【書籍化】最強以外ありえない   作:てんぞー

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良い勉強になった

 いや、ビビってる場合じゃねえ! アド取られてるじゃん!

 

 相手の動きが見えて冷静になった。このままだと相手に一方的に動くだけの時間を与えてしまう。引っ付いている娘どもを全員前線へと投げ込んで素早く指揮を始める―――3人娘も何だかんだで戦闘訓練をずっと受けているのだ。

 

 1度、脳が戦闘モードに入ればその瞬間から完全に戦いに没入してくれる。余計な情報は脳内からシャットアウトして、戦闘に集中する。ビジュアルはともかく、これまで戦ってきたBランカーの中でこれは間違いなく1番強い……!

 

 スウォームフライは《蟲群》を呼んだ!

 ハンターマンティスの《キルマーク》!

 エストを標的に定めた!

 エストに対するクリティカル率が2倍になった!

 《グランドステージ》開幕!

 《アイドル》にして《舞踏姫》のライブが始まる!

 《魔法少女参上っ!》

 本日はちょっと腰の引けた登場!

 

 よし、ギリギリエデのセットアップをタイミング的に捻じ込めた。なんとかロスのないタイミングで再行動出来て良かった。相手のハンターマンティスは既にフルバースト状態で。エストで毎ターンバフを回していかないと一瞬で落とされる……いや、ちょっと間に合うか怪しいな。

 

 何にせよ、やれる事をやる。それがマスターの誇りだ。

 

 《月追いの舞》! HPMP消費半減!

 《脱鱗の舞》! 攻防ダウン!

 《アイドル》タイム! エデはマイクを握りしめた!

 スウォームフライの羽音が《ノイズキャンセリング》した!

 《グローリー》! エデはボリュームを上げて対抗した!

 《ワルプルギス・ナハト》を歌いだした!

 詠唱+5、魔攻+1! フィールド効果で再発動した!

 《変奏》から《貴方を守る為に》を歌いだした!

 カット&バリアが付与された!

 フィールド効果で再発動した!

 スウォームフライの《繁殖》! 眷属が増えた!

 ミアズマバタフライは苗床化の反動で動けない!

 

 バタフライ太郎―――!

 

 良く見るとミアズマバタフライは滅茶苦茶瀕死って状態で地面に横たわってる。私のターンっすか? 今頑張ってるけど体が動かなくってぇ……って感じに必死に地面の上でばたばたしてる。見てるこっちが泣けてきたよ。じゃあ焼くね……。

 

 《無詠唱》&《暴走詠唱》! ミレーナは詠唱を貯めた!

 《ダブルマジック》! 汚物は消毒しなくちゃねっ☆

 ミレーナの《ファイヤーストーム》!

 スウォームフライの《ワイドガード》!

 スウォームフライの《防御指令》!

 蠅の群が攻撃を遮って身を守った!

 《ファイヤーストーム》がもう1度放たれた!

 スウォームフライの《パーフェクトキャンセラー》!

 ミレーナの攻撃が停止した!

 ハンターマンティスの《フェイタルクロー》!

 致命の必撃がエストに襲いかかる!

 Over Critical!

 エストに絶大なダメージ!

 エストは防御してなんとか耐えた!

 《堕天の誘い》!

 ハンターマンティスの攻防が下がった!

 エストは防御していて動けない!

 スウォームフライの《大量繁殖》!

 眷属を3トークン分生み出した!

 

 ぐげぇ、攻撃が通らない上に爆速で補充された。エストが何とか耐えたけど、防御していなかったらたぶん即死していただろう。マズイ、押し込まれる流れだこれは。

 

 元々のプランはエストミレーナで合体魔法を連打するプランだったが、開幕ランプ完成によってこのプランは崩れてしまった。エストを攻撃に回したら間違いなく一瞬で崩壊する。

 

 次のターンでエストが崩れるのが見える。俺が藤原プロ相手にしてたのと同じ手だ。まずタンクをリソースを費やして落とす。その後はほかのを好きに調理する。1番厄介なのを始末してから全体を落とすやり方だ。なあなあで後回しにしたら全体が突破出来ないのを知っている手だ。

 

 見た目はグロいが、打つ手は正確だ。前戦った時も大会決勝だったし、このおじさん…強い!

 

 素早く思考する。

 

 勝つ為に取れる手はなんだ?

