雄英高校入学試験も終わり教師陣が集まる一室。
試験の結果発表と、とある理由により反省会も兼ねているのだ。
「実技試験総合結果出ました」
そう語る職員はモニターに結果を映し出していく。
ズラァッと名前と獲得pが並んでいるその中で主席で合格したのは
袿姫と一緒だった試験会場に割り振られた他の受験者はもはや不運としか言わざるを得ない。
なにせ全ロボットがたった1人、いや訂正しよう。1人と500体の手により撃滅、僅か3分で全ポイントを獲得されたのだから。
来年以降の試験の内容を大幅に変更せざるを得ないと議論が明後日の方向へと白熱しかけたのをエクトプラズムが軌道修正してクラス分けと合否判定に戻る。
順繰りで合否を決めて結果判定とクラス分けを同時に行う。
そうして、主席である埴安神袿姫の順番となる。
雄英高校教師陣は全員が頭を抱えていた。
天才造形師である埴安神袿姫の名は聞いていたし、雄英高校が過去に主催したコンクールにも全て参加していたのでその個性も理解していた。
個性『
その個性が如何に理不尽であり、またどうして神の名を有しているかその一端を僅かながら、朧げながら理解できた。
あの埴輪兵団の能力を鑑みて、ソレらをコンマ何秒と掛からずに即座に500体という数を生産できるのは個性ではなく紛れもなく埴安神袿姫自身の実力。
造形……それは言い換えれば物作り、それの神とはいやはや、あまりに脅威であり驚異である。
個性故に相澤の抹消で視てる間は消せるだろうが、そも個性そのものを消すだけで被造物や個性の副産物で生じた物体までは消す事が能わない。
色々と言いたい事は星の数程あれど、数多あるであろうこれからのクレーム処理を想像するのも難くない。
だが、主席を、ある種の抜け穴を突いたとは言えソレ以外の一切の不正やイカサマをせずにルールに則った上で筆記試験全教科満点、そして実技試験では文句なしの1位を叩き出した受験者に対して不合格なんぞ言い渡せばどうなるかは火を見るよりも明らかであり結末はどんな馬鹿でも分かる。
相澤と呼ばれた教師は溜息を吐きながら語る。
「とりあえず埴安神袿姫は俺が受け持ちます」
入学試験から数日後。
八百万百と袿姫は袿姫の部屋で2人してベッドに腰掛けておりドキドキしながら手に持ったソレと互いの顔を見合わせる。
八百万百と埴安神袿姫の手に有るのは雄英から届いた小包。
先ずは八百万百から開封し投射された映像を閲覧し当然の如く合格。
そして今度は袿姫の番。
掌サイズの円盤型の機械を起動させると映像が自動で展開されボサボサ髪の男性がややめんどくさそうな表情で端的に告げてくる。
『主席で合格……雄英が君のヒーローアカデミア』だと。
その言葉のみで後は必要書類等の説明、ぶっきらぼうながらおめでとうとの言葉で映像は終わる。
なんともはや実感は無いものの2人とも合格できた事に喜びを分ち合う。
そうして……2人とも、両家の両親へと報告する。
互いの親は娘とその親友の快挙を盛大にお祝いしてくれた。
そしてそのままの流れで一緒に雄英高校合格祝賀会になった。
その日出勤していたメイド及び執事全員を巻き込んで。
そうして……パーティーも終わった夜8:00。
袿姫はバルコニーに設置されたソファにもたれ掛かりながら満点の星空と美しい三日月を楽しみつつグラスに注がれた葡萄ジュースを優雅に飲み干す。
その隣に居るのは無二の親友である八百万百。
「それで? 袿姫、どうしたんですの?」
「渡したいものがあってね。何事にもムードは大事だと思うわけよ?」
袿姫より夜景を眺めないかとのお誘いを受けた八百万百。
満点の星空を眺めつつ星座を楽しんでいた2人、袿姫からそう告げられて手渡されるのは贈答用に丁寧にラッピングされた箱。
促されるままにラッピングを解いて開封すると中に入っていたのは華美ではなく、されど無骨まではいかず程良い装飾が施されたネックレス。
中心に嵌め込まれた石はアクアマリン、脇石にはモルガナイトが施されている……。
八百万の記憶している宝石店や装飾品店、それらの何処のブランド、何処のメーカーの商品とも合致しない為に100%袿姫の手作りだろう。
中央に嵌め込まれた石は言わずもがなトップクオリティ、脇石ですらトップクオリティ、更に言えばネックレスのチェーンにも袿姫の全能力が惜しみなく注ぎ込まれている。
その手で形作った物だろう事は想像に難く無い。
「私からの合格祝いだよモモ、気に入ってもらえたら嬉しいね」
ニコニコと笑いながら饒舌にそう語る袿姫であった。
ソレを見つつ八百万百も実はと前置きしてラッピングされた箱を手渡す。
袿姫も開封し中を確かめると、中に入っていたのはエメラルドを中心とした美しいネックレス。
八百万家同様に埴安神家も同等の財閥である。
埴安神家のその1人娘も当然ながらブランド品や商品、デザイン、メーカーにはとても詳しく、袿姫がそれらの記憶を総動員しても合致する意匠を持ったメーカー等が無い以上コレは八百万百のオリジナルだろう。
やはり考える事は同じであるが故に2人とも、どちらともなく笑い声が響く。
そうして奇しくもプレゼントを贈りあった2人はヒシッと抱擁し再度喜びを分かち合った。
八百万百は夜も更けて来た為に袿姫邸宅を後にして隣の自宅へと戻る。
まぁ隣と言っても……互いの敷地面積があまりにも広い故に車で移動するのだが。
さて此処である程度の解説を挟むとしよう。
埴安神袿姫の個性『
袿姫の個性は……その手で触れた凡ゆる物の物質を改変し、質量以上のモノを創り出し、生み出し、編み出す事が出来る。
ただそれだけである、別に当人のセンスが飛躍的に上昇する訳でもなく……物作りの能力が格段に進歩する訳でもない。
むしろ袿姫以外がこの個性を有していたならば没個性や使えない個性と言われていた事は想像に難く無い。
袿姫ならばこそ扱える個性と言えよう。
しかしながら其処に理論や体系、工学は微塵もない。
袿姫は物作りから始まった埴安神一族の中で最も、極めて器用な存在である。
袿姫曰く仮説も検証も必要ない……
嗚呼、この世の金銀細工職人、宝石研磨師、その他数多の職人が聞いたら助走をつけてぶっ飛ばしに来る事は想像に難く無い。
何故ならば、その技術や知識、経験には裏打ちされた理論や体系、工学があるからであり、
袿姫は宝石に限らず埴輪兵団や武器、果ては
天賦の才、いや、神賦の才、神賦の
人類の為に役立つ事を存在意義とするロボット達に『何故人類の役に立っているのか』と問いかけるが如き愚問と。
物作りの神と言っても過言ではない袿姫に『何故造れる』と問えば『何故造れないのだ』と返される問いが答えだと。
適当に思い描いて適当に手を動かせば……神に匹敵するといっても過言ではない
故にモノ作り、それに絞れば決して間違えない存在である。
仮説も検証も埴安神袿姫には一切合切不要と。
本物の天才……
試行はすれど『錯誤』はせず……検証はすれど『失敗』はしない。
モノづくりに関しては世界で見ても埴安神家の右に出る者がいない、その中でも更に言えば袿姫の右に出るものは居ない……。
詰まるところ『