多くのマスターを絶望に叩き込んだところでランクマ開始。
一戦目。
何時ものようにステージ中央に相手を迎えるように立つ。ミストがチビを連れてきてくれたのでチビをタンク運用に、アタッカーをフラメアに任せる。なんと本日デビュー戦になる。活躍させたいね。
チビは繰り返す合体によってスキル枠がだいぶ圧縮された。次合体すればついに回避率スキルが絶対回避付与に変化して物理攻撃に対して無敵になる。
必中効果は無効化出来無いんだけどね。だけど確定で回避ができるのは偉い。これだけで取れる動きが増える、というより相手に択を押し付けられる。
つまり、必中を絶対に用意しなきゃならない、という状況を強要できるのだ。
合体を繰り返した結果だいぶスキル枠を圧縮出来てきたので、空いた枠に生存系統のスキルを入れる。火力はAにする時合体させる子が引っ提げてくるので、今のチビは火力を必要とせず、対物理を封じるためのタンク運用がメインだ。
なにせ、火力に関してはフラメアが飛び抜けてヤバい。他のモンスターで殴る意味がないレベルで。しかもキッチリ図書館の成果を注ぎ込んでる。
4ヶ月近くこいつの準備をしたのは伊達じゃない。それを今日は証明する。
「待たせたな鴉羽」
「来たな」
まずは一戦。中央に対戦相手がやってきた。そしていきなり座り込むと服を脱ぎ、短刀を取り出した。
「ふんっ!」
「なにっ!」
腹を刺した。そのまま血を流しなら横一線。見事にお腹が真っ赤っ赤になった。
「そ、それは陰腹……!」
「ふふ、これはここしばらくはパチンコという麻薬で脳を蕩けさせてた謝罪代わりだ……! ありがとうみこちゃん、目が覚めたよ」
「そのまま死にそうですが」
「ランクマで死ねるなら本望!!」
『マスターの皆さん! 唐突な武士道に目覚めないでください! そこ! 陰腹を流行らせない……流行らせるな!! 皆揃って腹を切るな!! おい!! 止めろ!!!』
アナウンスが入ったが目の前の武士はニカッと笑うだけだった。俺も神妙に頷く。
「腹を切ってもチビは出すよ」
「そんなぁ」
そういう訳でバトル開始。
相手は物理OC編成、どちらかというとランプ寄り。というかパチンコが強制的にランプっぽい何か。いや、ジャンル:パチンコかもしれない。それに対抗して此方はチビ+フラメアという組み合わせ。火力をカットして回避とタンクに集中するチビと火力に集中するフラメアという組み合わせだ。
これまではチビが火力も担っていたが、ついにその役目から解放された。スキル枠を完全に火力に振った純アタッカーの恐怖を見せるとしよう。
「よろしくお願いします」
「対戦よろしくお願いします」
挨拶をすれば戦闘が始まる。
幻想図書館への扉が開かれた! 全ての者に叡智が授けられる!
チビの《ロケットスタート》! 素早さが一段階上がった!
フラメアの《無詠唱》! 《暴走詠唱》を唱えた!
フラメアの《積層詠唱》! 詠唱が積み重ねられる!
フラメアの《術式展開》! 詠唱と共に魔力が上がった!
登場と同時にチビの素早さが上がり、最速行動を可能となった。幻想図書館を展開しつつ《無詠唱》から詠唱を引っ提げ、そのまま《術式展開》で詠唱10スタック獲得毎に魔力ステータス上昇。これで開幕のセットアップは完了する。
周辺の景色が幻想図書館の展開に伴い一瞬で本棚に囲まれた広い空間へと変貌する。遠くでサイリウム振ってる魔本の従僕が見える。もしかしてリアルタイム投影なのこれ???
「あ、詰んだ」
「うむ」
しみじみと頷く。初手でチビの素早さがオートで上がるので、これを超える速度が出せない場合、《挑発》が通って詰みになる。流石に理解が早い。
「打ち消しある?」
「ないです」
「タンク」
「パチンコだと使わなくて」
「よし、死ね!」
「逝け、我がモンスター達よ!!!!」
そのまま、本当になんの面白みもなく突っ込んでくるモンスターに《挑発》を打って魔法で焼き殺した。撮れ高なんてものはない、完全な蹂躙だった。マジで面白みがなくてテンションが上がらない。特にコンボするまでもなく2度薙ぎ払って終わり。死体になって転がるモンスター達もデスヨネー、みたいな顔で死んでる。
試合が終わったので集まる。
「感想戦、いる?」
「無理にOC狙わずクリ70~80ぐらいで抑えてクリダメも50%ぐらい、アグロ軸なら先制取る手段抑えるかタンクを用意するか……でしょ?」
「解ってるならちゃんとやれ」
「だって気持ち良かったんだもん……パチンコでランクマ……」
まあ、解らなくはないけどその気持ち。ランクマみたいな場を運ゲー構築で勝った時の脳汁は結構ヤバイ。とはいえ、さっさと正気に戻ってちゃんとした殺し合いが出来るようになって欲しい。お腹から血を流したまま手を振ってバイバイした彼はそのまま次の試合に向かった。
そしてそのまま合計3戦してから緊急搬送されたらしい。今日の駆間病院は大人気スポット。
続いて2戦目。
「尊くーん」
「あ、七海じゃん。生きてた?」
「生きてる生きてる。尊くんよりは生に近いよー」
「せやな」
2試合目の場所に行くとそこには七海の姿があった。連れているモンスター達も新顔だ。ちゃんとCランクに上がって構築を更新している……見た瞬間害悪コントロールパーミッション軸に変化がないのが理解出来た。
なお駆間では突然知っていた人がふらっと死ぬ事があるので生存確認は大事である。本当に現代日本かここ?
