「尊くん、3-0で負けたんだって? 調子悪いのかな? それとも雑なミス? 折角連勝中だったのに連勝数なくなっちゃったねぇ」
「顔見せて早々煽りかよ。流石駆間育ちは礼儀を弁えないらしいな」
「あ、ブーメラン!」
顔を見せて早々煽りあう。なんて言ったって俺達は友人。煽りあう事ぐらいは日常的にオッケーなのだ。やっぱこういう大きな大会で見る友人の姿は少し違うように感じる。ノリそのものは普段となんの違いもないんだけどね。
という訳で、スタジアム中央、ダンジョンゲートの横で俺たちは対峙する。七海の背後には既にモンスターが待機してある。並びは死神系統のポルターガイスト、スキュラxドラゴン系統のヒュドラ、最後に死神x妖精系統のデュラハンか。
W死神でデバフ攻めにしようってのが見えてるが、全体的に高耐久の構築になってる。しかもいやらしいのはポルターガイストは物理無効というBランクにおける最強クラスの耐性を持っている事だ。ノトスのような弱点付与があると突破できるが、そうじゃない限りは物理による攻略手段がないモンスターだ。
たぶん《クリティカルガード》+免疫で弱点付与を回避しつつ壁にするつもりなんだろうな。アレ1体で物理クリ方面封殺するだけのスペックはある。運用とマスターの読み次第って部分もあるけど。
ヒュドラはマルチバステ型モンスターで、連続攻撃型ビルドとマルチバステ型ビルドで2種類のビルドを楽しめるモンスターだ。このランクで安定して3~4回連続攻撃が出来るモンスターは中々いないし、こいつ1体で毒麻痺火傷等のバステを撒けるのも強い。
そして最後にデュラハンは耐久力が高いアタッカー……に見えて実は死の宣告持ち。高耐久で長期戦に耐えられるように見えて耐久戦に入ると死の宣告でタイムリミットを付与してくるカスみたいなモンスターだ。
この並びは明らかに魔法に弱いって感じがするかもしれないが、耐久力が高いうえに《スペルアブソーバー》が出回っている。これを活用すれば長期戦に耐えつつバステで行動を封じ、死の宣告で蓋をする運用は十分通る。
成程なぁ、死の宣告でマンティスを殺し切ったか。物理無効で受けきれば読みが通る限りはマンティスも封殺出来る……だいぶ鍛え上げてきたよなぁ、七海も。
「戦術を見られてる気がするぅ」
「知識は力なり。この業界でこれを俺ほど実践できてるやつもいないだろ?」
まあ、専用マスタースキル使われると一瞬で崩れるのですが。こういう想定外に弱いよね、俺。データキャラの宿命というか。まあ、今回はそのデータにない部分で殴る予定なのだが。
「それで」
七海が辺りを見渡す。
「尊くんのモンスターはどこかな? 連れてきてないならルール違反になると思うんだけど」
「まあ、待てよ。今届く所だから」
「あ、もう嫌な予感しかしない」
かもーん、と空に向けて指をスナップする。そうすれば風を切り、雲を掻き分け、音速で飛翔する3つの飛翔体がスタジアム中央の大穴からやってくる。ずどん、と地面を砕くように着地して現れるのは巨大な威容。
「大方、チビノトスミレーナ辺りで来ると思っただろう? どうせお守りノイキャン積んでるだろうし、スぺソバも積んでるからミレーナ出してスぺソバ枠消費させながらチビノトスでアグロ仕掛けるぐらいしか対処法はないからな」
「大体意見が一致してる」
「だからデータにないモンスターで殴ります」
「だよね! そう来るよね!!」
七海が見上げる俺の背後、そこには3体のドラゴンがいる。
『きたよー』
ランドドラゴン。地球には存在しない重量級のドラゴン。硬く、重く、鈍重で重厚。Bランク帯で最も耐久力に優れたドラゴンでもある。
『でばんだー』
スカイドラゴン。身軽、軽快、好奇心旺盛で挑戦的。落ち着きがなくいつも空を飛び回っている。最も足の速いドラゴンであり、耐久力も普通に高い。
『やっつけるー』
ジャブジャブ。巨大なワイバーン型のドラゴン。高火力、高耐久、高速、全てにおいてBランク帯ドラゴンの王者とも呼べる存在。甘えん坊、尊骨折メイカー、厩舎破壊常習犯。ドラゴン構築におけるメインアタッカー担当。
