しかも赤色、最高に嬉しいです
そうして、ヤオモモのチョップで意識を現実に引き戻した袿姫は改めてと前置きして一度席を立って恭しくお辞儀をしつつ轟凍火へと挨拶を行う。
「改めて……轟凍火様、お久しぶりでございます、私は埴安神袿姫と申します……先程の無粋で無礼な振る舞いをどうか水に流してもらえればと……それと今後の関係を良きものにしたいと思っております……どうぞよろしくお願いします」
袿姫は言動と振る舞い、それにフランクな接し方でフツーに忘れ去られる事が多いが……袿姫は世界に名だたる埴安神一族の始祖から続く直系の子孫。
つまりは八百万百と同様に……凄まじいなどと陳腐な言葉では語り尽くせない程のお嬢様である……。
轟凍火も、ついこの前No.3ヒーローにランクインした轟燈矢やNo.2ヒーローエンデヴァーの事もありそれなりにお嬢様であるが……。
八百万百と轟凍火、それに袿姫は別にこれが初対面では無い。
エンデヴァーも燈矢も……サポートアイテムを使用する事がある都合……八百万家か埴安神家との繋がりはある。
両家のどちらかが主催するパーティーに参加した事も少なくない。
その時の話に花を咲かせているといつの間にやら教室出入り口に居た寝袋に入った男性が語りかけてきた。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」
初日という事もあり初対面の人間が多い中自己紹介や入試の内容で話が盛り上がる中……冷たい声音でそう告げられた。
喧騒の中で鋭く響くその声音に一瞬で静まり返るクラス。
その人は寝袋から出てソレを見て語る。
「はい、君達が静かになるまで10秒かかりました、担任の相澤消太だ、さて各自の机の中に体操服が入ってるからそれに着替えてグラウンドに集合」
唐突にそう告げられてクラス中が一気にどよめきたつ。
しかし……まぁ担任にそう言われれば従うより他は無い。
まぁ袿姫にも思う所が無いわけでも無い……一応。
入学式は⁉︎ ガイダンス説明は⁉︎ そんな心の叫びも虚しく着替える為にゾロゾロと更衣室へと向かう一同。
女子更衣室に入り着替える袿姫達。
着替えの最中、明るいピンクの髪にピンクの肌、色が反転した目の生徒が袿姫の整った身体付きや美しく整えられた髪を見てその眼を爛々と輝かせておりウキウキした声音で問いかけてきた。
「ねぇねぇ‼︎ その髪、とても艶々で凄いね‼︎ シャンプーとか何を使ってるのかとても気になるの‼︎ 後で毛先触らせてもらってもいいかな? あ、私の名前は芦戸三奈、よろしくね……えーと……」
初対面故に名前を知らない。
なので名前を教え合う事から始める。
「初めまして、芦戸さん……私は埴安神袿姫と申します、親しい友人からはハニヤスか袿姫と呼ばれております……今度教えますよ? シャンプーですね? 期待しててください」
そうして着替えつつも簡単な自己紹介を行って親睦を深める。
そして、グラウンドへと集合した1-Aのクラスメイト達。
そこで担任の相澤先生より告げられた。
「個性把握テストぉ⁉︎」
袿姫だけでなくクラスメイト達がオウム返しをするが相澤先生は気にも止めずに喋り続ける。
「あぁ、お前らも中学の頃にやっただろう? ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力測定、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈……埴安神……中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」
そう告げた相澤先生に対して袿姫は申し訳なさそうな表情をして語る。
「確か……14mでした」
朧げな記憶を探りながらそう答える。
そこらの小学生よりも低い記録に……氷点下よりも冷たそうな眼差しで袿姫を見る相澤先生。
ソフトボールを投げ渡しながら相澤先生は告げる。
「………………取り急ぎ、埴安神は個性抜きでフィジカルを鍛える必要が有りそうだな……まぁ良い、とりあえず個性を使ってやってみろ、円から出なければ何をやっても構わん……思いっきりな」
そう告げられて……投げ渡されたソフトボールを見て、袿姫は一度しゃがみ込み地面の土を掌で一掬いして造形する。
辿々しく投擲されたボールはヒョロヒョロと言う擬音が極めて正しい放物線を描いて15m地点にポトリと地面へ落ちそうになった刹那……凄まじい勢いで袿姫の手から鴉が放たれ、鴉らしきナニカはボールを脚で掴みそのまま天高く飛翔していく。
そのまま成層圏を遥かに超える高さと距離まで飛翔する事2分。
相澤先生より問いかけられる。
「埴安神、アレはいつまで維持出来る?」
端的に問われたそれに対して袿姫は考える事なく即座に答えを返す。
「さぁ? 私からの指示がなければ一生飛び続けると思います……そうあれかしと造ったので」
そう答えると相澤先生な手元のタブレットを操作して記録を保存したのを確認してから此方へと見せて語る。
「この通り、記録は∞だ……アレを降ろしてこい」
そう告げられて……袿姫はフィンガースナップを打ち鳴らすと鴉の様なナニカはボールと一緒に……袿姫の手に顕現する。
そして、何の躊躇いもなく被造物を崩すとボールを相澤先生に返す袿姫。
「……まずは自分の最大限を知る、ソレがヒーローの素地を形成する合理的手段……」
そう語る相澤先生。
クラスメイト達は袿姫の出した∞というとんでもない数値の記録を見て面白そうとはしゃぐ。
袿姫や八百万、轟凍火と言った一部の人間以外はヒーロー科入学までは個性禁止で悶々としていたのだ、水を得た魚の様にはしゃぐのは当然と言える。
「……面白そう……か、ヒーローになる為の3年間をそんな腹づもりで過ごす気でいるのかい? よしっ……トータル成績最下位の者は見込み無しと判断して除籍処分としよう」
そう語る相澤先生の言葉にクラスメイト達は一気にどよめきたつ。
最下位除籍とは理不尽との言葉に相澤先生は経験でもしたのかこう返してきた。
「自然災害、大事故……身勝手な
第1種目、50m走。
袿姫は位置についたと同時に自身の個性を行使し……自身の脚を変化させて超速移動に相応しいモノに造り変える。
記録・2秒ジャスト。
第2種目、握力。
袿姫は自身の手を使い自身の肉体を人外の膂力に耐えられるモノに造り変えてから握力測定器を握るとバキイッと鈍い音と共に握力測定器だった物の残骸が袿姫の手に握られていた。
相澤はため息を吐きながら記録を『測定不可』にしたのはいうまでも無い。
第3種目、立ち幅跳び。
ジャージに軽く触れて構造そのものを変質させると天使を思わせる美しい3対の羽根を構築……跳躍と同時に羽根を用いて浮遊をして距離を無限に稼ぐ。
3分ほどして相澤先生より問いかけられる、いつまで行使可能かと。
それに対して答えるは『いつまででも』……記録が∞になったのは言うまでもない。
第4種目、反復横跳び。
背中の羽根を維持したまま浮遊状態で行い2694回。
第5種目、持久走。
羽根を維持して飛翔……八百万百のバイク、轟凍火さんの氷結の滑走と競り合う同率1位。
第6種目、上体起こし。
元々身体がとても柔らかい袿姫、肉体を多少造り替えて挑む。
記録は217回。
第7種目、長座体前屈。
こちらは特にどうと言う事もなく普通の記録で終わる。
これで全種目終了して結果が発表された。
埴安神袿姫、1位。