年末。年が開ける前に、大仕事が来た。
「プラン相談お願いします!!!!」
我が家の門を叩いたのは先日、根の国を攻略した御仁、その人だった。普段はこういうのに金を取るのだが、今回ばかりは人類戦力に直結する事案でもある。その為、金を取ることなくちょっと待ってて、とハンドサインを出す。
直ぐに外行き用の服に着替えたら黄泉踏破者と合流して、そのまま図書館へと向かう。年末にもなるとすっかり冬だ。コートも体に合わせて新調したからだいぶ暖かく感じるが、こうも雪に囲まれると見た目が寒いな。
雪の中で転がってはしゃいでるチビがドラゴンキッズと遊んでる。ちまっとララの死体が宙に舞うのが見える、何時もの牧場の風景だ。
ちらっと牧場内で何か起きてないかを見て回って、大丈夫そうなのを確認したら図書館への入り口を開けて中に入る。
外から入ってくるとモワッと暖かい空気が顔にぶつかってくる。やっぱこの時期に外歩くのは嫌だよなぁ、と思いながら迎えてくれた従僕の案内でこそこそ話の出来る部屋まで案内してもらった。
何か飲みますか? とのことでココアを所望。この手の話は脳味噌使って疲れるから適度に甘いものを摂取しておきたい。そちらはどう? 飲む? じゃ同じものをお願いします。
ココアが来るまでタブレットと画面共有用のスクリーンを用意する。こうやって誰かのプラン相談に乗るのも別に初めての話じゃない。アンナだったり、国木田だったり、東吾だったりの仲介でプラン相談の相手になった事はそこそこある。
そういう連中は今、総じて大調整期間中なので表舞台から一時的に消えてるから活躍はまだ見れていない。それでもこうやって相談に乗れば何時かは人類戦力が上がると信じて。
ココアが運ばれてきたのでタブレットの共有設定とプランニング用のアプリも準備完了し、お仕事にはいる。
と言っても多分に趣味が入るけど。
「まずはおめでとうございます。根の国攻略お疲れ様でした」
「いや、此方こそ大変お世話になりました。また相談に乗っていただき本当にありがとうございます」
お互いに頭をペコリ。
「今、滅茶苦茶忙しくない?」
「インタビューやら何やらで忙しいのは事実なんだけど、全部捨ててきた。今はメディア向けの行動取っている場合じゃないからね」
賢い。そして正解。合体解禁したんだからこっちのが大事に決まっている。メディアやら何やらで合体育成の時間が消えたら本末転倒というものだ。俺達の本業はマスターであって芸能人じゃない。本日は戦士なのだ。
それがちゃんと解ってる人は偉い。
バトルに勝てなくてテレビ出演がメインになったマスターは決して少なくない……。まあ、俺達には関係のない話だ。
「恐らくもう解ってるとは思うけど……深淵の大母、合体を解禁したので相談に乗って欲しい」
「りょ」
タブレットに保存しておいた大母のデータを呼び出す。俺の知る限りの全データが入った現代の神器とも言えるこのタブレット、あまりにも存在が爆弾すぎて図書館の外に持ち出せないんだよね。原作(仮)の未実装データもあるし。
ちなみに深淵の大母は攻略しても専用素材が必要になるタイプのモンスターの為、討伐した後で合体する時に素材を消費しなくてはならない。が、当然これは1つしか手にはいらない。その為、チームで討伐しても最後に深淵の大母を入手出来るのは1人だけだ。
「結局合体する人はどう決めたの?」
「最初に討伐した人って事前に決めてた」
成程なー。恨みっこなしって勝負だったか。
「まあ……お陰で海王事変には間に合わずって感じだったんだけど。あの時は本当に申し訳なかった」
「1人2人増えた所でどうにかなる話じゃなかったよ、アレは」
アレはほんと、そういう規模の事件じゃなかった。という訳でそろそろお仕事に入ろうか。暖かいココアを一口飲んで、臓腑に熱を送り込んでからデータを共有する。
「えー、ご覧の通り深淵の大母こと、我らのグレート・マザー様は即死とライフコントロールに長けたモンスターです。なんと固有枠が4枠もある」
「4枠……ゲームデータでも確認したけど、多いな……」
一般最終世代モンスターが平均2枠なので4枠ってのは滅茶苦茶多い。固有スキルは大体ぶっ壊れた性能しているのだが、数が多ければ良いという訳でもない。
固有がある分、汎用枠が減るからな。パフェキャンインタラを積むだけで2枠だ。カスタマイズ性が低いって事になる。これはメタられやすいという特徴に繋がる。無論、固有をあえて抜いて汎用性を上げるという手もある。
