【書籍化】最強以外ありえない   作:てんぞー

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ロックな曲をかけて欲しいぐらいだ

「さて、もう既に話してある事だし、理解してる事かもしれないけど……合体と再合体の仕様の話する? それともこのまま合体に入る?」

 

「んー、復習ついでに軽く説明してくれ」

 

「オッケー」

 

 じゃあ普通の合体に関する話から入ろうか。

 

「通常の合体は異なる2体のモンスターを使って、別のモンスターを生みだす技術だ。同世代のモンスターを合体させる事で1世代上へと移行する事が出来る。だけど最終世代、第7世代での合体では世代が移行する事はなく、合体の組み合わせに対応したモンスターに変化する。この時、モンスターが積み上げてきた訓練値はリセットされる……つまり合体する度に0から能力の振り分けを考えて育成しなくちゃならない」

 

 これは基本情報。レベルアップよりも辛いのが訓練の方だ。こっちの方が遥かに育成に時間がかかる。そしてモンスターのステータスはある程度次の世代へと継承される。その為、訓練値はリセットされても合体する前にステータスを伸ばしておくことに意味はある。

 

 世代毎に訓練値の上限は決まっていて、世代交代する度に上限が伸びる。なのでSランクでの育成が一番時間かかるという仕様だ。

 

「ノアで行える再合体含めた合体は通常の合体と違ってモンスターのレベルを1に戻す合体だと思って良い。この時合体したモンスターのどっちを残すのかを選べるし、スキルも選択できる。この時スキル融合を通して固有スキルの作成が行える。一種の救済措置だと言っても良い」

 

『なお、当艦にはいくつか制限を設けられており、生命の創造は禁止されております。その為、ノア内部ではモンスターの合体行為は行えますが、新たなモンスターを生みだす事は出来ません。これは創造主が敷いた生命創造の禁忌に触れます』

 

「ノアにある造物エンジンなら命を創造する事ぐらい容易いからね。ノアの過度の改造、増殖、増築も同様に禁止されてるらしいよ」

 

「把握した。概ね事前に伝えられた内容の通りだな」

 

 うむ。再合体がノアにおける最も有用なシステムだと言って良い。これがあると逃した固有スキルの再習得が簡単に行えるようになる。そしてこれが最も特殊な事なのだが。

 

「再合体を行った時、そのモンスターの訓練値をリセットするか否かを選べる」

 

「再合体の場合、レベルを上げさえすれば即座に実戦投入できる様になるのは助かるな」

 

「うん。ま、後は合体事故のコントロールとかも出来るけど今回はそれは不要だろ? 普通の施設で出来る事は全部できるし。俺が固有や融合スキルのレシピは全部把握してる。何を習得した、させたい、そういうのを言ってくれればこっちで合体ルートとかも構築できるよ……って今回は関係ないかな」

 

 ブライアンはそこまで聞いた所で頷いた。

 

「ミコト、お前ここに就職しろ」

 

『ドライバー・尊、当艦としても信頼出来るドライバーが運用してくれるのであればステータス:安心を獲得します』

 

「本業がマスターなのでダメでーす」

 

 そんなぁ、と大人とミニノアが鳴く。天職な気もするけどマスターやらなきゃならない理由があるのでダメなのです。俺と館長が合体業務やるのが一番安全で人類強くできそうな気もするんだけどね。そうなるとマスター業してる時間なんて間違いなく消し飛ぶからね……。

 

「じゃ、改めて1番大事な話をするよ」

 

 その言葉にブライアンが頷いた。

 

「これは何度でも言うけど、両刀型はそんなに強くない、というのを覚えていて欲しい」

 

 理由は色々とある。ただこの最大の理由は貫通力にある。

 

「歌唱採用時点で攻撃力はもう気にしなくて良い。HP100に対して15000ダメージを叩き込むような環境だから気にするだけ無意味だ。本題は貫通力と一貫性の方で、どうやって相手の耐性を抜くか、って所にある」

 

 耐性は大まかに分けるとこういうふうになる。

 

 大分類の物理魔法耐性。

 

 6種に分類される属性耐性。

 

 かなりのレアケースになる斬撃、打撃、突撃耐性。

 

 無敵。

 

 カット。

 

 大防御。

 

 絶対回避。

 

 そしてほぼ専用となる連撃耐性、大ダメージ耐性。

 

「ダメージが発生する範囲で想定するべき耐性はこれ。そして貫通手段を持たない場合戦闘が詰みに持ち込まれる。アタッカーはなるべく万遍なくこれらに対する貫通手段を持たないとならない」

 

 何故両刀は弱いの? という話をするととても簡単な話だ。

 

「両刀型のモンスターはスキル枠を取りすぎる」

 

 例えば、通常モンスターに搭載する攻撃用のスキルは8枠中1枠か2枠だ。単体と範囲で2枠を取るのはアリだ。これがPvPだと範囲1種のワンウェポン型でも良い。残りの7枠はシナジーや貫通力を高める手段が良い。

 

 これが1番火力が出る。

 

 そして火力とは単純にダメージの数字を意味する言葉じゃない。貫通して敵に与えられるダメージという意味がある。火力は相手の耐性や耐久を抜けて初めて意味がある。

 

「物理か魔法に寄らせるとシナジーは組みやすくなるが、両刀にすると必須枠が肥大化して、シナジースキルを詰め込み辛くなる……その分貫通力が落ちる」

 

 無論、物理免疫に対して魔法を使うという選択肢が取れるようになるので必ずしも悪いという訳では無い。

 

