今年の夏は略奪が熱い!
奪った資材で拠点をアップグレード! 高圧水鉄砲もついでにパワーアップして散弾やレーザー型に改造する! なるべく無法出来る奴が強い! これはそういうゲームだ!
という訳で。
「やあ、リーダー。至急来てほしいって言われたから来たけどこれは……?」
「タワーオフェンス」
本部に居るジャックに連絡を入れてスカウトした。クラフト担当はこれで確保した。クラスメイト組で水鉄砲を掲げて、やあー! と士気を上げながらスーパー蛮族タイムに入る。半分を略奪の為にビーチの他の拠点へと向かって出撃させ、残り半分は防衛のために拠点に残す。勿論、略奪と植民地化を示す為に駆間高校クソフラッグを用意したので、略奪して滅ぼした相手のエリアに突き刺すのも忘れない。
これによって俺達の陣地が広がる。
防衛する範囲も増えるが、入り込んでくる収入も増える。ミストはここまで来るとマップ兵器として強すぎるので拠点のウッドデッキを住まいとして待機して貰い、やり過ぎないように見張っててもらう。時折手に負えないレベルのモンスターが出てきたら対処して貰うという形で活躍してもらう事にする。
……と、ここまで無法をかました所で、漸く女性陣がやって来た。
「ごっめーん! 遅くなったー!」
「TSお嬢様は果たして本当に女性で更衣室を使えるか否かで時間がかかっちゃったよ」
「んもう、全く失礼な話でしたわね」
周辺地域の平定を完了した頃にクラスの女性陣が漸くやって来た。
流石女性陣、毎年水着を更新してきてるらしく今年も結構気合を入れた水着姿になっている。元男子TSお嬢様も結構自分のプロポーションとか見た目には自信があるのか、お嬢様設定に合わせた少し高級感のある水着だったり、軽いフリルが付いた可愛い奴だったり個性のある水着を着ている。すっかり馴染んじまったな……お前ら……。
元男子は女性陣に対抗するべく生まれた存在なので根本からして自信と対抗心に溢れている。連中は日々、女を磨く事を忘れず、駆間に咲く花としてあることを意識しているせいか、ぐんぐん女として成長している。学内にも道を踏み外す者が現れるほどだ。終わりだろ。
だがここに新派閥が現れる。
元男子は実質男子じゃない? という事は女×元男子はノンケ。というお嬢を男として見て攻略にかかる派閥である。俺はもう好きにしたらいいんじゃないかなぁ、と駆間高校の性と倫理の混沌っぷりを外側から眺めている事にする。こいつらの行きつくところは一体どこだろう……。
「待たせたな、ミコト」
そして当然、女性陣が出てくると久遠も出て来る。
ホルタートップのビキニスタイルに、下はビキニの上から穿いたホットパンツのスタイルだ。ジッパーの所をちょっと開けてその下のボトムが見えるのが少しえっちだけど、サングラスをかけてポニーテールに髪型を纏めているのと合わせて全体的にクールな印象を受ける水着の着こなしだった。安易に可愛さを求めるのではなく自分らしさを追求したカッコいい水着の選び方と着こなし、実に素晴らしい。
100点満点の看板をウェルギリウスから受け取り、掲げる。後ろでミストもうんうんと頷いておられる。
それはそれとして着ていた上着を脱いで、久遠の肩にかける。肌の露出、ちょっと多くないですか? 他人に易々と見せて良いもんじゃないですよ? もう少し紫外線対策したほうが良いんじゃない? 紫外線とかは常にミストが薄い霧でガードしてる? そっかぁ、ナイスミスト。流石ミスト姐さん。天才、最強、有能。久遠の白いお肌をこれからも守ってくださいね。
「ふむ」
俺の上着を肩まで通さず、肘の所でだぼつくように止めてから半脱ぎみたいな状態で着こなすと俺の首に腕を回して来た。
「リアクションばかりではなく、言葉で思う事を口にするべきではないか? ん?」
最初、海に来た時は俺と久遠の背丈にほぼ違いはなかった。だが今では俺の方が背丈が高く、久遠を見下ろすような高さがある。片腕を首に引っかけつつ、もう片手でつつつ……と体についた新しい傷痕をなぞって来るのに背筋にぞくぞく感が走る。
「みこっちゃん公開調教されてるよ」
「しゃーないべ。あそこの力関係は何時もそうだし」
「全く、仲良きことは美しい事でありませんの?」
「せやせや。どうせ男子は捕食されるもんだしアレで健全だよ」
「そうかなぁ。そうかなぁ……?」
「わあ、凄い速さで2人の世界に入ってるぅ」
クラスメイトの中に、なんか違う声が混じってる。押し付けられる胸の感触から逃げるように視線を逸らした先にはデカパイがあった。否、デカパイの化身が居た。つまり七海だった。デカさで個人が識別できる良い時代になったよなぁ。
やっほぉ、と手を振る。
「デカパイも来てたんだ」
「尊くんって久遠ちゃんとそこまで行ってるのにほんと言葉の中にいやらしさを感じないの奇跡の産物って感じだよね」
