最強以外ありえない   作:てんぞー

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コントロール使いはキショい

「ここでパフェキャン撃って詰みな」

 

「Dランクで使って良いスキルじゃねえだろそれ!! 対戦ありがとうございました」

 

「GG、対戦ありがとうございました」

 

 Dランクで自重という名のリミッターを解除すると正直同レベル帯では中々負けなくなる。その代わりに異様に殴られ慣れたDランクが育ってきて環境が魔境化する。これが普通のゲームならクソゲー、ナーフしろとか言われるのだろう。

 

 だがこれがゲームがもとになった世界。モンスターバトル愛は異常であり、負け続けだからと言って卒業する様な奴は駆間にいない。つまり対策とメタを敗北者同士で集まって相談し、ガチガチに対策しながら殴りかかって来る。

 

「鴉羽、ちょっといいか? さっきのバトルなんだけど」

 

「なにかな」

 

 対戦エリアからモンスター達を連れて出ると対戦相手がやってきて感想戦に入る。先ほどまでのバトルで見せていたキレ具合は嘘のように消えて、自分の粗の洗い出しに入る。それを改善できるかどうかは別として、対戦後に感想戦を行う習慣はしっかりと何時の間にか根付いていた。

 

 休憩エリアへと移動すれば同じように感想戦に入っているマスターは他にもいて、数人集まると目立った勝負の感想を口にしながらあーだこーだと話を広げて行く。俺という突出した異物が紛れ込んだ事でDランクの上限が大きく引っ張り上げられ、それに負けじとその下が奮起している。

 

 確かに、手加減や自重なんて事をして良い事は一つもなかった。

 

 この好循環が今、証明している。

 

 いや、こんなにも殺意を露わにして殺しに来るのは恐らくここぐらいだろうが。

 

 何にせよ、Dランクはかつてなく和やかにお互いの殺し方を相談する物騒なランクになっていた。そしてそれに追い立てられるように上のランクも殺し方を相談している。全くこの環境を知らない遠征組がここへと踏み込んだ瞬間、何て和やかに殺し合うんだこいつらは……なんて恐怖と共に失禁するぐらいこの地は笑顔で殺し合っている。

 

 控えめに言って異常者の集まりだった。

 

「勝てたぁ」

 

 いえーい、と言いながら七海がピースを作って休憩スペースにやって来る。それに他の奴が中指を突き立てる。

 

「陰湿デカパイコントロールがよ……!」

 

「デカパイは関係ないでしょ! デカパイは!」

 

「属性は大事だぞ、男の陰湿クソダサ眼鏡コントロール使いと美少女の陰湿デカパイコントロール使いだったら後者のがまだ許せるだろ? 前者だったら眼鏡叩き割ってから勝負挑んでる」

 

「殺すのはちゃんと勝負でなんだ」

 

「妙なところで行儀が良いよな」

 

「そりゃあ俺達、殺したいんじゃなくて死ぬまでバトルで殺し合いたいだけだからな。死ぬならバトルしながら死んでほしい」

 

「偶に遠征組が来るけどカルチャーショック受けて連敗したまま帰るよな。他所の地域だと負けた瞬間ガンメタ編成に切り替えてとりあえず復讐戦に入るって文化がないらしいぞ」

 

「マジかよ……とりあえず相手の勝ち分帳消ししに行かねえの? 優しいなあ……」

 

「お前らが蛮族なだけだろ」

 

 そうかなぁ、と首をかしげている量産型モブ修羅たちの倫理観はバトル方面においては完全に終わっていた。布教とかいう概念は彼らにはない。彼らにあるのはこの新人、どこまでしゃぶれるかなぁ……という純粋な興味と殺意だけだった。

 

 新人を守らなきゃコンテンツは廃れる。だから新人は大事だ。

 

 でもこの競技、片っ端から襲撃してマスター減らしても勝手に増えて行く。じゃあ何も問題ないのでは? という極々当然の考えから彼らは報復モードに入る。ちなみに報復モードに入らなくても当然のように勝負しに行く。