 

 ミレーナとエデは取れる手が少ない。役割に特化しているから今更行動を切り替える事が出来ない。だから動かせるのはエストだけだ。だがエストは今回、無敵が使えない。ハンターマンティスが無敵貫通を引っさげているからだ。トークン捕食による貫通はパッシブ扱いでディスペルが通じない。

 

 だがそもそも今回はウェルギリウス不採用だ。パフェキャン等による妨害も通じない。

 

 ランプ系統の強さは完成された所にある。逆に言えば完成が遅いから許されている所がある。それがセットアップ段階で完成されるのはただの犯罪なんよ。エデミレでさえデスペリア撃てるまで数ターンかかるのに。

 

 勝ち筋はある。

 

 相手より早く動いて上から殴ることだ。

 

 火力は高いが、耐久力は低い。スウォームフライが全力で庇い、中級魔法なんかにパフェキャンを切ったのは通した瞬間壊滅するのが見えてるからだ。だからあちら視点だと絶対に魔法を通してはならない筈だ。

 

 逆に言えばこっちは合体魔法を1回でもいいから成立させればそれだけで逆転できる。それだけの火力は確保してある。問題は通せるかどうか怪しいという所だろう。

 

 蠅の生贄ワイドで魔法1回分は防がれる。恐らく蝶がパフェキャン残してる。これでミレーナの2連魔法が防がれる。この後にエストで魔法を出せるなら良いが、問題はエストが鈍足でカマキリのがエストより早い事だ。

 

 恐らく防御しても次の《フェイタルクロー》に耐えられないだろう。蘇生も食いしばりもこっちにはない。エストは確かに強いが、防御力に特化したタイプではない。タイミング的に《クリティカルガード》を付与……いやあ、初手で殴らなかったらパフェキャン切らせられなかったか。残してても同じか。

 

 キツイなあ。

 

 専用マスタースキルを使った以上、相手はもうマスタースキルを切れない。これはルール上の制約だ。だから此方が《ワープスター》で先制付与してエストを先に動かせれば、相手が《ワープスター》返しが出来ずにそのままリーサルが取れるだろう。

 

 問題は今の俺にはシンクロを使えないから、マスタースキルも必然的に使えないという所だろう。だが現状、見える勝ち筋はこれだけか。エストが先に動ければ勝ち。出来なければマンティスに狩られて終わりだ。

 

 あー。

 

 エデミレの組み合わせで発狂してる対戦相手の気持ちが良く解るー。ランプ型が爆速で完成されるのやっぱ犯罪だよこれ。

 

「ま、やるだけやってみるか……!」

 

 やらなきゃ負け、出来たら勝ち。だったら挑戦する以外の選択がない。加速した思考を元に戻しながら深呼吸をし、次のターンを乗り越える為に、勝つ為に。

 

 マスタースキルに手を伸ばす。

 

「《ワープスター》……!」

 

 発動させようとして。

 

 心臓を締め付けられるような痛みが走る。脳を殴られるような衝撃が走る。体に罅が入る感覚。鼻から血が流れ、目が充血する。血涙が溢れ出し体を内側から破壊する音。感知した瞬間に切る。だがそれは……マスタースキル失敗の反動は一瞬で体を破壊していた。

 

 噂に聞いていた反動、あるいは失敗。これまで1度も失敗することの無かったそれはまるで俺を裏切るように刃を向けた。使えない事は理解してたが、失敗するとこうなるのか。

 

 良い勉強になった。

 

 既にリーサルは見えている。だがまだワンチャン……相手の判断ミスの可能性もある。そのわずかな可能性に賭けて戦闘続行する事を選び、ノータイムで指揮を繰り出す。

 

 エデオンステージ!

 ライブ継続!

 スウォームフライの《ノイズキャンセリング》!

 エストの《インタラプト》!

 蝿叩きで煩い羽音を払った!

 ミレーナの《ダブルマジック》!

 《ファイヤーストーム》が放たれた!

 ミアズマバタフライの《スペルアブソーバー》!

 魔法を吸収した!

 《ダブルマジック》により更に魔法が放たれる!

 《ファイヤーストーム》!

 ミアズマバタフライの《パーフェクトキャンセラー》!

 顔面を蝶が覆い詠唱を阻止した!

 ハンターマンティスの《フェイタルクロー》!

 エストの《センチネル》!

 ハンターマンティスの《ウォールパス》!

 攻撃にカット貫通効果が付与された!

 Over Critical!

 エストに絶大なダメージ!

 エストは倒れた!

 

 首を掻っ切られてそのままエストが死亡し、倒れてゆく。残りはエデとミレーナだ。とはいえ次のターンで《ノイズキャンセリング》と《スペルアブソーバー》でメタられて打てても1発、それも蝿が庇って無効化するだろう。

 

 そうなると後はミレーナ、エデと順番に狩られて終わり。

 

 流石にここから覆す手はないな。相手が日和ったりしてくれれば何とかなったが、流石にここまでやられると完敗だ。安易に詠唱歌唱構築出したのがダメだったな、今回は。反省しとこ。無意味にミレーナとエデに痛い目を合わせることもない。

 

 手を上げた。これをやるのは久しぶりだな。

 

「降参、俺の負けだ」

 

 はー、負けた負けた。やっぱ思考力落ちてるかなぁ……。

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