騎馬戦が終わると実況であるプレゼントマイクより通達が入り1時間のお昼休憩を挟んで最終種目が行われるとの事であった、
なお始まる前にA組女子一同はチアリーディングをやらされた、上鳴と峰田実にチアリーディングがあると騙されて……であるが。
美人が揃っているA組の女子陣だが中でも特に袿姫と八百万百と轟凍火のチア姿が一際注目を集めていた。
プロポーションが抜きん出ている3人は色々と凄まじい。
そうして発表される最終種目は『ガチバトルトーナメント』だとか。
もう名前からして何をやるか察せられる。
リカバリーガールが居るから多少の怪我、骨折程度なら即日で完治まで持っていけるし……。
審判であるミッドナイトより主なルール説明が為された。
制限時間無し。
ギブアップさせる・気絶などで試合続行不能に追い込む・場外へと叩き出す・いずれかの条件で勝利。
何ともまぁ分かり易い……。
そうしているとミッドナイト先生より再度発表がなされる。
『さて‼︎ 最終種目の発表よ‼︎ 最終種目……それは『ガチバトルトーナメント』‼︎ 進出4チームの16名からなるトーナメント形式の一対一のガチンコバトルよ‼︎ 組み合わせのくじ引きを騎馬戦1位の埴安神袿姫チームから引いてね……組み合わせが確定したら30分間のレクリエーションを挟んだのちに開始となります‼︎ レクに関しては参加者16名は参加するもしないも個人の判断に委ねるわ、息抜きしたい人も個性を温存してたい人もいるだろうし……では埴安神袿姫さんから運命を司るくじ引きよ‼︎』
順々にくじを引いていき……確定したトーナメント表がモニターに映し出される。
モニターを見ると……八百万百と埴安神袿姫は互いに1番手と大トリを務めていた。
八百万百は1番手であり、袿姫はトーナメント最後の順番……これが意味する所はつまり。
互いがトーナメントで戦う可能性があるのは決勝の舞台以外有り得ないという事。
その事実に袿姫も百も……互いを見つめ合いどちらとも無く声を掛け2人とも一言一句同じ言葉を語る。
「「私達の勝負の決着を付けよう……今度は決勝の舞台で」」
ニコリと笑う2人……しかしながらその眼は一切笑っていない。
薄らと寒さすら感じさせる表情で互いが互いを見つめ合う、しかし先の宣言は自分達が決勝に立つ以外の未来は無いと言い切っており……それは即ち他の者達など眼中にも無い事を言外に言い表していた。
その宣言に凍火や爆豪がいの一番にやる気を示して逆に叩きのめす宣言を行う。
確かに……爆豪勝己は八百万百と、轟凍火は埴安神袿姫と第3回戦で戦う。
……しかし先ずは第一回戦、緒戦を飾るのは八百万百VS常闇踏陰。
緒戦に臨む2人以外は観戦席へと一先ず戻り観戦モードとなる。
親友の……敬愛する友人の緒戦を観戦する為に一番観やすい席へと座ると凍火が隣へと座ってきた。
「……袿姫さん、勝たせてもらうよ? 父さんと母さん……姉さんに兄さん2人が応援しにきてくれているんだ、勝ってみせる必ず……絶対に」
そう意気込む凍火さん、凍火の視線の先には轟家一家。
この日の為に仕事を巻きに巻いて休みを取得したエンデヴァーこと轟炎司とその長男……轟燈矢、そして炎司の妻である冷と姉の冬美、夏雄が雄英生徒関係者専用観客席にいた。
それを見つつ袿姫は語る。
「その意気込みはとても大事です、勝てるかは別として……さて、そんな貴女に1つヒントを、貴女の個性、とても素晴らしいソレを更に上手く使う方法……お耳を拝借」
コソリと凍火に囁くと、凍火はソレがあったかと驚愕した表情で袿姫を見るが当の袿姫は嬉しそうにしていた。
袿姫が耳打ちしたそれは即ち……即座に放つのではなく『溜めて放つ』という事の更に発展系。