「というか今のパチンコ環境やりやすいだろお前」
「滅茶苦茶やりやすいんだけど派手に勝つと皆パチンコしてる場合じゃないって気づいちゃうから適度に勝つのがこの馬鹿環境の維持方法なんだぁ」
「なんてことを」
「皆気づかずにパチンコして、私はそれを狩る。Happy-Happyじゃない?」
「俺はもっとバチバチに殺気向け合いながら殺し合いたい……」
互いに顔を見てうむ、と頷く。
「じゃあ殺ろっか」
「おー」
という訳で2戦目、もはや馴染みのあるコントロール使い、七海。連れているモンスターは人形の姿をした死神系統のモンスター、そして無数の刃を背負ったヤマアラシの様なモンスターだ。うわぁ、見た事あるー、という懐かしさとまともに相手したくねぇ、という気持ちが半々で出て来る。
という訳で今回の選出はフラメア+イーリュ。除夜の鐘、ランクマデビューである。
「さっきは活躍という程のものでもなかったし、マスターに良い所見せるよっ」
「勝利、それこそが貴方を飾るのに最も相応しいものです」
フラメアもイーリュもやる気満々。今日のランクマではしっかりと勝ち星を稼いで2人のこれからに勢いを付けてあげたい。相手は事実上弟子の様な存在だが、遠慮なくぶち殺す事にする。身内相手だからこそ本気で虐められるというものだ。
「対戦よろしくお願いします」
「よろしくおねがいします」
七海のゆるっとした声の後戦闘が開始、一瞬でお互いの空気が研ぎ澄まされる。
幻想図書館への扉が開かれた! 全ての者に叡智が授けられる!
フラメアの《無詠唱》! 《暴走詠唱》を唱えた!
フラメアの《積層詠唱》! 詠唱が積み重ねられる!
フラメアの《術式展開》! 詠唱と共に魔力が上がった!
イーリュの《アトラクト》! ヘイトが集中する!
まずは安定の開幕ムーヴ。フラメアはこの開幕の動きだけで図書館で+1、《無詠唱》から《暴走詠唱》を引っ張って+10、《積層詠唱》の効果で増える時に常に+1して合計で13になった。その上に《術式展開》で魔+1状態だ。
これだけの詠唱があれば単発であれば上位魔法を撃つ事だって出来る。このランクであれば大体必殺級威力だし、そうじゃなくてもフラメアの火力はかなり高い。食らって生き残れる奴はあんまりいないだろう。
七海はそれを知らないが、別に説明しなくても動きを見れば理解するだろう。
「明らかに動かしちゃ駄目って感じの開幕だよね」
人形―――七海の背丈に匹敵する程大きな熊の人形はぶぅん、とオーラを纏うとそれをフラメアへと向けてはなって来た。《忘却の思い出》は単体対象に忘却状態を付与する魔法だ。メイン行動がとれなくなる為、食らうと致命的に動きが悪くなる。
当然、通せない。
《ルアーリング》で対象をイーリュに移し替える。
「うん、そう来るよね」
「まあ、するよな」
イーリュが忘却に、連鎖するスキルで10%の割合ダメージ。ウェルギリウスで使っているコンボがほぼそのままここに成立する。ただ違うのはどっちかというと七海はデバフ攻めを意識している所だろう。割合ダメージに合わせてイーリュに毒が発生し、毒の発生と同時に継続ダメージの即時起爆スキルが連鎖する。
一瞬でタンクのHPが3割消し飛んだ。まあ、安い方だな。毒で辛そうにしているイーリュがふらっとしているが、HP的には余裕がある。無視して良し。
「タンクを虐めるのは良いけど本命がフリーなんだよなぁ」
すっと、指示を出せばフラメアが《ダブルマジック》を発動させる。ヤマアラシよりもフラメアのが足が速いらしい。まあ、タンクはリアクションスキルで庇わせたり反応するから速度求めないしなあ……。
「お」
フラメアは《ダブルマジック》を唱えた!
