最強以外ありえない   作:てんぞー

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ダサい

 あれ? もしかして思ってたよりも大事になってる?

 

 ホテルから図書館までのルートは普通に封鎖されていた。モンスターが邪魔される事無く、疲れる事無く届くように一般人が入れない、見えないように配慮した移動になってた。ここで協力するのは政府だし、国家としてこのダンジョンの攻略に協力しているような感じだった。

 

 もしかしてこれって想像してるよりも重要度高いミッションなんですか?

 

 前日ビールで潰れた馬鹿が2人もいるのに?

 

 ビールで潰れた馬鹿がいるならまあ、そんなレベルか……で認識しておくのが精神衛生上良さそう。そういう事にした。

 

 そうやってたぶん政府の力を借りて再び大英図書館までやってきた。だが今回はちゃんとモンスターを連れて。幻想図書館の入り口がある区域は相変わらず特殊な領域になっているのか、近づけば人の気配がなくなり、傍にいた筈のスタッフまでが消える。

 

 残されたのは入る資格があると認識された者達のみ。

 

 つまり俺達3人と、連れてきたモンスターだけだ。

 

「よし、突入前に再確認する。今回戦闘はアーサーと東吾でモンスターを2:2で提供するタッグバトル方式になる。俺は専用に調整したモンスターを使った探索、ガイド、索敵をメインにする。必要な場合は後方からウェル―――死神を使って妨害や支援を入れる」

 

「此方もその認識で合ってます」

 

「異論なし。こっちも準備は出来てる」

 

 全員、先日のラフな格好から戦闘探索用の衣装へと着替えてある。場所が図書館内ではあるが、戦闘によっては環境ががらりと変化する事も考慮し、動きやすくありながら環境に対して強く出られる服が望まれる……といっても、この世界の服装というのはモンスターの素材を使っているから元の世界と比べると数段頑丈さや快適さのレベルが上だ。

 

 極端な話だが、布に見えてもショットガンを衝撃を受けずに弾けるぐらいの服は存在する。

 

 核兵器みたいな魔法や攻撃が飛び交う中でショットガンぐらい防げた所で意味はないが。

 

 死ぬ時は死ぬ。その精神を忘れないようにしよう。

 

「俺からラファエラ(ヒーラー)ハーデス(デバッファー)を出す」

 

「私がオメガ(タンク)エグゼリア(アタッカー)を出します」

 

「そしてボクが本日の生贄っす」

 

 ででーん、というエフェクトと共にララが輝いた。全員が一番小さくて弱いララを見て、一斉に手を合わせて拝んだ。ネタにして殺しまくっているが、コイツが全員の命を繋いでいるという事実は変えようもないのだ。なのでとりあえず拝んで、後々いっぱい死んでもらう。

 

 ウェルギリウスも彼岸から顔を出すとお辞儀をし、再び告死蝶と共に舞って消える。

 

 ラファエラは既に知っているモンスター、ハーデスは顔色の悪い紳士の様な姿をしているが……人間社会に溶け込む為の化身、或いは擬態だ。戦闘になると本来の姿を取り戻すだろう。上位や高位の生命体では良くある奴だ。

 

 オメガは機械型モンスターだが、此方も本来はもっと巨大な姿をしている。今は金髪のちょっと目つきの悪い9歳程の少年の姿に擬態している。エグゼリアはこの中でダントツに背丈が高い、2メートルほどの高さを持つ白い全身鎧の騎士だ。

 

 これが今回攻略する為のパーティーだ。全員、1番自信があってシナジーの取れるモンスターを連れてきている。タッグや混成構築は混乱を招き、ミスを誘発するが今回の探索は合同でなければならない理由があるので、これは妥協でもある。

 

「さて、鍵となる本は……あった」

 

 モンスターの歴史が収められている本棚を調べれば、例の本が残されたままだった。それを本棚から引き抜けばこれまで読む事の出来なかったタイトルが読む事が出来るようになる。

 

「これは……なんて書いてあるんだ?」

 

 本を開けば、本棚の横の空間に亀裂が走り、ダンジョンゲートが生まれる。それをアーサーは興味深げに、本当に市内にダンジョンが現れた事実に少しだけ警戒心を高める様子を見せた。東吾の疑問に答える為にも、本を本棚に戻しながらゲートへと向かって歩み出す。

