1度遊ぶぞ! と気合入れて決めるとまあ、出来る事がいっぱい増えて来るというのはちょっと不思議なものだ。俺としては別にそこまでオーバーワークしているつもりはなかったし、地方の農家の倅ってこんなもんじゃない? って感じはあったのだが周りからすれば義務感から戦いすぎているという印象が強かったらしい。
まあ、だからこの夏休みはいっぱい遊ぼうという話になる。普段は忙しくてそこまで一緒に遊べないクラスメイト達を誘って遊んだり、バトルばかりの連中も誘って遊んだり。アンナの執務室を急に襲撃して攫ったりして夏を過ごす事にした。
無論、牧場内では俺にしか処理出来ない案件もあったりする。
最近は牧場の規模が大きくなった影響で家族営業では手が回り切らない為、人を雇う事もある。例えば最近入ってきた新人さんはお隣の国出身のスパイだったりするのだが、別にみられて報告されて困る事は特にないのでそのまま泳がせてる。悪い事したらお仕置きで良いかなぁ、って気はしてる。この手のスパイは情報収集と動向把握がメインなので放置してても害がないんだよね。逆に軍人だったらスパイ教育受けてるから能力は花丸評価入ってるので役に立つし安く使える。
だから割と助かってたりする。ほら、うちの牧場って魔境だし。普通のバイトだと数時間もせずに辞めちゃうんだよね。命の危機を覚えて。それでも俺が処理しなきゃ難しい案件というのもある。
例えば新しく入ってきた子にキマイラが出て来るのだが、頭別で意見が違ってたり縄張り意識が強いので周りと衝突しがちだったりする。こういう子は割と新しい環境に馴染むまで時間がかかったりするのだが、少し誘導すればリーダーシップを発揮出来たりする子だったりするので、それを理解して環境を整えてあげると小さい子達を守ったりするようになる。
そういうモンスターごとの性質や性格を把握して適切な環境に配置するってのはプロでもまあ、かなり大変な事だったりする。ただそこは知識だけならたくさんある俺であれば問題なく対処できるという話だ。
こういう日常の苦労をしつつもこの夏の間はバイトや正社員に昇格した人達に牧場管理を任せつつ、俺は夏を満喫する為に来た。
「東京ディザイアーランドぁ―――!!」
東京にある遊園地に俺はクラスメイト達とやって来ていた。テーマパークに来るなんて何時ぶりだろうか? 久々に見る巨大なキャッスルは入口の前からも良く見えるし、見慣れない燃え盛るオブジェも設置されているのが見える。何アレ?
「見て―――! ディザイアーくんが十字架に磔にされて焼かれてるよ!!!」
「火あぶりだ!! 校長の脱税が発覚した時を思い出すなぁ」
「い、いらっしゃぎゃああああようこぎゃあああ、熱いようこそおおお」
「すげぇ、焼かれながらウェルカムしてる」
チケット販売の前で十字架に磔にされた狐のマスコットが焼かれている。このディザイアーランドのマスコット、ディザイアー君だ。目の前に新しい看板が置いてある。内容を確認するとこのマスコット、どうやら今朝11股している事がバレてしまったらしい。まあ、そりゃあ処刑されるな。
「よ、ようごぞお、ディザイアーランドべぇ! ごごはぁ、欲望のワンダーランドぉおおお―――!!」
「すげぇ……すげぇという感想しか出て来ねぇ。すげぇ以外にコメント残したくねぇ……」
「き、君ぃ」
ディザイアー君がこっちを見た。
「き、君顔が良いねぇ……解るよ、君はジゴロの才能がある! 女の子に囲まれるのって良いよね! 君なら僕よりもいっぱい女の子に囲まれるごともでぎるよォ!! 期たぁぢてるぅ!! あっつぅ! 熱い! あああああああ―――!」
「凄いなぁ、最近のテーマパークは。入口にゴミを飾るとはな」
容赦のない久遠さんが近くの車からガソリンを抜いてそれを注いでいた。ついでにケーキ入刀感覚で俺もガソリン注いでおくか。ディザイアー君の処刑が長引く事を心から願いつつチケットを購入して入園する。もう既にハンバーガー1個食ったぐらいのカロリーを感じてるんだけどこれでもまだアトラクション1個も経験してないの?
