そしてついに世界デビューを果たしてしまった。
本当にこんな感じで世界デビューするんか? マジで? 正気か? 俺がそう思っている間にいつの間にか飛行機に乗ることになっていた。これを準備するのもプランしたのもぜーんぶ駆間のキチガイ共! 海外の活性域とのコネを持っているのも頭のおかしい連中!
おかしいなあ……もっと……こう……エデの良さを伝えるための活動だったはずなのに。始まりは凄い真面目だったのに、やっぱり初手で駆間での地盤を固めようとしたのが悪かったのかなあ? 一瞬でジャンルが変わってしまった気がする。
アイドルをプロデュースするゲームから、パンデミック経験ゲームに。
そんな訳でアイドル活動1週間で見事に海外進出に成功。相乗りしてきたクソボケGMと一緒に最初はアメリカの活性域に到着、ここでもバフ盛りライブを開催する。
流石デカい数字で殴り合うのが大好きなアメリカ人。お邪魔したテキサスの活性域では、「よく文明が破壊されるなら文明なんて必要ないんじゃないか……?」とかいうちょっと意味の解らない結論に辿り着いた原始文明の皆さんが大層感動した様子だった。音楽って文化も衰退してたからね。正気か?
さあ、バフを盛って体験して貰おう、歌唱の凄さ! パワーアップして暴れだすマスター!
そう、マスター。
モンスターじゃない。
バフを受け止めて暴れだすのはマスターの方。やっぱりジャンル間違えてない?
ラリアットでダンジョンから出てくるモンスターを粉砕する原始人たちは音楽という概念に触れて涙を流すとこんな美しいものを知らないと感動してくれる。たぶんそれは君たちが捨て去った中にあったものだと思うんですよ。そんな俺達の言葉を無視して原始人たちは初めて触れたライブ活動を通してエデ達の魅力を覚えた。
覚えたので嫁にするとか言い出した。
申し訳ないが滅んで貰った。オールドテイルズー! 出番だよー!
更地になった大地と滅びた原始人たちを背に俺たちはワールドツアーを続行することにした。もうここまで来ると最後まで付き合ってやろうという気持ちで溢れていた。エデもエデでこれ、私の求めているというか思っていた方向性とは違う……全然違う……とかいう顔をしている。
うん、解るよ。気持ちは凄い解るよ。今、俺達凄い一体感を感じてるね。でもごめんね。最後まで走り抜ける以外でこの暴走特急止める手段たぶんないの。
頭のおかしい連中はすでに世界中に散ってバフ盛りライブの体験会を宣伝してしまった。もしここでこれをキャンセルしてしまったら、連中が一気に駆間に流れ込んでくるのは目に見える事だった。しかもそれだけじゃなく牧場にまで来るかもしれない。
そうしたらもう本当に戦争だよ。
これを回避する為にも俺たちはバフ盛りライブを走り切る義務が生まれてしまった。
なおブライアンは常に楽しそうにしててムカつく。一発殴ってから次のライブ会場へと向かう。今回はワールドツアーだから世界中の変態とキチガイが見れてとてもオトクだね。
アメリカの次は海を渡ってヨーロッパへ! お馴染みのイギリスに到着する。人権や差別意識が異様に強いヨーロッパのトップバッターはどういうワクワクキチガイランドを運営しているのかな? もはやそっちを見るのが主題になりつつある。
という訳でイギリスのダンジョン活性域は見た目は割りと普通の活性域だった。普通にビルや店舗があって、少なくとも文明は維持されているように見える。
へえ! 荒廃してないんだ!
と、思ったが、どうやらイギリスの活性域はSランカーが管理する土地になっているらしい。個人で昔から所有、管理しておりこの管理を行う為のモンスターも大昔から継承されているタイプのモンスターで、その力を使うことでほぼ普通の土地と同じぐらいの感覚で住むことが出来るらしい。
無法地帯になっている日本やアメリカとは大違いだった。まあ、確かに安全に管理できるならそっちの方が全然良いよね。
そういう理由からイギリスの活性域……少なくとも訪れた所は珍しくちゃんと管理されている地域で、普通の土地とほぼ変わらない形になっていた。
ここでのライブは普通に成功で、特に酷いことも面白いこともなく成功した。エデに普通のファンが出来たのが1番の成果だったかもしれない。そうそう、こういうのでいいんだよ、こういうので。変に頭のおかしいところに突っ込まなくて良いんだよ。
気分良くイギリスを離れフランスへ。
国全体がフランス革命中で暴動の真っ只中だった。んもー。
活性域とそれ以外とか、そういう区分はない。時代はまさにレボリューション。お前も一緒に人権の話をしないか? しない? なら敵だな……!? 凄い思考の飛躍で泣いちゃいそう。国全体が紛争地帯化してるのは流石におかしいだろ!!
