トリコロールの旗を掲げて   作:理由もなく歩く人

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更新速度が落ちているような気がする……。





11. 武士道

 

 

 

 

 

 

低い朝霧が港を覗き、空は薄鈍色のベールを被っていた。

 

夜明け前の静けさを破るのは、遠くの波打ち際で、寄せては返す潮騒の音ばかり。しかし、空が東から薄い藍色に変わり始めるにつれ、静寂は次第に破られていく。

 

まず、聞こえてきたのは、船をつなぐ綱が木製の柱を軋ませる、低くくぐもった音。

 

「今日も良い一日になりそうだ」

 

腰に刀を差した若い男が呟く。

 

「さてと、そろそろ交代の時間だし、戻るか……ん?」

 

ふと、水平線の先に何かを見つけた。

 

「あんなところに小島なんてあったっけ?」

 

腰からぶら下げていた単眼鏡を手に取り、覗き込むと男は絶句した。

 

「……なんだあれ。船なのか……?」

 

 

フェン王国の朝は騒がしくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長!見てください。……サムライの国です」

「サムライの国?」

 

『ウィリアム・P・ローレンス』のウィングブリッジで双眼鏡を覗き込む見張り員が艦橋にいる艦長を呼ぶ。

双眼鏡を覗き込んだ艦長が呟く。

 

「……本当だ。『かが』を連れてきた方が良かったんじゃないか?」

 

艦長は後ろを振り向き、『カール・ヴィンソン』を見る。

 

「日本人の方が話が通じやすかったりするのでしょうか?」

「それはどうかわからないが、……本当にサムライがいた頃の日本だな。俺たちが黒船か」

 

再び海を見ると木造船が近づいてくるのが見えた。

 

「臨検か?だったら外交団がいる『カール・ヴィンソン』を臨検してもらうか」

「その方が伝えるのが楽ですからね」

 

 

やがて臨検が終わり、複合艇が降ろされる。

 

「そういえば、あの若い女性外交官って在日フランス大使館にいたんだっけ?」

「なら適役ですね」

 

艦長は高速で進む複合艇を見ながら、

 

「それって適役と言えるのか……?」

 

と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェン王国・首都 アマノキ

 

 

「……本当に落ち着いた街並みですね。日本人が持つような“和”が感じられます」

 

新米外交官である、エステル・ラクールが呟く。

移転により海外にいる多数の人材を失った外務省は、外交経験が少しでもある職員を根こそぎ動員していた。

そのため、浅いが経験のある彼女がフェン王国に派遣された。

 

「ドラマで観たようなお殿様がいるのでしょうか……」

 

武士のような人物に案内され、王城の一室でエステルは慣れない正座をしながら国王を待っていた。

やがて部屋の外から声があがる。

 

「剣王が入られます」

 

エステルは立ち上がり、礼をする。

入ってきたのは着物を着た白髪交じりの壮年の男性だった。

 

「そなた達が、フランス共和国の使者か」

 

ガタイの良さに気圧されながらもエステルは話す。

 

「はい。貴国と国交を開設したく思い、参りました。こちらがわが国に関する資料でございます。 どうぞ、ご査収ください」

 

資料が手渡されると、シハンはじっくりと確認する。

しばらくすると、ゆっくりと口を開いた。

 

「……とても詳しく書かれているが、どうも信ぴょう性がない。だが、これが本当であればわが国はとてつもない発展を遂げる事ができる。ただし、失礼だが信じられない部分がいくつかある」

「不躾で恐縮ですが、 初対面ゆえ、まだお信じいただけない点も多いかと存じます。ですが、わが国に使者を派遣してくだされば……」

「いや、我が目で見て確かめたい」

 

シハンの発言にエステルは驚き、目を瞬かせる。

 

「あなたが乗ってきた船を我が国の『軍祭』に派遣してほしい」

「海軍の艦艇を、ですか?」

「そうだ。今年我が国の水軍船から廃船が4隻出る。それを敵に見立てて攻撃してみてほしい。要は、力が見たいのだ」

 

シハンからの要望にエステルはさらに驚く。

そして確認のためにもう一度聞いた。

 

「承知しました。ですが……本当に宜しいんですか?」

「もちろんだ。攻撃できる船ならなんでも良い。数隻、連れてきてくれ」

 

そう言い、シハンは部屋をさる。

1人残されたエステルは呟く。

 

「これは……、成功と捉えて良いのでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリ・外務省

 

「フェン王国に艦艇を派遣する?」

「国王から要請があったようで……」

「この世界おかしいだろ」

 

海軍から派遣された将兵は呆れる。

外務省の職員もエステルが制作した報告書を戸惑いの目でもう一度見る。

 

 

〔フェン王国との外交報告書〕

 

・日本の戦国時代の様な国

・ロウリアやパーパルディアよりも、話は通じる

・礼儀正しい国

・国交成立かどうかは不明

・艦艇の派遣を要請された

 

 

「とても信じられない内容ですが、間違いないかと……」

「……やっぱこの世界イカれてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランス東部・ドゥー県 ブザンソン

 

フランス陸軍・リュティ兵舎 第1機甲師団司令部(État-Major de la 1re division)

 

「大統領、こちらです」

「ありがとう。にしてもリュティ兵舎なんて久しぶりだね」

「視察ではないんですからね」

「わかってるよ」

 

シュヴァリエは制服姿の士官に案内され、兵舎内のある部屋に向かう。

部屋の前にはFA-MASを持った兵士が立っていた。

 

「この先にいるのかな?」

「はい。一応手錠などはつけていますが、暴れる可能性があるので気をつけてください」

「わかったよ。では、始めよう」

 

シュヴァリエは扉を開け、室内に入る。

顔に冷笑を貼り付けて。

 

 

 

 

「やあ、初めましてだね。ハーク・ロウリア34世」

 

「……貴様がフランスの王か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





読んでくださりありがとうございます。


フェンとの外交は新登場のエステルさんでしたが、ロシュフォールさんだとどんな外交になっていたんだ……?

原作の外務省は約6割を失いましたが、今作のフランス外務省も3分の2を失いました。
CMで外務省の求人が多いんだとか……。


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