初日を終えて2日目の学校。
午後はヒーロー基礎学、オールマイト先生による初の戦闘訓練。
それぞれ入学前に提出した『個性届』と『身体情報』を提出すると学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれる。
個々人の『要望』を添付する事で更に個々人に合ったコスチュームが手に入る。
どうしてそんな話をしてるかというと。
女子更衣室内で着替えをしているのだ、コスチュームへと。
皆思い思いのヒーローコスチュームであるが袿姫のコスチュームはその中でも群を抜いて袿姫個人の思いを反映している。
なんせ袿姫のコスチュームはヒーローと言うよりもどちらかと言えば職人に近い風体がある。
髪を纏める為の緑色の頭巾を被り、縄文土器のような模様のついた黄色いワンピースの上に頭巾と同じ色のエプロンを着用。
エプロンにはノギスや鑿、ハンマーや彫刻刀全種類……多種多様で様々な彫刻道具を種別ごとに入れているポケットが4つある。
あまりの異質さだが……袿姫本人は自身のコスチュームなんぞ意に介さずに八百万百を見ながら呟く。
「ヤオモモ……それはどうなの? いやさ、個性知ってるからコスチュームの意図も意味も理解してるし分かるんだけど……恥じらい何処いった?」
親友にそう声をかける袿姫。
八百万百の個性は身体の何処からでも脂質を代償として生命以外の全ての『創造』を可能とする為に衣服があると邪魔にしかならない。
しかし、かなりの露出度の為に苦言を呈すると返ってきたのは要望よりも布面積が多いと……。
この時ばかりは袿姫は思った、……あぁ法律よありがとうと。
そうして、オールマイト先生より説明が告げられる。
曰く、賢しい
故に基礎を知る為の実戦との事で2VS2の屋内戦を行う。
制限時間15分、
ヒーローチームは『
ヒーローチームと
5分間は
そうして訓練を順々で行なっていった。
初戦の爆豪と緑谷の戦いはあまりにも観る価値が無い……爆豪の私怨に対して緑谷も同様。
麗日さんに至っては核爆弾があるのに浅慮とも言うべき乱雑な攻撃。
それらの総評をヤオモモが手厳しく語る。
残す所……最後に残ったチームは……。
ヒーローチーム、轟凍火&八百万百チーム。
まさかの推薦組が2人とも同じチームになったと言う驚愕と脅威。
先んじて核が設置してある部屋へ辿り着いた
やった事と言えば……最高級のソファを2人分創り……座る様に促されただけ。
それだけに貴重な5分を浪費した。
流石の耳郎も溜まりかねて叫ぶ。
「……アンタ、分かってんの⁉︎ 訓練はもう始まってんだよ⁉︎」
そう荒ぶる様に叫ぶ声に対して袿姫は蕩けるような甘い笑みを浮かべて語る。
「大丈夫です……まーこれがヒーローチームだったら初動から相手を何もさせずに、巨象が蟻を踏み潰すかの様に動いてましたが……余裕たっぷりに構えてるだけと言うのも必要な能力です……時に耳郎響香さん、チェスは最善手を打ち続ければ必ず先手が勝てるというゲームだと知っていますか?
ケタケタと含み笑いをしつつ意味ありげにそう語る袿姫。
そうして……訓練開始の合図が為されたが5分経とうとも一向に何も来ない。
包み込む静寂に耳郎響香は首を傾げて問いかける。
「……始まってるんだよね? アンタ……何をしたの?」
深淵よりも深い恐怖に包まれる感覚に……身を震わせながら問いかけてきたチームメイトに対して袿姫は甘く蕩ける笑みを浮かべて語る。
「別に何も……向こうが勝手に思い込み、勘違いし、私のハリボテの計画を深い所まで読み違えているだけで私は別に何一つ駒を動かしては居ないのです……しかして……世界は廻っていくものなのですから、しかし相手もそろそろ痺れを切らす頃合いでしょう」
相手の考える手が読めない? ならば読める奴に聞けば良い。
袿姫も八百万百も……そうして互いを高めて、信頼して、切磋琢磨してきた。
2人とも互いに……相手を真摯に見据えて、一切眼を離す事なく相手を見ている相手の眼から自身を見ている。
相手の行動が制御できない? なら出来る奴にやらせれば良い。
相手の真意を汲み取れない? なら汲み取れる奴にさせれば良い。
そうして出来たのが……袿姫を誰よりも、ともすれば袿姫自身よりも袿姫を知り尽くしているという八百万百に掛かる罠。
安易には踏み込めないというハリボテ同然の罠。
相手を相手よりも知り尽くしている……しかして、それは袿姫も同じ。
八百万百という人間を袿姫は八百万百以上に知り尽くしているからこそに成功を収めた作戦である。
知力と理力と才力を全てを競い深め高めあった2人だ……。
そろそろだろう。
いつの間にやら手元に創り出していたストップウォッチを見遣ると袿姫はやおらにソファから立ち上がり語る。
「耳郎響香さん、切り札と言われるモノが絶対的最強と言われる所以1つを今、ご覧に入れます」
袿姫は語る。
切り札とは。
絶対に対処不可能でなければ──〝切り札〟とは言えない。
そして己と同等以上の敵を相手に、
──『初見殺しの伏せ札』以外に、存在し得るわけがない……。
刹那……ビルが一棟丸ごと凍結し極低温に包まれる。
足首が氷により動けなくされる。
そうして……姿を見せるは轟家次女……轟凍火。
轟凍火は此方を見て警告を行ってきた。
「抵抗するなら次は身体全てを凍らせる……降参する?」
あぁ、微細な氷結の礫が舞い散りかの美しさに拍車がかかる。
袿姫は畏敬の念を改め……口を開き告げていく。
紅白のツートンカラーをたなびかせて……そう語る轟凍火、そして……耳郎響香達の背後から、つまりは窓をこじ開けて侵入してきた敬愛している最高の親友に。
「
恭しくカーテシーをして、とても美しくお辞儀をしてそう語る袿姫。
あまりにも美しい所作とその言葉が意味する所に……理解を一瞬遅れた八百万百以外の2人。
刹那……八百万百が脚を踏み入れた床が煌めく。
いつの間にやらコンクリート薄く彫られていた刻印。
袿姫のみが扱えるその手から編み出される芸術の極地。
「刻印術式……そうですね『霊装』とでも名付けましょうか?」
その淡い光は連鎖的に定められたルートを辿りビルを包む。
淡い光が4人を包み込み……閃光に包まれる刹那、八百万百は此方を見遣る袿姫の顔を見て理解した。
八百万百の表情に現れるは驚愕、驚倒、狼狽。全くの想定外に直面したその表情ッ!!
あゝ知っていた。確信していた。疑ってもいなかった。
やはり。当然。無論──
光が収まると……変質したコンクリートで完全に、雁字搦めに拘束されている八百万百と轟凍火。
そして、極め付けに……2人の腕には袿姫が八百万百から奪い取った『確保テープ』が巻かれていた。
勝利・