 

「ラストリゾート」

 

「最後の楽園か」

 

「誰にとっての、でしょうか」

 

「その答えはそのうち解るよ」

 

 ―――ゲートを抜ける。

 

 眩い光を浴びて、一瞬目を閉ざしながらゲートを抜けた先、心地よいクラシックが流れているのが聞こえてくる。ゲームを遊び、幻想図書館に訪れる度に聞いたBGMに懐かしさを覚える。これ、設定されたBGMじゃなくて実際に流れてる音楽なんだ……というちょっとした気づきは面白かった。

 

「へぇ、ここが幻想図書館。凄いねぇ、ヤバイ気配がするね」

 

 棒付きキャンディを舐めながらオメガが入って来る。それに続くように他のメンバーが図書館に入館してくる。誰一人欠けてない。侵入は問題なく済んだ。

 

「この気配は……」

 

「なんと面倒な」

 

「……」

 

 次々とモンスター達が図書館の奥に眠っている気配を察し、コメントを零して行く。まあ、最終世代のモンスター達だったらそりゃあ何が禁書庫の一番奥にいるのかを察する事ぐらいは出来るよね。うんうん、と腕を組んで頷いていると東吾とアーサーが辺りを見渡していた。

 

「ここが幻想図書館かあ……本当に図書館なんだな」

 

「ですが大英図書館よりも大きいですよ、ここ。それも何倍も。奥行きもどれだけあるのか少し見ただけではまるで把握できません」

 

「まるで空間がねじれて拡張している様な―――」

 

「―――ようこそ、ゲストの皆様方」

 

 瞬間、1人のメイドが立っていた。気配もなく現れた存在に東吾たちが一瞬で戦闘モードに入るも、それを片手で制しながらメイドに近づく。桃髪、眼鏡のメイドは此方が近づくと優雅に一礼し、近くのカウンターの裏に回る。

 

「や、司書さん。館長、いる?」

 

「申し訳ありません、館長様の行方は知れません」

 

「つまり何時も通りどっかに隠れて本を読んでると」

 

「はい」

 

「まあ、そうなるとは思ってたけど」

 

 予測通りだったので特に落胆する事もない。あの館長の事だから此方を試しに来ているのだろう。少なくとも実力のない人間に真実を話す意味も、関わる意味もない。最低限自分を見つけるだけの実力は欲しいという事だろう。

 

「館長を探しても?」

 

「無論、止める理由はありません。ですがお気を付けください、当図書館には幾つかルールが存在します。そしてそのルールを破る者には厳正なる罰が与えられます。館長様をお探しになるのであれば、必ずルールをお守りください。私も、久方ぶりに迎えられるゲストをこのような事で亡くすのは不本意ですので」

 

「うすうす、そこはしっかりと把握してるよ」

 

「では此方、本館の地図が入ったパンフレットになります。何か質問があれば対応いたします。それでは貴方が理想の一冊と出会えますように―――」

 

 そう言って優雅にメイドは頭を下げた。ここまで対応を俺に任せてた東吾とアーサーはあっちで話そう、と少し離れた所に誘導してくる。それに従って少し離れる。モンスター達に護衛されるように3人で集まる。

 

「戦っちゃダメか? アレ滅茶苦茶強いだろ」

 

「ダメです。本館での戦闘行為は禁止事項に当たるからルール即死するよ」

 

「ルール即死はパフェキャンでもインタラでも介入できないからなぁ……」

 

 しょもしょもしだす。しっかりしろ成人男性その1。

 

「食いしばりでの対応は可能ですか」

 

「ダメです」

 

「そうですか……」

 

 しょもしょもしだす成人男性その2。本当に大丈夫かこのパーティー?