「両刀をメインアタッカーに据えるのはオススメしない。どっちか寄せたユニットを用意して、それを軸にサブアタ起用にして、足りない部分を補うのが1番合理的だ」

 

 俺がその予定だからだ。

 

 神龍は両刀型のモンスターだ。物理も魔法も高く、安定したダメージが出せる高耐久モンスター。俺のパーティーに現在不足している耐えて殴るが出来るモンスターだ。しかも固有枠で貫通力をパッシブ発揮出来る為、スキル枠の大幅な圧縮が可能だ。

 

 逆に言うと神龍レベルのスペックがないと両刀アタッカーは難しいという話になる。

 

「それでもやるんだな?」

 

「ああ」

 

 ブライアンの言葉に迷いはなかった。

 

「やる。これが俺の肌に1番合う」

 

 根拠としては死ぬほど弱い。正気か? 強さを捨てるんだぞ? ……と言いたくなるところだ。だが、ブライアンは合理性から最も遠い手段で最強になった男だ。

 

 専用マスタースキル。

 

 俺でさえ踏み込めない領域。そこに至った男であれば……と、俺にすら思わせる。だから俺は合体を主導する者として最低限の忠告を行い、ブライアンの意志を尊重する。

 

「覚悟してるなら良し! それはそれとして、求めるモンスターにたどり着くまでは複数回合体しなければならないから、1年で完成するとは思うなよ」

 

「無論、覚悟は出来ている。数年単位で戦場に出れなくなるだろうが……今から準備に入らないと最終的に間に合わない様な気がしてな」

 

 ブライアンの言動に対して俺もまあ、確かにと答える。邪神の登場やロストエデンもある。これから世界が加速する事を考えると再合体による構築調整は今から入らないと間に合わないかもしれない。

 

 ……何気に東吾とマスター仮面も再合体予定なんだよね。

 

 特にヤバいのがマスター国木田仮面。仮面国木田のゼリィはご存知NPC専用のTier1バケモンモンスターなのだが、パワーが抑え気味なのは合体固有や専用を取りきれてないからだ。

 

 じゃあなんですか。固有取れたら最強なんですか?

 

 そこにパペッターの死体があるだろ?

 

 それが答えだ。

 

 たぶんフルパワー国木田ゼリィはチクタクマン(原作仕様)と殴り合って普通に勝てるスペックですね、アレは……。インスペクターまで食えるんじゃないか? このゲームのTier1って相当やってるし。

 

「覚悟があるなら良し! もう止めやしないぜ。後はもう合体するだけだ。最後の別れを済ませとけ。調整はやっとく」

 

「いや、大丈夫だ」

 

 ブライアンは、サンダーバード達を見ることなく続けた。

 

「コイツらと何年過してきたと思ってるんだ。今更湿っぽいのは不要だ。それよりももっとロックな曲をかけて欲しいぐらいだ」

 

「止めてくれよ」

 

 それが通るなら駆間での合体が合法化されるだろ!!! 完全に慣れちゃったけどさ!!

 

 頭に湧いてきた博士のダブル中指を振り払いつつ、ミニノアが浮かべるホロウィンドウを通して造物エンジンに指示を入力する。本来であれば細かい機器の調整を必要とする合体も、創造主の権能の前では不要だ。

 

 願ったとおりに結果を生む。

 

 それが全能だ。

 

 合体素材指定。

 

 隠し味投入。

 

 複数の可能性から求める合体先を選択。

 

 習得獲得統合スキルの調整。

 

 継承ステータスの確認。

 

 その全てが難しい操作も必要なく、あっさりと終わる。スタートサインは必要ない。ブライアンの覚悟はできている。調整が終わったら……合体を開始する。

 

 バチバチ。

 

 台座の上がスパークし、光に包まれる。サンダーバード達が光に包まれるとその姿は分解される、中央の1番大きな台座へと移動する。

 

 空中でぶつかり合う光は混ざり合い、溶け合い、そして1つになる。

 

 やがてそれは新たな姿を形作る。

 

 強靭な四肢、力強く曲がりくねった角、濃い魔力をスパークさせた黒色の魔獣。

 

「ジェネシックベヒーモスの誕生だ! 力と魔力が高い、あらゆるステータスが高水準の両刀モンスターだ!」

 

「人類ではまだ観測されていないモンスターだな、コイツは」

 

『肯定します。人類が未発見のモンスターの1つになります』

 

 ぴぴぴ、とミニノアがベヒーモスのデータを記録する。新種はちゃんとデータ取って協会に送らないと後の人の為にならないからね。

 

「……俺が解るか?」

 

 ブライアンがベヒーモスの前に出る。凶暴、凶悪、カルマ値マイナスのモンスターだから反抗的でトレーニングも良くサボる。強力だが育成しづらいという側面を持つモンスターはブライアンが近づくと頭を下げ、ゴロゴロと喉を鳴らした。

 

 その首筋を先程までサンダーバードにやっていた様に撫でると、嬉しそうに目を細めた。

 

「よしよし、良い子だ」

 

 見ていて大丈夫そうだと判断し、安堵の息を吐く。これで最初の合体は終わりだ。

 

 今年は海王事変の影響で交流戦も、GM決定戦も、認定戦も全てなくなっている。モンスターを1から鍛え直すなら確かに今しかないだろう。

 

 残されたブライアンのモンスター達を見て気合を入れる。

 

 よっしゃ、やるぞー!

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