《BOSS》! マリアゲルダのスキル枠は拡張されている!
《BOSS》! マリアゲルダは強者に相応しい特殊耐性を持っている!
《BOSS》! マリアゲルダの行動回数は4回だ!
「行きます」
マリアゲルダの《無限覚醒》! 行動回数が4回追加された!
「流石にそれは通さん」
《パーフェクトキャンセラー》が飛んで《無限覚醒》をキャンセルした。戦闘1回スキルなので使用した時点で次回がなくなる。強者の佇まいを見せる司書長マリアゲルダの初動がこれで潰された―――様に見えるだろう。
だが甘い。
妨害が1個飛んだ程度で初動が止まる程DLCボスは甘くない。ちなみに《無限覚醒》はエグゼリアの様な最上級物理アタッカーに配られる反則スキルなのでもうこの時点で東吾もアーサーも嫌な予感を感じ取っているだろう。
その証拠に2人とも、急に此方へと向かってダッシュして退避を始めている。
おいでおいで、階段とかのエリアの境目は安置だぜ。
《BOSS》! このターンの間、行動妨害耐性を取得した!
マリアゲルダの《絶唱》! 詠唱を30スタック得た!
マリアゲルダの《ペネトレイト》! 攻撃に貫通効果が付与された!
マリアゲルダの《暴走詠唱》! 詠唱を10スタック得た!
マリアゲルダの《リピートマジック》! 次の魔法が再発動する!
マリアゲルダの《アポカリプス》!
―――DLCボスは最低でレベル120だ。
それはつまり最低限のステータスが110のモンスターよりも高くなりやすいという事だ。そしてそれは勿論素早さも入る。つまり素早さにステータスを振っていない場合、余裕で先手を奪われるという事になる。
その上で先手で4回行動、エネミー専用スキルの《絶唱》で馬鹿スタックからの《ペネトレイト》で貫通効果付与。上位魔法すら超える新規の最上位魔法は30スタック詠唱を消費するが、全体を攻撃しつつ庇う事を許さない事実上ランプ用の“蓋”魔法だ。最後のダメ押しに《リピートマジック》で食いしばり、リレイズの類を殺す。
「マスカン間違えたねぇ」
2人が階段の陰にダイビングしてきた。
直後、図書館の天井が消え去り、星空が見えるようになった。空に浮かび上がるのは巨大な魔法陣、そこから出現する破壊的なエネルギーが異形の怪物の姿へと変貌すると地上へと向かって降り注ぐ。別館5階のモンスターを全て飲み込み命を消し飛ばす。
俺は階段の陰に隠れながらずっと耐えろを連打してララを盾にする。
オメガとハーデス以外が消し飛ぶ。その二人も蘇生効果で復帰しているだけだ。だが直後、2度目の《アポカリプス》が発動し、耐性を獲得したオメガを消し飛ばす火力で全てを滅ぼした。最後に無傷の司書長マリアゲルダが残された。
「この程度では終わらないと信じていますよ」
眼鏡をチャキ、と押し上げて貫禄たっぷりの威厳を見せつけるマリアゲルダを前にうむ、と東吾が頷いた。
「―――作戦タイムだ! 良いな?」
「どうぞ、何時でもお待ちしております」
階段から頭を出した俺らが無に向かって蘇生アイテムを投げて死亡したモンスター達を蘇生する。タブレットPCを取り出して床に置くと、ARのホワイトボードモードを起動する。空間に自由にお絵描きが出来るホワイトボードが出現する。
テクノロジーってすっげー。
モンスター達が集まって来た所でラファエラが全員のHPを回復し、瞑想してMPを回復し始める。そして此方に視線が集まった。
「アレ……何? 何……あの……何?」
「何って……ただのレベル120でボス専用スキルを幾つも引っ提げつつまだ人類側に解放されてない新規ランプ強化用魔法セットを使ってくる極悪ボスだが……?」
「知っていますか?
