クラスメイト達と行ったテーマパークはなんだかんだで楽しかった。テーマパークはカオスの極みって感じだったけど世間ではああいうのが流行ってるんだなあ、というのが良く解るお遊びだった。そして夏は当然1回遊びに出ただけでは終わらない。
バトル禁止令を受けて仕事まで取り上げられた俺に出来るのはごろごろする事か遊びに出かける事。本当にこんな遊んでて良いのかなぁ? みたいな気持ちが湧くのはまあ、もう職業病みたいなものだと思う。それはしょうがないとして、心配をかけた分なるべく普通の子供のようにしばらくは過ごすべきなんだろうなあ……という事から、夏の遊びは止まらない。
という訳で。
「う―――み―――!」
海に向かってクラスメイトが1人走って行く。砂浜から巨大なハマグリが出現して開くと一瞬でクラスメイトを掴み、そのまま砂浜の中へと潜って行く。それを見届けた俺達は直ぐに現場まで走るとサルベージを試みるが、人力じゃどうしようなさそうだったので見てたミスト姐さんに頼む。
砂中に頭を突っ込んだミストがブレスを吐くと下から噴き上げる霧の柱にハマグリが外へと射出される。貝の隙間にバールを差し込んで必死に貝を開くとまだ生きてるクラスメイトの救出に成功する。ふぅ、流石駆間ビーチだぜ。やって来るだけで死にかけるぜ。見てるかディザイアーランド、これが本当の無差別アトラクションだ。
ミストがぺちぺちぺちと砂浜を叩いて辺りの生命反応を伺い、他に隠れてる危険生物がないかチェックしてくれている。今ではドラゴンズバレーの連中とかも増えてきて危険生物と安全生物が概念的に衝突して渋滞しているが、相変わらず俺と久遠の生活における安全確保はミストがしてくれていた。
信頼と実績って感じだよね。
去年はドラゴンズバレーで夏が飛んだし、純粋に遊ぶために海に来るのって2年ぶりなんだよなぁ。最近、海にはあんまり良いイメージがないので、それを払拭する意味でも海に遊びに来たのだ。月の海? 箱舟海? なにそれ? 遊べるの? 遊べるわけねぇんだよな。
という訳で夏はやっぱりこれ! ド安定の駆間ビーチ!
やっぱ夏はこれだよね! というド安定ムーヴ!
海外に行けたりなんなりで行動範囲が広がって自然と選択肢から外れていたが、こういうベタなのも悪くはない。開幕クラスメイト喪失の危機からドキドキ出来るのもポイントだ。
夏になると地形侵食によって現れる駆間ビーチはまさに環境の危機……を逆手に取った狂気のビーチ。こうやってこのビーチに来ると、初めてこのビーチを訪れた時を思い出す。
あの時は雅人との初エンカウントがあったっけな。今思えば従者連れとはいえ、単身で乗り込んでくる凄いやつだったな……。未だに雅人みたいに乗り込んでくる奴はいない。アンナだけが例外といったところか。
他の親戚はちょくちょく連絡してきて顔を出せ、とか牧場寄越せとか金を出すから売れとか連絡はしてくるんだけどね。結局乗り込んできて喧嘩を売る根性のある奴は雅人だけだった。
だからこそ俺の中で雅人の好感度はバリバリに高いんだが。
「お、海を見ながら黄昏れちゃってどうしたんだみこっちゃん? 海での戦いを思い出してた?」
「いや、初めて海に来たときを思い出してた」
「あー、懐かしいなぁ。あの時みたいにビーチバレーするのも悪くねぇな!」
例によって女性陣は水着に着替えるのに時間がかかっている。なので男子組で先に場所を確保する。無論、こんな無法ビーチである。場所取りは普通のやり方ではない。
「さて、狙い目は……あそこか?」
「ヌシに取り巻きが数体……縄張りもそこそこ広そうだな」
「良し、あそこを俺達の陣地にしよう」
そう言ってクラスメイトが海パンの中からショットガンを取り出した。4次元パンツなのそれぇ? トイレ不要そうで便利だね。え! 24時間以上ネトゲする時に使ってる!? そ…そう……。
後で砂に埋めておこうこいつ。顔解らないから数人適当に埋めればいいか。
砂浜の一角を支配しているのは全長10メートル程の大型カニモンスター、キャンサーだ。縄張りに近付くものをカチンカチンと眷属と共に威嚇してくる。レベルは50ぐらいあった筈だ。ビーチに出現するモンスターもインフレしてきたなぁ。
まあ……狩るが……。
「うおおおおお!」
「縄張りバトルだ!!」
