さて、相手のセットアップを見る事が出来た。
そのおかげで相手の大まかな手筋が見えた。それに合わせてこっちも手を打っていこう。相手が穴熊を決めるというのなら、引きこもれなくすれば良いだけの話だ。まずは相手の受ける姿勢を崩す。
元Tier0、そこだけ見るなら確かに強力だ。だが長らくランクマッチの頂点に立つという事はまた別の意味がある。
即ち、研究済みという事実だ。
当然だがトップに立つにはそれなりの理由があり、誰もがそれを崩す為の研究を行い、その共有が行われてきた。それでもトップに立ち続けたのはその研究に対するカウンターが常に構築され、更新され続けていたからだ。その研究が元のゲーム程行われていないこの世界で、どこまで対応できるのか見せて貰おうではないか。
チビは《クリティカルエッジ》を構えた!
次の攻撃の基礎クリティカル率が倍となった!
ノトスの《ディスペル》!
グランバジリスクの強化効果を解除した!
ウェルギリウスの《ディスペル》!
ミスリルガーゴイルの強化効果を解除した!
魔法合体! 《ディスペルオール》!
敵全体の強化効果が解除された!
グランバジリスクは《星の盾》を構えた!
防御が1段階上がった! バリアを獲得した!
次のターンを防御扱いとする!
ミスリルガーゴイルは《星の盾》を構えた!
防御が1段階上がった! バリアを獲得した!
次のターンを防御扱いとする!
エルダーアルラウネは《反響音》を拾った!
最新の歌唱効果が再発動した!
反響音は完全に消え去った……。
エルダーアルラウネの使った《反響音》は最新の歌唱スキルの効果が再発動するというちょっとピーキーなスキルだが、これを活用する事で相手の歌唱バフをこっちも受けることが出来る、という面白い効果を持っている。通常の歌唱構築では使わないスキルだ。俺のエデみたいに特化してるなら不要だしな。
だがこのアルラウネみたいに歌唱に特化していないモンスターであれば相手から歌唱バフを盗んだり、消されたバフを付けなおしたりするのに利用できる。使い方は難しいが、《ディスペル》が来ると解っているなら先行入力して1手で全部張りなおすのはかなりアリな選択肢だ。
動きを見れば解除され慣れてるなあ、というのが解る。《星の盾》はかなり強いスキルで回数制限があるものの、それを《ディスペル》透かした後に持ってくるのは《残響》と合わせてバフを再取得する事を考えてるのと、たぶんアグロ戦の経験がたくさんあって2ターン目にバーストされている経験があるからなのだろう。うーん、強い。OC環境で殴り合っている経験があるな。
たぶん今回に合わせて構築のスキル構成を大きく更新してる筈だ……俺に対抗する為に。そこに勝機があるかな。《星の盾》もタイミング的にチビが先行して動くから《ディスペル》間に合わないって計算か。
《ディスペル》無駄打ちすればそれだけMPの枯渇も早くなる。次のターンMP漏れ辺りにされるかなあ? うーん、昔苦戦した記憶が蘇ってくる。よし、積み込んで行くか。こっちのリソースが残っている間にどんどん準備を整えて行こう。
チビは《レヴェリー》を発動した!
チビの動きに実体ある残像が不随する!
次の攻撃にダメージ80%の追加攻撃が発動する!
「月は見えてるかな?」
ノトスはノアに《支援要請》を行った!
支援シグナルは星を飛び越えて月へ届いた!
その瞬間、テレビのカメラがジャックされ、その場にいる観客含めた全ての存在の視界がジャックされた。
視界は一瞬で試合を俯瞰するように眺め、ズームアウトし、戦闘フィールドを出るとスタジアムの外にも出て、地球からズームアウトしながらそのピントを月に合わせ……近づいてゆく。やがてテラフォーミングが行われている月へと視界が接近し、月の海に停泊するノアを捉えた。
そして、ブリッジに視界が届いた。
『艦長ノトスより支援要請を確認。砲撃支援システム稼働します』
ノアの甲板に武装が展開され、それは地球へと向けられる。金魚鉢の前にホロウィンドウが出現し、身を乗り出したジュニアが体を伸ばして発射ボタンを押そうとするが、体が届かない。後ろから現れた元ノア勤務従僕さんが現れ、金魚鉢を持ち上げてジュニアをスイッチに近づける。
「ぴっ!」
ぽちっとな。
『発射します』
どどどどどどと甲板から無数のミサイルと砲撃が地球へと放たれた。それをブリッジから眺めるジュニアと現ノア勤務さんを視界が映し……俺達に視界が戻ってくる。ついでに俺たちが戦っているフィールド・ノアも武装が展開されていてそれが発射しているのが良く見える。
3ターン後にノアからの支援砲撃が着弾する!
ウェルギリウスの《ディスペル》!
グランバジリスクの強化効果が解除された!
グランバジリスクの《マテリアルシールド》!
グランバジリスクの物理耐性が上昇した!