あまりオススメ出来ないけど。
「データ見てるなら話が早いや。じゃあ細かい話を抜きにまずは固有枠から見ていくか」
「よろしくお願いします」
という訳で深淵の大母の固有スキルを並べる。
《老衰》
オートスキル。このスキルは《根の国》発動中にのみ発動できる。毎ターン《根の国》による即死ラインを1割上昇させる。また味方を《根の国》の対象から除外する。
《死病》
パッシブスキル。自身もしくは味方により戦闘中バッドステート効果が敵対モンスターに付与された時、対象を死の宣告状態とする。これは耐性を貫通する。
《天命》
アクティブスキル。対象を選択する。対象の死の宣告カウントを0にする。《天命》により死亡時、敵全体のカウントを1段階進める。
《黄泉ノ主》
パッシブ。戦闘開始時味方全体に再蘇生効果が付与される。味方全体が即死免疫、死の宣告免疫となる。また味方死亡時、敵全体にダメージを与える。
「やっぱ最終採用クラスのモンスターはぶっ飛んだスペックしてるなあ」
まあ、裏ダンのボス攻略報酬だから強いのは当然の話なんだよね。本来ならこのレベルのモンスターをフルパで連れて戦うのが海王戦とかだからね。そりゃあ強いんだよ。抜きで戦うことになったリアルがおかしいんだよ。
「固有は見ての通り即死のゲーミングの塊で下手にダメージを受ける事を考えた相手を甘えなくぶっ殺すという鬼畜みたいな性能してる。この中であえて切るなら《老衰》かな。今の環境でフィールド維持するのは結構大変だし、採用すると《根の国》もセットで運用する必要あるし。その枠に《グローリー》とかなんかの誘発か連鎖系入れた方が良いかも」
「宣告さえ通せるのならシナジーを組まずに単体完結でも行けるんだな……?」
「せやで」
それが強み。即死とカウント加速とかの能力が全部自分で完結してるから特別に構築を組む必要がなく、自由枠に突っ込むだけで仕事をしてくれる。勿論、専用で構築を作った方が強いに決まってる。
だって耐性貫通死の宣告なんてもんを持ってるんだ。これを活かす構築を作った方が強いに決まっている。
という訳で基本的な大母パを紹介する。
デスカウント加速型。
根の国溺死型。
マルチリーサル型。
単体完結即死支援型。
構築単位でみるとこれぐらいかな? そこまで構築の広がりはないけど、単体としてのパワーが滅茶苦茶強いので是非合体させて運用して欲しいって気持ちは強い。何よりも深淵の大母に関する話で1番無法なパートはこれだ。
タブレットを操作してデバッグモードでゲームを起動し、そのままvs海王戦を大母を構築に入れてやる。
《死病》から《天命》を通して海王のフェーズ1を即死フィニッシュさせる。
「なんと《天命》の即死処理が独自の処理を行っているのでボスの即死耐性を抜ける」
「存在してはならないのでは?」
「はい」
はい。
でもこれ抜きだと今の人類かなり厳しいっすよ。
「単純なモンスター単体のスペックとして見ると間違いなく人類最強クラスのスペックはあるからGM狙えるレベルに届くと思うよ。というかこの先、海王クラスの戦いがまだ待ってるから本当に作成して欲しいと思ってる。その為ならどんな手伝いしますからマジで作成しましょう。マジで」
人類の未来のためにもマジで戦力が必要なんすよ……。
次の大事件はロストエデンとか言われてるけどその具体的な発生時期が解らないし。となるとなるべく戦力をアップデートしながら備えるしかない。
「……俺も、海王事変の時は参加できなかった後悔がある。次は俺も戦えるようにしたい。そしてこれが必要な戦力になるというのなら……躊躇はない」
相手の顔は見えないが、力強い目をしているのは解る。俺も微笑み返し、頷いた。最高の仕事をしなくてはならないな。
「継承必須のスキルと、シナジーになるスキルを覚えるモンスターをリストアップするね。対戦用にレンタルパーティーをゲームに登録するから、本物を迎えられない間はそっちで練度上げておけるようにもしておく」
「了解。さて、専用構築にするか混合構築にするか……悩ましいなあ」
手持ちの構築や使えるモンスターを確認しつつあーだこーだとプランを作成する。俺だけではなく、徐々に人類の中で未来での決戦を見据えて構築を強化する人が出始めている。
こういう人がもっと増えれば良いなぁ。
そう思いながら年末が過ぎ去って行く。