戦闘訓練を終えて翌日。
ヤオモモと学校へ一緒に徒歩で登校していると途中から耳郎響香さんと轟凍火さんが合流してきた。
奇しくも昨日のメンバーと同じになり昨日の訓練の感想戦を行いつつ歩く。
「袿姫……私はあの時、どうすれば貴女に勝てましたか?」
そう問われた袿姫は耳郎さんのイヤホンジャックをクルクルと指で弄びながら即座に告げる。
「凍火さんが即座に建物内を凍結するか焔でスチームサウナにして……モモが私の造る埴輪兵団を『創造』した上で更に数の暴力で攻め込めば勝てた可能性は……15%といったところですかね、しかしそれは『たられば』の結果論に過ぎません……勝ち越しも負け越しも無い私達の勝負……次は貴女が私を負かして見せる番ですよ?」
そう告げる、簡単に負けてやるつもりがないのはお互い様だ、むしろ手を抜いて勝ちを譲られたら……絶対に許さない事は想像に難くない。
幼少の頃から何かにつけて競い合ってきた2人……ゲームでもこの前の様な勝負でも負け越しも勝ち越しもない。
2人の隣を歩く耳郎響香と轟凍火は知らぬ事だが……昨日のを抜きにした2人の戦績。
3526744戦1170080勝1170080敗1186584分。
今日まで互いに一度としての勝ち越しも負け越しもないという……その戦績を知らぬは……良いのか悪いのか……。
そうして校門の前に到着するも大量のマスコミ……。
校門を塞ぐなどというレベルではなく……人を通す気などまるでない。
それを見た袿姫はため息一つ、八百万百もため息一つ……互いの顔を見合わせると袿姫は耳郎響香と、八百万百は轟凍火の手を握って袿姫が告げる。
「大海を割ったというモーセになりましょうか一緒に、ねぇモモ……」
にっこりとそう告げられた八百万百はため息を吐き首を横に張り呆れた表情で語る。
「旧約聖書『出エジプト記』に記された神話を引き合いに出されても……ん? 一緒に?」
そう告げる八百万百を気にも留めない様子でズンズンと歩いていく袿姫。
マスコミ達が何時間前から待機しているかは全く知らないし向こうも仕事なのだろうが……しかしながら邪魔な訳で……面倒だと思いつつ波風を立てない様に穏便に行こうと決めた、横の友人2人に迷惑をかけない方向で。
此方に気づいたマスコミが一斉に、カメラやマイクを向けて下世話な質問をして来ようとしてきた刹那……カメラの近くで予定を詰めていた別のリポーターが気付き質問をしようとした自分達の局の新人リポーターの襟首を掴んで引き一斉に横に退いた。
まるで海を割るモーセの如く……。
その状況を創り出した当人はマスコミに会釈をして語る。
「あら、ご機嫌よう……お仕事お疲れ様ですわ、私たちに何か聴きたいことでもおありでしたか?」
ニコニコと笑みを浮かべている袿姫、しかしながら眼前の先輩リポーターは青褪めた表情で首を横に振るのみ。
八百万百と袿姫、それに耳郎響香と轟凍火は余計な質問も何もされる事なく優雅に門を通り抜ける。
その後、教室に到着した4人は更に親睦を深め会話にも花が咲く。
そして、委員長決めが行われ、最初こそ委員長が埴安神袿姫、副委員長が八百万百に決まったがマスコミが入り込んで大パニックになった際に飯田天哉と八百万百が場を収めたのを見て袿姫が自身ではなく飯田天哉こそが相応しいとして、委員長が飯田天哉、副委員長が八百万百となった。
そうして……人命救助訓練として……バスに乗り施設へと向かう。
そのバス内で袿姫は八百万百から問いかけられる。
「……なんで辞退したんですの?」
言わずもがな、委員長の事だろうと……そう問われた袿姫はコスチュームに身を包んだ格好で言葉を返す。
「中学の時にみーんな私に面倒ごとを丸投げしてきて懲りてるからね……そもそも私は委員長なんて大役を担うのは性格じゃないよ……ちょうど良いから投げた」
その答えに……八百万百も思う所がないわけではなかったのか被りを振ってため息一つ。
そうしてバス内では当然と言うべきか自分達の将来や個性の話へと繋がる。