「まあ、ボスだしね?」
俺は好きだよ《アポカリプス》。詠唱30必要とかいう馬鹿な魔法だけど。《高速詠唱》と《暴走詠唱》込みなら5ターン目、6ターン目で発動させるのは不可能じゃないし。他のコストを考えると結局8ターン目とか9ターン目までもつれ込む事になるけど。
魔法型、ランプ型の辛い所は魔法のコストとして支払う詠唱のスタックがサポート系スキルにも消費されるという所だ。《ダブルマジック》とかが処理的にそうだし。だから最速発動狙ってもリーサル考えると結局余裕をもって溜めないといけない。
それでも事実上蓋と言えるレベルの魔法が実装されたのがこの図書館だ。そりゃあランプも活躍するに決まってるし、皆合体魔法で遊び始める。
俺もCランクはランプ型、魔法型ビルドで環境滅茶苦茶にしてやるから駆間の皆、楽しみに待っててくれよな……! 皆を阿鼻叫喚の地獄絵図に叩き込んでやるからな……! 楽しみだ。
それはそれとして、先にこっちを攻略しないとならない。
「まず大前提として妨害無しなら《明日に死す》で耐えられる。この場合追加行動と開幕の馬鹿詠唱を受け流せるだろう」
「問題はあの新種の魔法は別に1回限りじゃないという事ですね。先手を取って防御を固めればワンチャンどうです? 防御じゃなくてHP増強して相手の魔攻下げる事前提になりますけど」
「2連続で飛んでくるのをデバフ入れただけで耐えられるか? という疑問もある。庇うのと防御が貫通されてるのがだいぶ痛いな。良し、1回ゾンビで1ターン目越えられるかどうかを確かめてみるか」
「そうですね、《無限覚醒》で何を差し込んでくるのかを確認しましょうか」
「良し、戦闘再開ッ!」
ケツを叩いて立ち上がる2人に向かって合掌しつつ見送った。頑張れ。俺も当時は死ぬほど頑張ったから。
マリアゲルダの《無限覚醒》! 行動回数が4回追加された!
マリアゲルダの《高速詠唱》! 詠唱がスタックされた!
マリアゲルダの《高速詠唱》! 詠唱がスタックされた!
マリアゲルダの《叡智の導き》! 魔攻が最大まで強化された!
マリアゲルダの《ダブルマジック》! 次の魔法を2回発動させる!
「はいはいはいはい、耐久は不可能な。無理だろこんなの。耐えきれるわけないだろ。ゾンビ化切って乗り越える方向で行くか」
「では1ターン目は積みに入りますか」
マリアゲルダからの妨害は飛んでこない。彼女には《パーフェクトキャンセラー》が搭載されていないからだ。この性能で許されていたら恐らく皆PCのスクリーンを殴り抜いてる。死神族を使ったゾンビ化によるターン越えは本編でも利用された最適解だ。
なにせHP0でも死なないのだから庇うも食いしばり殺しも意味がなく、安全に次のターンへの準備を整える事が出来るのだから。ラファエラクラスのヒーラーであれば全体回復で完全まで持って行くのも難しくはない。
1ターン目の攻防。マリアゲルダの砲撃をハーデスの回数制限スキルを切って乗り越える。他のモンスターは全て次のターンに備えてバフとデバフの準備に入る。これで漸く2ターン目へと踏み込む事が出来るようになる。
「お待たせしました!」
魔本の従僕が現れた!
マリアゲルダに詠唱がスタックされた!
