傑は俺の親友だ。
でも、親友って思ってたのは俺だけだったかもしれない。
一時期、顔色が悪いなーとは思ってた。
それから、最近、柔らかい雰囲気になってたから立ち直って良かったとも思ってた。
でもまさか、彼女がいたなんて。
「卒業おめでとう!」
卒業証書を突き上げ、喜びの雄叫び。
自分も傑も硝子も信じてた。でも、やっぱり死者なく卒業は偉業だ。嬉しかった。
前祝いは楽しかった。傑もいつになくはしゃいで、俺と硝子と傑は団子みたいになってベッタリしながら遊んだ。
とっても楽しかった。これからもこんな素晴らしい日が続くんだって信じてた。
「まあ、卒業したから何が変わるってわけでもないけどな」
「変わるよ。私、国際結婚して家庭に入るつもりだし」
笑顔で、傑は信じられない事を言った。
「「「は?」」」
「以前、偶然に助けた子と付き合っててね。仕事バリバリしてるから、家庭に入ってくれって。術式使えなくなるの困るから、術師辞めるつもりはないけど、まあ2年間はアメリカで専業主夫する事になるかな」
続けて、傑はしばらく休むことは伝えてあると言った。
「「はあああああああああああああああああああ!??」」
「結婚式は!?」
結婚するなら結婚式があるはずだ。俺はびっくりして聞いた。
「前の休みの時に終わった」
「「「終わった!??」」」
何それ!? 何それ!!!
「悪いね。結婚した子が守秘義務必要なとこのエリートでさ。詳細言えなくて」
「何それ。非術師?」
「そういえば、あの子見えるのかな? 今度確かめとくよ」
術師だろうと非術師だろうと関係ないって事? でも結婚するならどっちか確かめるだろ、普通。
それを皮切りに、疑問が溢れ出してくる。
傑が、プライドの高い傑が専業主夫!?? 特級術師が!? ありえないだろ!
アメリカ? 守秘義務!? どういうことだよ!
「どんな子?」
「だから言えないって」
「偉い人の娘とか?」
「そうだね。身辺警護が必要なくらい優秀な技術者とだけ」
「もう会えないとか言わないよな?」
恐る恐る聞いてみる。嫌な予感がビンビンにする。
もう2度と会えないような、止めないとって俺の勘が叫ぶ。
「あー。どうだろ」
「どうだろ!?」
「嘘、嘘。数年して落ち着いたら、日本に帰ってくる約束だし」
「数年……」
信じられなかった。
数年? 数年も会えねーの? なんで言ってくんなかったの?
そういえば、卒業後のこと、あまり話してくれなかった。
なんで。どうして。
「今日の夜の便で行くんだ」
傑が遠慮するのを無理やり見送った。
まるで傑自身が要人であるかのように、外国人数人に囲まれて、傑はアメリカに旅立った。
傑との接点を失いたくなかった俺は、傑の実家に津美紀と恵を連れて押しかけた。
美々子と菜々子と仲良くしてやって欲しいって。
そして、さりげなく傑の情報を得ようと頑張った。
その甲斐はあったらしい。
なんだか空気がピリピリしてたその日、美々子と菜々子は、俺に耳打ちした。
「あのさ。五条悟。来週暇? 高専って外部の人もお金出せば泊まれない?」
「なんかあったか? 家出希望?」
「ううん。お兄ちゃんの面倒見て欲しくて」
「さっちゃん……傑お兄ちゃんの奥さん、向こうの家族に結婚の事伝えてなくて、炎上真っ盛りなんだよね……。しかも、お兄ちゃん酷いホームシックになってたの、私達に伝えてなくて。それも揉めてて。離婚しろってお父さんとお母さんカンカンなの。とりあえず、来週一週間戻ってきて療養する事になったんだけど、カウンセラーさんが、安心出来る場所で心を休めた方がいいって。それでお兄ちゃんと専属医師さんと専属カウンセラーさん、高専に泊めてもらえないかなぁって」
「傑だけならOKかな。外部の人は流石に難しいかも。でも、医療体制はバッチリだよ。というか傑に専属医師ついてるわけ?」
「それはまあさっちゃんだし。……最悪、テレビ電話越しの診察でも大丈夫って言ってたけど」
