大ダメージ!

 チクタクマンに大ダメージ!

 チクタクマンに大ダメージ!

 チクタクマンに大ダメージ!

 チクタクマンに大ダメージ!

 チクタクマンに大ダメージ!

 「副砲展開……撃て!」

 ノトスの指揮により追撃が命じられた!

 雨の様な砲撃が降り注ぐ!

 チクタクマンに大ダメージ!

 ワールドイーターにダメージ!

 アリア=マリスに0ダメージ!

 

 チビが一瞬の空白を縫う様に放った《クイックレイド》、クリティカルもしない攻撃はバフを盛った所でダメージを全く出さないし、そもそもチクタクマンの耐性に引っ掛かって無効化される。だがそれが起点となって連携攻撃の呼び水となる。

 

 無効化されても攻撃の判定は出る。それに合わせて無数の戦団が一斉に総攻撃を仕掛ける。ノアからの支援で必中は付与されている為、もはや絶対回避でさえチクタクマンが攻撃を回避する事は出来ず、弱点解析と合わせて一気に邪神の体力が吹き飛ぶ。

 

 同時に巻き込まれたワールドイーターの反応が鈍い……体力が膨大すぎてあまりダメージが通ってないように見える。

 

 が、別にそれで良い。ワールドイーターもチクタクマンも完全回復し続けるタイプのボスだ。

 

 本命は海王によるリーサル、それ以外は全て前座だ。

 

 腕を振るって指示を出せばミレーナが《デスペリアハザード》を放ち、チクタクマンとワールドイーターを上限まで強化された魔力で殴り飛ばす。衝撃が走りチクタクマンの姿がワールドイーター付近まで押し出される。

 

 だがそれに甘んじるチクタクマンではない。生き残りをかけているのはチクタクマンも同じ。吹き飛びながら腕を前に伸ばし、拳を作る。

 

『世界式:《時海介入》、開始』

 

 チクタクマンは《時海介入》を開始した!

 原初の時が降臨した!

 世界は原初の時に満たされた!

 時が静止した。時間が運航を止めた。全ての生命は停止した。

 己を除いた全キャラクターの素早さが0になった!

 己を除いた全てのキャラクターの行動優先度が常に0になった!

 変動値の分だけダメージが発生する! 反射無敵カット貫通確定ダメージ!

 時の反動があらゆる生命を磨り潰す―――。

 海王は時間停止しなかった!

 海王と耐性を共有した! 尊は停止しなかった!

 ワールドイーターは時間停止しなかった!

 アリア=マリスは停止しなかった!

 ノア中枢電脳は停止しなかった!

 『そして正しき時の中で世界は動き出します』

 

 味方陣営に絶大なダメージ!

 ノア:生命保護システムによる全存在の生命が保護された!

 全ての命が食いしばった!

 チクタクマンは《次元圧壊》を放った!

 海王が庇った! 大ダメージ!

 チクタクマンは《次元斬:散》を放った!

 海王は庇った! 連続ダメージ!

 チクタクマンは時を遡り自分の状態を復元し―――。

 チビは《クイックレイド》を使った。

 

「わん!」

 

『!?』

 

 え? という視線がチクタクマンからチビへと向けられた。チビは尻尾をふりふりしながら《クイックレイド》を放った直後の状態で行動を停止している。いや、時間が停止している。じゃあなんでチビは動けたんですか? という謎がある。

 

 《クイックレイド》は時間停止中にも発動できるアクティブトリガーなんですよ。

 

 なので時間停止モノAVに出演する犬ってたぶん《クイックレイド》習得してますよ。これから誰かがAV見る度にその犬、回避ハメ出来ますよって囁いて行こう。

 

 連携! 海王はチクタクマンを巨体で叩き潰した!

 連携! ワールドイーターはチクタクマンに齧りついた!

 ぺっ! これまずいっ! 美味しくない!

 連携! アリア=マリスは空間を破壊する一撃を放った!

 女神の手により《時海介入》が破壊された!

 そして時は再び動き出す。

 ワールドイーターは再び大口を開けて食らいついて来た!

 海王は尊を庇った!

 海王に絶大なダメージ!

 精神的な負荷を海王に代わり尊が肩代わりした!

 ワールドイーターは再び尊に食らいつこうとする!

 スクナが戦場に参戦した! 顔面を横から殴り飛ばした!

 ワールドイーターにダメージ!

 ワールドイーターは尊を食べたい!!!

 海王は尊を庇った!

 これはもう飽きた!!!

 食べたいものが食べられず癇癪を起し始めた!