「そう来るかぁ」
「放置してると詠唱加速されて終わりですね」
唐突に現れた援軍に対して理解した表情を浮かべる2人に後ろからにこにこと笑顔を送る。スマホを取り出してSNSを適当に巡りながら2人が詰んで行く姿を眺める。
従僕が増えると詠唱が加速する。従僕がマリアゲルダへの攻撃を庇い、ダメージを軽減する。庇われている間はマリアゲルダは詠唱に集中する。だから雑魚が出現したターンに雑魚を処理しないと、マリアゲルダにダメージを通せずガンガン詠唱が加速される。
そして詠唱が溜まり過ぎたり雑魚の処理を怠ると2体目の魔本の従僕が出現する。こうなるともはや止められなくなる。
「《アポカリプス》が飛んでくるぞ!!」
「途中で積みリセットが入ってくるのが痛いですねー」
まだ調査段階なので素直に全滅した。
「良し、序盤から中盤の動きは見えたな」
「そうですね、まずは最初のターンを越えたら火力を集中させましょう。出現する雑魚は出現した瞬間に落とす感じで。初動のスキルが無ければ耐久力を上げて耐えられる筈です」
「この状況だとディスペルが一番辛いからそっちに《パーフェクトキャンセラー》を使っても良いかもしれないな」
「方向性が見えてきましたね。行きましょうか」
2人を見て、まだ時間かかりそうだなぁ……と思う。ララを抱えてもう何段か階段を降りると、下の階から見上げて来る魔本の従僕が何人かいるので、手を振る。あっちも手を振り返してくる。戦闘の様子が気になっているらしい。
「ここ、WIFI繋がってるけど……電話繋がる?」
「繋がりますよ」
「館長様が電子書籍を読む為に導入した回線ですからね。最近は異世界転生ものにハマってます」
「ジャンルが俗っぽいな……」
まあ、電話通じるならいっかぁ。電話帳から登録してある電話番号をかける……数回リンリンしたら繋がった。
「あ、もしもし、久遠? 俺だよ、尊。今ダンジョンの中にいるんだけど……うん、ちょっと暇だから話に付き合ってくれる? いや、別に寂しいとかそうじゃなくて……いや、照れ隠しじゃねぇから。そうじゃないからな? ただちょっと話し相手になって欲しくて」
まあ、という顔を浮かべた魔本の従僕たちが集まってくると通話が聞こえる所まで来て待機し始めた。野生のアリスが嘘つき人形にエルボーを叩き込んで場所を空けると、興味津々という様子で此方の通話に耳を傾ける。
「アーサー! これはイケるかもしれんぞ!」
「えぇ、たった4回で突破―――楽勝ですね! 勝利はもう見えましたよ!!」
楽しそうにフラグ立ててるなアイツら。
「うん、日本の方はどう? ……そっちは朝の3時? もしかして起こしちゃった? ……電話がかかって来る予感がしたって……なんだよ。いや、まあ、出てくれたのは嬉しいんだけど。こっちだとほら、時間とかどうなってるのか良く解らなくてさ」
「良し! 削り……切れてない! 切れてないぞ! 第2形態か!」
「あっ、お供が4体―――」
うおー、という叫び声と共に2連《アポカリプス》の音が響いて来るのをガン無視する。
Take5に突入する2人はまあ、楽しそうだし放置でいいか。
「え、新しい女の子? いや、そんな出会いはないよ。そもそもずっと東吾とアーサー……あぁ、こっちで協力してくれる人ね? その人と一緒でずっと男3人でやってるよ。うんうん、むさ苦しい絵面がずっと続いててさ、なんとなくだけど顔が見たくなって」
アリスがきゃー、と従僕と抱き合ってる。そんな楽しい会話してる?
「リアル! リアル恋愛模様よ! 小説の中じゃないわこれ……!」
「恋愛小説も良いですが、やっぱりリアルの恋愛は濃度が違いますよね、濃度が。啜れます」
「シッ、声が大きいですよ。見守りましょう……」
聞こえてますよ。後ろから聞こえてくるあ、間違えたの声で降って来る《アポカリプス》の音も。あ、Take6入った?
「うん、怪我してないよ。疲れてもない。戦うのは結局他の奴だしな。それよりもそっちだよそっち、何もない? こっちと同じぐらい危険な所に住んでるだろ? まあ、何もないなら別に良いんだけど……うん、それだけ。声が聞けて良かったよ」
『―――私も、貴様の声が聞けて安心した。良い夢が見れそうだ』
「おやすみ」
『おやすみ』
通話を切る。きゃー、と黄色い悲鳴を上げて抱き合っているアリスと従僕、よく見ると間に挟まれてる嘘つき人形がへし折られてる。何時の間に百合の間で死んでる人形になったんだコイツ。もしかして幸せ過ぎて体力満タンになって死んだ?
「え、なになになに、恋人!? 彼女!?」
「婚約者です」
「婚約者! 婚約者ですって!!」
「きゃー! 久しぶりに見たこんなの!」
テンションの上がった従僕がバンバンとアリスを叩き、濡れティッシュのごとき耐久力のアリスが死亡した。階段をごろごろと死亡したアリスと嘘つき人形が転がり落ちて行く。ララの置物効果でちゃんとドロップアイテムを残して。
「な、馴れ初めは!? デートとかどうしてるの!?」
前門の恋愛脳。
「キッツ! 1ミスで全滅出来て凄いなこれ!」
「あぁ、戦闘本能が満たされる……」
後門の戦闘脳。
日本のお父様お母様妹様へ、DLCダンジョンは割と無法です。