「お願いできそう? 家だとちょっとピリピリしてるし、私達昼間学校だからさぁ」
「何者だよ、さっちゃん……。でも、傑を預かるのはOKだよ! 肉体的には病気ではないんだよね? 任務一緒にできるかな。そしたらずっと一緒にいられるし」
「無理させないでね」
「まーかせて!」
そうして、傑の専属カウンセラーから山ほど注意を受けて、傑を預かる事になったのだった。
「迷惑掛けてごめんね、悟」
そういった傑は、顔色が悪くて、少し筋肉も落ちていた。
送ってきた医者からはめちゃくちゃ心配されていたし、護衛っぽい人もいた。
「お前、誰と結婚したわけ?」
「内緒なんだ、ごめんね」
少しふらつくので、慌てて支える。
「診察の練習させろ」
「いや、いいよ、ちゃんと見てもらってるし」
「練習させろって言ってんの」
「あー。あとでね」
「大丈夫なのかよ、傑」
予想以上に重症じゃねーか。
心配した俺は、傑の体を支えて、自室に案内した。
布団とかはすでに用意してある。
荷物を置くと、すぐに傑は硝子に引っ張っていかれた。
もちろん、俺もついていった。
「悟。診察中は出ていってくれないか」
「後から無理やり聞き出すの面倒だし。ホームシックだけじゃねーだろ」
「はぁ……。好きにしなよ」
そんなわけで、診察である。
「夏油」
「うん」
「心音二つ聞こえるけど。お前、取り憑かれてんの?」
「えっ 俺、祓おうか?」
「やめてくれ」
傑は、とても困った顔をした。
「あー。私の奧さん、エイリアンでね」
「は?」
「私のお腹に、エイリアンの卵があるんだ。ほら、タツノオトシゴとかコイムシみたいな生態しててね。先方が」
「は?」
洗脳されてらっしゃる?
観念した傑は、写真を見せてくれた。
俺そっくりの、ケモみみの少年が傑と仲睦まじく映っていた……。
「相手の好感度の高い姿に変身して求愛するのが向こうの生殖方法でね」
は?
「夏油、お前……奥さんがクラスメイトそっくりでショタでケモ耳ってどういう事だよ。犯罪者じゃん」
「言わないでくれ、わかってるから」
傑は顔を隠した。顔を赤くしてる場合じゃねーだろ!
「傑、こいつと付き合ってんの?」
「付き合ってるというか、奥さんだよ」
「卵産ませたの。お前の腹に?」
「そうだよ。君の顔をしてるのは、本当にごめん。気色悪いよね。私も、悟の顔はやめてって言ったんだけど、私の好きな顔だからってやめてくれなくて」
「じゃあ俺でいーじゃん」
ぽろっと声が漏れた。
「えっ」
「俺でいーじゃん! 俺がいーじゃん! どういうこと!?」
「悟、落ち着いてくれ」
「修羅場じゃんウケる」
「俺でよかったなら俺にしとけば良かったろ! なんでエイリアン!?」
傑に掴み掛かりかけて、慌ててそっと触れる。
「悟、声が大きいよ! それに、君の顔だけで選んだんじゃないんだよ」
「たとえば!?」
「私が精神的にどん底だった時に、寄り添ってくれてね。心を読んでるだけあって、欲しい言葉もくれるしさ。確かに顔がいいのも9割有るけど」
「9割俺じゃん!?」
混乱する。えっ 俺、傑を俺の顔をした泥棒エイリアンに取られたのか!?
「つまり、エイリアンの演技部分だけ好きになったって事じゃん?」
「そんなことはないよ、硝子。本当の姿を見せてくれないのは悲しいけど……」
「専属医師ってエイリアン!?」
「いや、サトリはアメリカの援助を受けててね。医師はアメリカ人だよ。純粋な地球人」
「お前モルモットじゃん!?」
「言い方」
なんてこった。傑を、傑をなんとか宇宙人の魔の手から救い出さねば!!!
ていうか、傑、エイリアンに卵を産みつけられ、えっ 生まれるときどうなんの!?
とにかく、俺はその時から傑の身の安全に最新の注意を払うようになったのだった。
呪霊の取り込み? させるはずがねーだろ!
次話、五条発狂回です。
マシュマロ
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