【書籍化】最強以外ありえない   作:てんぞー

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人類繁殖キャンペーンを開始しましょう

「La……La……La……」

 

「ぴゃぴゃ……ぴゃ……ぴゃ!」

 

 エデが歌ってるのに合わせて金魚鉢から身を乗り出すジュニアが揺れている。将来は巨大な海王へと成長する星の王者も、今はただの子供。このままおねショタ路線でしばらくは頑張って貰おう。なんだかんだでエデはラミア種だし、相性は良いのだろう。

 

 それはそれとして俺、ミニノア、ノトスは今後の相談をする為にも近くの岩に腰を下ろして話をする事になる。ミニノアは自分のノアとしての姿に対して並々ならぬ思い入れと自信があるのか、人型インタフェースを生みだす事には反対しているらしい。まあ、そういうのもアリなんじゃないか? 俺は割とノアカッコいいと思うし。部屋にプラモ飾っておきたいよね。

 

 それはさておき。

 

「ノアの今後と運用に関してか」

 

『はい。現状、ノアは人類へ幾つかの理由から協力する事が難しい状況を迎えております』

 

「簡単に言えばノアを動かす事には幾つか制限があって、おぢさんがいる間は造物エンジンもノアも運用できるけど、ノアは天父から単独での運用を禁じられていて、乗員が存在しない場合は造物エンジンを稼働させる事が出来ないんだわ」

 

『この乗員の定義はノアで職務に励み、帰属し、そして生活する者を示します。主でも当艦の運用は可能になりますがまだ幼く、自己判断における信用性が薄い為推奨されません』

 

「おぢさんは何れ合体して去る事になる。それまでは艦長としての権限でノアを動かせるけど……本来は生きている人間じゃなきゃノアの規則に引っ掛かるんだよねぇ。おぢさんが単独でノアの造物エンジンを運用出来てるのは一種の裏技みたいなもんよ」

 

 むん、とノトスが腕を持ち上げ力こぶを見せつける。そういやノトスは過去に戻った時に肉体の方と合体して、そのまま軽くパワーアップしているらしい。その影響もあって今はノアを単独で動かす事が出来るらしい……が。

 

「あ、ちゃんと合体してくれるんだ」

 

「そりゃあこれまで受け継いできた火をおぢさんの勝手で絶やす事は出来ないでしょ。安心しな、大将ちゃん。おぢさんはちゃんと次の世代へとバトンを渡す覚悟があるさ」

 

 良かった、と思う反面ノトスはノトスで結構覚悟決めてる所あるんだな、と思える。顔や言動に出さないだけでノトスもノトスで結構感情溜め込むタイプなんだろう。ただ彼に関してはジュニアやノアを見てる表情が凄い優しいので、海王を巡る一件で心に決着をつけたのが解る。

 

 ノトスは俺と比べると大人だ。俺なんかが何かを言わなくても、場を与えれば勝手に整理を付けてくれる。そういう意味ではノトスは自分の力で自分の心にケリをつけたのだろう。安心してAランクになったら、合体に送り出せる。

 

 ……だが、ノアをどうするかという問題はまだ残る。

 

「俺としてはノアが合体関係で手伝ってくれるのが理想なんだけど……」

 

『データ取得済み。再合体機能はバランスを崩壊しないレベルで可能な支援だと判断します。人類戦力向上を目的とする支援はノアの権限で許される範囲だと判断します。しかし、大前提としてノアは自身でその操作を行う事を禁じられています』

 

「ノアは創造主の権能を持っている艦だからねぇ。制限がないと自己改造を繰り返しその果てに世界を滅ぼす怪物になりかねない……だから造物エンジンを搭載された時、ガチガチに規則で定められたって話だよぉ」

 

「まあ、解る話ではあるよね」

 

 シンギュラリティに達したAIが人類不要じゃね? ってなって人類排除に乗り出すのは良くあるSF映画の内容だ。ノアがその根底にあるのが人類保護で、そして自分の意思では創造の権能を運用出来ないというのも理解できる話だ。

 

「となるとノアにノアを運用する人間を連れて来る必要があるのか……あぁ、言っておくけど俺は無理だからね」

 

 ミニノアがホログラムの住居変更届を浮かべていたのですかさず無理だと告げるとミニノアがSSRエフェクト付きで住所変更届を輝かせる。申し訳ないけど牧場での仕事や普段の生活があるから、ノアに住み込む事は出来ない。なので俺以外の人間を調達して欲しい。

 

「そこなんだよね。大将ちゃんが運用してくれるのが1番安心できるんだけどそうも行かないからねぇ」

 

「ちょっと図書館の方にどうにかならないか聞いてみるか……」

 

 スマホで館長に連絡を入れてみると直ぐに通信が繋がった。ノアに関する状況を伝えると館長はうーん、と唸った。

 

『残念だけどあまり力にはなれないかな……そもそも立場と都合上あまり長く図書館を離れる事が出来なくてね、滞在する程度だったら問題ないんだけどそれ以上はちょっと難しいかな。後ノアって大都市規模の都市型艦でしょう? 流石に図書館にはそれを満たすだけの人員が居ないかな』

 

「そっかぁ」

 

 元ノア勤務の従僕とかをノアの方に送る事ぐらいは出来るが、ノアを満たそうと考えると難しいというのが結論になる。じゃあノアで住む人間を募集するのはどうだろうか、という案には大きな問題がある。現在、地上ではノアの所有権に関するあーだこーだという言い争いが起きている。

 

 海王戦に参戦した国家で理解ある所はそういう発言をなるべくしないように努めているのだが、右翼や左翼、政治団体に思想団体と、国家という枠組みには様々な思惑を持つ人間が存在している。ノアに関する意見を統一しろと言う方が無理だ。

 

 なにせ、柊家の方でも俺がノアをコントロールしたんだから俺のもんだし、柊家で管理すべきだ、なんて言ってる奴もいる。そういうバカが俺の方に来ないようにアンナはここ最近忙しくしてる。ついでに王兄様もそこら辺は一緒に動いてくれて派閥を抑えてるらしい。

 

 世界の危機に派閥とかないんだなぁ、って思うとちょっとじぃんと来る。

 

 世界の危機でも欲望に際限はないんだなぁ、と思うと人類やべぇなって思う。

 

 俺は! こんなにも! 人類の為に頑張ってるのに!!