 ワールドイーターの行動回数が増えた。

 攻撃回数が増加した。

 庇う貫通を獲得した。

 ワールドイーターは尊に狙いを定めた。

 

「ふぅ―――」

 

 敵の使うスキルの1つ1つが高火力でハメ性能も高く、なおかつ此方による詰み手を意識したカウンターを使ってくる影響で向こうも詰み手を意識して行動してきている。ワールドイーターは成長して適応力を高め、女神は気分次第で行動を変え、チクタクマンは隙を窺っている。

 

 ―――だが。

 

 戦力と手数が揃った時点で、殺しきる準備は整えてある。チクタクマンは既にワンキルするパターンが構築されているのだ。それに必要なパーツが揃っている時点でもう怖くはない。ワールドイーターもこのターンで纏めて処理する。

 

 海王の《波濤》《分かち合う力》《総力戦》!

 ノア電脳中枢がチクタクマンの弱点を解析した!

 民を率いて一斉攻撃に移った!

 海王の攻撃!

 チクタクマンにダメージ!

 ワールドイーターにダメージ!

 アリア=マリスに0ダメージ!

 ノア戦団がそれに続いた!

 ノアは副砲とミサイルを放って追撃した!

 尊パーティーは攻撃に続いた!

 椿パーティーはそれに続いた!

 海王は再び《総力戦》を挑んだ!

 

 やる事はとてもシンプル。フルバフを乗せた状態で殴る。連携で味方による攻撃を誘発させて攻撃回数を増やすだけ。海王はインチキスキルを此方に合わせて開発してくれるのでだいぶ手札の補強が楽になった。お蔭でチクタクマンとワールドイーターが殺せる範囲に入った。

 

 ……いや、違うな。

 

 チクタクマンも、ワールドイーターも、本来海王がフルスペックを発揮しつつ味方に恵まれているのなら、そこまで苦労する相手じゃないのだ。

 

 女神は最初から難易度設定を間違えてなんかいない。元々これでクリアできるという難易度と攻略方法を提示している。問題は様々な理由でそれを実現できない方に問題があると女神は言っている。まあ、正しいんだが正しくはない。

 

 弱い生命を個体ではなく総体として認知する女神にも問題があるし、他の生命を想って詰みになった竜王も悪い。だが今回、海王とノアが連携すれば少なくともワールドイーターには勝てる程度の戦力設定にはなっている筈だ。

 

 チクタクマンはイレギュラーに過ぎない。

 

 だから妨害を、そして小口が綺麗さっぱり消え去った今。海王とノアはその本来の戦力を発揮する事が出来るようになる。なったのだ。

 

 だからこれで纏めて潰す。

 

 海王は限界を超えて力を発揮した!

 海王の《ブルースフィア》!

 天体を覆う海水が不浄を絡め、星の外へと追放する!

 

 海水が一瞬でチクタクマンとワールドイーターを絡めとると、その存在を星から追放するように水流となって飲み込んで星の外へと伸びていった。全盛期の海王の力が無限に海水を生みだすと、それはチクタクマン達を覆う水流を強化し、星の外へと押し出した。

 

 だがそれで終わる事もなく、星の外へと追い出された姿を海水が水球となって包み込み、天体サイズへと成長すると蠢き、高速で水流を生みだし循環させながら圧縮を開始する。その姿へと向けてノアに内蔵された主砲が表層部を割る様に出現する。

 

 ノアの《造物抹消プロトコル》!

 《造物エンジン》による被造物解体プロセスが実行される!

 主砲に《造物抹消プロトコル》が装填された!

 「主砲……撃てッ―――!」

 

 ノアから宙へと向けて放たれた主砲が一瞬で視界を覆いつくす。生命を、物質を、概念を、造物主の権能によって生み出された全てを逆算して抹消解体するという権能の働きがピンポン玉サイズまで圧縮された水球を飲み込んだ。

 

 嵐を突き抜ける様に空に穴が開く。

 

 その背後にある天体をも貫通し、《ブルースフィア》に飲み込まれた邪神と怪物をその根本から消し去った。破壊の余韻を空気に残し、戦場にはたった1体の敵を残した。

 

「―――はあ、本当に素晴らしいものを見せてくれたわね。ありがとう」

 

 胸を撫で下ろすように、人々の輝きを心の底から愛するように。全ての生命を愛しむ様に、全ての攻撃を無効化し、主砲さえも回避した世界の後継者が未だそこに無傷で立っていた。

 

「それじゃあ」

 

 と、女神が言葉を続けた。

 

「私の番ね」

 

 腕を振るった。

 

 海王の血肉が飛び散る。

 

 ノアの表層が砕けた。

 

 海が割れた。

 

 敗北が決まった。

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