「ドラゴンズバレーに預けてた子達がそろそろ実戦運用可能なレベルになってきたからね。お前ぐらいならデビュー戦に丁度良いかなぁ、って」
「な、舐められてる……!」
という訳で秘密兵器は神龍の素材として育成していたドラゴンキッズである。明確にバケモンクラスと呼べるようになるのはAランクになって3度目の統合を終えて最後の2体になったぐらいなんだが……既にBランクにおける統合は終えてある為、Bのドラゴンとしては戦闘力の天井は叩いている。
ただ、この子たちはまだ実戦を経験していない。
チビを始めとするスタメン達はほぼ戦い続きで実戦経験を蓄積して来ている。その為、指示なしでも俺に従って動くことが出来る。だがこの子達にはそういう経験がなく、まだまだ連携が甘い。だからぶっつけ本番で使いたくはなかった。
でも虫食いおじさんは普通に《ノイズキャンセリング》と《スペルアブソーバー》というメタスキルを運用してきた。おじさんが出来るなら七海は絶対に使って来るだろうし、もっとえぐいハメを使って来るだろう。
そうなると俺はもっと択を増やす必要がある。同じモンスターを使い続けるとどれだけスキルを入れ替えても、一貫したメタが通ってしまう。なのでモンスターを大きく入れ替える必要がある。
特に七海みたいに事前情報を通して相手を完全封殺するスタイルにこの手は有効だ。
俺は既に1敗している。
これ以上の雑な敗北は許せない。さっきの敗北は完全に俺の油断と慢心が招いたミスだった。だったら次はそんなもんを差し込む暇もないぐらいで固めて殴る。こっちの強みはデータと事前準備に全部あるんだ。
だったらその強みで殴り通す。
『がんばるよ』
『まけないぞー』
『ごぞうろっぷにとうそうほんのうがみちます』
「うちの子もやる気満々だし、勿論相手してくれるよなぁ!?」
「こ、この鴉羽尊……!」
ぷりぷり怒るリアクション見せてるけどその1つ1つでちょっとだけ時間を稼いで少しでも情報を抜こうとしているのが解る。いやぁ、本当に変わったな。最初あった頃は情けない少女でしかなかったのに。今では明確にライバルと言えるぐらい強くなった。
その変化に頼もしさとちょっとした寂しさを感じつつも、ゲートを抜けて戦闘用のフィールドに入る。
キッズ達もやってくると広いエリアにはしゃぎ始める。こらこら、観客席にちゃんとバレーの方から来てるイケメンや美女がいただろ? ちゃんと雄姿を見に来てるんだからしっかりするんだぞ。
『はーい』
返事だけは本当に良いんだから……。
チビは長い付き合いがあるから直ぐに言う事を聞いてくれるんだが、こいつらはまだまだ仲を深めてる最中だからちょっと不安が残るんだよな。それでも今回七海に勝つならこれしかないと思っている。
という訳でお互いにダンジョンの中でモンスターを展開する。戦闘準備なんてものは一瞬で終わる。七海はもうちょっと分析したそうな気配がしているが、これまでドラゴンズバレーで育成されたドラゴンモンスターが公式戦に出現した事がないのを思い出し、細かく詰める事が不可能なのを理解する。
「対戦よろしくお願いします」
「対戦よろしくお願いします」
挨拶!
良く知った間柄でも挨拶は大事!
これはバトルのマナー!
「それはそれとして負けた方が感想戦奢りな」
「オッケー」
という訳で―――試合開始。
ライバルの篠田七海が勝負を仕掛けてきた!
デュラハンが現れた!
ヒュドラが現れた!
ポルターガイストが現れた!
《竜王の血脈》!
ドラゴントリオは血脈に眠る血を覚醒させた!
3ターン状態異常に対して免疫になった!
攻撃力+1 魔法攻撃+1!
スカイドラゴンは《ドラゴンズバレー》を呼び出した!
スカイドラゴンは《追い風》を呼び寄せた!
味方全体の速度が2倍になった!
デュラハンの《タイムリミット》!
ドラゴンたちは死の宣告を跳ねのけた!
ヒュドラの《ポイズンスターター》!
ドラゴンたちは毒を跳ねのけた!
ポルターガイストの《絶望のコール》!
ドラゴンたちは絶望状態を跳ねのけた!
「インチキセットアップ止めろ!!!!」
「それは!!! こっちの!! セリフ!!!」
死ね! 七海! 俺とお前でインチキモンスターバトルだ!!