「奪え!! 奪え!!」
「ヒャァ!! カニだぁーーー!!」
ミストブレスを先制攻撃に、武器を手にキャンサーに襲いかかる、流石に駆間ビーチに出没するだけあって人類の暴力は予想してたのか、防御して攻撃に耐えるとそのハサミで殺しに来る強さがあった。
だが心配ご無用。
たとえダメージが通せずとも、我々は生身での戦闘に慣れている。キャンサーは速度遅めの高防御モンスターだ。防御は高いが、定数や割合ダメには弱いという弱点がある。
皆に口頭で弱点と耐性を共有したらミストによる霧の惑乱で俺達の回避生存率を上げ、後はそこら辺に自生している毒ウニを投げつける。執拗に飛び出ている目に毒ウニを投げつけると毒るので、後は死ぬまで回避し続けるだけ。
数分キャンサーの前でシャゲダンと反復横跳び煽りを続けているとやがて力尽きたキャンサーが食材に転職する。ヌシの死亡に伴い眷属が逃亡開始する。これで縄張りゲットだぜ。
ヌシを殺して土地を奪ったら征服の証のビーチパラソルを突き立て、土地の所有権を獲得する。これで見事、ここは俺達の土地となった。
土地を確保すると今度は地上げ屋がやってくる。そう、モンスターとは戦えないが人間と戦える奴はいるのだ。
「おうおうおう! いい土地じゃねえがあああああ!!!」
会話するだけ無駄なので水着でオープンになってる乳首にスタンガンを当てた後、海の中に投げ込んでスタンガンも海の中に投げ込む。
「これが俺のリーサルだ!」
地上げ屋からの防衛完了。これで俺達の土地を強化出来る。元々持ってたビーチパラソルやマットの他、地上げ屋が持ってた資材も投入してウッドデッキを建設する。
これにより元はモンスターの縄張りだったエリアが見事俺たちの領地へと変化した。やったぁ!
わーい、わーいと万歳して喜んでいるとクラスメイトの1人が泣き出した。皆で駆け寄りどうしたんだ、と聞いてみると真っ直ぐ前へと向かって指差す。
そこには陣地として強化されたエリアがあった。
まるで象徴のように立つビーチパラソル、マット、そこを中心に簡易コテージを建て、それから塹壕を掘って襲撃に備えた陣地へと進化させていた。
「モンスターの襲撃だ! 迎撃しろ! うおおお!!」
超高圧水鉄砲を構えた彼らはモンスター達を水で押し出し、海の方へと押し返してゆく。見てるとめちゃくちゃ楽しそうだし、押し出される海のモンスターも楽しそうにしてた。
しばらくすると攻略を諦めたモンスター達がアイテムを残して海に帰って行く。そして得たアイテムで更に陣地の強化が始まる。
何あれ凄いたのしそう。
「く、悔しい!! 女子とお嬢達が来る時、あれと俺達の確保した拠点が比較されると考えると悔しい……!」
そう言って泣いてる馬鹿を見てまあまあ理解できるな感がある。そうだな、せめて久遠が来る前にもうちょっといい感じの場所を用意しておきたいよな……ウッドデッキだけじゃ足りないもんな。
「Boys……女に良い所を見せたいから頑張る姿はgreatだぜ……?」
「こ、このセクシーで脳内にこびり着くようなメロい声は!!」
「Rickさん!!!」
海に目を向けるとバタフライで泳ぐRickさんの姿があった。良く見ると凄い数の女性型水棲系モンスターに追われている。バタフライしながら親指をグッと持ち上げてくる。
「今年のsummerは縄張りバトルがmode……資材と資源を相手から略奪し拠点をupgrade……気になるあの娘にappealだ」
「Rickさん……俺達に……それを伝えに……?」
Rickさんはにこり、と笑っている間に後ろから追いつかれたモンスター達に掴まれ、そのまま海の中へと消えて行った。まあ……あの人の事だしどうせ生きてるでしょ。なんか前、あの人どんな環境でもイチャれる様に色んな種族から加護とか特性付与されて水中呼吸出来るとか聞いたし。
何なら俺も海王の祝福があるから水中呼吸出来るしな……。俺の場合は海王が死ぬ前、別れる前の置き土産ってところだが。
ともあれ、更衣室の方から女性陣とお嬢が来る気配はまだないので。とりあえずまずはルールに合わせた武装を確保しなければならない。
なので。
「ミストブレス!」
さっき見た陣地から滅ぼして回収する。これでゲームに参加できるぜ!
目指せ! 縄張りマスター!!!!