「お前のそれは芸術品だからな……」
「それはそれで複雑な気持ちになる」
そうかなぁ。
まあ、と七海が続ける。
「数か月前の事件で今は業界全体が停滞気味だからね。オフシーズンって事で今は休暇中!」
むんむんと拳を握ってぐ、っとポーズを取るとたゆんたゆんっとでっかい物が揺れる。必然的に全員の視線も上下する。更衣室の中は視線が凄かったんだろうな、これ……。男子のお着換えタイムなんて傷痕自慢ぐらいだしな。
さて、七海。
なんと今年で卒業し、今では立派な社会人である。身内で一番目立っている連中と言えば七海と花火師だが、駆間には大学が存在しないため高校を卒業したら大学受験の為に駆間を出るか、就職して駆間を離れるか否か、という選択肢が出て来る。
つまり大雑把に言うと駆間内の何らかの職業に就くか、それとも駆間を離れて何かするかという二択になるのだ。
そして七海は駆間を出てプロマスターになるという道を選んだ。
無論、これは簡単な選択ではない。
プロになりたいからなる! と言っても準備には色々と手間がある。
まずモンスターを管理する為の牧場が必要だし、トレーニング施設だって必要だ。アマチュアなら公共施設を利用したりジムを利用する手もあったが、プロになると情報は資産になるからなるべく情報を隠せる個人所有の牧場や施設が欲しくなってくる。特に七海みたいなコントロール型のマスターは手持ちを隠す事やサブで運用できるモンスターを保有する事に大きな意味がある。個人で牧場を所有する必要性がデカい。
その上で食っていくためには維持費などの金や、自分を売り込む為のコネクションが必要になって来る。これらを用意して漸くプロへの階段を上る事が出来るのだ。大体の場合は企業所属やスカウトを受けてプロ入りする事になるのだが、こういうスポンサー抜きだと個人でプロになるのは相当難しい。
一般家庭がどうしてプロになるのが難しいか、という事に対する理由でもある。
モンスターマスターが職業として認められ、モンスターを育てるのに土地が求められる今の時代、土地代は馬鹿にならない。多くのマスターがプロになる為の土地を欲しているからだ。そうじゃなくても既に巨大な土地を所有するマスターが上位にはいる。ここに食い込むには相当な資本が必要だ。
それも数百万円とかいう規模じゃなくて、余裕で数千万という金が必要になって来る。プロで戦う事になると《パーフェクトキャンセラー》みたいな数年前までは数億単位もするスキルカードをストックして保有する必要もある。今では紙屑同然の値段だが。
なので俺がアンナに紹介して、アンナは将来有望なマスターを確保した。
今、七海はアンナが売り出しているマスターの1人としてプロシーンに上がった1人なのだ。ちなみに一足先にプロになった花火師は自力でスポンサー見つけてプロになっている。なんだかんだで社会に適応できてるからアイツ凄いんだよね。
七海のモンスターをウチ預かりするという案もあったのだが、そうすると必然的に俺が七海の構築やデータを把握してしまうという超つまらない事になってしまう為、俺がアンナに頼んで七海を紹介した形になっている。
将来的には月のテラフォーミングが完了したらノア管轄の月の大地で新しい牧場を開いて、もっと多くのマスターに土地を提供出来たらなあ……みたいな野望はある。
なにはともあれ。
七海は一足先にプロとなった社会人なのだ。童顔で全然社会人には見えないんだけどね……。
「今年は認定戦が全部キャンセルって話だしな」
「ねー。A認定まではかなり遠い道だから今年キャンセルは別に良いんだけど、死んじゃったSランカーとかの枠はどうするんだろうって疑問はあるよね」
「海王事変でごっそりと穴が出来たからなぁ。1人1人が核兵器を連打出来るような戦力だったから、抜けた穴はでかいし国からしたら直ぐに補充したいからSは増やしたい所なんだよね」
「まあ、協会は昇格枠を増やしたくないみたいだけどねぇー」
増やしたくない、というのは2位や3位まで昇格枠に入れると単純にSというブランドが濁るのもあるし、短期間に認定戦をやれるように増やすと強豪が揃う認定戦をスルーして上がりやすそうな時期を狙う様な者が出現してくるかもしれない。
そういう質の低下を回避する為にも、認定戦の範囲を広げる事は難しい……という話は確かどっかで聞いた気がするな。
どうするのが正解なんだろうなぁ、と頭を悩ませるが……まあ、こういう事に悩むのは今はなしだ。それよりも今はこの海で遊ぶ事だ。七海もこっちに来たという事はこの略奪縄張りバトルに参加する意思があるという事だろう。
その陰険な頭脳を使って他のチームを全滅に追い込むんだ! やるぞ!!
全員揃った所で駆間ビーチ殲滅作戦開始だ!