「東京ディザイアーランドには欲望をモチーフにしたアトラクションやイベントを開催してて7つの大罪モチーフのエリアに分かれてるんだって。どうする? 色欲から行く?」
「テーマパークに許されて良いモチーフじゃない気がするんだけど」
「気にするな。というか嫉妬モチーフのエリアって一体どういうアトラクションを用意してるのか絶妙に解らなくて気になるな……」
嫉妬傲慢辺り何をするんだろうね? 暴食怠惰強欲は割と想像がつくんだけど。色欲はスルーでお願いします。
本日遊びに来た10名ほどのクラスメイト達と一緒に、パンフレットを覗き込む。やっぱり色欲はカップルに人気のゾーンらしい。しかもどうやらここはモンスター連れOKのテーマパークで、サイズ制限はあるもののモンスターと一緒に来れるとの事。今度、気晴らしが必要そうな奴を連れて来るのも悪くないかも。
「とりあえず一番近い強欲エリアから回ってみる……? そうだね、なんかアトラクションもあるみたいだし」
「ん」
行くぞ、と腕を求められたので久遠に片腕を渡しつつまずは一番近い強欲エリアへと向かう。東京ディザイアーランド……俺の知ってる世界のテーマパークじゃない……! そんな戦慄を抱えながらまずは一番近い強欲エリアに到着する。
やっぱり強欲―――物欲のエリアはショッピングエリアだった。エントランスにほど近いこのエリアではグッズやお菓子の類が購入できる店舗がたくさん並んでいた。ついでにタイアップ系統のグッズやひたすら射幸心を煽る為のガチャまで設置されている。
強欲だぁ……。
とりあえずまずテーマパークに来たらこれだよな! という訳でカチューシャを購入する。久遠は迷う事無くディザイアー君モチーフの狐のカチューシャを購入し、俺もお揃いのカチューシャを買おうとしたら別のものを買わされた。兎モチーフのディザイアーちゃんのウサミミカチューシャだ。それを久遠は無言で俺の頭に着けた。
「私が狩人で、貴様が餌だ」
「うす」
「力関係極まってんなぁ、あそこ……」
「しっ、自慢されるわよ」
惚れた弱みって奴なんですよ。え、色欲エリア? 絶対に行きませんけど……。
カチューシャを購入するとなんとかランドにやって来た気分が物凄い出て来る。やっぱテーマパークは恥ずかしさを捨ててこれを着ける所から始めるよね。そう想いながらグッズショップから出るとビーバーのマスコットが人相の悪いビーバーのマスコットに蹴り転がされていた。
「ゴミが……この程度しか稼げてねぇのか!」
「す、すいません! ですがもう需要は過ぎ去ってしまって……!」
「馬鹿野郎! 需要は作るもんだって何度も教えただろうが! インフルエンサーとのコラボ! 口コミ! 買占めからの放流! 手段は幾らでもあるのにお前と来たらよぉ……?」
皆でパンフレットを確認すると強欲エリア担当のビーバーマフィアの方々だった。どうやら若頭が新入りをしつけるというパフォーマンスしているらしい。この内容本当にテーマパークで許されるんですか? 明らかに映しちゃいけない類の光景だと思うんですけど。
そう思っていると若頭が周りを見て、ふん、と息を吐いた。
「丁度良い……観客も多い所だし躾ける必要があるな。良し、こっちを見てるお前! こっちに来い!」
「ぼ、僕?」
「おう、お前だ」
若頭が見ていた6歳ぐらいの子供を呼び出すと、釘バットを少年に手渡した。膝を折って目線を合わせると滅茶苦茶威圧感あるなアレ……。
「良いか、坊主。これは教育なんだ。馬鹿に物の道理を教えなきゃならねぇ……解るな? やれ」
「参加型アトラクションかぁ」
「こういうのもテーマパークの醍醐味だよね」
少年が泣きわめきながら釘バットを新入りビーバーに振り下ろすのを見届ける事無く俺達は強欲エリアを去って行く。お土産とかは後で確認すれば良いかなぁ。この感じだと暴食はレストラン街かな?
あ、傲慢エリアはレンタルバトルでスコアを競い合えるの!? え、これやりたい! ハイスコア取りたい!!! 行こう! 行かせて!!! トップスコア取らせて!! うおおおお、俺が最強だああ―――!
俺にスコアボード塗り替えさせて気持ち良くさせろおお―――!!
「成程、傲慢エリアだ……」
「じゃあ駆間全体傲慢エリアじゃん」
駆間は傲慢というより暴力エリアだよ。
という訳でキチガイの作ったテーマパークで遊ぼう!