少し待っている様に言われ1人暇を潰す事5分程度。
根津校長と相澤先生に呼び出されて応接室で話を行う。
「……事情は分かったのさ、人型駆動機械……埴輪兵団の事も……ありがとうなのさ、時間を取らせて悪かったね……ありがとう」
根津校長よりそう告げられて袿姫は会釈をして部屋を出る。
聞かれたのはUSJ内での当時の状況と
そうして長い様で短い1日が終わり……家路へと急ぐ袿姫。
家に着くと制服を脱ぎ作業服へと着替えて袿姫の為だけに作られた離れに籠る。
離れの扉を開けると、見渡す限りそこあるのは大量の彫刻道具や資材……モノづくりに神賦の才を示す袿姫にとってはとても楽しいプライベート空間である。
……所で、埴安神一族には一族の始祖が遺したこんな言葉がある。
──理想の己を想い描け。
かくて鍛えよ。恥じず、迷わず、屈さず。かくなる理想に届くまで。 果たして届けば──そこが限界では無かったと知ろう。
かくて更なる理想を想い描きなおも鍛えよ‼︎ 際限なく終わりなく!!
この世全て、鍛錬される為に在るもの──〝己〟こそがその筆頭である。
鍛打を、研磨を、精錬を重ね。己が想像する己を創造し続ける──
己が死ぬ日まで、永遠に──『その飽くなき〝
その言葉が……袿姫は
6000年も前の始祖の言葉に皆縛られて……盲信し崇め奉り……意思を放棄している。
生き方? そんなもん自分で決めるわ、と。
もう一つ……袿姫は両親を除き……埴安神一族には良い印象を持っていない、寧ろ絶滅しても構わないとすら思っている。
埴安神一族にはヒーローを志す者は誰1人居なかった。
袿姫を除いて唯1人も。
自分達はヒーローには向いていないから……ヒーローになれる個性ではないから。
だから……だから貴女も、だからお前も……自分達のように。他の一族のように。
諦めずに。迷わずに弛まずに……埴安神一族の生き方をしろと。
始祖を超えるべく鍛錬して。恥じずに逃げずに生きろと。
ああ……始祖
わかったような顔で知った風な声で!! 袿姫の事を異常と蔑み呼んだその口でッ!!
揃って、言うのだ。要するに、こう、言っているのだ……。
──みんなそうしてるからおまえも。
──報われるって。ヒーローになれるかもしれないという淡い夢でも見ながら精々──“
そんな〝
だからこそ袿姫は八百万百との約束通り、約束を果たしてヒーローになる為に……そして自分を、自分の全てを否定した遍く全ての
絶えず否定されたこれまでに決別するかの様に、るっせぇ‼︎ と中指立てて
──るっせぇ!! そんな
恥じず
──そう
「ふぅ……こんなもんですかね」
そう呟く袿姫の眼前には
今回造ったのは埴輪兵団の
余談ではあるが埴輪兵団達は袿姫が作成後そのまま埴安神家のメイドか専属護衛として雇用される。
ただなんとなく“想像”するがままに手を動かせば在るがままに“創造”に至る。
試行はすれど『錯誤』はせず……検証はすれど『失敗』はしない。
普通ならば夥しい程の試行錯誤に検証失敗を繰り返して成功に導いたりするのだろう。
しかしながら袿姫含め埴安神一族にはそんなモノ、無縁である。
これじゃまだ足りないと、検証成功を無限に積み重ねていくだけなのだから。
時に……埴安神一族の中で神域へと到ったのは始祖と袿姫であるが……6000年続いている埴安神一族の系譜。
その長きに渡る歴史で……技術体系は4度覆されている。
1度目は言わずもがな始祖……残りの3回は全て袿姫である。
1度目は埴輪兵団……2回目が『刻印術式』……3回目はその刻印術式を基盤にした武装『霊装』……である。
誤解なき様に記載するが……埴輪兵団も刻印術式も霊装も……神域へと到達した6000年前の初代頭領と袿姫にしか造れず、現代に限れば袿姫にしか扱えない。
それはそうと凄まじく時間を掛けて製作したアクセサリー。
喜んでくれると嬉しいと思う。
アクセサリーを見ていると不意に背後から声がかけられる。
埴輪兵団
「袿姫様……お食事の準備が40分程で完了すると
その流暢ながら独特の機械音声を発しながら袿姫を呼びに来た磨弓。
埴輪兵団
全てのスペックを限界の果てなる先へ到達させている磨弓はオーバーテクノロジーなどと言う言葉では言い表せない程の超スペックを誇る。
そんな磨弓に対して袿姫はニコニコと笑みを浮かべて嬉しそうに語る。
「磨弓〜……会いたかったわぁ、はいこれ、アクセサリー……今度のはネックレスね、貴女にプレゼント、じゃ私お風呂入ってくるわね〜」
メイド服に身を包んだ磨弓の首に先程製作したネックレスを装着すると袿姫は満足げにるんるんと歩いて……作業場である離れから屋敷に移動して汚れた衣服を籠にぶち込みお風呂へと入る。
身体を洗い髪をシャンプーで清めた後で湯船に浸かりながら袿姫は思案する。
今日のUSJ襲撃の中に死体が継ぎ接ぎされた人形がいた事に。
恐らくは他の誰もが気づかなかった、しかしながらモノ造りに特化している自身は気づいた。
アレは人形だ、そうあれかしと幾千の死体の冒涜の果てに、禁忌に嬉々として踏み入った者達の、飽くなき探究心で生まれた歪な死体人形であった。
一応これらの情報は根津校長には既に話を通してあるが……果たして。
被りを振って袿姫は考えを振り払い体育祭に関して思案を行う。
雄英が襲撃を受けた程度で体育祭を取りやめるわけが無い、故に本気で八百万百と勝負が出来る可能性がある。
それにワクワクしつつ袿姫は思う。
自身は刻印術式を発明し『霊装』を編み出した革命的天才だと。
無数の刻印術式からなる可変機械の核媒に同期し運用する──それが霊装。
刻印を先に触媒に刻み込み運用する、超精密で複雑怪奇たるオーバーテクノロジーの塊。
それらを携えて挑むのだ、八百万百へと。
嗚呼……とても楽しみだ。
そうして……湯船から上がり、食事を両親と一緒に取りトークアプリでの八百万との雑談を楽しみながら明後日に備える袿姫であった。