圧倒的に派手で強いと言えば爆豪、轟、そして袿姫と八百万百だろうという話になる。
爆豪勝己は爆破……轟凍火は半冷半燃による凍氷と炎熱、そして袿姫と八百万はあらゆるモノを刹那の内に創造する事が出来る。
まぁ人気の出やすさで言えば袿姫と八百万百、轟に軍配が上がるだろうと言う結論に落ち着く。
袿姫はその個性の都合上、八百万百と同じく万能型であり見目麗しいその外見も手伝って人気が出そうである。
無論個性の方も多彩で多芸な為に災害救助、戦闘、復興支援などで大いに活躍する事は想像に難くない。
轟凍火はその袿姫と八百万百と同等のスタイルと美しさ、そしてその個性による圧倒的な範囲攻撃を可能としている。
轟燈矢とエンデヴァーから直接指南されている焔と、母である冷、そして姉である冬美からの氷結の扱い方を学んでおり……その相反する2つの個性はとても美しい。
爆豪はと言えば個性による派手な戦闘と抜群の戦闘センス、本人の天性のセンスにより素晴らしい才能があるのだが余りあるそれを全て帳消しにするほどの口の悪さが目立つ……
そうこう話している内にバスはUSJに到着したらしく出迎えたのは13号先生。
1つ2つ3つ4つ5つ……増えていく。
端的に言えば13号先生の個性であるブラックホールは簡単に人を殺せる個性であり、私達の個性も同じである。
人を簡単に傷つけて簡単に殺せて簡単に人を害する個性であるという事。
一例を挙げるならば袿姫の個性や爆豪君の爆破や芦戸三奈の酸や轟凍火の半燃半凍であろうか……。
お小言が終わり13号先生と相澤先生による施設の説明が行われようとしたまさにその刹那……。
黒い霧が顕現し数多の
侵入者用センサーも当然設置してあるが何故だか機能していない、そういった妨害を行える個性持ちが
その瞬間、相澤先生が叫ぶ。
「一塊になって動くな‼︎ 13号‼︎ 生徒を守れ‼︎」
命を救う筈の学びを得る為の時間に何の皮肉か……
切島がゾロゾロと湧いて来る集団を見ながら語る。
「何だありゃ……また入試の時みたいに既に始まってますよパターンか?」
そう呟いて踏み出そうとした刹那、相澤先生から一喝される。
「動くな‼︎ アレは……
動くな、それを聞いて袿姫はソレを律儀に守る。
ソレと同時に納得もする。
相澤先生は授業を非常に合理的に進める、そもそも救命救助訓練に
相澤先生が指示を出したと同時に……手の装飾品を装着した青年が辺りを見回して怨嗟の混ざった声音で生徒たちにも呟く。
「たく……何処だよ? オールマイトは……せっかくこんなに大衆引き連れて来たのにさ、オールマイト、平和の象徴が居ないなんてさぁ……子供を殺せば来るのかなぁ?」
そう語られる。
しかしながら相澤も数多の戦線を潜り抜けて来たプロヒーロー。
1対多人数、しかも非戦闘員の護衛もするというこの手の戦いも経験したのは1度や2度じゃない。
「13号……生徒を連れて避難開始‼︎ 学校に連絡試せ……センサーの対策も頭に入っている連中だ、電波系統の個性持ちの妨害も考えられる……上鳴、お前も個性使って連絡、埴安神、お前は埴輪兵団を作って護衛の構築とこの状況を知らせる為の何かを構築‼︎」
そう指示を出され上鳴が装備している特性のヘッドセット兼通信機器を走らせるがノイズが酷く通信が不可能な状況であった。
ソレを踏まえて袿姫は指示された通りに地面という手近な素材を使用して埴輪兵団を構築する。
しかしながら……虚空よりも短い僅かな時間……袿姫の眼に止まったのは脳が剥き出しの黒い大男。
それを見た瞬間、袿姫の表情は有り得ないモノを見た様な、極めて不快に晒されたとでも言いたげな表情に変わる。
しかし、己が気持ちなど取り敢えずは後回しにして言われた事を果たす。
即ち……埴輪兵団の構築。
僅か2秒で形作られる人型超越機械100体。
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の各20体が造形されて……創造主たる袿姫の指示を待つ事なく行動を開始した。