焔を1箇所に集中させ、凍氷を1箇所に凝結させるという……意識せずに行っているであろう行為を意識して撃つようにする事、それは即ち……轟炎司や轟燈矢が行う絶技の領域。
焔と凍という2つの相反する個性を有している凍火には未だ片方ですらコントロール定まらぬそれへの最適な方法。
袿姫は……
それは決して間違わぬ
袿姫は……錯誤を知らぬ、失敗も知らぬ。
積み上がるのは無限に、連綿に続く検証成功と同じく無限に積み重なる試行のみ。
だが、それと同じく……直感のみで言語化も理論化すらもせずにただひたすらに
故に他者の足りないモノを見て正解を引き寄せるのは造作も無い。
適当に手を動かすのと同様、ただその相手を見れば相手に足りない何かが直感でわかる。
それを伝える袿姫。
伝え終わると凍火からは訝しげに語られる。
「戦うかもしれない相手に……何故?」
互いに勝ち進めば凍火が袿姫と戦うのは自明の理。
あまりにも意味不明。
しかし、袿姫は嬉しそうに笑みを浮かべながら告げる。
「友人の悩みに対して手を差し伸べるのはそんなに可笑しい事では無いでしょう? 本来ならこれは貴女のお父様やお兄様の役割だったかもしれないですが……それに関しては謝罪を、しかしながら……負けませんよ、私は……そろそろ始まりますね、観ましょうか、記念すべき緒戦を」
セメントスによるバトルフィールドの形成が完了し選手がそれぞれの通路から登場する。
解説のプレゼントマイクが放送用マイクを手に取り観客へと自身の声を届ける。
『色々とやって来ましたが‼︎ 結局これだぜ‼︎ 毎年恒例‼︎ 時間制限無しガチンコ勝負‼︎ 頼れるのは己のみ‼︎ ヒーローじゃなくてもそんな場面ばっかだ、わかるよな⁉︎ 心技体に智慧知識を総動員して駆け上がれ‼︎ さて‼︎ 記念すべき第1回戦‼︎ 全てを喰らい尽くす暗黒の体現者‼︎ 常闇踏陰‼︎ そしてその対戦相手は‼︎ その蓄えた圧倒的な知識を総動員して凡ゆるモノを創り出すA組きっての才女‼︎ 八百万百‼︎』
選手の紹介に観客のボルテージは最高潮まで高まり歓声は会場を埋め尽くす。
プレゼントマイクよりルールの詳細が語られる。
『ルールは極めて簡単‼︎ 相手をフィールドの場外に叩き落とすか行動不能にする……あとは『降参宣言』をさせても勝ちのガチンコ勝負‼︎ 怪我? そんなもん上等‼︎ こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから道徳倫理は一旦捨ておけ‼︎ だが‼︎ 命に関わる様な大怪我は勿論言わずもがな1発アウト‼︎ さてそれでは長々と説明してもしょーがないって事で‼︎ 緒戦、常闇踏陰VS八百万百‼︎ スタート‼︎』
そう叫び記念すべきガチバトルトーナメント緒戦の開始が宣告された。
本体である常闇踏陰の指示に従う事もあるが……珍しいのは自身が思考し、動き……判断する。
八百万百ですら初めて見る個性である。
しかし弱点もはっきりしている。
先の騎馬戦で見えた刹那の隙を八百万は見逃しはしなかった。
スタートの宣告と同時に……八百万百はあるモノを創造した。
閃光手榴弾……それのピンを外して常闇踏陰の脚下へと投擲する。
創造により創られた閃光手榴弾の閃光と爆音すら防ぐ高性能の対閃光及び遮音ヘルメット。
それを被り自身に対する閃光手榴弾の被弾を可能な限り低減させつつ追加で閃光手榴弾を幾つも創造し投擲しばら撒いていく。
絶えずばら撒かれる暗闇を覆い尽くす強烈な閃光と平衡感覚を奪う程の爆音。
凄まじい数の閃光手榴弾で完封し極めて美しい関節技を極めて……文字通り何もさせずに緒戦の勝利を飾ったのは八百万百であった。