 

 人類はどうしてか愚かなままなんだ! いやあ、正直教団の地球駆間化計画は止める理由が見つからないんだよね。それぐらいしないと当事者意識が生まれないし、そうしなければ世論は動かないって言われるとまあはい、そうですね……としか言えないんだよね。

 

 まあ、ここら辺の事は忘れておこう。それよりも重要なのはノアの運用だ。ノアの運用が出来ないとなると再合体システムが活用できない。これが活用できないと現役Sランカーの強化が苦しくなってくる。ロストエデンの報酬とセット運用で爆速再育成が完了するのは割と大事なんだよなあ。

 

 ……ロストエデンも何時来るか解らないイベントだしな。

 

 なるべく早く、ノアに関連する問題は解消したい。

 

「なるべくなら身内から裏切らないって解っている伝手を使ってノアを運用したい所だけど、正直ノアを運用に持っていくレベルまで人を入れるって事が難しいと思う」

 

「まあ、そうなるよね」

 

『人類繁殖キャンペーンを開始しましょう。男女をノア内に招き、繁殖するまで帰れなくします。そうすればノア内でベビーブームを巻き起こせます』

 

「ディストピア社会を作るのは止めてね?」

 

 悪いインターネットと繋がってるな? めっ! SNSの与太話を参考にするのはめっ! だぞ。ジュニアの教育に悪いだろうがこのポンコツAIめ。でもノアに根付く民が必要というのは良く理解している。

 

 どこかの国、団体から派遣された人間だと所属している国家や団体の思想というものがどうしても反映されてしまう。ノアは国家に対しては絶対中立の立場で、人類には友好的であってほしい。だがノアの性能は誰もが欲しがる理想のものだ。

 

 これを欲しがらない人間なんて地上には存在しないだろう。

 

 ……まあ、無理だと思うけど。

 

「純粋にノアに味方して裏切らない人類なんていないんじゃないかなぁ」

 

「大将ちゃんみたいなのは本当にレアケースだからねぇ。いや、ほんと。お疲れ様」

 

 ノトスの言葉にサムズアップで応えながらうーん、と唸る。合体関連を任せるだけならジャックとラムシンとか、モンスター博士を呼べば本当に思想抜きでノアでモンスター合体を担当してくれそうな気はするんだよね。問題はその背後にはモンスター協会があって、その思想をブロックする事は難しいという話なんだけど。

 

 やっぱ、ノアを運用する上で大多数の人間をノアに所属する意識を持たせる事が大事だと思う。

 

「昔のクルーがいりゃあなぁ……」

 

 ノトスが腕を組みながら懐かしむ様に呟く。

 

「一緒に航海して来た仲間たちとなら安心してノアを任せる事が出来るんだけどねぇ……もう生きてはいないだろうしなぁ……はあ……」

 

 がっくりと項垂れるノトスの言葉にぽん、と拳を叩いた。

 

「それだ」

 

「うん?」

 

 白紙の物語を取り出し、ぱらららら……とページをめくり、ノトスの章を開く。2人と1機で物語を覗き込み、改変された事象を確認する。

 

「ほら、ここ。俺達が海王と一緒にワールドイーターやチクタクマンを叩いた所だけど、ノアが沈む前に乗員たちが退艦してる。戦える人達は最期まで残って戦ってたけど、逃げられた人達がいる」

 

 ぱん、と物語を閉じる。

 

「正史においてノアの住人のほとんどは小口に食われた結果怪物となってノアを徘徊する事になったけど、俺達が介入した結果小口は駆逐されて、退艦や戦死する方向に運命は変わった」

 

『把握しました。生存、もしくは死亡であれば概念として存在するのでシステムを通したモンスターとしての復活が可能であると認識しました』

 

「成程! そ、それじゃあ……また、皆と会えるのか……!?」

 

 立ち上がって拳を握るノトスの姿に可能性はある、と続ける。

 

「勿論、数百ぐらいなら合体したりして生みだす事は可能だけど、ノアを運用するレベルまで合体して生み出すのは少し現実的じゃない。もっと何らかの手段を考える必要はあるけど……元ノアクルーや住民を、現在の住民として再登用するのはアリなんじゃないかと思う」

 

 無論、手段を色々と模索する必要があるだろうけど、この問題に対して一番現実的な解法なんじゃないかと思う。

 

 どうかな? とノトスとミニノアを確認すると、ミニノアの上に花丸マークが浮かび上がった。

 

『挑戦する価値はあると判断します』

 

「希望が見えて来たねぇ」

 

 ここからは手段を話し合わないとならないけど、少しは希望が見えて来たかもしれない。暗いニュースと出来事ばかりなのだ、少しぐらいは良い方向に進んでくれると良いなぁ……。

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