 

「しかし鴉羽は今26連勝中か? 記録が途切れたのは惜しいよなあ」

 

「お前らがな。純メタ握って来るからな。大体なんだよ、モンスターシェアリングしやがって。自分でメタ構築できないならモンスター貸しだしてメタ組もうぜ! って。イカレてるのか? 人の心がないのにも程があるだろ」

 

「勝てば全てが正しい……そう思わないか鴉羽くぅん?」

 

「カスがよ」

 

「このランク帯でパフェキャンとマスタースキルちらつかせてる人が言っちゃ駄目だと思うの」

 

 七海もこの数か月ですっかりこの治安の悪さに馴染んでしまった。だけどこの手のPvPゲームで才能のある人間は早かれ遅かれ治安の悪さに染まる。七海は十分にコントロールを扱える陰湿な才能を持ってるのでそのうち治安は終了していただろう。

 

 喋れば喋る程心が荒んで行く。あぁ、俺、対戦してるんだな……という気持ちになる。クソゲーの押し付け合いが始まれば前世の環境に近づいて来る。早く皆もクソゲーに目覚めてどっちが先にクソゲーを成立させるような戦いにならないかなぁ。

 

 そんな事を考えていると。

 

「―――鴉羽尊ぉ!!!」

 

 聞き覚えのある声が響いた。

 

 無視した。

 

「尊くんはそう言えばもうC認定出られるんだっけ? 私も一緒に受けようかなあ」

 

「お前と同じ会場で戦いたくないから頼むから違う所でやってくれ。お前とやり合うのほんと頭使うし疲れるし気持ちが悪いんだよ」

 

「女の子相手に気持ちが悪いはないでしょ……!」

 

「いや、コントロール使いはキショいよ」

 

「うん、キショい」

 

「パーミと並んで死んでほしい。寿命あとどれぐらい? 3日?」

 

「ひぃん、喧嘩売られてるよぉ」

 

 じゃあ迎撃しますね、という表情を一瞬で浮かべる様になった七海は立派な修羅だった。遅かれ早かれ、殺し合う気概のあるものしかこの世界には残れない。どんな美少女も笑顔で殴り合えるようになってしまうんだなあ。妹には絶対にバトル始めないで欲しい。

 

「鴉羽!!! 尊ぉ!!!」

 

「呼ばれてるぞ」

 

「ほら、俺、顔が良いから」

 

「自覚があるのは良いね。じゃ、相手して来い」

 

 嫌だなぁ、という顔を浮かべながら声のする方を見れば、いつぞやの海で見たへっぽこ少年の姿があった。その横に一緒にメイドが控えている辺り世話係でも任されているのだろう。嫌だなぁ、嫌だなぁ、と呟きながら近づく。

 

「で、なんだ」

 

「鴉羽尊……お前の事はたっぷり調べさせて貰った。何でも連勝続きで調子に乗ってるみたいじゃないか」

 

「そうだな」

 

 休憩エリアにいた連中がなんか面白そうだな、と言いながら観察に回っている。その視線は雅人が連れてきているモンスターへと向けている。もう既にどうやって殺すか相談し始めている。なんて倫理観のない連中なんだ。

 

「俺が! 直々に! お前に身の程を教えてやる! ステージに上がって来い! 勝負だ!」

 

 そう言うと雅人は踵を返し、Dランク用のステージへと向かう。メイドが一度頭を下げるとそのまま雅人を追いかける。ステージへと向かい、上がった雅人の反対側に別のマスターが立つ。

 

「あ、待ってくれ今から尊と勝負するから」

 

「予約しました?」

 

「あ、いや、してない」

 

「利用の約束しました?」

 

「いや、でも、ああ言ったんだから直ぐに来る筈」

 

「本人が1歩も動いてない事を考えるとまだ時間があるようですね……じゃ、闘ろっかぁ……」

 