これはどういう事なんだ? という話をするとフランスは新しい法案でモンスターの人権を認めてしまい、モンスターが手続きを通してフランス国民になる事が出来てしまうのだ。
これに反発する連中が出て、そしてそれを押し通そうとする人権団体と衝突。そうして始まった暴動は割りとセンシティブな「モンスターは果たして人権を持てるのかどうか」という問題に対して盛大に油を注いでしまった。
割りと誰もが一度は悩む話でもある。
問題はフランス人は昔から革命好きで良く国を燃やしてるというだけだ。
今回も良く燃えているよ。
という訳で調査結果。フランスの活性域は外と何も変わらない。今は国全体が無法地帯となっている。ライブを実行するまでに何度か襲撃されることもあったが、流石に襲撃組織は全部滅んでもらった。今世界がピンチな自覚ある?
オールドテイルズで無害な市民のロールを付与!! 汝は善良で無力な市民! これでよし!
と思ったが、善良な市民ロールでも普通に革命を始めた。どうやら連中は善良な市民だからこそ革命に武器を取るらしい。付き合ってられるか。
フランスを出た俺達は次は欧州最大の活性域へと向かった。
ヨーロッパ最大の活性域はヨーロッパのモンスター協会が管理する世界有数の大きさを誇る活性域だ。ここはほかの国が管理する活性域とは違い、モンスター協会が直轄で管理している。
この世で最も多くのモンスターを管理し、戦力を保有するのは当然モンスター協会だ。だから世界の中でも特に大きく、国境を越えた火種になりそうな活性域は協会が管理しているらしい。
最大規模に相応しい管理体制を構築している協会は、国家ではなく協会所属のSランカーを複数配置、不測の事態に備えている。
他の所みたいに一般的な都市はなく、完全に湧いたダンジョンを潰すだけの土地になっているのが解る。
ここでもライブをぉ? と思ったが、歌唱スキルに興味があるのは狂人だけじゃなく、まったく普通の人間も歌唱スキルには興味あるよね! というのを思い出せた。いやぁ、危なかった。すっかり異常が日常になってた。
ありがとうモンスター協会。常識を取り戻せたよ。
という訳で気持ち良くヨーロッパを後にし、次はアジアへ。世界一周してきてるなぁ、と思いながら踏み込んだインドは魔境だった。
なんか野生のレベル120モンスターが君主として土地を支配してますね……。
インド神話出身のモンスターが普通に街中にいて、人々と生活し、人々も支配を受け入れ、社会を構築していた。いや、なんかもう無法とかそういうもんじゃない。俺達が普段見る活性域での生活。駆間でモンスターと隣合わせの共存生活が国全体でなんか普通に進行していた。
恐ろしいわ。何この国……知らん……。しかも信仰ベースのモンスターだからインド人たちも自然と受け入れている。ある意味ここまで見てきた中で1番無法地帯と言える状況だった。
というかライブする為に来たら普通に褐色白髪のイケメン、カルキが居た。そう、コヤツはロストエデンで戦い、解禁できる最上位帯のモンスターの一体だ。ロストエデンを抜け出して普通にインドで生活してた。何こいつ……。
合体作成すると普通にTier1から0ぐらいの化け物が解禁されるロストエデン出身のモンスターが何やってんの? と聞くと出番まだだから休暇中らしい。じゃあ仕方ないね。ロストエデンの調子どう? ヤバい? 皆人類試すために今は新しい戦術とかスキル試してる? そっか。そのうち襲撃しに行くからよろしくね。
インドではラミアはメジャー性癖なのでエデのウケは良かった。もう2度と来るのやめようとは思った。人類とモンスターの立場逆転してるぜここ!! フランスとかよりもこっちのがやばいだろ。
そろそろワールドツアーも疲れたし止めにしない? という意見が採用されてお次、中国をラストにする事にした。そう言えばお隣の国なのに全然行ったことないよなぁ。
どんな地獄が待ってるんだろうなぁ。
わくわくしながら空港のお土産屋をエデと2人で確認すること3秒。
俺達は現地マフィアに拉致誘拐されていた。