クリエイター少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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雄英体育祭

 そうして臨時休校となった翌日。

 雄英の教師陣が全員集められ……そして会議は襲撃時の主犯へと移る。

 

 USJ襲撃時の死柄木弔と呼ばれた青年及び黒霧と呼ばれた(ヴィラン)の素性についての会議。

 ヒーローには出来ないが警察に出来ることは多々ある。

 

 具体的には捜査権に始まり強制捜査や囮捜査、聞き込みや職務質問……会員制BARや金融機関などの極めて秘匿性の高い場所への捜査や聞き込みなどが挙げられる。

 あとはヒーローでは逐一許可と手続きが必要な前科者のリストや犯罪者リストなどを自由に閲覧する権限や個人情報として秘匿されるべき情報を立ち所に知れるのも警察の強みである。

 何よりも……警察の精鋭が100人も集まればそれは即ち世界一の探偵組織となり得る。

 

 塚内直正は各教員へ配布した物と同じ物を手に説明を開始する。

 

「死柄木という名前……『触れたものを粉々にする個性』……そして似顔絵写真から20代〜30代の個性登録者を片っ端から当たって見ましたが該当無しです……ワープゲートとされていた『黒霧』と呼ばれていた者も同様ですね……該当無しです……偽造屋による偽造身分証で活動している可能性も捨てきれませんが…………個性届けも出されていません……携帯会社や各種公的機関の記録やクレジットカードなどの使用履歴……公共料金や税金の支払い履歴も一切無し……この2人とも……公的には存在した証明が一切出来ない透明人間です」

 

 そう語る塚内警視。

 それを踏まえて会議室に集められた雄英教師陣の内の1人……。

 スナイプが溜息混じりに語る。

 

「何も掴めないのは不味いな……早くしねぇとその主犯の透明人間にまたゴタゴタを起こされちまう」

 

 スナイプが語った『主犯』……その呟きにオールマイトはやや違和感を覚えて反芻し呟く。

 

「……主犯か、思いついても普通は行動や実行には思わない大胆な襲撃……通信の妨害やその他隔絶させるあらゆる用意は周到に為されていた……にも拘らず突然それっぽい暴論を捲し立てたり自身の個性を一切明かさない代わりに……脳無と呼ばれた(ヴィラン)の個性は『自慢げ』に語っていた、そして自分の思い通りに行かないと露骨に気分を害していた……」

 

 それらと……“尤もらしい暴論”と“自分の所有物の自慢”を行い全てが自分通りになると思っている単純思考と襲撃決行も相まって見えてくる人物像は……。

 

「万能感が抜けきってない子供の精神性……子供のまま大人になったと言うべきか……」

 

 それは……この個性溢るる超人社会ではままあること。

 個性という凄まじい能力は時に人を万能感で満たす、特に若い少年少女ならば尚更のこと……一斉個性カウンセリングなどでそれらをカウンセリングする事もあるが受けてないのならそのまま『強大な力を持った子供』として進み大人になる。

 問題は……。

 

 そこで塚内が口を開く。

 

「問題は先日のUSJ襲撃時に逮捕し検挙した(ヴィラン)の数……95名……その大半が路地裏に居るようなチンピラや小物でしたが……問題はそういう人間達が『子供大人』に賛同して追従した事……ヒーロー飽和社会で抑圧されてきた悪意達はそういう無邪気な邪悪に惹かれるのかもしれません……ま、ヒーローのお陰で我々も捜査に専念ができる……捜査網の拡大と人員の増員をしてこの件に当たります」

 

 そうして……会議は終了した。

 


 

 そして臨時休校も明け翌日。

 

 相澤は朝のSHRで発表を行う。

 

「雄英体育祭があります」

 

 その言葉に沸き立つクラス。

 雄英体育祭といえば一大イベントである。

 

 袿姫も話だけは聞き齧った事がある。

 しかし同時に懸念点もある。

 

 (ヴィラン)の襲撃を受けたのにも拘らず体育祭開催など色々と大丈夫なのだろうかという当然の疑問。

 それに答えるのは担任である相澤。

 

「逆に開催する事で雄英の危機管理体制が盤石だと世間に示す……って考えらしい、一応警備は例年の10倍に強化するそうだ……そして何よりも雄英の体育祭は最大のチャンスだ、(ヴィラン)ごときの襲撃で中止していい催しじゃねぇ……ウチの体育祭は日本のビッグイベントの1つ……プロヒーローもスカウト目的で観にくるからな? 当然名のあるヒーロー事務所に入った方が得る経験値も話題性も高くなる……時間は有限、プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだが年に一回合計3回だけの僅かなチャンス、チャート上位ヒーロー目指すなら絶対外せないイベントだ……心して挑めよ? じゃ……授業開始」

 

 そして……4時間目の授業が終わり昼休みとなる。

 袿姫は食堂にて日替わりメニューを選ぶ。

 袿姫は八百万百と同様にお嬢様と定義しても過言ではない。

 故に食堂なども初めての経験であり日替わりでメニューが変わるなどと言う理外の発想を面白く感じ昼食は常に日替わりメニューを選び続けている。

 そして食事を受け取ると隣に座るヤオモモへと話しかける。

 

「ねぇ百? 体育祭……どんな種目だろうと結末は、決勝に立つのは貴女か私……それが示すは2通りです、私の勝ち越しか……イーブンに戻る戦績か」

 

 菩薩にも等しい眩しい笑顔を振り撒きながら隣の親友へとそう語る袿姫。

 しかし他の者からすればそれは……どんな種目であれトップ争いをするのは袿姫と百だからお前らは精々3位争いでもしていろと。

 言外にそう告げているに他ならず……察しの良い爆豪らは既に青筋を浮かべていた。

 それに真っ向から口を挟む者が1人。

 袿姫と百の対面に座る轟凍火であった。

 冷たい蕎麦を啜りながら凍火は語る。

 その双眸に全てを融かす熱い焔と全てを凍らせる凍氷を滾らせながら雄弁に。

 

「私も全力で立ちはだかるよ? その日は私の家族全員で観にくるらしいから……無様は晒さない、勝ってみせますね……例え格上だろうとも絶対に」

 

 そう語る轟凍火。

 そう語られる百と袿姫は2人とも同時に眼以外が美しく見惚れる程の笑みを浮かべ凍火へと同時に言葉を返す。

 

「そう言ってくれるのはとても嬉しい、挑戦を吹っ掛けたのは私です……とても楽しみにしていますね」

 

「凍火さん、とても楽しみにしています……」

 

 食堂にて繰り広げられるちょっとした宣言。

 全てを射抜く様な鋭い眼差しを交差させる3人……しかして宣告の後に……3人とも和気藹々と食事と授業に関して語りだす。

 その後、いつも通りの授業を行い。

 

 速いもので2週間はあっという間に過ぎ去って。

 

 雄英体育祭当日になった。

選手宣誓となり……主席である袿姫が選手宣誓をする事となり、壇上へと上がり袿姫はマイクを持ち語る。

 

「あ、あー……聞こえているかしら? さて……選手宣誓が長くなってもアレなので此処は簡潔に済ませます……この言葉皆にを贈ります……折角の体育祭です、頑張って楽しみましょう……では、よろしくお願いします」

 

深々とお辞儀をして戻ろうとすると……八百万百と轟凍火が拍手を行い宣誓に対して言葉を返す。

即ち必ず勝つと。

それを聞きにっこりと笑って……列へと戻る袿姫であった。




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