「え」

 

「良し、馬鹿が洗礼を浴びている間に作戦会議すっか」

 

「いえーい!!」

 

 振り返って何時の間にか集まっていた何人ものマスターを前に、笑顔で対策会議を始める。相手は恐らくそこまで強くはない。だが連れているモンスターはゴブリンメイジが2体、連携と速攻戦で即座にチビを落として勝つ構築に見える。

 

 つまりメタだ。こっちの基本構築に対するメタを握ってきている。

 

 アレが本命の構築だとは思えないし、単純に俺の連勝記録を止める為と、嫌がらせの為に苦手な構築握ってるんだと思う。実力を測りに来たか、それともこれで妨害になると思ってるのか。

 

 ただ確かに、勝率を稼げないと認定戦の抽選率が下がる。刺客を送り込んで勝率を下げるという手はまあ、悪くはない。

 

 ここ、駆間じゃなきゃ。

 

「ゴブ構築か。普段の鴉羽の狼歌構築だと相性悪いな」

 

「狼死神でも運が悪いと普通に何も出来ずに負けるな。あんなに自信満々にしてきてる以上絶対に何か特殊なメタスキル積んできてるな。フィールド系だと思うんだよなぁ。物理耐性付与か、フィールド全体速度低下とか」

 

「まあまあありえるラインだな。連携+1入れるだけでだいぶ痛いランク帯だろうしな。相性の悪さは覆せないぞ」

 

「まあ、真っ当にやったら勝てないよな」

 

 真っ当にやったら。

 

 だがここは駆間、俺達はそもそも勝つ為には手段を択ばないカスの集まりである。

 

「七海、ランプちゃん貸して」

 

「いいよぉ。今度合体先の相談に乗ってね」

 

「はいよ。じゃああと一人、魔法タンク持ってる奴いない?」

 

「俺のモンスター使え、魔法耐性20%持ちで魔法カットシールド張れるからほぼ無力化出来るぞ」

 

「サンキュ、この借りはどっかで返すわ」

 

 チビが欠伸しながら床の上で丸まった。エデはチビのお腹を枕に転がっている。ウェルギリウスはそれやって良いのかなぁ……なんてオーラを出している。良いんだよ、これで。俺は親戚を駆間式で盛大に歓迎してやりたいだけなんだ。これの何が一体悪いんだ。

 

「対戦ありがとうございました」

 

「はあはあ……なんで尊とやり合う前から1戦しなきゃいけないんだよ……! あ、尊! 早くステージに上がって来い! もう次の奴が上がってきそうになってるから!! 早く!!」

 

 もう30分ぐらいは放置して眺めてたいなあ、と思いつつサムズアップと共に笑顔を浮かべる。

 

「今行くよ」

 

「うわっ、なんだそのさわやかな笑顔……い、いや、良い! どうせ俺が勝つからな! 教えてやる、どれだけ頑張ってもお前みたいに恵まれない家で生まれた奴は絶対に上に行けないって事がな! 覚悟しろよ!」

 

「ああ!」

 

「オチが見えた」

 

「かわいそ」

 

「初心者が駆間になんて来るから」

 

「録画しておくか」

 

 浮かべたサムズアップをそのまま真下に向け、レンタルしたモンスター達と共にバトルエリアへと入る。そしてそのまま親指で首を掻っ切るジェスチャーを取る。

 

「Welcome……駆間式の歓迎をしてあげる」

 

「……? アレ、お前の連れてるモンスターなんか違くないか? 聞いてた話だと狼とかマーメイドとか……あれ……?」

 

 この後、もはや描写するまでもなく。

 

 じっくり、10ターン以上の時間をかけてしっかりとデバフ漬けになった雅人のゴブリン達はMPを枯らし、魔法を封じられ、杖で必死にポカポカ殴ることしか出来なくなって行く中窒息するように重なるダメージの中死亡していった。

 

 偶にはコントロールで苦しめるのも良いよね!

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