 

「とりあえずここが事前に言ってた本館エリアだ。ルールは2つ、戦闘禁止と飲食の禁止。この飲食禁止ルールは休憩室では適用されないから飲み食いする時はそこでする事」

 

 カウンター近くのポップを指差すとそこには本館におけるルールが堂々と書いてある。それを見て東吾が復活する。

 

「確か回復アイテムも飲食系は禁止なんだな?」

 

「うん、使うと回復した瞬間に死ぬ。こんな感じに」

 

 ポケットからコインチョコを取り出してララの口に突っ込むとララは虚無の表情を浮かべてそのまま死んだ。蘇らせる為に飲料型の蘇生アイテムを口の中に突っ込むと起き上がった瞬間に死亡し、口に残った蘇生アイテムで蘇ってまた死ぬ。

 

 蘇り、また死ぬ。

 

 また死んで、蘇る。

 

 やがてララは考える事を止めた。

 

「こんな感じに」

 

「止めてあげてよぉ!!!」

 

 通路の奥から別のメイドが飛び出して来た。此方をびしっと指差してくると、凄い剣幕で食って掛かる。

 

「アンタ可哀そうだと思わないの!?」

 

「凄い思う」

 

「じゃあなんでそんなことするの!?」

 

「えっ……?」

 

 東吾を見る。頭を横に振る。アーサーを見る。頭を横に振る。ララを見る。死んでる。

 

「流れ……かな……」

 

「さ、サイコパス……!」

 

 引きつった表情を見せてくるメイドは素早くララに近づくと逆さにし、口の中の蘇生アイテムを吐かせてから蘇生魔法を使い素早く離れる。

 

「館長のゲストだかなんだか知らないけど! あんた達のことは私が試してあげるから! 別館まで来なさい!!」

 

 キッ、とこちらを睨んでからメイドは別館の方へと逃げてゆく。それを見送ってから本館の図書室の方を指差す。

 

「じゃ、本館のアイテム回収から入ろうか」

 

「マップにマーキングされた箇所を回ればいいんだね?」

 

「じゃ、また後で合流だな」

 

 皆のスマホには今回の探索範囲の地図が入ってる。本館範囲であれば戦闘の心配もない。お互いにサクッと回収して再び合流しよう!

 

 なおこの間、司書はずっとなにか言いたげに見てた。

 

 ルールは破ってないが?

 

 

 

 

 

「遅い!!!!!」

 

 回収を終えてほくほく顔になってから別館へと向かうと、通路を抜けた先で数人のメイドが待ち構えていた。先頭に立つメイドは地団駄を踏みながら睨んでくる。

 

「なんで!? なんで一時間もかかるの!? たった数十メートルの廊下を抜けるのに!?」

 

「いやあ、アイテム回収ついでに手に取った本が面白そうでして」

 

「古今東西モンスター図鑑、未確認モンスターまで載っててよかったな……」

 

「まだまだ読める蔵書たくさんあって面白そうだよなー」

 

「当館をご利用いただきありがとうございます!! でもそれとこれとでは話は別!!」

 

 綺麗なお辞儀から直ぐに姿勢を戻してビシッと指差し。

 

「雑魚に用はないの! 中途半端な強さの奴には意味もないわ。下手な希望を館長に持たせないで」

 

「……」

 

 何の話かは解る。良く解る。

 

「アレには勝てない」

 

「勝てる。勝つ。その為に来た」

 

 俺は知ってるから、勝てる方法はあると。だがその言葉も虚勢にしか聞こえないだろう。本当にアレを理解していると思っていないだろう。だから帰って来る意思は拒絶で、否定に濡れたものだ。視線は真っすぐ此方に向けられており、揺るがない。

 

「追い出してやる……!」

 

「東吾、アーサー。頼む。俺は戦えないから後ろに隠れてるなんてダサい事しかできないけど」

 

「子供はそれで良いんだ。子供が無力で、守られているのは別に不思議な事じゃない」

 

「何時か貴方の後を追う人達に、私達の様に道を示すようになれれば。それで良いんです」

 

 メイドが後ろに下がり、戦闘用に距離を作る。俺と入れ替わるように東吾とアーサーが前に出る。引き連れるモンスター達はどれも歴戦の猛者の名に相応しい。だが気を付けなくてはならない。そういうモンスターを殺す前提の難易度でDLCや高難易度コンテンツは用意されている事を。

 

 それでもそれを口にはしない。2人はきっとそういうサプライズを求めているのだろうから。

 

 ただ後ろでバトルの解説しかできないのは格好悪いな。

 

 そう思いながらこれから始まる幻想図書館の初戦に目を向けた。

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