チャッキーの《インタラプト》! 《ダブルマジック》は不発に終わった!
《絶望の足音》が聞こえてくる……。
「それは通さない」
イーリュの《インタラプト》! 《絶望の足跡》を遠ざけた!
「ちぇー。通しても良いのに」
「嫌です」
《絶望の足音》は絶望状態というバッドステータスを付与する。絶望状態ではメインではないスキルを発動させられなくなる。つまりオートやリアクションスキルの類が使えなくなる。タンクがこれを食らうと《カバーリング》や《ルアーリング》が入らなくなる。
ほとんど置物になるよ。忘却や絶望等のスキル封印タイプのデバフは滅茶苦茶強い。コントロールやパーミッション系はこれを主軸にガンガン相手の行動を制限して潰して行くのが基本だ。
C帯はこういう系統のデバフやスキルが増えて来るのもあり、構築を練っていて楽しくなるのはここからかもしれない。
「でも打ち消したからダメージは受けて貰うよ」
「いいよ。じゃあ殺すね」
声を出さずともフラメアがシンクロした意識の中を通して指示を受け取る。スタックされた詠唱を消費し、上位魔法が発動する。
フラメアの《ブリザード》!
ウェポンバックは《ワイドガード》で全体攻撃からチャッキーを庇った!
フラメアの《ペネトレイト》で守りを貫通する!
尊は《全能者の憂鬱》を嘆いた。ウェポンバックの全能力が2段階下がった!
「チート止めてぇ―――!」
サムズアップを向けている間に吹雪がフィールドを襲い、一瞬で熊人形とヤマアラシを飲み込んだ。守りを破壊する一撃を庇ったヤマアラシが一瞬で蒸発―――せずに、食いしばった。全体攻撃を庇ったから人数分のダメージを受ける筈だが、食いしばりで耐えたようだった。
だがもう死ぬ。
フラメアの《復唱》! 空間に《ブリザード》がこだまする!
ウェポンバックはチャッキーを庇った!
ウェポンバックは死亡した!
《ブリザード》と《ブリザード》が融合する……!
《ダイアモンドダスト》が降り注ぎ全てを氷結させる!
チャッキーは死亡した!
発生した吹雪が吹雪と融合し、それが天井付近で収束すると融合し、氷の槍となって雨のように凄まじい勢いで広範囲に降り注ぐ。既にタンクが死んでいる以上人形に耐えるだけの可能性は存在しない。一瞬で串刺しになって死亡した。
「《復唱》、賢者の石を素材に使うと習得するスキルで詠唱x3%の確率で発動した魔法が再発動するスキルだ。今回は運が良かったな」
「いや、そっちよりもマスタースキルのが酷いよ」
そりゃあラスボスから見てパクった奴だし。
今日まで一切見せる事無く温存していた《全能者の憂鬱》だが、明らかにヤバイってレベルの性能しているので後々協会の人にナーフか封印指定されてもおかしくはないと思っている。というかもう既にステージの下で待機してる。封印指定っすか? うっす。
無事禁止制限行きになった。
「ずるいずるいずるいいー、こんなの勝てない奴じゃーん。どうすれば勝てるの??」
「パフェキャン」
「ある訳ないでしょ」
そっとパフェキャンを渡す。無言でそれを受け取ると谷間の中にパフェキャンを隠した。俺達はそこで握手を交わすと気持ち良い気分でランクマの舞台を去る事が出来た。俺は勝てたし、七海はパフェキャンを得られた。次回会う時には更に強くなって殺しに来てくれるだろう。
なんて素敵な話なんだ……。
「勝てたねマスター」
「私、ほとんど何もしてなかった気がします……」
和気藹々と迫って来るフラメアとは違い、イーリュは全く働けていない様な気がして首を傾げていた。まあ、手番貰ってすらいないからね君。次の相手次第では出番あるんじゃないかなあ。そう思いながらランクマの舞台から降りて次の試合へ。
今日は久々のランクマで気持ち良くなれている。このまま3戦目も気持ち良くなろう。
―――そう思った瞬間、奴が現れた。
「
次の試合。3戦目はパチンコ殺して気持ち良く帰りたいなぁ、とか思っているとソイツは現れた。駆間の中でも異彩を放つキャラの強さ、そして徹底して拘った自爆構築。
人はこいつをこう呼ぶ。
駆間の花火師と。
「久しぶりだなぁ鴉羽ァ……!? 俺がCランクで編み上げた結論構築を魅せてやるぜェ……!」
立ちはだかる変人を前にうーむ、と唸る。
もし、認定戦の頃からコンセプトを変えてないのならワンチャンCランク最強かもしれんなこいつ。