そして、緒戦を終えて観覧席に戻ってきた親友を出迎えるは凍火と袿姫。
「緒戦突破おめでとう百……えげつないねぇやっぱり……最初から弱点を徹底的に突き続けるなんて恐ろし」
軽口を叩きつつ緒戦突破を祝う袿姫。
しかし百は首を横に振って語る。
「常闇さんの
そう告げられる。
八百万百が語るアレとは騎馬戦のラスト15秒で行った攻防の一幕。
上鳴電気の放った電撃に怯んだのだ。
実体はあれど痛覚などないであろう存在が何に怯むのか? それを視認した八百万百は疑問であった。
何に対して怯んだのだ? 電撃に? されど袿姫が発した霊装による電撃には微塵も怯んではいなかった。
ならば……電撃に付随するナニカであろう……そう思案し八百万百は理解した、上鳴電気の電撃には付随して極めて強い光が発せられていた。
それに対して一瞬
そして……何かを叫んだ
故に……今回の緒戦、徹底して弱点を突き続けた。
即ち、強烈な閃光を絶えずばら撒いて動きを封じ続けた。
八百万百はその個性の都合上有りとあらゆる武器や救命道具に精通していなければならない。
故に貪欲に学び続けて今ではこの世に存在する凡ゆる銃器やそれに付随するアタッチメントや投擲系装備品など幅広い物が創造出来る。
ミリタリーにも医療知識にも造詣深く凡ゆるモノを創り出せる。
それが埴安神袿姫がライバルとする相手、八百万百であった。
そうして話している内に……アレよアレよと遂には早いモノで一回戦の最終番。
袿姫の出番となった。
「じゃ……行ってくるわ」
緩やかに手を振って親友と、凍火にそう告げて優雅に歩き出す袿姫。
対する相手は切島鋭児郎である。
互いがフィールドに降り立つとプレゼントマイクが叫ぶ。
『さぁさ‼︎ 一回戦も大詰め‼︎ 何でも造れる⁉︎ 器用なんて言葉じゃ言い表せないモノづくりの天才‼︎ 埴安神袿姫‼︎ 対するはガッチガチに硬くなる‼︎ 鋭く硬く‼︎ 最硬の防御壁‼︎ 切島鋭児郎‼︎ 第一回戦‼︎ 最終ブロック‼︎ スタート‼︎』
その声と共に先ず先手を取ったのは切島であった。
身体全体が硬化した状態の切島が……袿姫へと殴りかかる。
切島の殴打……素人である袿姫から見れば凄まじい速度の殴打である。
しかし、最低限の動きで避けつつ攻撃には転じる事がない袿姫。
切島としても女を本気で殴るのは不本意な為にか袿姫に勝つ手段は2通り。
背負い投げや押し出しでフィールドから叩き出すか……関節技を極めてタップアウトを取る気なのは何となく読めている。
ゆらりゆらりと切島の攻撃を捌きつつ脚を絡ませて切島を転倒させると袿姫は倒れた切島に目もくれず……最初の一撃でフィールドをぶち破った切島の一撃で出来たコンクリートの破片を手に取ると武器を創り出す。
それは……一本の棒であった。
5m程度の鉄の棒であり、紋様らしき物が刻印されているそれは……袿姫が手に持って初めて武器となる……芸術の極致。
名を『霊装』と名付けられた……武器である。
しかし、厳密には……袿姫に言わせてみれば厳密には霊装にはあらず。
所詮は単一の機構と機巧を有した武装でしかない。
「さて、参ります……」
そう呟いて転倒から起き上がった切島の猛攻を鉄の棒で捌きつつその機能を顕現させる。
刹那……フィールドが凍結し一瞬吹き荒ぶ雪と氷、瞬く間に切島の両脚を凍らせる。
一瞬で砕き割れるがあまりにも致命的な一瞬の隙が作られる。
切島が氷を砕き割って視界から消えた袿姫を眼で追おうとした瞬間
「切島さん……チェックメイトです」
背後からそう語るのはショットガンを造り出して切島の頭部に押し付ける袿姫。
自身の敗北を悟った切島は悔しいという表情を浮かべつつも降参宣言を行った。
そうして……全ての一回戦が終了したのであった。