夏油はピンチだった。
なんかエイリアンに一目惚れされて拉致られて孕まされてしまったのである。
特級術師がドジったものである。
だって仕方ない。
エイリアンは、心を読んで擬態する卑怯な相手だったのだ。
早い話が、奴は夏油の心を読んで、好感度が最も高い五条悟っぽい見た目と言動で口説いてきたのだ。
知っていても絆される。
エイリアンの超絶ウルトラテクニックに、夏油は翻弄されていた。
そしてついに孕まされ、宇宙で逃げ場がない事や、美々子と菜々子という人質もあり、結婚を承諾。
そこをエイリアンのお兄さんが発見。
夏油は無事、自宅に戻され、今、エイリアンのお兄さんが妹エイリアンの頭を地面に叩きつけ、頭を擦り付けていた。
「すみません! 妹がすみません!! 責任は取らせますので、どうか星間問題だけはお許しを!」
ガンガンと妹の頭を叩きつけ、必死に頭を下げる兄。
「はぁ……。責任を取るとは、どうするおつもりですか?」
夏油父が困惑しつつも問う。
「結婚させます。あと、みみちゃんななちゃんは虐待されてたようなので、引き取ります。就職させて、ちゃんと傑くんとみみちゃんななちゃん、お腹の子を養わせます。俺も生活の援助をします」
「傑は貴方達の星に住む事になるのかしら?」
「それは大丈夫なのか? 他惑星に住むなんて……」
「それがその、母星は既に滅んでて、難民として移住できる星を探してて……なので、こちらに住む事になると思います。これから難民申請とかの色んな事しないとで、なのにこのバカこのバカ!」
「が、頑張って傑養うから!」
そういうことではない。
「宇宙人がどうやって住むのかしら?」
「要は難民だろう。本当に傑を養っていけるのか」
「アメリカに戸籍をお願いしているので、その辺りはどうにか……。偽の学歴とか就職先も、一応……。医療体制も万全の体制を敷くので……」
「傑はどうなんだ」
できる限り気配を消していた傑はビクッとする。
「あー。私としては、妊娠は友達には絶対にバレたくないかな。それにさ、サトリって心を読んで好ましい相手に変身して求愛するだろ? 君の姿、同性の友達の姿なんだ。だから友達にもサトリのことはバレたくないかな。子供を産んだ後、君に預けるから、サトリは女の子に変身してこの辺に引っ越してよ。連れ子のシングルマザーと私が出会って恋をして結婚ってストーリーにするなら、結婚してもいいよ。美々子と菜々子を引き取る手続きは、父さんと母さんにお願いできるかな。私の妹になってくれるかい? それで、赤ちゃんの事一緒に面倒見て欲しいな」
「赤ちゃんのことは任せて!」
「サトリ頼りないもん!」
「傑ー! 愛してる!」
「じゃあ、女の子に変身してみて」
言われて、サトリは変身する。硝子だった。
「やり直し。そもそも私の周囲の人を真似するのは止めてくれないか」
「夏油が好きになってくれないと意味ないよね。私、夏油が好きな人にしかなりたくない」
「私も頑張って理想の女の子を出力してみせるから、頑張って変身してくれ」
「本当にいいの? 傑」
「父さん、代わりにぶん殴ろうか?」
夏油はため息を吐いた。
「だって絆されちゃったしね。お腹の子に罪はないんだし」
それに、夏油は言わないが感謝していた。
なんだかんだで、サトリのおかげで猿を憎まずに済んだのだから。
あのままでは、自分の本音を猿との敵対に置いていた。
一旦落ち着いて、自分自身と相対できた。
サトリは人の心を読んで、言って欲しいことを言うので、自分の醜さをまざまざと見せつけてくるのだ。
夏油は悟への大きな愛や、悟の自分に対する思いやりを自覚させられ、気がつけば偽悟に体を許していたのだ。ぐぬぬ。
そんなわけで、夏油は任務中にトラブルに遭い、なんとか帰れたものの、心に傷を負って中退するというストーリーを作った。
その後のサトリの変身姿だが、ボーイッシュな女版悟にしかならなかったので夏油は自分の煩悩を嫌悪した。でも五条悟以上の美貌を想像するような想像力は、夏油にはなかったので仕方ない。悟は世界一美形だから仕方ないな、よしっ