「異変の原因ですはこいつらです!」
「貴方達は、一体何を言っているんですか。異変の原因は私が排除しました」
檻の中にいたのは、幼女が2人。そして、それを庇うなんか威厳のあるお坊さんっぽい人だった。
「私は見たんです! 化け物がお坊さんになるのを!」
「ええ……」
私は、困ってお坊さんを見た。
お坊さんは、私を見ると目をまんまるにした。
「貴方の名前は?」
「私は、夏油 傑だよ。とにかく、ここから」
「理想の人は?」
「理想? そんな事を話している場合じゃ……」
言いかけて、絶句した。
何故なら、お坊さんはウニウニと変形して、悟に変身しつつあったから。
村人達がパニックに陥る。私も少し混乱した。
「!?? 呪詛師!?」
偽悟は口を開く。何か攻撃か!?
「俺、⚪︎⚪︎⚪︎! 傑! 俺と結婚して!!!」
「は?」
私は戸惑っていた。名前が全然聞き取れなかった。
「俺、傑の大好きな姿になれるし、大好きな声になれるよ!」
「えっと?」
「傑に膝枕してあげられるし、子守唄だって歌ってあげられる! 俺、料理だって覚える!」
「それはありがとう。でも、今は君の本当の姿を見たいかな」
「俺、この星に潜入捜査中だから、見られたら駄目なんだ……」
私は、くるりと振り向いた。
「ただの頭がおかしい人ですね。3人とも、回収して然るべき場所に送るのでご安心ください」
私は、3人を連れ出す事に成功した。
「君、えーと。サトリって呼んでいいかな。私の心を読んだんだろ?」
「そー! 俺、心を読むの得意なの! そういう種族なの」
「種族、種族ね。その子達も?」
まさか、宇宙人とでも言うつもりだろうか。しかし、術師だとしても、姿を変えるのと心を読むのと二つ術式がある事にならないだろうか?
「この子達は、この村の子だよ。いじめられてるみてーだから、なんとかしようとしたけど、ほら俺、潜入捜査中だから、力使っちゃ駄目じゃん? それに、イガイガした気持ちの奴らに囲まれるの俺、苦手だし。それで困ってたんだ。助けてくれてありがとう、傑」
サトリの、悟そっくりの笑顔に、私はため息をつく。私は自分が思っているより悟の事が好きらしい。そして、この子がそれを利用していることは明らかだ。
「どういたしまして。さっきのお坊さんの姿でいいから、変わってくれないかな。それは私の友達の姿だ」
「傑のすっごく大好きな姿!」
悟のようで、言動は幼い。この子は幼い術師なのかもしれない。ムキになっても仕方ない。
「そうだよ。だから、君にその姿でいてほしくないんだ」
「ヤダ。俺、傑に好かれたい」
「悟の姿で居続けるなら嫌いになるよ」
「ムー。わかった。そのまま使うのはやめる」
そして、サトリは縮んだ。子供の頃の悟の姿だ。だが、獣の三角耳のようなものがついている。尻尾も。
「「可愛い!」」
「だろ? 傑はこの姿も好き!」
「はぁ、もういいよ、それで」
くっっっそ可愛かった。
なんだこの可愛い生物。
「なぁ、美々子と菜々子、お腹減ってる。傑もお腹減ってるし、眠りたいって思ってる。で、俺はそろそろ帰んなきゃいけない。だから、俺の家に行こうぜ!」
「それって君の星?」
「ううん。宇宙船」
「それ、そのままお持ち帰りされない?」
「傑が嫌がる事はしない! それより、傑が疲れ切ってるのが心配」
「傑さま、疲れてるの?」
「大丈夫、傑さま?」
幼児達に心配されてしまう。純粋な心配の色を見て、私は疑う事をやめた。
「大丈夫だよ。でも、そうだね。すぐ戻って来れるなら、一泊だけさせてもらおうかな」
そして、私達は森の中に入った。
少しひらけた場所に行くと、サトリは隠してあった装置をカチリ。
落ち葉がひらり。私達は、宇宙船の中にいた。
「本当に宇宙船!?」
「すごーい!」
「美々子、あれ、窓の外!」
菜々子と美々子がテテッと駆け寄り、地球を見る。
凄い。
「体綺麗にして、手当して、ご飯食べよーぜ。そんでぐっすり寝よ!」
当然だが、宇宙にお風呂はないらしい。