ミスリルガーゴイルの《レジストシールド》!
ミスリルガーゴイルの魔法耐性が上昇した!
アルラウネの《ブレインブラスト》!
ウェルギリウスに小ダメージ!
ウェルギリウスのMPに小ダメージ!
フィールド反対側にいる藤原プロが空を……というかそのさらに向こう側、月を見上げてマジかあ、と呟いているのが口の動きで解る。完全初見だろうし、これを実戦で使うのは俺も初めてだけどめっちゃくちゃノリノリで砲撃支援入ってるな……あ、元ノア勤務さんは職場復帰おめでとうございます。ノア内部のダンジョン化も始まって、元ノアの住民たちは徐々にモンスターとしてノア内部に増えてるらしいっすね。
今考える事じゃないや。
まずはリソース切っても良いからこの壁から崩すか。アルラウネはすでにスキルを6個切ってる、残された手札は少ないからやりたいことが見えて脅威度は下がった。問題はそこに存在するだけでバカ固い壁2体だ。極論、アルラウネは手札全部見えた所でタンクが落とせないなら機能し続ける。
……マスタースキルが使えないのが痛いなあ。
《デモリッション》使えるなら連続攻撃に乗せてバフ剥がして一気に行けるんだけどな……。
《ファストアクション》! ウェルギリウスは神速を得て割り込んだ!
《根の国》が呼び出され死の世界が命を誘い込む……。
《ファストアクション》! ノトスが神速を得て行動に割り込んだ!
《船解体斬り》! グランバジリスクに切り込んだ!
グランバジリスクに物理弱点が付与された!
Critical! Weak! グランバジリスクのバリアが喪失した!
《毒血》! ノトスは毒になった!
《無残》! ノトスは再び切り込んだ!
グランバジリスクにダメージ!
《毒血》! ノトスの毒状態は猛毒に進化した!
攻撃成功によりノトスに指揮を行う間が生まれた!
《船団指揮》によりノトスは仲間を導いた!
ウェルギリウスの《ディスペル》!
グランバジリスクの強化が解除された!
チビの《フェイタルクロー》!
クリティカルダメージが倍となる!
ミスリルガーゴイルは庇った!
《シャドウラン》! チビは防御をすり抜けた!
《デコイ》! グランバジリスクは攻撃をガーゴイルへ誘導した!
《インタラプト》! ウェルギリウスは囮を打ち消した!
《インタラプト》! アルラウネがその行動を咎めた!
《グローリー》! ウェルギリウスは妨害を精神力で跳ね退けた!
「割合ダメージの枠を妨害耐性に積み替えてきたか……!」
「耐久型は大体定数ダメージや割合ダメージ対策にリジェネを積んできて直ぐにダメージを戻すからな。《削れる運命》で1割削ったとして、HP参照型のリジェネやターン末回復を積んでると簡単にここら辺戻されるからな。だったらいっそ割合ダメとかの類は全部不採用にした方が良い」
経験上、耐久型は絶対にターン末回復等のリジェネ手段を積んでいる。耐久型最大の弱点は割合ダメージによる防御を無視した攻撃だ―――だがこれは前環境での弱点だと言える。高防御を抜く手段が割合ダメージと定数ダメージしか存在せず、AOE等に頼ってた時代はそれがメインだった。
だがOC環境に入り超大ダメージが増えた今、割合ダメージで長期戦想定で削りに入るよりもリソースをある程度消費して早い段階で相手を減らす方が良い。タンク2枚編成の強みは相互に庇いあう事でダメージをコントロール、減らし、減らした分を自然回復の類で簡単に戻せる事にある。
アルラウネは恐らく構成上《パーフェクトキャンセラー》を積むのが難しい。だからこっちも割合ダメージを抜いて妨害耐性に変えれば打ち合いに入った時こっちが一気に攻めるアドバンテージを握れる。
《ファストアクション》、《船団指揮》、《インタラプト》、《グローリー》、《シャドウラン》と今回切った1戦闘1回スキルはかなり多い。ここからの動きはかなり緩やかになるし、ノトスには猛毒が付与されている。
だが壁を1つ落とせば、状況はこっちが一気に有利になる。
チビの《フェイタルクロ―》!
Over Critical! Weak!
グランバジリスクに極大ダメージ!
《毒血》! チビは毒になった!
《レヴェリー》によりチビの残像が襲い掛かる!
Over Critical! Weak!
グランバジリスクに極大のダメージ!
《毒血》! チビの毒は猛毒になった!
チビが自認毒チワワになった!
《根の国》がグランバジリスクの命を誘った!
グランバジリスクは死亡した!
「うっへぇ、追撃込みで0にならないんだアイツ」
OC環境で防御無視される事想定してこれ割合対策してからHP全振りにしてる? 潔いし理にかなってるけどその動きはもう見たことあるんだよなぁ、俺。悲しいけどその戦術は経験済み、既知の範囲内だ。
だから。
「これで、アドバンテージ取得」
詰ませに行く。