シャワーを浴び、伸縮の凄い服に着替えると、服を綺麗にするからとサトリは服を預かった。
「ご飯、傑の口に合うといいんだけど。美々子と菜々子もいっぱい食べろよな」
そうして用意されたペーストのような料理を食べ、デザートのリンゴをたべると、地球を眺めながら皆で眠った。
サトリはぎゅうっと体を寄せてくる。
美々子と菜々子の親はいないらしい。
幼児達にひっつかれながら、サトリにも家族について聞いてみた。
「にーちゃんがいる。この星の観察してんの。あっ 侵略とかはないから安心して!」
「ふぅん。観察して、何か面白い事ある?」
「たくさん!」
果物が美味しかった、アニメが楽しかった。
そんな事を話しながら、いつの間にか眠ってしまった。
朝。
自分にひっついて眠っているサトリを引き剥がす。
「やばっ 寝坊したな。そろそろ帰らないと!」
「ヤダ!」
「は?」
「傑、まだ疲れてる! 働きたくない、戦いたくない、帰りたくないって言ってるもん!」
それは否定しない。否定しないが、そんな欲望に負けるようではダメだろう。
「言ってない。それに、人の心を勝手に読むのは失礼だよ」
「言ってる! 傑が疲れたって言わなくなるまでお家に帰さねーから!」
「サトリ。仕事があるんだよ。今日だって他にも任務がある」
「それって、傑よりも大事なこと?」
「大事な事だよ」
「俺はそうは思わない。それに傑ともっといたい。そーだ! 俺の姿って、傑が大好きな人なんだろ? 悟って言う人!」
「……まあ、そうだね」
「じゃあ、悟の心配って気持ちがここまで届いたら、それか傑が帰りたいって思ったらお家に帰す」
「はぁ? なんだそれ」
「それまで傑は強制的に休日でーす!」
「……本当に、私が帰りたいって思ったら帰すのかな?」
「傑が嫌な事はしない。傑、本当はここにいるの嫌じゃないって思ってる」
如何にもこうにもやりにくい。
私は、仕方なく承諾した。
ただし、報連相なしは社会人として問題だ。
「連絡を送らせてもらえないかな。それと、そうだな。悟が心配しなくても、私が帰りたいと思わなくとも、一週間したら家まで送って欲しい」
「1ヶ月!」
「二週間だ」
「わかった。俺の事は内緒だからね」
「二週間したら戻るってメールさせてくれたらそれでいいよ」
パァッとサトリが笑顔になる。悟の顔なのだから当然可愛い。
そんなわけで、宇宙船暮らしが始まった。
ご飯を食べて寝る。
三日は眠ったり食べたりアニメを見たりして過ごした。
それから、美々子と菜々子とサトリとゲームをして過ごした。
六日目。
サトリは肩を落とした。
「傑ー! って探してる。どこにいるんだって心配してる」
「えっ」
「傑のお家まで送るね……。美々子と菜々子も傑のお家行く? ずっとここにいてもいいよ」
「いや、それだと君が誘拐犯になるだろ。美々子、菜々子、いったん私の家に来てくれないかな。悪いようにはしないから」
サトリは俯いて、もじもじした。
「また会いに来ていい?」
「いいよ。君が地球を侵略しないならね」
「しないよ!」
「ならいいよ」
そして、私は家に送られた。
母と父に、行方不明と聞いて気が気じゃなかったと泣かれ、美々子と菜々子のことを話すと養子にしてくれると約束してくれた。
夜蛾先生に連絡し、流れの呪術師に厄介になっていた、縛りでその間の事は言えないと言うとめちゃくちゃ怒られた。
そして、悟がすぐに迎えにきてくれた。
「傑のことだから心配してなかったけど、暇だったし」
「宇宙の果てまで聞こえるほど、心配だって叫んでたくせに」
「わりーかよ」
否定するかと思ったが、肯定されて私は笑った。
ああ、私の周りの温かさを、なんで私は忘れてたんだろう。
寮に帰ると、硝子がいた。
「おかえり、夏油。遅かったじゃん」
「心配かけたね」
「全くだっつの!」
五条は私の首に腕を回し、背中にべったり張り付く。
硝子も寄ってくる。近い近い。
それから、私はエイリアンのサトリと友達付き合いを始めたのだった。